タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『ホームドラマ!』  4/16〜
TBS系 金曜10時  期待度 ★★★★☆

ツアーバスの事故で愛する者を亡くした人たちが
同じ一軒家に住み大家族を作っていく。
タイトル通り家族の意味を問うヒューマンドラマ。

堂本剛とユースケ・サンタマリアの共演で、
コミカルな部分も入れていく模様。
堂本剛は恋愛モノではない時の方がいいし、
脚本も岡田惠和なので期待できそうだ。

「てるてる家族」の春子・紺野まひると
夏子のモデルとなったいしだあゆみも共演する。



『ホームドラマ!』 

プロデュース:橋本孝、瀬戸口克陽
演出:平野俊一
脚本:岡田惠和
音楽:長谷部徹
主題歌:「ORIGINAL COLOR」堂本剛
オープニング・テーマ:「アローン・アゲイン」グルバート・オサリバン
制作:TBS、ドリマックス・テレビジョン
出演:堂本剛、ユースケ・サンタマリア、酒井若菜、紺野まひる、井上真央、
   いしだあゆみ、田村高廣、西洋亮、泉澤祐希、岡本綾、岡田浩暉、
   木村多江、長内美那子、六角精児、山田明郷、斉藤陽一郎、他

最近では珍しい初回2時間スペシャル。
さすがに見ごたえがあった。

普通は回想程度で済ませる事故シーンに時間をかけたことで
その後の展開に説得力が出たと思う。
まあ、病院のシーンは多少スロー映像が多くて
間延びした感じはあったけども。

それにしてもこの作品はキャスティングがベストだろう。
事故前後という特殊なシーンだったにしても、
酒井若菜、紺野まひる、井上真央は
以前の役を引きずらずにいいキャラを組み立てたと思う。

田村高廣、いしだあゆみのベテランも全体を締めてる。
これで堂本剛とユースケのかけあいが入ってきたら
相当見どころは増えるだろう。

たとえ2時間かけても初回で全員が揃わなかったのは正しいし、
最初に将吾(堂本剛)の家に来たのが光太(西洋亮)というのも
流れとしてはうまかった。

             採点  7.0(10点満点平均6)





『ホームドラマ!』  第2話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

翔子(井上真央)の家の近くで起きた
地震が心配で電話をかけたり、
仁美(酒井若菜)がどんなに世間から非難されようと
自分だけは守ろうとしたり、
将吾(堂本剛)の行動を通じて
家族とは?というテーマが徐々に描かれ始めた。

翔子への電話で
“ホラ、でっかい光太、分かる? チョコバーの…”
と将吾に言わせたりする部分も含め
脚本はかなり繊細に書かれていると思う。

いくら慰霊祭に同行した遺族同士でも
普通、すぐには名前と顔が一致しないもんな。

仁美は被害者でありながら加害者でもある、
という設定だけど、
事故で死んだツアーコンダクター(岡田浩暉)は
まゆみ(紺野まひる)の恋人、もしくは婚約者のようなので、
彼女もまた加害者でありながら被害者ということになる。
まゆみが本格的に参加してくるとさらに深みが出そうだ。

メインの出演者は9人だけ。
でも、秋庭(ユースケ)はバスに同乗していない遺族だし、
翔子にはPTSDの症状が出ているし、
キャラ設定をうまく振り分けていると思う。

今回、仁美が将吾の家へ来るのは
少し早いような感じはした。
ただ、みんなで一緒に住むことが結論ではなく、
家族とは何かを描く話なので、
引っ張り過ぎよりは良かったかもしれない。

いずれにしても今後のエピソードに期待しよう。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  第3話

演出:平野俊一
脚本:岡田惠和

秋庭(ユースケ)の会社に対する怒り、
“なんで家族がいる時に休みくれなくて、
 今、休めなんだよ!”は、
さすがに訴えるものがあった。

ただ、秋庭に関するパーツはそれ以外とくに新しい軸もなく、
かなりあっさりとした印象。
秋庭はすぐに一緒に暮らすわけではなさそうなので、
もう少し外から遺族同士が一緒に暮らす意味を突いて欲しい気がする。

そしてラスト、バスに同乗していたツアコン(岡田浩暉)は
まゆみ(紺野まひる)の夫だったことが語られた。
婚約者や恋人ではなく夫だとすると
まゆみの加害者意識はさらに強くなるはず。

今まで一番まゆみにつらく当たってきた秋庭を絡めつつ、
ここはしっかりと心に受けたの傷を描写して欲しい。

それはそうと、
このドラマも固定カメラを使わないシーンが多くて
画面の揺れが気になるな。

事故前後の臨場感を出すシーンでは効果的だったけど、
家の中まで多用されるとかなり見にくい。
全体の作りは丁寧だと思うので、
そのあたりは改善して欲しい。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  第4話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

今回は秋庭(ユースケ)とまゆみ(紺野まひる)が
ふたり一緒に将吾(堂本剛)の家へ来るまで。
ここまでが第一部、といった感じだろうか。

宏樹(泉澤祐希)の授業参観の問題、
光太(西洋亮)のイジメ問題は次回以降に持ち越しで、
これらは仁美(酒井若菜)の妊娠問題と
並行して描いていくのだと思う。

ちょっと心配なのは翔子(井上真央)の精神的な問題。
まさかこれで終わりじゃないよな。
作品全体は家族がテーマでも
さすがにこの問題はバス事故に直結しているので
もう少し時間をかけて描いて欲しい。

ドラマの出だしにインパクトがあっただけに、
あまり小さなエピソードの積み重ねに成りすぎると
尻すぼみのような印象になってしまう。
大きな問題に関しては
それなりに時間もかけて描いてもらいたい。

今回、印象的だったのは
テレビで他の事故のニュースが流れ、
その中で将吾たちが遭遇した事故についても語られるシーン。

マスコミとしてはオーソドックスな報道方法だけど、
事故の関係者はその度に思い出さなくてはいけない。
ここは事故シーンに時間をかけただけに説得力があった。

ユースケが加わった疑似家族。
新たな雰囲気をどう描くのか、
とりあえず次回はそこに注目だ。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  第5話

演出:平野俊一
脚本:岡田惠和

まず、普段の会話は
ユースケも加わって幅が広がった。
コミカルな要素を取り入れることも可能になったので、
作品全体を包む重い雰囲気に
多少はメリハリが出せるようになったと思う。

宏樹(泉澤祐希)の授業参観の問題は、
予想通りの展開でとくに見どころはナシ。
でもまあ、これはこれでいいでしょう。
お約束も必要ってことで。

仁美(酒井若菜)の妊娠問題も
今回だけでとりあえずの結論を出してしまったわけだけど、
家族会議の意見の違いと、
最後に仁美が母親代わりである映子(いしだあゆみ)に
子供を産みたいと宣言するシーンは見ごたえがあったので
1話の構成としては悪くなかったと思う。

どんなに反対していても、
最終的に娘が決断したことに対しては応援してあげようという
母と娘の関係を描写できたことで、
このドラマのテーマは描けたと思う。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ホームドラマ!』  第6話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

光太(西洋亮)のイジメ問題に、
事故被害者たちが一緒に暮らすことに対する
まわりの好奇な目という要素を絡めたのは良かった。

イジメの解決方法自体は答えがないと言ってもいいので、
ラストがああいう形になってしまったのは
ある意味、仕方がないと思う。

ただ、せっかく別の価値観を持って育った人たちが
一緒に暮らしているのだから、
意見として様々なアイディアを出してもよかったのでは、
という気はした。

印象的だったのは、
光太の誕生日会の準備をしている時に
映子(いしだあゆみ)が泣いたシーン。

事故で死んだ息子たちに
誕生日会をしてあげたかったというエピソードは
1・2話できちんと描いていたので、
泣き出した途端にその気持ちは伝わった。

光太自身もサプライズだったパーティーに
もしみんなから嫌われてしまったら
自分はどこへ行けばいいんだろうという不安を抱いたけど、
こうした事故の影を反映させたエピソードの作り方は丁寧で良かった。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  第7話

演出:高津泰行
脚本:岡田惠和

今回に限って言えば
とくに大きな事件が起きたわけではないけど、
連ドラの作り方としてはやっぱりうまいと思った。
きちんと作品全体を考えて構成しているので
エピソードの繋げ方にあまりムリがない。

中でも一番印象に残ったのは、
将吾(堂本剛)と秋庭(ユースケ)が
ろばた焼き屋で飲むシーンか。
あのシーンの堂本剛は良かったなあ。

まゆみ(紺野まひる)の心理だけでなく、
将吾の気持ちもここで描いていたので
全体的な説得力も深まった。

次回は前回も少し描かれた世間の好奇な目が
もっとハードな形で将吾たちを襲いそう。

物語の設定としてはある意味必然的な流れの中で
家族の意味をどう問うか、
非常に興味深い。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  第8話

演出:片山修
脚本:岡田惠和

岡田惠和のうまさがよく現れた回、
というのが妥当な見方なんじゃないだろうか。

マスコミが押し寄せ、
世間の好奇な目に晒される、という展開は、
今までの雰囲気が好きだった人には辛く、
逆に今までハマれなかった人には
面白く感じた流れだったかもしれない。

それは支持層を増やすようでいて
実はコアなファンを減らす、
よくあるパターンなんだけど、
それを河野(田村高廣)のエピソード1つでバランスを取り、
しかも、家族のあり方というテーマにもリンクさせていた。

これはいざ書いてみようとすると
できそうでなかなかできないことだと思う。

最後に外で食事をする展開は
さすがにナシだろうと思った。
ナシだろうと思ったけど、
序盤に一瞬登場させていた
宏樹(泉澤祐希)の友達2人を招き入れるだけで、
アリかもしれないと思わせた。

なんちゅーかな、
好き嫌いは別にして、
やっぱり今回はうまかったよ、岡田惠和が。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  第9話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

将吾(堂本剛)たちが事故で失った命の再生を
仁美(酒井若菜)の子供に求めてしまうという
事故に関連したエピソードと、
家族の絆、新しい家族の誕生を
自然な流れで描いていた。

そこに血のつながった家族ではないからこそ生まれる
翔子(井上真央)の微妙な感情を絡めたことで
ストーリーに起伏も生まれたと思う。

翔子がやむを得ず連れてきた友達の彼氏が加藤成亮(NewS)で、
“ジャニーズ系だし”
と堂本剛の前で言わせたのはシュールだったな。

前回で描いていた問題を
時間を経過させることでとりあえず終了させていたけど、
家族を描くというテーマに沿ったことなので
このやり方はアリだったと思う。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  第10話

演出:片山修
脚本:岡田惠和

今回も一話完結のような作りだったけど、
岡田惠和のうまさは感じられた。

智彦(ユースケ)の死んだ妻・香(木村多江)に似た
桃子(木村多江)が現れて智彦が惚れるという展開は、
ヘタをすればありふれたエピソードになり勝ち。
それをこの作品のテーマに沿って
静かに描くあたりはさすがだった。

あんなにみんなでコーディネートしたのに、
当たり前のように結婚指輪が薬指にあったシーンは良かった。
もちろん、段取りとしては誰か気づくだろ!
というアイテムではあるけど。

初めて桃子の存在を知った時の将吾(堂本剛)の気持ちにしても、
智彦がフラれてちょっと嬉しい映子(いしだあゆみ)の気持ちにしても、
普通なら言葉にしない気持ちをきちんとセリフにしたのも
家族のあり方を描く意味ではいいアプローチだった。

まあ、フラれて嬉しい、お祝いしよう!
というノリなら、
ぜひ餃子を作って欲しかったけどね。
酒井若菜もいたことだし。
(NHK「恋セヨ乙女」参照)

岡田惠和ならちょっとやって欲しかった。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ホームドラマ!』  最終話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

家族の形態をそのまま続けるという終わり方は
ちょっと予想と外れた。

でも、制作者側の想いとしては、
最後に将吾(堂本剛)に言わせた
“この世界にはつらいことが多すぎるよ。
 それにつらいことがあって、その気持ちが癒された人たちより、
 癒されないまま、救われないままの人の方が多いと思うんだ。
 でも、それがもし神様にとって、この世界にとって必要なことなら
 せめてその人たちにも一緒に笑える、
 心を開ける人を与えてあげて欲しいんだ”
がすべてなんだろうな。

つまりこのドラマは理想というか、願いが前提にあった。
だからバスの事故後はリアリティーがあまりなかった。

ただそれは、一話完結のような後半の構成や、
まるで舞台のワンシーンのような
食後ソファーに座ってみんなが話す演出などから判断しても
かなり意識的にやっていたようにも思える。

実際、自分も他のドラマに比べれば全体を客観的に見ていたし、
どの登場人物にも感情移入してなかったしな。
そういう意味では作法に実験的な試みがあった、
と言えるかもしれない。

いずれにしても、
スタッフが作りたいと思っていたものは
かなり忠実に作れたんじゃないだろうか。
もちろんその中で岡田惠和のテクニックが
最大限に発揮されたことは言うまでもないけど。

あとは見た人の好き嫌いの問題だと思う。
個人的には嫌いではなかった。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  7.09(10点満点平均6)




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