タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『ロング・ラブレター〜漂流教室』 


1/9〜 フジ系 水曜9時 期待度 ★★★★★

楳図かずおの名作「漂流教室」をモチーフにした作品。
もちろん、原作をそのまま映像化するわけじゃなく、
かなり脚色される予定。

それでも期待できるのは
「カバチタレ!」のスタッフがこの作品を手がけるということ。
仮に想像と違う仕上がりになっても
いい方向に裏切られるような気がする。

出演者も
常盤貴子、窪塚洋介、妻夫木聡、
山下智久、山田孝之、水川あさみ
と、ほぼ申し分ない。
これは見ておこう。



『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第1話

原作:「漂流教室」楳図かずお
プロデュース:山口雅俊
主題歌:「LOVELAND,ISLAND」山下達郎
演出:水田成英
脚本:大森美香
制作:フジテレビ
出演:常盤貴子、窪塚洋介、妻夫木聡、山下智久、山田孝之、水川あさみ、
   中島宏海、大杉漣、内田朝陽、大村彩子、中丸新将、石橋けい、他

やっぱり「カバチタレ」のテイストは色濃い感じ。
とくに音楽がかなり引きずってたね。
ぶっきらぼうに会話する常盤貴子と山下智久のシーンは
カバチの姉弟を思いだして微笑ましかったけど。

キャストでは
お正月のモー娘。ドラマ「時をかける少女」にも出ていた
内田朝陽が出てきた。
事前の発表では名前がまだなかったんだけど
どんな風に話にからんでくるのか、
ちょっと興味のあるところだな。

それから、関谷という役名をもらった中島宏海。
「愛という名のもとに」で
森本レオに不倫するモデル役をやった人だね。
10年たってもやっぱり普通の恋愛はできないのか。
ちょっと可哀想になってしまった。

…さてさて、そんなことより
視聴率は17.2%(関東)で、10時からの
「続・平成夫婦茶碗」(17.7%)にも負けたんだけど、
原作が原作なだけに
初回オンエア後は賛否両論の嵐。

仕方がないよな。
いくら原作はモチーフと明言されてても
好きな小説や漫画が映像化されたら
どうしても違和感の方が強く残るもんね。

まあ、テレビはいつでも
チャンネルを変えたり
スイッチを切ることができるんだから、
気に入らなかったら見ないという方向で。
そんなお手軽さがテレビのいいところだからね。

…で、
初回は連ドラの常として
登場人物のキャラクター提示
それぞれの関係性の説明が主だった。

しかし、その中にも
物語の前振りとなる部分は
かなりきちんと描かれていたと思う。

「漂流教室」のテーマのひとつに
“母と子の愛”というものがあった。
いや、一番芯になっていた部分と言ってもいい。
そこが鋭く描かれていたからこそ
感動した人も多かったはずだ。

つまり、
愛の物語としてドラマ化することについては
さほどムリはないはずなのだ。

高松翔という原作と同じ名前持つ
生徒(山田孝之)が登場し、
つまらないことでケンカをした彼女(水川あさみ)と
離ればなれになるという前振りがあった。
でも、これはおそらく
サブストーリーでしかないだろうな。

やっぱり注目は
常盤貴子と妻夫木聡の関係だ。

かつて教師だった常盤貴子は
生徒である妻夫木聡を殴り、その職を辞めた。
教師と生徒の気持ちは通じ合わなかった、
という前振りだ。

原作で言えば、ここで
“未来カー”は捨てられ
“腕時計”は車につぶされてしまったわけだ。
(原作の冒頭場面)

でも、教師の想いは生徒に伝わっていた。
そのことを漂流する前に
常盤貴子は知ることになる。
母親に“クソババア”と罵り、
息子に“もう二度と帰ってこなくていい”と言っても
2人の関係性が保たれていた原作と同じ状況だ。

(もちろん、本当は惹かれ合っていても
今はいがみ合っているという関係性は
一緒に漂流してしまった常磐と窪塚にも存在している)

…ところで話は飛ぶけど、
原作の“ゆうちゃん”は
あのあと、どうしたのだろうか?
おそらく、高松翔たちに恥じないような
すばらしい未来を作ろうと決心したのではないだろうか。

より良い未来を作るということは
教師が生徒を正しい道に導くということに象徴される。

このドラマがどういうラストを迎えるか分からない。
でも、間違いなく常盤貴子は生還すると思う。
常盤貴子(役名・三崎結花=ゆうちゃん)が生還し、
かつて教え子だった妻夫木聡との約束を守る。
それが未来を作る第一歩でもあると思うからだ。

役割は違っても、
あるいはTV用に男女の恋愛をからめても 、
核となるメッセージを伝えることができれば
原作を踏みにじることにはならないと思うんだけどなあ。

ドラマはやっぱり
常盤貴子と窪塚洋介の関係をメインに描いていくと思う。
ただ、当分はラブストーリーのドラマに出ない
と言っていた常盤貴子と窪塚洋介が
なぜこの作品の出演を引き受けたのか。

おそらくその意味は、このドラマを
最後まで冷静に見た人じゃないと分からないと思う。

             採点  8.5(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第2話

演出:水田成英
脚本:大森美香

ドラマでも実際に漂流させた以上、
どうしても避けられない問題が…。
それは人間の動揺や混乱、
パニックになった時の感情表現だ。

これがどうにも日本人は苦手らしい。
必ずバタバタとした大袈裟な演技になって、
声の出し方も画一的になる。

ひとりの場合はまだいい。
演技のうまい人はそれなりにやれる。
ただ、集団でパニックになった時は
どうしてもセリフの掛け合いになるので
よほど緻密な演出プランと
役者同士のコンビネーションがなければ
リアリティのあるシーンは構築できない。

しかも今回は学校が舞台だ。
経験の浅い若い俳優が大半を占める。
ここがこのドラマの最大の弱点かもしれないな。

メッセージ性が強い作品になることは明らかだけど、
そのメッセージが素直に受け入れられるよう
危険性のある演出は避けた方がいい。

個人的には
もっと原作から離れてもいいと思うんだけどね。
どうなんだろう。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第3話

演出:武内英樹
脚本:大森美香

もっと原作から離れると思ったのに…。
いや、もちろん原作とは違うんだけど、
だいぶ予想からズレてる。

最後にメッセージが伝われば納得できるはず、
と思う反面、こういう回が続くとつらいな、個人的には。

原作を知っている人にも知らない人にも
毎回、楽しめる(?)作品にして欲しい。
原作を知らない人には、
今回の大杉漣の行動なんかは唐突すぎるんじゃないかな。

それにしても、
やっぱり香里奈は出てきたか。
(「カバチタレ」で山下智久の彼女役だった子)
そうでなくっちゃ。

すでにサービスカットに期待し始めてるオレがいる。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第4話

演出:木村達昭
脚本:大森美香

印象に残るセリフもある。
メッセージも伝わってくる。
ただ、このドラマには
芯となる一貫したトーンがない。

1・2話を演出した水田成英の責任かなあ。
ひとつひとつのパーツは美しくても
きちんと組み合わされないとパズルは完成しないのに。

ところで、
かおる(水川あさみ)の母親が
「金八」の本田先生(高畑淳子)だった。
とりあえず桜中学は漂流してないようだな(笑)

             採点  6.5(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第5話

演出:水田成英
脚本:大森美香

今回のトーンは良かった。
ていうか、個人的には
こういう雰囲気で統一して欲しかった。

一部の生徒の演技力には
目をつぶらなくてならないにしても
本質的なテーマは
今回のような作りの方が伝わると思う。

あと、CGも含めた光の処理の仕方が
向上したように感じるのは気のせいか。

このドラマは、
学校の外観などは横浜のロケ、
室内や屋上からの風景は渋谷ビデオスタジオ、
学校の外は伊豆大島の三原山
(裏砂漠と呼ばれているところ)
で撮影されているらしい。

つまり、校門を出入りするシーンなどは
校門だけを設営した伊豆大島でも撮影し、
校舎が映るカットは横浜のロケ地でも撮影する
というやり方で進めているはず。

当然、別の日に撮影をするので
光の当たり方が極端に違うと違和感があったのだ。
この辺が多少なりとも改善されていて
違和感がなくなっているのかもしれない。

いずれにしても
意欲的な作品であるだけに、
ドラマ全体としての統一感のなさが
もったい気がしてならない。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第6話

演出:武内英樹
脚本:大森美香

やっと安定してきた。
こうなると、2・3・4話あたりが
残念でならない。

もちろん、もっと狂気を見たかった
という人もいるだろうし、
常盤貴子と窪塚洋介の会話のトーンが
好きになれないという人もいるだろう。

でも、これはこれでいいと思う。
ていうか、TVドラマである以上、
かなりベターな選択だと思う。

なぜ西さん(赤咲伶奈)が
未来人(?)と一緒に出ていってしまったのか、
という大友(山下智久)の質問に対して、
我猛さん(鈴木えみ)が
“求められていたからではないでしょうか”
と言ったのは印象的。

今回はそういう描写が多かった。
漂流する前は自分の存在価値が分からない
誰からも必要とされていない
と感じていた生徒たちも、
この世界では必要とされている
自分のするべきことがある
と思うようになる。

もちろん、実際は漂流する前だって
存在価値はあったし、
必要としてくれる人はいたんだけど…

原作のモチーフをうまく利用して
このまま最後までいって欲しいところだ。

が、しかし、若原(中丸新将)が、
“あれはもはや人間ではない。
 人間は恐ろしい生き物になってしまった。
 いや、もともと恐ろしかったのだ。
 滅びる運命だったのだ”
などと言っていた。

やるの? あれを出すの?
どちらとも取れるセリフだなあ。
出さないで欲しい、個人的には。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第7話

演出:木村達昭
脚本:大森美香

浅海(窪塚洋介)が倒れてしまうと
セリフが生徒に多くまわってしまうので、
作品全体のクオリティーは下がらざるを得ない。

しかも今回は関谷(中島宏海)の反乱もあった。
演技力のアベレージが下がるとやっぱりツライな。

あと、メッセージをストレートに伝えすぎる気もする。
新聞見出しの映像までバックで流すと
かえって説教くさくなってしまうのに…。

どの程度のラインが適正なのか、
スタッフも意見が分かれてるのかな。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第8話

演出:水田成英
脚本:大森美香

原作でも子供たちが
歌を歌うシーンはあったはずだけど、
さすがにドラマでやると寒いなあ。

このへんが相変わらず
原作を気にしすぎているところ。
拳銃を空に向けて撃つだけでよかったのにね。

あと、やっぱりメッセージの出し方が
直接的すぎるというか、
中学生向けになってきたというか。

まあ、いいのか。
そういう世代が一番考えなきゃいけない
問題なのかもしれないし…。

我猛さん(鈴木えみ)が、
眉毛が消えかかっているのを指摘されて
慌ててるところが可愛かった(笑)

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第9話

演出:川村泰祐
脚本:大森美香

出だしで“ここまでのあらすじ”をやるなんて
思ったよりも視聴率が伸びない現れなんだろうか。
平均16%なら御の字だと思うけど。

で、今回のトーンは良かった。
始めての演出家なのによく分かってる。
やっぱり結花(常盤貴子)と浅海(窪塚洋介)の
会話がメインの方が安定するな。

図書室での2人の会話はとくに良かった。
浅海が“約束になりたい”と言ったけど、
おそらくこれがラストへの布石になると思う。
慰霊碑に結花の名前だけがないことから考えても。

ただ、出てきたねえ、蜘蛛人間らしきものが…。
あと2回しかないのにどうするんだろう?

せめてここから先は
テンションを下げないように突き進んで欲しい。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 第10話

演出:木村達昭
脚本:大森美香

まあ、蜘蛛人間に関するシーンは良しとしよう。
少しずつ小出しにしてきたから覚悟も出来てたし…。

未来で生きていくことに対する
心境の変化は多少あったものの、
今回はストーリー的に大した進展もなく、
最終回に向かう期待度はあまり上がらなかった。

ただ、もうこのドラマは
世間的にも最後はどうなるんだろう
という興味に集約されてしまっていると思う。
だから最終回の視聴率は
それなりに上がるだろうな。

もうそれだけで十分か。

             採点  6.5(10点満点平均6)





『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 最終話

演出:水田成英
脚本:大森美香

予想とはかなり違う最終回だった。
大きく裏切られたとは思わないけど、
決してベストな選択でもなかった感じ。

ラストカットで校門の前の砂漠が
緑に変わるシーンはもちろんあるべき内容。
あれがないと希望も何もなくなってしまう。
問題はそこまでの方法だ。

未来からの“ロング・ラブレター”は、
そのままの形ではないにしても
過去の人々の心に何かのキッカケを与え、
(浅海がすぐに結花へ電話したように)
未来は救われた。

ただ、未来の結花(常盤貴子)を
死なせてしまうくらいなら、
やはり結花だけ過去に返すべきだったのではないか?

そのことで校門の前の砂漠が緑に変わっても、
それは結花から過去に残った浅海(窪塚洋介)への
“ロング・ラブレター”になったのではないか?

うーん、まあ、そんなに議論するほどの
ドラマでもないかな(笑)

「漂流教室」を、
常盤貴子と窪塚洋介を主役にしてドラマ化する。
設定を小学校ではなく、高校にして
そこに恋愛の要素も入れる。
これは悪い企画ではなかった。

ただ、ハッキリ言ってしまえば
結果として中の下ぐらいの作品に
留まってしまった感じ。

おそらく制作スタッフは、
過去と未来ではなく、
原作とドラマの狭間に
迷い込んでしまったんだろう。

いろいろなものが中途半端で
原作を消化しきれず、
ドラマとしてのオリジナリティーも
色濃く出せなかった。

でも、作品のメッセージを
分かりやすく、繰り返し流したのは
ある意味、良かったのかもしれない。
これでメッセージも伝わりにくい内容だったら
本当に目も当てられない状態だったから。

このドラマを見た人の何人かが、
真剣にこのままではダメだと思って
何か行動に移すことができたら、
それでこのドラマを作った意味はあると思うしね。

それにしても、
これだけ優秀なスタッフを揃えても
必ず成功するとは限らないんだなあ。
つくづくドラマ作りの難しさを感じた。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.23(10点満点平均6)



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