タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『愛し君へ』  4/19〜
フジ系 月曜9時  期待度 ★★★★☆

映画化されて大ヒットした
さだまさし原作の「解夏」をドラマ化。
企画は映画と同時進行していたようで、
映画がヒットしたからドラマも、
というスタンスではなさそう。

原作や映画と違い、
視力を失ってしまう恋人を支える女性側の視点で描く。

映画では石田ゆり子が演じていたその女性役は菅野美穂。
研修医ということで医学知識があるという設定に変わっている。

ベーチェット病で視力を失う男性には大沢たかおではなく藤木直人。
こちらもカメラマン役ということで、
より視力を失うことが深刻な問題として影響する設定に変わる。

個人的に映画は不満点が多々あったので
このドラマ化に期待したい。




『愛し君へ』  第1話

企画・プロデュース:大多亮
プロデュース:矢吹東、関谷正征
協力プロデュース:杉尾敦弘
演出:水田成英
脚本:坂元裕二
原作:さだまさし「解夏」
音楽:藤原いくろう
主題歌:「生きとし生ける物へ」森山直太朗
挿入歌:「愛し君へ」森山直太朗
制作:フジテレビ
出演:菅野美穂、藤木直人、伊東美咲、玉木宏、時任三郎、泉谷しげる、
   八千草薫、森山未來、黒谷友香、入江雅人、矢島健一、はなわ、
   相武紗季、渡辺蘭、立川絵里、竹井洋介、岡田義徳、他

うーん、体裁良くデコレーションはしてるけど、
これは脚本にかなり問題あるんじゃないだろうか。
小手先のテクニックばかり鼻について
ほとんどストーリーにのめり込めなかった。

今期のフジはみんなそうだけど、
わざわざ俊介(藤木直人)の第一印象を
あそこまで悪くする必要ないのにな。
もう作為的すぎて出だしでヘコんだ。

さらには電話で引っ張り、カツ丼で引っ張り、
写真のファイルで引っ張り…。
もうちょっとテーマに魂を込めて欲しいなあ。

でもまあ、八千草薫の母親役は良かった。
後半になってからかな、盛り上がるのは。

             採点  6.5(10点満点平均6)





『愛し君へ』  第3話

演出:林徹
脚本:坂元裕二

第2話のビデオ録画を失敗した為、
公式HPでストーリーを補習。
全編に渡って詳しく書かれていたので
流れとしては続きを違和感なく見ることができた。

見終わった印象としては第1話と同じ。
表面的なセリフ、説明的なセリフばかりで、
内容に感動できるような仕上がりではなかった。

もちろんB級テイストではないので、
見た目のクオリティーはそれなりに維持している。
でも、この脚本はないよな。

今回は号泣の月9、とか言っていた大多亮は
本当にコレでいいと思ってるんだろうか?

             採点  6.0(10点満点平均6)




『愛し君へ』  第4話 涙の雨

演出:林徹
脚本:坂元裕二

クサイセリフも多々あったけど、
今回はうまくまとまっていた。

諒子(黒谷友香)を捨てキャラにせず、
丁寧に描いたのがその要因だと思う。
諒子の父(西岡徳馬)が俊介(藤木直人)に
頭を下げるシーンも悪くなかった。

ストーリー上、四季(菅野美穂)が
俊介を好きだと自覚するポイントは重要だったわけだけど、
今回のラスト持って行き方は自然で良かった。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『愛し君へ』  第5話 長崎へ

演出:水田成英
脚本:坂元裕二

海の使い方と、
それに絡んだ病院の廊下での四季(菅野美穂)、
俊介(藤木直人)、降谷(時任三郎)のシーンが良かった。

長崎へ舞台が移れば当然、海も出てくるだろうし、
そのブリッジとなる効果的なエピソードだったと思う。

ただ、まだ降谷のセリフなどは表面的なままで
グッと物語に入り込める作りではない。

八草薫が本格的に登場するであろう
次回以降の巻き開始に期待したい。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『愛し君へ』  第6話 君の街

演出:林徹
脚本:坂元裕二

八千草薫の出番が増えると
格段に深みが増した。

四季(菅野美穂)と並んで寝ながら
庭に植えた花の名前を思い出すシーンは最高だったし、
利也(岡田義徳)のお墓に
バスケットボールの結果を報告するシーンも良かった。

良枝(八千草薫)を相手に四季が
本当は俊介(藤木直人)に会いに来ただけかもしれない、
と告げたシーンも、
八千草薫がいたからこそ落ち着いた良いシーンになったと思う。

ただ、また舞台は東京に戻ってしまいそう。
この雰囲気を八千草薫抜きでも続けられるかどうかがカギか。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『愛し君へ』  第7話 愛とは後悔しないこと

演出:川村泰祐
脚本:坂元裕二

森山未來が良かった。
彼はやっぱりシリアス系の演技の方がいいな。

満雄(森山未來)の行動も含め、
エピソードそのものには今回も新鮮味はナシ。
ただ、森山未來が絡むシーンと
四季(菅野美穂)・俊介(藤木直人)のシーンは悪くなかった。

このドラマの菅野美穂はキレイだよな。

             採点  6.5(10点満点平均6)





『愛し君へ』  第8話

演出:水田成英
脚本:坂元裕二

鉄雄(泉谷しげる)の描き方は悪くなかった。
俊介(藤木直人)のベーチェット病について、
病名だけを聞く、自分で調べる、降谷(時任三郎)に確認する、
そして俊介本人から失明の可能性について聞く、
という流れにしたのが成功の要因だと思う。

四季(菅野美穂)を褒めてあげたいけど褒めてあげられない、
その父親の複雑な気持ちが丁寧に描けていたと思う。

ただ、それ以外の展開は何だかなあ。
これが大多亮が考える“韓流”なのか?
だとしたら明らかに分析を間違えてると思うけど…。

病院の子供たちが森山直太郎の「さくら」を歌い出した時も
見ていて崩れ落ちたな。
わざわざ視聴者を白けさせる作りにしているような気がしてならない。

             採点  6.5(10点満点平均6)





『愛し君へ』  第9話 母へ

演出:林徹
脚本:坂元裕二

諒子(黒谷友香)の再登場も
こういうポジションならOKか。

ただ、もう少しやわらかく描いてもよかったと思う。
病院で四季(菅野美穂)と話す時の腕組みはちょっとな。
せっかく4話で諒子のキャラを丁寧に描いたんだから、
諒子なりの気持ちを前面に出して
俊介(藤木直人)との復縁を望んだ方がよかった。

諒子の再登場で変化した俊介と四季の関係にしても、
お互いに子供を愛する
鉄雄(泉谷しげる)と良枝(八千草薫)の心理にしても、
両方の考え方が分かる描き方ができたのは
今回、最もポイントが高かった点。

四季が俊介を想う気持ちを、
降谷(時任三郎)が病院の子供たちに接する時の
四季の気持ちを例に出して
鉄雄に説明したシーンもなにげに良かった。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『愛し君へ』  第10話 衝撃

演出:林徹
脚本:坂元裕二

なんじゃそりゃ。
ラスト2回、多少は期待してたんだけど、
やっぱりダメそう。

もう感覚がズレてるとしか言いようがない妊娠ネタは
最終回を見てから評価するとして、
それ以外の部分も相当ひどかった。

こんな使い方で終わらせるなら
諒子(黒谷友香)を再登場させる意味はなかったし、
鉄雄(泉谷しげる)が俊介(藤木直人)に頭を下げるシーンも
今となっては冷めて見るしかなかった。

俊介が四季(菅野美穂)を想って身を引くというのは
この作品における重要な部分だと思うけど、
諒子を中途半端に使ったり、
死期が迫ってる史也(桑原成吾)の淡い恋心と絡ませたことで
かえって狙いが白々しくて感動できなかったし。

まあ、確かに今回はタイトル通り
「衝撃」的な終わり方ではあったな。
どちらかというと「笑撃」に近いけど…。

             採点  5.0(10点満点平均6)




『愛し君へ』  最終話 最後に見せてあげたいもの

演出:水田成英
脚本:坂元裕二

うーん、ギリギリセーフか?
妊娠ネタは俊介(藤木直人)が服用していた薬のため
出産そのものにリスクがあった、という側面があって、
別の切り口も出た。

ただ、そこはあまり深く描かなかったし、
何より最終的に俊介が四季(菅野美穂)を受け入れたキッカケが
この出来事によるものだった、というのがちょっと…。
あれがなくても俊介自身が四季を求める姿が見たかった。

最終回としては四季が長崎へ行ってからの
良枝(八千草薫)と話すシーン、
海辺で俊介と話すシーン、
ホテルから実家へ電話をするシーンが良かった。
ここで持ち直した感じはあった。

結婚式のシーンは間延びしたけど、
最後はそれなりに締められたと思う。

この作品は小説、映画のあとのドラマ化だったわけだけど、
女性側を主人公にしたこと、
四季の家族も描いたこと、
四季が俊介のベーチェット病を知る時期と
四季・俊介がお互いの気持ちに気づくタイミングをほぼ同時にしたこと、
この企画は悪くなかった。

泉谷しげるの細かい演技力はとりあえず置いといて、
この無骨な父親の娘を想う気持ちはよく描けていたと思う。
八千草薫が演じた良枝と俊介の関係とともに、
2組の親子関係を描けたのはこのドラマの一番良い部分だった。

微妙だったのは、
四季と俊介がお互いの気持ちに気がつくタイミングにまつわる描き方。
愛する人がベーチェット病のような難病になってしまった場合、
それ以前から愛しあっていたかどうかは、
ドラマにする際、かなり重要だと思う。
同情か、愛か、という悩みの優先順位が違うと思うので。

だからこそ、このドラマでは諒子(黒谷友香)の存在は重要だった。
4話でその諒子の気持ちをかなり丁寧に描いたのに、
その後、安易な使い方をしたのはもったいなかった。

どうするのが正しいかどうかは別にして、
(人によって価値観が違うので正しいも間違ってるもないけど)
諒子と四季の関係において
この部分についてももっと対比させるべきだったと思う。
そこが弱かったのは非常に残念だった。

…まあ、そういう細かいことより、このドラマは全体的に
感動させようという作為的な箇所が目立ちすぎたのが最大の欠点だけどね。
それはプロットだけでなく、セリフにも現れていた。
だから本気で泣けるシーンはほとんどなかった。

ひとことで言えば志の問題かな。
放送前に大多亮が「今回は号泣の月9」とか言ってる時点で
ダメだったんだと思うけど。

ただ、菅野美穂は良かった。
ここ数年では一番と思えるくらい菅野美穂は良かった。
「オレンジデイズ」と同じように、
主役に救われた面は大いにある作品だった。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.45(10点満点平均6)



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