タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『高原へいらっしゃい』
 7/3〜
TBS系 木曜10時  期待度 ★★★★☆

27年前に故・田宮二郎が主演した
山田太一の名作をリメイク。

山田太一の作品がリメイクされるのは初めてで、
古くからのドラマファンは今期もっとも注目している作品のはず。
夕方に連日再放送されていたけど、
やっぱり山田太一のドラマは今見てもすごくて、
どうリメイクされるのか期待大だ。

ただ基本的にストーリーは変わらないようだけど、
今回、脚本は別の人(前川洋一)が書く。
時代的な背景も違うので、
どこまで前作の良さを残せるか、
見てみないと分からない部分も多い。
いずれにしても注目してみよう。

田宮二郎が演じていた主役の支配人は佐藤浩市。

他には
三田佳子→余貴美子
前田吟→西村雅彦
由美かおる→井川遥
池波志乃→市川実和子
益田喜頓→菅原文太

というキャストに代わる模様。





『高原へいらっしゃい』  第一話

プロデュース:志村彰、次屋尚
原作:山田太一
演出:今井和久
脚本:前川洋一
音楽:羽毛田丈史
主題歌:「forgiveness」浜崎あゆみ
制作:MMJ、TBS
出演:佐藤浩市、西村雅彦、井川遥、菅原文太、余貴美子、竹脇無我、
   堀内健、市川実和子、平山広行、大山のぶ代、純名りさ、
   入江雅人、高知東生、平田満、他

ホテルは近代的なものにするのかと思ったら、
中のレイアウトは少し違うけど外は昔のままだった。

人物設定は変えてある部分も多い。
時代背景的なこともあって仕方ないんだけど、
おばちゃん(大山のぶ代)が若すぎるのは残念だった。
あんなに髪の毛が黒くなくてもいいのにな。

ちなみにオリジナルでは北林谷栄がやっていて
メチャクチャ可愛かったのだ。

純名りさも加わるようなので、
女性陣が華やかになるのはプラス要素。

本格的に転がり出す次回からに期待しよう。

             採点  6.0(10点満点平均6)



『高原へいらっしゃい』  第二話

演出:今井和久
脚本:前川洋一

うーん、結局、
今のドラマはこんな作りにしちゃうんだよな。
最後を感動的にみせるため、
必要以上に従業員たちの身勝手さを強調したり…。

そりゃ現代人はこんなもの、と言われたらそれまでだけど、
判で押したように描き方が同じなんだよ。

あと、社長(竹脇無我)が
ホテルは夏の間だけ営業して秋には売ると言っていたことも。

こういうエピソードを入れておかないと
間を待たせる自信がないんだろうな。

ストーリー的には
オリジナルでも重要な雑誌記者役だった杉浦直樹が
ホテル評論家として登場した。

これも全然ワクワクする展開じゃないけど、
もう少し我慢してみるか。

             採点  5.5(10点満点平均6)




『高原へいらっしゃい』  第三話

演出:吉田健
脚本:前川洋一

このホテルは人間が面白い、
と神崎(杉浦直樹)に言わせるのは別にかまわない。
でも、その人間の面白さを
前半のエピソードで描けているとは到底思えない。

小池(菅原文太)とさおり(井川遥)くらいだろう。
ここまで人物像が一貫して描かれているのは。

視聴率も一度も二桁を記録しないまま、
ついに6%台に。

さすがにこの作品を打ち切りにはしないと思うけど…

             採点  5.0(10点満点平均6)





『高原へいらっしゃい』  第四話

演出:吉田健
脚本:前川洋一

昔のお客さんがやってくるのは
オリジナルにもあったエピソード。
でもやっぱり今風に処理してしまった感じ。
このエピソードのテーマ自体は面白いんだけどね。

「高原へいらっしゃい」というタイトルを
パンフレットのコピーで使うやり方は
あまりにも軽すぎた。

             採点  5.5(10点満点平均6)





『高原へいらっしゃい』  第五話

演出:今井和久
脚本:吉本昌弘

やっぱりあっさりと
面川(佐藤浩市)と祐子(余貴美子)を
会わせちゃうのか。

オリジナルでは
面川が苦しくて苦しくて
つい奥さんに会いに行ってしまったところを
奥さんが泣いて追い返すシーンが最高に感動的だったのに…。

あと、せっかく大自然の中のホテルが舞台なのに
明らかにCGの八ヶ岳が後に出てくると萎える。
技術の発達もむしろドラマをダメにしている要因かもな。

でも今回、内容的には悪くなかった。
団体客を初めて取るエピソードはオリジナルでもあったけど、
これはむしろこちらの方がうまく処理したかもしれない。

で、テロップを見たらやっぱり脚本家が違っていた。
従業員たちが自ら団体客を受け入れたいと動いた時、
面川が君たちもオーバーブッキングする可能性はあったんだと、
一言、注意するシーンなんか丁寧だったもんな。

前川洋一ではなく、
吉本昌弘の脚本でしばらく見たい。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『高原へいらっしゃい』  第六話

演出:今井和久
脚本:前川洋一

また軽くなっちゃった。
堀内健の演技力は今さら言っても仕方ないけど、
セリフだけで石塚(堀内健)は一生懸命やってるとか
ホテルを愛してるとか言っても、
それが伝わる描写をしてない。

最後、清美(榎本加奈子)に
“このホテルで披露宴をしてよかった”と言わせても
どこがよかったんだか分からないし。

だいだい清美がなぜあの男と結婚しようと思ったのか、
もう少し新郎のキャラを描かないと
ストーリー自体が完結しないんじゃないの?

いくらなんでも脚本が酷すぎた。

             採点  4.5(10点満点平均6)




『高原へいらっしゃい』  第七話

演出:吉田健
脚本:吉本昌宏

やっぱり脚本は吉本昌宏が書いた方がいい。
ここまでハッキリすると、
メイン脚本が違っていれば
このドラマの印象もだいぶ変わっていたかもしれない。
ま、今さら言ってもしょうがないけどね。

ただ、やっぱり設定として、
オリジナルが冬の終わりから夏にかけての話だったのに
今回は夏から秋に向けての話になったことが大きく影響している。
つまり、オリジナルは大半がお客がいない状態だったのに、
今回はすでに満室の日もあるという状況なわけだ。

そうなると若月(西村雅彦)のピリピリしているキャラに
どうしても違和感を覚えてしまう。
たとえ従業員がミスをしたとしても
食堂で副支配人が大声で怒鳴るっていうのはなあ。

オンエアの日程上、夏の話にするのなら
むしろ若月のキャラを変える工夫が必要だったんじゃないだろうか。
まあ、これも今さら言ってもしょうがないけど(笑)

             採点  6.0(10点満点平均6)




『高原へいらっしゃい』  第八話

演出:吉田健
脚本:前川洋一、吉本昌宏

八千草薫の品の良さは
何年経っても衰えないなあ。
とくに今回は大自然の中で、
あるいは静かなホテルの中での佇まいが大半だったので、
その存在感には格別なものがあった。

オリジナルの料理長引き抜きエピソードとは
ずいぶん違う展開だったけど、
この八千草薫の好演もあって見ごたえはあった。

ただ、やっぱり水島女史(八千草薫)が
八ヶ岳高原ホテルを良いホテルだと思うエピソードなどに
深みがなかったのは残念。

ホテル売却の話はそれなりにうまく引っ張っているので、
もっとジワッと本当に良いホテルだなあ、
と思えるようなエピソードを入れて欲しかった。

このドラマの良い部分と悪い部分が両方出た回だったので、
最後のスタッフロールで脚本家の名前が連名になっているのを見て
思わず笑ってしまった。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『高原へいらっしゃい』  第九話

演出:本多繁勝
脚本:奥寺佐渡子

3人目の演出家と脚本家。
つってもあと1回になっちゃったけど。

面川(佐藤浩市)が東京で奥さん(余貴美子)に会ったシーンで、
面川が8人でここまで頑張ってきたと言った時に
“8人?”と奥さんが聞き返したセリフは良かった。

いや、良かったんだけど、
このセリフが活きるような物語を
序盤に前川洋一が書いてないのが問題なんだよな。

あと、最後に小池(菅原文太)が
“ひとりも欠けちゃダメだよ”と
面川自身にクギを差したセリフも良かった。
これは最終回に活きるはず。

…で、最終回は誰が書くんだ?
前川洋一だろうなあ(笑)

             採点  5.5(10点満点平均6)





『高原へいらっしゃい』  最終回スペシャル

演出:今井和久
脚本:吉本昌宏

脚本は吉本昌宏だった。
でも物語を終わらせるのに精一杯で
中身はないに等しかった。

結局、作為的に盛り込んだホテルの売却問題が
最後には足かせになってしまった感じ。

オリジナルにはもちろんこんな話はなくて、
最後に無事ホテルを建て直したところで終わる。

今回、石塚(堀内健)が久美(市川実和子)と間違えて
小池(菅原文太)に告白してしまうシーンがあったけど、
オリジナルでは面川が東京へ奥さんを迎えに行く場面で
間違えてシャワーを浴びている父親(社長)に
戻ってきてくれと懇願してしまうという
実に微笑ましいシーンだったのだ。

オリジナルではこの面川自身の再生が大きな軸になっていたので、
“高原へいらっしゃい”というタイトルは
面川の奥さんに対するメッセージにもなっていた。

このあたりの心の襞まで描くことができなかったことが
このリメイクの大きな失敗だった思う。

脚本家の力量を山田太一と比べては可哀想だけど、
過去の名作をリメイクするなら
もう少し優秀なスタッフで挑戦して欲しかったな。

もし脚本家を目指している人がいたら
この作品のオリジナルとリメイク版を両方書き起こしてみると
かなり勉強になるかもしれない。

             採点  4.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★☆☆☆
                  主題歌 ★★☆☆☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  5.50(10点満点平均6)








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