タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『恋文・私たちが愛した男』
 10/8〜
TBS系 水曜10時  期待度 ★★★☆☆

連城三紀彦の直木賞作品を岡田惠和の脚本でドラマ化。
ひと組の夫婦と元恋人の不思議な三角関係を描く。

18年前に映画化された時は
萩原健一、倍賞美津子、高橋恵子だったが、
今回のドラマ版は渡部篤郎、水野美紀、和久井映見が演じる。

上質の大人向けの恋愛ドラマだけど、
視聴率が伴うかどうかは疑問。
渡部篤郎がやりすぎないことを望む。



『恋文』  第一話

プロデューサー:橋本孝、瀬戸口克陽
演出:新城毅彦
脚本:岡田惠和
原作:連城三紀彦「恋文」
音楽:REMEDIOS
主題歌「柊」Do As Infinity
イメージソング:「In My Life」THE BEATLES
制作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
出演:渡部篤郎、水野美紀、和久井映見、寺尾聰、いしだあゆみ、
   要潤、国分佐智子、能世あんな、泉澤祐希、他

これは相当丁寧に作ってある。
脚本も演出も細部にまでこだわっていて
じっくりと堪能できる感じ。
(チャーハンをこぼすシーンだけは良くなかった)

中でも将一(渡部篤郎)がガラス窓に
散っていく桜の花びらを描くシーン、
病室での、将一、江津子(和久井映見)、
美木子(いしだあゆみ)のシーンがとくに良かった。

ストーリー的に初回からこのクオリティーなら
今後はさらに期待できるな。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『恋文』  第二話

演出:新城毅彦
脚本:岡田惠和

“オレさあ、最高の女と結婚してたんだなあ”
というセリフ以外はみんな良かった。
あそこだけだな、余計だったのは。

あとはほとんどムダなシーンがなくて
上質の仕上がりだった。
こういう視聴者に媚びない作りはいい。

岡田惠和は男性より女性の描き方の方がうまいのかな。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋文』  第三話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

3人それぞれの気持ちが繊細に描かれていて見ごたえは十分。
今回はとくに3人がバランス良く描かれていたと思う。

妙にリアルの子供(泉澤祐希)の反応とか、
すごい病人っぷりのいしだあゆみとか、
脇も固め方もいい。

どの人に感情移入しても考えながら見られるところが
この物語のいいところだな。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋文』  第四話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

ホントによくできた物語。
ただ、議論が分かれるとしたら
やっぱり渡部篤郎の演技だろうか。

ウエディングドレスを着た江津子(和久井映見)の
子供の頃の写真を見たあと、
喫茶店で郷子(水野美紀)に結婚式の話をする流れはすごくいいのに、
個人的には渡部篤郎の演技で後半冷めてしまった。

あと、将一(渡部篤郎)のキャラクターを示す描写も。
弁当を食べながらご飯粒をこぼすようなシーンは
安直すぎるような気がする。

…いや、それでもいい作品なんだけど。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋文』  第五話

演出:新城毅彦
脚本:岡田惠和

江津子(和久井映見)に関しては
ホントにわずかなセリフで微妙な心情を表してる。

郷子(水野美紀)に対しては自分の我を通そうと思えても、
子供(泉澤祐希)の顔を見てしまうとね。
“私は…、私は…”と泣きながら自分を責める江津子の姿が
あまりにも哀しかった。

子供の行動は確かに出来すぎ。
でもこれは大人の愛の物語だから問題ナシ。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋文』  第六話

演出:新城毅彦
脚本:岡田惠和

あら、将一(渡部篤郎)も一緒に聞いちゃうのか。
これは意外に大きなターニングポイントかも。

あとはドラマオリジナルの登場人物である
美木子(いしだあゆみ)と計作(寺尾聰)が
どう絡んでくるかだな。

今回の見どころは何と言っても
郷子(水野美紀)が将一に自分の絵を描かせるシーン。
水野美紀の号泣も、
それを受ける渡部篤郎も良かった。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋文』  第七話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

ああ、美木子(いしだあゆみ)と計作(寺尾聰)って
「ピエロ」の美木子と計作か。
今になって気がついた。
そうなると次回がちょっと楽しみになってきたな。

そこはまあいいとして、
やっぱり将一(渡部篤郎)が郷子(水野美紀)と同時に
江津子(和久井映見)がすべてを知っていることを聞いてしまったのは、
ずいぶん雰囲気を変えてしまったんじゃないかなあ。

あと3回あるので
そのあたりをどう処理するのかに注目だ。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『恋文』  第八話

演出:新城毅彦
脚本:岡田惠和

いしだあゆみ、スゴイ。
死ぬ直前の演技というのは
今までいろんな人がやってきたと思うけど、
間違いなくこれはトップクラスだったと思う。

そして「ピエロ」をこういう風に
「恋文」に取り入れた岡田惠和もスゴイ。

江津子(和久井映見)に死を実感させる効果だけでなく、
美木子(いしだあゆみ)と計作(寺尾聰)が交わした
“おかえり”“ただいま”は、
このドラマのラストへ向けての
大きな伏線になっていると思うし。

美木子と計作のエピソードが
サブストーリーだったということもあって、
前半、本人たちの心情を自分たちで語らざるを得なかったのは
ちょっと残念だった。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋文』  第九話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

子供に先に言ったか。
“インチキじゃん”はいいセリフだったなあ。
今回、この優(泉澤祐希)の心情まで繊細に描いた部分が
やたら良かった。

計作(寺尾聰)とのシーンもね。
もうワケ分かんなかっただろうけど、
ちょっとだけ大人になったんだよね、優は。
ホントにいい男だよ、優も計作も。

で、前回の計作と美木子(いしだあゆみ)のエピソードを挟んで
江津子(和久井映見)に死を実感さえ、
そこから結婚式まで持っていった展開は見事だった。

“うそをホントにする”
“後悔しないように自分が納得する”方法を選択する。
この部分を実に説得力のある展開で描いたと思う。

郷子(水野美紀)と江津子の会話に関しては
“ここから先は友達として言うね”というセリフが効いていた。

感情移入できないという人も、もちろんいると思う。
でも人間の多面性を静かに描いた丁寧なシーンだった。

いよいよ最終回。
もうクオリティーが落ちる心配はない。
どんなラストシーンにするのか興味津々だ。

             採点  8.0(10点満点平均6)




『恋文』  最終話

演出:新城毅彦
脚本:岡田惠和

やっぱり将一(渡部篤郎)が戻ったかどうかを
視聴者に想像させる終わり方ではなく、
ハッキリ戻ったと分かる締め方だった。

そこに説得力を持たせたのが
計作(寺尾聰)と美木子(いしだあゆみ)の存在。
あの8話の“おかえり”“ただいま”と、
この最終回の計作と将一の会話で、
そういう選択もアリ、と思わせた。

別の原作の主人公をここまで食い込ませて
なおかつ、自然な流れで描いた岡田惠和の力量は
さすがだとしか言いようがない。

小説、映画、そしてこの連ドラ化だったわけだけど、
完全に岡田惠和版「恋文」になっていたと思う。
本当に見事だった。

まあ、個人的な好みで言うと、
ラストカットは交番の中にいる将一を見て
郷子(水野美紀)が泣き出す所で止めて欲しかったけどね。

キャストロールのトップが渡部篤郎だから
水野美紀の顔で終わるわけにはいかないことも、
主題歌は「柊」だから最後も「柊」が流れることも分かってたけど、
もしあそこで映像が止まって「In My Life」のイントロが流れてたら
たぶん「NEWS23」が始まるまで泣いてただろうな(笑)

ついでにマイナス点を挙げるとすると
やっぱり若林(要潤)と石塚(国分佐智子)の動かし方か。
でもこれはカットされた部分もありそうだなあ。
予告にあって本編にはないシーンもあったし。

将一、郷子、江津子(和久井映見)、
計作、美木子のシーンが切れなかったので
ここを切ったのだとしたら、
それは間違いなく正解なので良しとしよう。

いしだあゆみ、寺尾聰がベテランの味を見せる中、
渡部篤郎も最後は良かった。
江津子(和久井映見)が死ぬ直前、
病室から出ていく逆光のシーンはとくに良かった。

水野美紀のしっかり者の女房でありながら
女性の繊細さも感じさせた演技も見事。
対将一、対江津子の側面だけでなく、
対子供(泉澤祐希)という表情もきちんと捉えていたのは
演出と合わせて丁寧だったと思う。

そして和久井映見。
死期が迫っている役にしてはポッチャリしすぎていた、
という指摘は確かにあると思う。
でも、将一と郷子が夫婦であると知りながら
自分のわがままを通して2人と会っていた前半の演技などは
本当にきめ細かくて見ごたえがあった。

この役はヘタをするとものすごくイヤな女に映るはずなので、
そこを透明感ある女性として演じたのはさすがだったと思う。

直木賞受賞作という多くの人が知っているストーリーを
映像化しているにも関わらず、飽きさせることなく、
脚本、演出、役者の演技が高い水準でかみ合った
上質のドラマだった。

             採点  8.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★★
                  演出  ★★★★★
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  7.50(10点満点平均6)





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