タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『恋ノチカラ』 

1/10〜 フジ系 木曜10時 期待度 ★★★★☆

石原隆が企画する共同テレビ制作の作品。
要するに「やまとなでしこ」「スタアの恋」の路線。

30歳を迎えた女性が
仲間との会社立ち上げを通して
恋に仕事に奮闘する。

出演は
深津絵里、堤真一、西村雅彦、
矢田亜希子、坂口憲二、他

このクールにおいては
かなりの安全パイと言っていい。


『恋ノチカラ』 第1話

企画:石原隆、鈴木吉弘
プロデュース:船津浩一
主題歌:「キラキラ」小田和正
音楽:住友紀人
演出:若松節朗
脚本:相沢友子
制作:フジテレビ、共同テレビ
出演:深津絵里、堤真一、坂口憲二、矢田亜希子、西村雅彦、久我陽子、
   猫背椿、菅原禄弥、長谷川初範、志賀廣太郎、東根作寿英、他

なんで今、広告業界なんだろう、とか
そもそもあの缶コーヒーのデザインは
本当にカッコイイんだろうか、
みたいなことは
この際、考えないことにするけど…

かなり期待していたせいもあって
正直なところ普通だったな。
これだけのスタッフ・キャストを揃えて
この初回以下の出来だったらおおごとだ。

まあ、基本的にはラブストーリーということだから
とりあえず状況説明の第1話で
ゴチャゴチャ言うのはやめよう。

キャストで注目なのは菅原禄弥…。
(注目してるのはオレだけかもしれないけど)
「太陽は沈まない」で重要な目撃者となった
看護婦さんをやってた人ね。

この人、出てくるたびに雰囲気が違って、
やたら気になる。
今回は矢田亜希子の友達として
かなりキャピキャピの役で出てきた。
個人的に見守っていこう(笑)

作品全体としては2話以降に期待。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第2話

演出:若松節朗
脚本:相沢友子

前回よりはだいぶ良かった。
せめて今回くらい笑えるシーンがあると
全体のメリハリがハッキリするな。

貫井(堤真一)のキャラも
今回でかなり分かってきたので
ドラマ全体の方向性も明確になった。
初回で消化不良だった部分は
これでずいぶん解消されたのではないだろうか。

気になるのはやっぱり
三十路を過ぎたら仕事にも恋にも
アセるのは当然という描写が多いこと。

もちろん、そういう前提で
このドラマは作られているわけだけど、
出てくる女性すべてがそう思っているところに
やや時代遅れの印象を持ってしまう。

いや、時代遅れというのとは違うな。
確かにそういうアセリは現代の30代も抱くのだろうけど
悩みの方向性がもっと分散してるような気がする。
ま、オレは女じゃないから
本当のところは分からないんだけど…

キャストでは、
今回も矢田亜希子がいい役もらってるな。
貫井と2人で外で会っている時と
籐子(深津絵里)と家でいる時の違いなんか
本人もうまく演じてると思う。

早く主役を張って欲しいと思う反面、
こういうポジションでこそ活きる女優かな、
という気もする。

矢田亜希子も本格的にからんできた
次回以降の恋物語に期待だな。


            採点  7.0(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第3話

演出:村上正典
脚本:相沢友子

笑いとシリアス、仕事と恋愛、
すべてのバランスが良くて、
やっと納得できる内容になった。

演出が今回は村上正典だったけど
終盤のスロー・ストップモーションの使い方は
かなり効果的だったんじゃないだろうか。
こういうテイストで最後までいって欲しい。

それにしても矢田亜希子って
いつもこういう役だな。可哀想に。

で、どうしても気になるのが
貫井(堤真一)のデザイン。
缶コーヒーのデザインも疑問だったけど、
あのポスター案も本当にいいのか?

こうなるとそこが残念で仕方ない。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第4話

演出:村上正典
脚本:相沢友子

このドラマはもちろん
深津絵里だけの作品ではないけど、
時折見せる彼女の表情は抜群にいい。

恋を描いている部分に関してはとくに、
この深津絵里の表情が大きな芯になっている。
いい女優になったよなあ。

今回、恋の部分で言えば
企画書が通ったのは自分の力ではないことを、
春菜(矢田亜希子)がすぐ貫井(堤真一)に
告げた展開が良かった。

こういうところでまどろっこしくなると
見ていてイライラすんだよね、個人的には。

仕事の部分に関しては、
クリエイティブな業界のストーリーに
営業面の要素も丁寧に入れたところがいい。

楠木文具の問題が最後の電話で
あっさり片づいてしまうのは出来過ぎだけど、
見ていて気持ちのいい構成だった。

それにしても
やたら怒っていた楠木文具の社長、
いつか“詳しくはホームページで!”と
言い出すような気がしてハラハラした。
(KDDIのCMで永瀬正敏の父親役をやっている人)

笑いも大切だけど、
そういう笑いはくれぐれも狙わないよーに。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第5話

演出:若松節朗
脚本:相沢友子

デパートでサボっていたようにみえた吉武(西村雅彦)が
実はちゃんと仕事をしていた、
という展開はありきたりだったけど、
それ以外の吉武の言動は
貫井企画における彼のキャラを明確にしていて
いい流れだったと思う。

広小路製薬の仕事内容をハッキリ見せなかったのは正解。
やっぱりトップクリエーターという設定なんだから
大多数の人がいいと思える内容じゃない限り
あまり詳しく見せない方がいいだろうな。

貫井(堤真一)のキャラクターを
春菜(矢田亜希子)と籐子(深津絵里)の前で
極端に違えてみせている点は丁寧。
当然、籐子の前でみせる貫井が本当の貫井であって
これは今後の展開に説得力を持たせてくるはずだ。

それと今回は演出が光った。
少し前のトレンディードラマっぽい作りもあったけど、
最後の貫井と春菜のキスシーンの合間に
マンガを読みながら電車を待つ籐子のカットを
入れるあたりは秀逸だった。

このドラマ、
もう完全に安定期に入ったかな。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第6話

演出:村上正典
脚本:相沢友子

広小路製薬の商品の中に
「やまとなでしこ」なんてものが…(笑)
やっぱり籐子(深津絵里)の元彼、
春菜(矢田亜希子)の兄はあの人か?

そんな広小路製薬のイベント話が中心だった今回、
出来は悪くないけど、もの足りなさもあった。
密度が薄いって感じかな。

イベントに関する描写が
風船を上げることのみだったので
貫井企画としての仕事の大きさが分からなかった。
木村(坂口憲二)が彼女(久我陽子)に
会いに行けないまま
その後の経過がこの回で説明されなかった。
などが理由か。

最後の、
貫井(堤真一)と籐子がはしゃぐ姿を
春菜が寂しそうに見るカットは良かったけどね。

とりあえず無難にまとめた回でした。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第7話

演出:若松節朗
脚本:相沢友子

壮吾(坂口憲二)が想い出のデートについて
語るシーンはなぜか泣けたなあ。
坂口憲二は本当に成長してる。

その後、壮吾が籐子(深津絵里)を
犬と同じ扱いで抱きしめ、
(籐子にワンワンとまで言わす・笑)
きちんと笑いを取るあたりが
このドラマのバランスのいいところ。

このシーンも含め、
籐子の貫井企画における存在を
他の3人にそれぞれ印象づける構成も見事だった。

ただ、もっと深く話に食い込んでくると思われた
香里(久我陽子)の描き方が淡泊で、
壮吾が一途になって当然と思える展開に
ならなかった点が不満。

それとやっぱり見せるしかなかった
貫井が作ったリゾート会社の最初のポスター案。
あれはダメでしょ。
沖縄の海の写真の下に
緑のぶっといライン入れちゃあ。

もちろん、ストリーとしては
どのみち却下される流れなんだけど、
貫井がトップクリエーターに思えない描写は
見ていてマイナスイメージだな。

とは言っても
全体的にはかなり上質な作り。
だからこそ惜しい部分が目につくだけで…

真季(猫背椿)にイジメられる春菜(矢田亜希子)が
恒例になりつつあるところもいい。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第8話

演出:村上正典
脚本:相沢友子

前回は壮吾(坂口憲二)が好きだった女性の話を絡めながら
貫井(堤真一)、壮吾、吉武(西村雅彦)にとって
籐子(深津絵里)がどういう存在であるか、
を描いたストーリー。

そして今回は、籐子の元カレの話を絡めながら
籐子にとって貫井企画がどういう存在であるか、
を描いたストーリーだった。

誰かに必要とされているからではなく、
自分がそこにいたいからいる。

自分の好きな場所で、
自分の好きな人と、
自分の好きなように生きていく。

このあたりのメッセージは
30代の仕事と恋愛を描いている作品だけあって
地に足がついている印象を受けた。

そして再び出てきた
“後悔する人間はどんな答えを選んでも後悔する”
というフレーズ。

これも30代に向けての重要なメッセージになっている。
自分の考えに責任を持ち、
自分の出した結論には
後悔しないように最後まで全力を尽くす。
若い頃はまだ時間があると思って
テキトーに結論出すからなあ(笑)

ところで前回の香里(久我陽子)に続いて
今回の籐子の元カレ、谷原章介も
アッサリとした描き方だった。

だったらやっぱり東幹久でもよかったのに…
とも思ったけど、まあいっか。

籐子と貫井にとって
最大の壁は何といっても春菜ちゃん(矢田亜希子)。
いや、日本中の30代女性にとって
最大の難関はいつも春菜ちゃんなのだ(笑)

ここを丁寧に描いてくれればそれでいい。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第9話

演出:村谷嘉則
脚本:相沢友子

籐子(深津絵里)と貫井(堤真一)の関係を
深める重要な回、ではあったんだけど、
前振りとなる仕事がらみの話がありきたりすぎた。

ただ、ドラマを作る上で、
このあたりの問題は難しいと思う。

もしこれが完全なお仕事ドラマだったら
広告業界のしがらみを詳しく描いても作品にできるけど、
モチーフのひとつに過ぎない場合は、
中途半端に込み入った話を展開させると
見ている側が混乱することもある。
…無難な落とし所だったのかな。

春菜(矢田亜希子)の描き方は相変わらず丁寧。
イヤなタイプに描くのは簡単だけど、
春菜もひとりの恋する女性として確立させつつ
籐子と貫井の関係を深めていくあたりがいい。

それにしても、九十九出版のパーティーが
「キラ☆キラ」の創刊記念パーティーだったとは…
そりゃ出席しないとマズいよな(笑)
(小田和正の主題歌が「キラキラ」)

             採点  7.0(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 第10話

演出:村上正典
脚本:相沢友子

ここまでバランス良く仕事と恋を描いてきたから、
貫井(堤真一)を完全に
好きになってしまった籐子(深津絵里)が
貫井企画を辞め、
春菜(矢田亜希子)との同居も解消する
という選択には説得力があった。

そして、その決断をした籐子が
真季(猫背椿)と2人で飲むシーンがまた良かった。
まあ、真季に説明っぽいセリフは言わせず
最後まで黙って飲む方がもっと良かったけどね。

あとはやっぱり深津絵里の演技力。
最後に貫井の椅子に座って
微笑みながら涙を流すシーンは圧巻だった。

内心、2人を応援したい気持ちでいっぱいの
壮吾(坂口憲二)と吉武(西村雅彦)。
今までいい子過ぎた春菜が
貫井だけは譲れないと宣言した気持ち。

状況としては最高の状態で
最終回を迎えられたのではないだろうか。

…ただ、
やっぱりあのエンピツは
大ヒットはしないよねえ?
それなりに可愛いかったけどさあ。

そのあたりには
最後まで目をつぶるしかないみたいだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『恋ノチカラ』 最終話

演出:若松節朗
脚本:相沢友子

うーん、結果的に仕事も恋も
うまくいく展開は当然として、
もう少し別の描き方はなかったのかなあ。
悪くはないけど、すごくいいドラマを見た
という後味があまり残らない締め方だった。

たぶん、籐子(深津絵里)が
いろいろな会社の面接に落ちたり、
見合い相手にフラれたりする
前半の描き方がつまらなかったんだろうな。

30歳を過ぎて資格もないと就職するのは大変とか、
打算でお見合いをしようとしてもうまくいかないとか、
そんなことではなくて、
籐子が貫井(堤真一)を忘れようとしても
なかなか忘れられない苦しさや、
貫井企画のような場所で働きたいという気持ちを
もっとハッキリ描いて欲しかった。

貫井の方の気持ちの揺れは
かなり描かれていたので、
余計にそう思ってしまう。

貫井側に関して言えば、
春菜(矢田亜希子)との別れのシーンは良かった。
最後だけ本音を言ってしまった貫井と
そのことに激しく怒った春菜。
この2人の関係に終止符を打つには
説得力のあるシーンだったと思う。

マズかった点は、
エンピツネズミが売れる時の描写もそう。

小さな商店から火がつくのはいいとしても、
人を押しのけてまで買うようなものではない。
もっと貫井たちの広告効果を表すような描写を入れて
静かに描いてもよかったんじゃないだろうか。

深津絵里と堤真一の演技は最後まで良かっただけに
そのザツな締め括り方はちょっと残念だった。

…とはいっても、
作品全体としてはかなり上質の出来。
確かに役者の貢献度が高かったのは事実だけど、
3話以降は恋と仕事の描き方のバランスも良くて
かなり楽しめた。

女優・深津絵里の評価は
この作品でさらに上がったと思う。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.18(10点満点平均6)



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