タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『マンハッタンラブストーリー』 10/9〜
TBS系 木曜10時 期待度 ★★★★★宮藤官九郎のほろ苦い大人のラブストーリー。
喫茶店を舞台にした物語で、
AがBを、BがCを、CはDを…、というように
登場人物が連鎖的に恋をしていくらしい。喫茶店のマスターに松岡昌宏。
常連客には小泉今日子、及川光博、森下愛子、
酒井若菜、塚本高史、松尾スズキなど。「ぼくの魔法使い」では井川遥が本人役で出演したが、
今回は船越英一郎が本人役で出る。クドカンらしい笑えるラブストーリーに期待したい。
『マンハッタンラブストーリー』 Aプロデュース:磯山晶
演出:土井裕泰
脚本:宮藤官九郎
音楽プロデュース:志田博英
音楽:佐藤直紀
主題歌:「ラブラブ・マンハッタン」TOKIO
制作:TBSエンターテイメント、TBS
出演:松岡昌宏、小泉今日子、森下愛子、及川光博、酒井若菜、塚本高史、
松尾スズキ、船越英一郎、尾美としのり、遠山景織子、他連ドラの初回としてはどうなんだろう。
恋愛がループする企画なので、
最終回まで見ると
この一話につながる構成なのかもしれないけど、
入り込みにくかったことは確かだな。別所(及川光博)がタクシーのドアに手を挟むシーン以降の
赤羽(小泉今日子)の心理は分かるけど、
なぜ最初に赤羽が別所に興味を持ったのかが
よく分からなかったし…。あと、ほとんどしゃべらないと言われていた松岡昌宏は
結局、ずっと心の声を語っているという仕組みだった。それ自体は別に悪くないんだけど、
セリフの量が多すぎてせわしなかった。
ここまで多いとかえって笑いは取りにくいと思うんだけどな。まあ、企画自体は面白いと思うから
もう少し様子を見てみるか。ちなみに回数表示の「A」は
今回の主役、赤羽伸子の頭文字。
次回は別所秀樹の「B」、
その次は千倉真紀(森下愛子)の「C」、
以降、土井垣智(松尾スズキ)の「D」、
江本(酒井若菜)の「E」、
船越英一郎の「F」、
蒲生忍(塚本高史)の「G」と続く模様。順番に好きになるということは、
船越英一郎は…!?ま、いっか。
採点 6.0(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 B演出:片山修
脚本:宮藤官九郎今回は面白かった。
A→B→Cと人がつながっていって
メインの2人以外にも
ストーリーに絡める人物が増えてきたこと、
赤羽(小泉今日子)の回想シーンや
「軽井沢まで迎えにいらっしゃい」の映像で
ランニングギャグが使えるようになったこと、
などが大きい。あと、予想以上に尾美としのりが良かった。
小泉今日子も今回はハジケてたけど、
尾美としのりの急変は面白かったな。この調子でD、E、Fとつながっていけば
どんどん面白くなりそう。採点 7.0(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 C演出:土井裕泰
脚本:宮藤官九郎店長(松岡昌宏)の心の声もうまく転がってきて、
安定した面白さが出てきた。ランニングギャグ系では
赤羽(小泉今日子)の回想シーンだけでなく、
千倉(森下愛子)の回想シーンでも
猫背椿が出てきたところが個人的にツボだったな。そして今回、今後を占う大事な場面が…!
Fがそのまま素直に船越英一郎になるかどうかは別にして、
E(江本しおり・酒井若菜)→F→G(蒲生忍・塚本高史)とつながれば
男女の並びはおかしくなる。当初、Fの嗜好がマイノリティーなのか、とも思ったけど、
どうやら忍くんが本当は忍ちゃんのようだ?そうなると店長にも素直に戻れるわけで…。まあ、このへんの予想はどうでもいっか。
今回の赤羽とベッキー(及川光博)の橋の上でのシーンのように、
単なる言葉遊びだけでない良いセリフもいっぱいある。
会話劇としても楽しもう。採点 7.5(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 D演出:片山修
脚本:宮藤官九郎土井垣(松尾スズキ)がなぜモテるか、
というネタと店長(松岡昌宏)の考察は面白かった。
あと、赤羽(小泉今日子)とベッシー(及川光博)が過ごした
緊張感あふれる一夜のシーンとか。A→B→C→Dという単純な一方通行の流れだけでなく、
それぞれが迷ったり、思い直したりしてるところもいい。
もちろんD´(土井垣春子=YOU)の存在も大きいし。さあ、いよいよ仕掛けがありそうな、E、F、G。
全11話の予定なので、
H以降のネタも気になる。後半への期待度は、
「共犯者」とコレが最も高いな。採点 7.5(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 E演出:土井裕泰
脚本:宮藤官九郎抜群に面白くなってきた。
テンポのいい笑い所だけでなく、
ストーリーでも引っ張れてるし。江本(酒井若菜)は素直に
忍(塚本高史)が好きだと言ったけど、
Fはやっぱり船越英一郎のよう。ここはとくに片想いの連鎖と
回数表示の相関性はないのか…。それにしても途中で
蒲生ではなく蒲団ならFなのに、
とボケたのは最高だった。やっぱり最初から考えてたんだろうなあ。
すごいな、宮藤官九郎。採点 8.0(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 F・G演出:坪井敏雄
脚本:宮藤官九郎Fの回が約7分で終了!
そして引き続きGの回へ。
…その手があったか。江本(酒井若菜)が船越英一郎に惚れる理由も
みんなが船越に好意を持つ流れの中で惚れるという
コメディーとしては筋が通っていたものだった。今回はこれ以外にも
フェイクとしてHの原(平岩紙)を登場させたり、
忍(塚本高史)を説得する場面で
松岡昌宏がドラマーであることが活かされていたり、
テクニカルな部分が多く感じられた。ただ、演出が代わったせいか、
いつものような畳みかけるテンポが
多少足りなかった感じ。
これは編集の問題でもあると思うんだけど。で、やっぱりGの忍くん(塚本高史)は忍ちゃんで
店長(松岡昌宏)につながるという展開に。こうなるとHの次はまたAに戻って
本当にぐるぐるまわるような気がしてきたなあ。
回数表示は「Aー2」とか…。ここまでの片想いの連鎖も
ハッキリと結論が出ているわけではないので
それも面白そうだ。採点 7.5(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 H演出:片山修
脚本:宮藤官九郎最高に面白かった。
そしてうまかった。笑いの質に関しては好き嫌いがあるだろうけど、
赤羽(小泉今日子)とベッシー(及川光博)のシーンなんて
すごくせつなくて繊細なラブストーリーになってるもんな。Fの回はあっという間に終わったけど、
今回、船こっさんが思いっきり活躍してくれたのも嬉しかったし。2話以降、視聴率はずっとひと桁。
でもこの作品もあとになって評価されるに違いない。採点 8.0(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 G(表記は反対向き)
演出:土井裕泰
脚本:宮藤官九郎その手があったか!(パート2)
今度は片想いの方向がリバース。
回数表記もGが反対向きというものだった。ただ、ひとつずつ戻ってくる時間はないので
反対向きになった様子を全体的に描写。
その中でD・土井垣(松尾スズキ)とE・江本(酒井若菜)が
婚約するという展開になった。これは江本が妊娠していたので自然な成り行き。
すべての登場人物の心理が細かく描かれたわけじゃないけど、
(つまり強引と言えば強引なところがあった)
土井垣と赤羽(小泉今日子)にスポットを当てることで
全体の流れを出した構成はうまかった。それにしても店長(松岡昌宏)、
カン悪すぎ(笑)
でもだからこそ見ている側は
今後の行方を楽しめるんだけどね。最終回まであと3話。
どう締めるか楽しみで仕方がない。採点 7.5(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 C(表記は反対向き)演出:坪井敏雄
脚本:宮藤官九郎千倉先生(森下愛子)にスポットを当てて、
回数表示は「C」を反対向きに。でもこの「C」、
しーちょうりつ(視聴率)の「C」じゃない?
というくらい「軽井沢夫人」の低視聴率をモチーフに、
(しかもその原因のひとつに裏番組の強さまで挙げた)
このドラマ自体の現状を皮肉った内容だった。その中で宮藤官九郎は
同じ劇団・大人計画の主宰、松尾スズキにこう言わせる。
“間違っても意志は固いんですもん。
間違った方しか見てませんもん。
自分で選んだことはね、
間違っても貫くべきだと思うんです”そして店長(松岡昌宏)のツッコミ。
“本当に大丈夫か?”(笑)土井垣(松尾スズキ)の4回目の結婚って、
「IWGP」「木更津キャッツアイ」
「ぼくの魔法使い」に続く、
この「マンハッタン」のことかもしれないな。
(「ロケットボーイ」は突発的な事情があったので…)でもここへ来て、
赤羽(小泉今日子)を主役にしたラブストーリーと考えると
非常に繊細な内容になってきたとも言える。赤羽とベッシー(及川光博)のシーンは
毎回、ドキッとするくらいいいし。まあ、その及川光博がこのドラマが終わったあとすぐに
強敵だった裏番組「白い巨塔」出るというのは
それこそ最大の皮肉だけれども…。最後の千倉先生のセリフ、
“記憶より記録だっつーの!”は
宮藤官九郎の嘆きにも聞こえて可哀想だった。採点 7.0(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 B(表記は反対向き)演出:片山修
脚本:宮藤官九郎結構、泣けたなあ。
みんながコーヒーで乾杯するところとか、
忍くん、じゃなくて忍ちゃん(塚本高史)が普通に
“じゃあ、明日もマンハッタンで”
って言うところとか。赤羽(小泉今日子)が勘違いで
ベッシー(及川光博)を好きになっちゃったり、
嫌いになったけどやっぱりちょっと好きになっちゃったり、
マニュアル的な恋しかしてこなかったベッシーが
赤羽にフラれてオタオタしたり、
本当に普通の恋愛をちゃんと描いてるんだよな、
コント的な笑いの中に紛らわせて。イボリー(尾美としのり)だけは
まったく幸せになれる気配がないけど、
下品なこと言って騒いでるのも
イボリーにとっては楽しいのかもしれないし。どんな形でもいいから
みんながハッピーと感じられる最終回を望む。採点 7.5(10点満点平均6)
『マンハッタンラブストーリー』 A(表記は反対向き・笑)演出:土井裕泰
脚本:宮藤官九郎「マンハッタン」らしい最終回だった。
記念写真を撮ろうとレモンを持つ赤羽(小泉今日子)、
ベッシー(及川光博)との対峙に
武蔵と小次郎を連想する店長(松岡昌宏)、
“志村、後ろ!後ろ!”と30代のように叫ぶ江本(酒井若菜)、
赤羽の名前に隠された「共犯者」的アナグラム、
今日の店長(天気)に店長虫(テントウ虫)のサンバ、
ETC!と叫んで高速道路の料金所を走って通過する店長…。
小ネタ、大ネタ満載で笑わせてもらった。そしてその中で描かれた、
ある意味、王道とも言えるリアルなラブストーリー。結局、クドカンのドラマはココなんだよな。
笑いの中に隠されたリアルな部分に共鳴できた人は
ただ“面白い”ではなくて感動できるし、
そこに入り込めなかった人は
コントと同じような面白さだけしか感じられない。その笑いの質にまで共鳴できなかった人は、
まったくつまらないドタバタ劇としか思えない。
で、意外にそういう人は多くて視聴率にはつながらない。
…宿命かなあ。いずれにしても最初の企画通り、
きちんとクドカンのラブストーリーになっていたと思う。
展開にまで現れた照れ隠しの度合いまで含めて。まあ、とにかくイボリー(尾美としのり)が
幸せになれてよかった(笑)そして…
もういいよぉ、ベッシー(T_T)採点 8.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★★
演出 ★★★★★
配役 ★★★★★
主題歌 ★★★★☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★★☆
話題性 ★★☆☆☆平均採点 7.41(10点満点平均6)