タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

>>バックナンバー >>ドラマ別レビュー


『ムコ殿 2003』 4/17〜
フジ系 木曜10時  ★★★☆☆

2001年4月に放送された
「ムコ殿」のニューヴァージョン。

続編ではなく、
桜庭裕一郎(長瀬智也)が大家族に婿入りする
という設定だけを踏襲して
まったく別の話になる。

今度の奥さんは酒井法子。
大家族の長女に岸本加代子、
マネージャーに松下由樹が起用されるので、
別の魅力が出るかもしれない。

これが面白く作れたら栗原Pはかなり立派。




『ムコ殿 2003』  1

プロデュース:栗原美和子
演出:西浦正記
脚本:都築浩
音楽:久保田光太郎、沢田完
劇中歌:「お前やないと あかんねん」桜庭裕一郎
オープニング曲:「木曜日の糸」elliott
制作:フジテレビ
出演:長瀬智也、酒井法子、松下由樹、つんく、岸本加代子、黒沢年雄、
   篠原涼子、三浦理恵子、末永遙、星野真里、与座嘉秋、おかやまはじめ、
   平賀雅臣、上地雄輔、鈴木リョウジ、小野真弓、たかし、デッカチャン、他

ドラマの視聴率が取れなくなって
まず制作者が考えたことは
ヒット作の続編を作ることだった。

固定視聴者がいるのである程度の数字は計算できる。
ビジネスとしては然るべき常套手段だ。

だから今回、最初に竹内結子が出ないと聞いた時は
だったらやらなければいいのに、と思った。
ところが、どうやら栗原Pは
最初から続編をやるつもりはなくて、
(今までも彼女は続編を作ったことはない)
桜庭裕一郎のキャラクターだけを残して
別の「ムコ殿」を作ろうと思ったらしい。

だったら興味がある。
今期の「夜逃げ屋本舗」もそうだけど、
タイトルと世界観だけを残して作り替えるとリスクが大きく、
過去にもなかなか成功しなかった方法だからだ

で、初回を見た感想。
…成功してると思う。

まず、桜庭裕一郎というキャラクターは
長瀬智也の魅力を最大限に活かしている。
これを一度だけで葬り去らずに
新たなドラマの主人公にしたのは正解だった。

そして、普通なら違和感を感じる脇役の変更を
強力にパワーアップさせている点も見逃せない。

前作もすばらしい家族だと思ったけど、
今回の黒沢年雄、岸本加代子、篠原涼子、三浦理恵子、末永遙は
最高にバランスがいい。

岸本加代子が作品のクオリティーを上げるのは分かってたけど、
三浦理恵子や末永遙もいいキャラクターを作っている。
これから裕一郎(長瀬智也)がこの家族とどう絡んでくるのかと思うと
それだけでも楽しみだ。

ドラマ上で作られた裕一郎とヒカリ(星野真里)の携帯電話のCMを、
実際にKDDIのCMとしてオンエアするなどの
現実とのオーバーラップも、
今回はさらにパワーアップするらしい。
これも徹底的にやるとかなり面白い。

唯一、心配なのは、
5話と8話で生放送をやると発表されている点。
これは失敗すると作品全体のクオリティーが下がる。
そこまでリスクを背負う必要はないような気がするんだけど…。

まあ、とにかく今後どうなるか、
楽しみに見続けてみよう。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ムコ殿 2003』  2

演出:西浦正記
脚本:都築浩

家族より前に
マネージャー(松下由樹)にスポットが当たった。
でも今期、一番笑えて一番泣ける話だった。

櫛野(高橋克典)たちが
あっさり引き下がったのはできすぎだったけど、
筋山(松下由樹)のことを思って
仕事をするという裕一郎(長瀬智也)と、
裕一郎のことを思って仕事を受けない筋山とのやり取りは
かなり見ごたえがあった。

やっぱり松下由樹とか岸本加代子とか、
芸達者な女優が揃っていると安心して見ていられる。

あと、末永遙がすごくいい感じ。
こういう役もできるんだなあ。

バランス、テンポ、クオリティー、
すべて上質なのはこのドラマだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『ムコ殿 2003』  3

演出:久保田哲史
脚本:都築浩

つんくファミリー総動員で、
辻、加護だけでなく、五木ひろしが登場。

長女・東子(岸本加代子)にスポットを当て、
与謝野(五木ひろし)とのお見合い話をメインにしながら
裕一郎(長瀬智也)との関係を深めるストーリーでもあった。

テーマとしては栗原色が強く出た
キャリアウーマンの葛藤を描いていて、
相変わらず内容がつまった良い回だった。

「踊る大捜査線」以降、
ドラマではやたら警察官の敬礼シーンが多くてイヤなんだけど、
今回の東子の敬礼は意味があって良かった。

岸本加代子はドラマの雰囲気に合わせて
流して演技してるようだけど、
それでも存在感があるから流石だ。

次回は三女・西絵(篠原涼子)にスポットが当たる予定。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ムコ殿 2003』  4

演出:久保田哲史
脚本:都築浩

白血病はあまりにも、という感じだけど、
このドラマは王道をいってるからな。
いいんじゃないだろうか。

でも、筋山(松下由樹)と西絵(篠原涼子)の間で
貸し借りというセリフをハッキリ言わせる必要はなかったと思う。
裕一郎(長瀬智也)が事務所に許可を取ったことで
とりあえず筋は通っていると思うので。

さて、来週はいよいよ生放送。
全編を生放送でやるわけではなくて、
一部を生放送にするようだ。

ここまでの勢いが失速しないことを祈る。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ムコ殿 2003』  5

演出:西浦正記、金子傑
脚本:都築浩

まあ、お祭りってことで。

久本雅美、中島知子、飯島愛を起用して
バラエティー番組の設定にした部分は、
さすがに生放送としての違和感はなかった。

ジャニーズ得意の連携ネタで
松本潤が出演している「きみはペット」の話題を出したのは、
すでにお約束となりつつあるとはいえ、
他局のドラマネタだったので面白かったと思う。

ただ、最後のフジテレビ前のシーンは
イベントとしての意味しかなくて、
客観的にはシラけるだけの企画。

冒頭のシーンのみが
生放送ドラマとしての体裁を保っていたわけだけど、
結局これもぐだぐだで
NG特集的な面白さしか出なかった。

事前に収録してあった
五女・あきら(末永遙)に関するエピソード部分も、
あきらの葛藤なしに歌合戦の出場が決まってしまったので
最後の盛り上がりに欠けてしまった。

普通にやれば十分に面白く描けるプロットだったので
生放送に組み込んでしまったのはもったいなかったかもしれない。
個人的にも末永遙がメインになる回は期待してただけに残念だった。

今、企画として生ドラマをやるとすれば、
こういったスタイルになるのは致し方ない。
次回でまた盛り返すのを期待しよう。

第8話の生放送で、
一転してシリアスものやったらスゴイんだけど…。

             採点  5.5(10点満点平均6)



『ムコ殿 2003』  6

演出:久保田哲史
脚本:都築浩

TV版「プラトニック・セックス」の主役だっただけあって、
星野真里が演じるヒカリにAV出演の過去が…。
そんなことも含めて、
今回もストーリーは王道中の王道だった。

でも、泣けるんだよね。
完全に制作者の術中にハマってる(笑)

今回はやっぱり酒井法子が良かったな。
前作の竹内結子とは違う、
年上のおっとりした奥さんらしい心の揺れを
美しく演じていたと思う。

これでしょ、ムコ殿は。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ムコ殿 2003』  7

演出:西浦正記
脚本:都築浩

思いっきり泣かせに来た回。
ストーリーそのものは悪くないし、
十分泣かせてもらったことを前提で気になったことを。

まず、筋山(松下由樹)の絡ませ方が中途半端だった。
合コンのネタが導入部分だったので、
男の河村(与座嘉秋)が中心に動くことは仕方がない。

でもだったら事務所で西絵(篠原涼子)が
笹川(赤坂晃)と対峙するシーンで、
最後に筋山をわざわざ出す必要はなかった。

それからストーリー上、重要だったのは、
西絵が子供を産めない身体だったことを
他の姉妹が知らなかったという点。

つまり、北絵(三浦理江子)がそのことを知る場面も
このストーリーでは重要だったはずなのに、
前出の事務所のシーンを作ってしまったがために、
北絵は裕一郎(長瀬智也)からあとで聞いた、
ということを視聴者が想像するに留まった。
これは効果的ではなかったと思う。

ムリをしても西絵が笹川と対峙するシーンで
直接、北絵もその事実を知るという展開にするべきだった。

そして最大の失敗は、
北絵の“あなたの分も子供を産んであげる”というセリフを
予告で流してしまったこと。

このセリフが最も涙を誘うシーンだったので
ここは隠しておくべきだった。

…まあ、全然OKの回なんだけどね(笑)

さあ、次回は2度目の生放送。
これでこのドラマの真価が問われる。

             採点  7.5(10点満点平均6)





『ムコ殿 2003』  8

演出:久保田哲史、金子傑
脚本:都築浩

2度目の生放送。
ちゃんとシリアス編を用意していた。
たいしたもんだ。

ただ、泣きの演技の中心を担ったのは岸本加世子。
家族全員でのシリアスシーンはなかった。
…しょうがないか。

でも、せめて表の裕一郎(長瀬智也)ではなく、
裏の裕一郎で泣きのシーンをやって欲しかったなあ。

あと、松下由樹ね。
岸本加世子と松下由樹のガチンコをやってこそ、
この作品における生の神髄だったと思うんだけど…。

生のシーンを確保するために
前回使ったバラエティー番組を使ったのも安易だった。

前回は主人公が人気アーティストという設定を利用して
うまくやったな、という印象だったけど、
今回は手を抜いた感じしかしなかった。

まあ、最初から2回の生放送を
派手なイベント編とシリアス編に分けて
企画していたのは明らかなので、
その点は評価していいと思う。

やっぱりドラマは生よりビデオだな、
当たり前だけど。

ちなみにさんまも生よりビデオ(編集込み)向き。

             採点  6.0(10点満点平均6)



『ムコ殿 2003』  9

演出:西浦正記
脚本:都築浩

やっぱり須賀健太の泣きの演技はスゴイ。
あそこまで大粒の涙を流されたら
テレビの前の大人はもらい泣きするって。

ただ、今回は前半で笑いを取る部分が少なかったことと、
主人公がスターであることの意味がまったくなかったことなどで、
やや完成度は低かったと思う。

今回は前振りだけになった
ヒカリ(星野真里)の移籍希望に関するトラブルと
裕一郎(長瀬智也)の実の母親のエピソードが、
次回以降、どう描かれるのか、
そこに期待しよう。

全然関係ないけど、
南(酒井法子)が作ったハンバーグ、
イタリアの形にして西絵(篠原涼子)に見せて欲しかったなあ。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ムコ殿 2003』  10

演出:久保田哲史
脚本:都築浩

借金返済のため、
裕一郎(長瀬智也)の実の母親(風吹ジュン)が、
結婚の情報を遠藤(平賀雅臣)に売るという展開に。

当然のことながら絶望する裕一郎。
母親に会わせてしまった筋山(松下由樹)は責任を感じ、
オフィス・トライアングルに辞表を出す…。

まあ、2年前に生まれた桜庭裕一郎というキャラを使っている以上、
最終的に裕一郎がすべてを世間に告白し、
それでも歌を歌い続けるというのは予想される範囲か。

最終回の見どころとしては、
母親の最後の決断をどう描くか、
石原家をどこまで絡ませるか、だろうな。

ただ、ここまで来ると、
もうヒカリ(星野真里)の存在は無きに等しい。
もっと深く関わる役だと思ったんだけどなあ。

今回のヒカリから筋山への電話シーンなんかは
取って付けたみたいで白けるだけだったな。

普通なら最終回は時間延長というノリだけど、
今やよほどのことがない限り、
ドラマにそんな力はない。

通常の時間でうまくまとめられるか。
最後にお手並み拝見だ。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ムコ殿 2003』  FINAL

演出:西浦正記
脚本:都築浩

やっぱり1時間ではムリだった。
というか、前回までに
ネタを広げすぎていたという感じ。

母親(風吹ジュン)の件、筋山(松下由樹)の件、
そして大手プロの暴力団との癒着の件(シャレにならねえ〜)など、
すべてがあっさりと解決してしまって、
全体が軽い印象になってしまった。

意外だったのは、
最後に裕一郎(長瀬智也)が家族のことを公表せず、
歌を歌うだけで終わらせた点。

これはドラマとして盛り上がりに欠けたとも言えるけど、
パート2で示した制作者の新たなメッセージとも取れた。

つまり、公人と言えるアーティストが
プライベートに関する質問にも
すべて話さなければいけないのかという問題だ。

確かに下世話な興味として
スターの私生活を知りたいという欲求はあるけれども、
本当は発表される作品のみで
そのアーティストを理解すればいいのではないか。

そのことをドラマ全体で示したようで
非常に興味深かった。

このドラマの公式HPにあるBBSには
途中から出演者や作品に対するバッシング発言が増え、
そのことに栗原Pが自ら反論したことでBBSがさらに混乱し、
閉鎖されるまでに至った。

だったら最初からBBSなんか設置せず、
このドラマも出来上がった作品がすべて!と
自信を持って送り出せばよかったのに…(笑)

まあ、とにかくこの作品は
当初の企画自体は悪くなかった。
出演者もほぼ完璧だった。

ただ、リスクを背負って生放送をするなど、
策を講じ過ぎていい部分も消してしまった印象はあった。

分かりやすい王道的な作りで
笑って泣けるストーリーを
そのままシンプルに作っていれば…、と思うと、
ちょっと残念な仕上げ方だった。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.91(10点満点平均6)







[ロビー田中の自己紹介]

[トップへ]