タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『マイリトルシェフ』 

7/10〜
 TBS系 水曜10時  期待度 ★★☆☆☆

2、3の質問をするだけで
その人の心に響く料理が作れるという
天才シェフの活躍を描く。

苦節8年(笑)、
矢田亜希子がついに連ドラ初出演を果たす。

矢田亜希子の妹役で上戸彩が出演。
共演は他に
阿部寛、風間杜夫、梶原善、
高橋恵子、市毛良枝、など。

矢田亜希子は脇役でこそ活きる、
と思ってはいるんだけど、
今回の役は感受性が強く、内向的な性格、
という役らしい。
これなら大丈夫かも。

傑作でなくてもいいから
外さないでくれ、と祈るばかり。



『マイ リトル シェフ』 第1話

プロデュース:鈴木基之、川島永次、梶野祐司
演出・脚本:源孝志
音楽:窪田ミナ
主題歌:「Voyage」浜崎あゆみ
製作:ホリプロ、TBS
出演:矢田亜希子、阿部寛、上戸彩、高橋恵子、市毛良枝、風間杜夫、
   梶原善、内田朝陽、永井大、曲山えり、羽場裕一、谷啓、他

あら? 面白いかも(笑)
あまり期待してなかったグルメモノ2本が
両方とも面白いとは…。

ホリプロ制作の時は
鈴木基之と源孝志ってよくコンビで作るんだけど、
(「同窓会へようこそ」や「17年目のパパへ」)
この人たち、やっぱり才能あるなあ。

まあ、矢田亜希子も上戸彩も
ホリプロじゃないんだけどね(笑)

雰囲気としては
「王様のレストラン」を彷彿とさせる内容。
ただ、初主役の矢田亜希子の個性を十分に活かした
主人公のキャラクターがいい。

阿部寛はもちろん問題ないし、
上戸彩も快活な性格をよく出してる。

で、矢田亜希子の義理の母親は市毛良枝。
「スウィートシーズン」では実母、
「やまとなでしこ」では
惜しくも嫁姑にはなれなかった関係。
もうセットだな、この2人は(笑)

とにかく全体の雰囲気がやさしい感じで
見ていて気持ちいい。

ま、冒頭でトルシエとダバディーのパロディーがあったり、
プロミスのCMの爺に「そうなんです!」と言わせたり、
細かいギャグもあったんだけど、
そんな小ネタはなくても面白い。

今回は初回なので
登場人物紹介の色合いは強かったけど、
2回目以降もこの調子ならかなり期待できるかもしれない。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 第2話

演出・脚本:源孝志

前半の展開はありきたりで
かったるかった。
乗り越えなければいけない
エピソードだったとは思うけど、
もう少し別の描き方もあったんじゃないかな。

でもこれで『プティ・エトワール』のやり方は
固定されるはずだから見やすくなると思う。
そのかわり、今後は一話完結っぽい作りになるので、
毎回、話に個性がないと飽きられてしまうかもしれないけど。

レギュラー陣は上質なので
これからはゲストと脚本が勝負だ。

瀬理(矢田亜希子)の
“うん、その方が素敵”
は決めゼリフっぽかったな。

真似したくなりそう(笑)

             採点  6.5(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 第3話

演出:樹木まさひこ
脚本:後藤法子

これくらいの精度で毎回描ければ
かなり面白い作品になるはずだ。

どう考えても店の経営は困難だろう、
みたいな細かいツッコミ所はいっぱいあるんだけど、
とにかく全体の雰囲気がいい。

今回は冒頭のケーキを選ぶシーンが
瀬理(矢田亜希子)の性格を表しつつ、
後半の展開にもつながっていたりして
構成もよく練られていた。

最後に真理子(石田ゆり子)が
結婚相手に電話したシーンは不要だったけど。

ところで、“うん、その方が素敵”は
瀬理の統一の決めゼリフじゃなかったんだな。
今回は“うん、決めた”だった。
その方が素敵の方が素敵だぞ(笑)

あと、どうでもいいことだけど
プティ・エトワールの床の音が気になる。
とくに上戸彩が歩いた時に
やたらボコボコと音がする。

セットの作りが安いのかもしれないけど、
上戸彩も歩き方を注意した方がいいだろうな。

もうひとつ気になったのは
アップになった時のレンズの使い方。
カメラに向かって芝居するやり方は
共同テレビ制作のドラマでよく使われるけど、
このドラマで同じことをやると
俳優の顔がきれいに撮れてない。

もうちょっとスタッフには頑張ってもらいたい。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 第4話

演出:源孝志
脚本:成田はじめ、源孝志

よく練られた脚本で
作りも丁寧だった。

ただ、このドラマのゆったりした雰囲気は
非常に心地いいんだけど、
今回は多少テンポが遅すぎたかも。

とくに亜紀(山口紗弥加)が
プティ・エトワールに向かうまで、
父親役の西村雅彦と亜紀の相手(大高洋夫)が
2人きりになるあたりが…。

でも、最後に西村雅彦が泣き崩れるシーンは
かなり見応えがあったし、
十分満足のいく内容だった。

ところで今回の瀬理(矢田亜希子)の一言は
“うん、そっちの方が素敵”だった。
微妙に2回目とは違うんだな。

次回は“こっちの方が素敵”か?

             採点  7.5(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 第5話

演出:樹木まさひこ
脚本:後藤法子

“うん、素敵”だった(笑)

今回は佐野史郎がゲスト。
でも過去2回のようなお店とは無関係な客ではなく、
瀬理(矢田亜希子)の実の母親、さな子(高橋恵子)が
様子を見に行かせた客だった。

やはりレギュラー出演者の役柄にも
いろいろな人生があるので、
その部分と瀬理の料理を絡めるのはいい。
全体としても話の筋が通るし。

もちろん、ムリヤリ料理に例える強引さは確かに感じる。
でも、瀬理のキャラクターで
何とか説教臭くならなくて済んでいる感じだ。

今回も、食材が届かなくてみんながイライラしてる中、
瀬理ひとりが落ち着いているようで
実は最高にアセっていた、
というシーンは良かった。

この雰囲気は最後まで無くさないで欲しい。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 第6話

演出:源孝志
脚本:後藤法子

瀬理(矢田亜希子)の料理が
メインではなかったけど、
セリフがよく吟味されていて
きめの細かい内容だった。

ゲストの加藤あい、音無美紀子も好演。
母親のために初めてデザートを作る娘の姿は
なかなか感動的だった。

それから演出的にも
鈴子(加藤あい)がお店を去る場面をしつこく描かず、
厨房をひとりで掃除するというシーンで表した点も良かった。
こういうところはやはりセンスを感じる。

今回は阿部ちゃんも
“その方が素敵”と発言。

本家、矢田亜希子の“うん、その方が素敵”のシーンでは、
金色に光っていくライトに
鈴子が反応しているのが可笑しかった。

中だるみがしそうな回で
今回のような内容にしたのは正解だと思う。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 第7話

演出:樹木まさひこ
脚本:伊藤崇、後藤法子

瀬理(矢田亜希子)とさな子(高橋恵子)の関係は
今後も続く深い問題なので
話が途中になるのはかまわない。

ただ、そのぶん那須でのエピソードを
もっと丁寧に描いて欲しかった。

場所が「プティ・エトワール」でなかった
ということも影響してるけど、
料理にしても、みやこ(李麗仙)に関する話にしても
単純な構成だった。

那須の様子も描きたかったという
その発想をうまく膨らませられなかった感じだ。

母子、姉妹の関係も含め、
次回以降に期待しよう。

             採点  6.5(10点満点平均6)


『マイ リトル シェフ』 第8話

演出:源孝志
脚本:後藤法子

第一話に続き、
プロミスの「そーなんです」爺も出てきた今回。
藤堂(梶原善)も加わった“そっちの方が素敵”は
懲りすぎてスベっていたけど、
全体的なストーリーは
今までで一番まとまっていたかもしれない。

ぎこちない瀬理(矢田亜希子)と名津菜(上戸彩)の現状、
会話もなくなっている離婚間近の夫婦、
離婚によって実の母親(関根恵子)と離ればなれになっている瀬理、
すべてを絡めさせた上質の作りだった。

ゲストの別所徹也と大塚寧々も
お似合いの30代カップルを演じていて、
とくに大塚寧々の若い頃との映像の変化は見事。
子供を前面に出した構成は少しあざとい感じがしたけど、
夫婦の会話にはリアリティーがあった。

瀬理、名津菜、2人の性格もよく出ていて、
最後に仲直りした2人が抱き合った姿は美しかったし。

消化不良気味だった前回を払拭する出来だった。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 第9話

演出:白根敬造
脚本:元井クミ、後藤法子

最終回の盛り上がりも兼ねて
プティ・エトワール閉店の展開に。
ま、あの経営形態なら素人が見てもつぶれるよな(笑)

健作(阿部寛)が健造(風間杜夫)の最後の料理を
涙を流しながら食べたシーンは良かったけど、
全体的にはありふれた展開で
MLCらしさはあまりなかった。

もうこうなると最終回も
ストーリー上の締めで精一杯だと思うけど、
瀬理(矢田亜希子)のキャラを活かした作りを期待したい。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『マイ リトル シェフ』 最終話

演出:源孝志
脚本:後藤法子

うん、やっぱり源孝志が演出した時の
やさしい空気感は最高だ。
当然、矢田亜希子の役作りの功績も
大きかったわけだけど。

結局、さな子(高橋恵子)がオーナーとなって
プティエトワールは那須で再興。
ストーリー的な驚きはないけど、
丁寧な描き方でいい最終回だった。

この最終回の山場は、
もちろん、さな子と瀬理(矢田亜希子)の
20年ぶりの再会。

父親(羽場裕一)がさな子のために
レシピを残していたわけだけど、
瀬理が自分の料理を作った展開は良かった。

20年間の自分を知ってもらおうと、
スプーンを集めるのが好きだったこと、
運動会の50m走で一番だったこと、
初めて好きになった男の子は
高橋クンだったことなどを話ながら、
5つのスプーンに乗せた料理を作る瀬理。

一度は話を遮ろうとするさな子も
実はずっと瀬理を忘れたことがなくて、
渡す宛てのないまま
世界中のスプーンを集めていたと告げる。

この一連のシーンは
演出もセリフも、そして料理も
実に丁寧に感動的に描いていたと思う。

お馴染みの決めゼリフは、
序盤に名津菜(上戸彩)が
“そっちの方がチョー素敵!”

最後は瀬理が締めると思わせておいて
考えてるうちにウトウトしてしまうという
ほのぼのとしたオチに使われた。

この決めゼリフに限らず、
とにかくこのドラマは瀬理のキャラクター、
それを演じた矢田亜希子が見事だった。

中には多少雑な回もあったけど、
この瀬理のキャラクターを活かした
やさしい作品のトーンは
他のドラマとの差別化にもつながっていて、
価値のある作品になったと思う。

プティエトワールは再興されたので、
スペシャルで帰ってくることも可能。
最後に初めて目を開き、
カメラに向かって微笑むことができた瀬理の料理を
スペシャルで見られたらうれしい。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★★☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.15(10点満点平均6)




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