タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『眠れぬ夜を抱いて』
4/11〜
テレ朝系 木曜9時 期待度 ★★★☆☆野沢尚の原作・脚本による本格サスペンス。
出演は財前直見、中村トオル、大杉漣、
りょう、田辺誠一、筧利夫、
秋本奈緒美、渡辺由紀、古田新太。野沢尚のサスペンスをドラマ化すると
コケることも多いけど、
今回は中盤で犯人が判明し、
その後は原作と違う展開になるとか。「QUIZ」でやけにサスペンスにハマった
財前直見に期待。
『眠れぬ夜を抱いて』 第1回:家族が消えた。
チーフプロデュース:黒田徹也
プロデュース:内山聖子、中込卓也、関口静夫
演出:西谷弘
原作・脚本:野沢尚
音楽:溝口肇
主題歌:「Forever to me〜終わりなき悲しみ〜」the brilliant green
制作:テレビ朝日、共同テレビ
出演:財前直見、仲村トオル、大杉漣、古田新太、筧利夫、りょう、
田辺誠一、秋本奈緒美、渡辺由紀、高知東生、中丸新将、伊藤裕子、
大平奈津美、池田道枝、片岡涼、常盤祐貴、他2話までに4人が消える、という番宣だったけど、
最初に消えたのは田辺誠一と渡辺由紀。
あ、子供も消えたけど数には入ってないみたい。野沢尚のサスペンスなので
最初はやっぱりかなり引き込まれる展開だった。
冒頭に過去の事件がニュース映像で流れるあたり、
「眠れる森」に近い雰囲気もあったし。ただ、どこか別の世界の話、という違和感はあったな。
あのリゾートホームの街並みが
新しい故郷と呼ぶには寂しすぎたからかもしれないし、
中河(仲村トオル)の河原での演説が
どこか説得力に欠けていたからかもしれない。
これが狙いで、意味があるものならいいんだけど。とりあえず、
12年前にオーストラリアで殺された女性が
仲村トオルの恋人か何かで、
その事件に関係した田辺誠一と筧利夫に復讐する、
とか予想しておこうかな。まあ、誰が犯人でもいいんだけど。
ドラマとして面白ければ。採点 7.0(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第2回:また家族が消えた。演出:西谷弘
脚本:野沢尚今回、消えたのは、筧利夫と秋本奈緒美。
これで予告通り、2話までに4人が消えた。萌(渡辺由紀)が気にしていた
要士(田辺誠一)の元恋人のことを、
康平(筧利夫)も知っていたのでは…、
という君枝(秋本奈緒美)の言葉が
今回の大きな情報。まあ、要士と康平が顔見知りだということは
前回の放送でも描かれていたけど、
12年前にオーストラリアで殺された女性は
本当に要士の元恋人なのか?
悠子(財前直見)が
夫にも警察にも隠していること、とは何なのか?
このあたりが当面の謎かな。それにしてもテレ朝の番宣を見てると、
面白いでしょ?
ワクワクするでしょ?
という煽り方がしつこくて鼻につく。野沢尚のミステリーが
最初は面白いことはみんな知ってるって。
そんで最後に何度も裏切られてるから心配なんだって!
これ以上煽ると、コケた時にまた非難ゴウゴウだぞ。採点 7.0(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第3回:真夏のサンタクロース演出:村上正典
脚本:野沢尚今回の最大の謎は
熱田(大杉漣)の携帯着メロが
なぜ「おお、牧場は緑」なのか、ということ(笑)
絶対、解明して欲しいなあ、最終回までに。そして悠子(財前直見)、
今回はママから妻に変身するヒマなし。
そのかわりスチュワーデス刑事に…(笑)でもその活躍で、ついにオーストラリアで殺された女性、
伊藤裕子までたどり着いた。
まあ、熱田はもうだいぶ嗅ぎつけてるだろうけどね。
事情聴取で中河(仲村トオル)に言った
“若い頃のあなたに会ってみたいですね”
なんて、かなり意味深だっただし。あとは美琳(りょう)だよなあ。
なぜ熱田の妻(正確には内縁の妻らしい)に
きちんとした役者をつけているのか。
当然、話に絡んでくるんだろうな。初回で感じた元澄リゾートホームの寂しさは
やはり意図してのものだった。
だとしたら、あの説得力のない
中河の演説もやはり…。大平奈津美だけは犯人でないことを祈る(笑)
採点 7.0(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第4回:ぬくもりに潜むもの演出:西谷弘
脚本:野沢尚うん、ここまでは初回で抱いた展開通り。
問題はここからだよな、野沢尚の場合。
納得できるどんでん返しならいいけど、
そんなのアリ?って展開だと困る。依然として謎なのは、
最近、影を潜めている葛井(古田新太)の存在と、
悠子(財前直見)が言っていた
夫にも警察にも隠している秘密が何なのか。結婚前のケバい映像が出てきた時は
てっきり悠子の秘密って
六本木のクラブ・パラダイスで働いてたこと?
と思ってしまったけど、
どうやらそうではないらしい(当たり前!)いずれにしても、
事件を解明しようとしている悠子に
秘密があるところがミソだよな。ところで今回、「天国への階段」とかいうセリフが
ほとんど不必要に出てきた。
意識してるのか?>野沢尚採点 7.5(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第5回:夫の身上調査演出:村上正典
脚本:野沢尚面白くなってきた!
新藤一家(田辺誠一・渡辺由紀)と
山路一家(筧利夫・秋本奈緒美)は
山中に隠れていた。それを手引きしたのは
葛井(古田新太)のようだ。葛井のセリフの中に
“警察も中河欧太(仲村トオル)も
まだ気づいていない”
という言葉もあったので、
それが本当だとすれば
中河の指示ではないことになる。少なくとも新藤と山路は、
自分たちの居所が
警察や中河に知られたくない様子だった。もうこうなると、
12年間にオーストラリアで起きた事件に
新藤と山路が関係していることは明らか。むしろ、この元澄リゾートの事件は、
誰が犯人か、というよりも、
まだ事件が起きていない、ということなのか…。いや、それともやっぱり、
葛井は中河の指示の元に動いているのか?
うーん、いい感じ。でも、田辺誠一の元に水や食料を運んで来るのは、
やっぱりラビット運輸でバイトする
堂本剛であって欲しかったね(笑)採点 7.5(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第6回:真相演出:西谷弘
脚本:野沢尚タイトルに“真相”とつけたからには
おそらく今回描かれたことが事実なんだと思う。
つまり、葛井(古田新太)も
中河欧太(仲村トオル)の指示では動いていない?まあ、自衛隊の演習で
葛井が仲間を殺していることが伏線になっているわけだけど、
これは中河欧太だけが知ってることでもないしなあ。弱みを握られている葛井が中河欧太を殺す、
というところに少し説得力を欠くかも。
もうひとつ裏があるとすればここか。で、12年前にオーストラリアで起きた事件に
深く関与しているのは支店長だった。
初回から流れているニュース映像にも登場して、
しかも配役が中丸新将だったからね。
あれっきり、ってことないのは分かってたんだけども(笑)物語のポイントとしては、
逃げている新藤一家(田辺誠一・渡辺由紀)、
山路一家(筧利夫・秋本奈緒美)にも、
夫婦の絆、家族の絆があったということ。壮大な復讐を実行している中河欧太にも
その夫婦の絆、家族の絆はあるのか。
そこに注目だ。そうなると家族を持たない葛井が
いちばん恐いんだよなあ。採点 7.5(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第7回:襲撃の日演出:西谷弘
脚本:野沢尚葛井(古田新太)は撃つのか、
撃つとしたら誰に向かって…、
という興味を残こしつつ、
ドラマは12年前の事件の真相を
細かく描いていく。
この構成はやっぱりかなりいいんじゃないかな。2時間ドラマもそうだけど、
ミステリーものって
謎解きが始まると実はもうつまらないんだよね。完璧なトリックなんてそうそう作れるものじゃないから
どこかに必ずムリが出てくる。
それを最後に「これが正解です!」って見せられても
なかなかいい印象は残らない。でも、この作品みたいに
謎解きに時間をかけてドラマにするのはいい。
コロンボだって、古畑任三郎だって
基本的にはそのやり方がウケたわけだし。強いて言えば
今回みたいな回でも、
もう少し主人公の悠子(財前直見)や欧太(仲村トオル)を
絡める作りにして欲しかったな、という感じ。刑事の熱田(大杉漣)はもう2回続けて出てきてない。
このへんがちょっと残念かな。採点 7.5(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第8回:恐怖の報酬演出:村上正典
脚本:野沢尚やっぱり葛井(古田新太)は
すべて欧太(仲村トオル)の指示で動いていた。
でもこれは納得できる展開だからね。
いいんじゃないでしょうか。ただ、今回は主に欧太側の回想が中心だったけど、
オーストラリアへ旅立つ前の
欧太と類子(伊藤裕子)の関係を
もっと詳しく描いてもらいたかった感じ。ここまで復讐に執念を燃やすくらい
欧太は類子を愛していた、
という部分がちょっと分かりにくかった。ドラマは今後、
欧太の支店長(中丸新将)への復讐に
移っていくわけだけど、
未だに明かされていないのが、
悠子(財前直見)の
警察にも夫にも隠している秘密だよな。これが最後のどんでん返しになるのか。
注目だ。採点 7.0(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第9回:愛のために夫と闘う演出:北川学
脚本:野沢尚1回休みのあとのせいか
それほど大きな展開がなかった今回。
ただ、悠子(財前直見)が
欧太(仲村トオル)が管理する
データベースのパスワードを入手して
全容をほぼ理解した内容だった。頻繁に変えているというそのパスワードが
たまたま「prisoners(囚人、捕虜)」だったりして。
意味深だなあ。悠子だけでなく、
君枝(秋本奈緒美)や萌(渡辺由紀)ら、
女性陣の気持ちも描いていたけど、
美琳(りょう)もまた
愛する男を持つひとりの女性として
彼女たちの気持ちを理解しているところが
面白かった。ひとつ気になったのは
葛井(古田新太)と君枝の過去。
大きな出来事はなかったと思うけど、
もしかしたら葛井の苦しみを理解している
唯一の女性なのかもしれない。彼女の存在が葛井の行動に変化をもたらすのか。
そこにも注目してみたい。採点 7.0(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 第10回:クライマックス演出:村上正典
脚本:野沢尚美奈(大平奈津美)まであの現場にいることで
まさに舞台はクライマックス。“家族のために
こんな馬鹿げたことをやめようと
思い直してくれなかったの?
どうして今を生きてくれないの?
どうなれば気が済むの?”
という悠子(財前直見)の説得に、
“今から見せてやるよ
気をつけて見てろよ、悠子”
と答えた欧太(仲村トオル)の言葉は衝撃的だった。最終回前の盛り上げ方としては十分。
熱田(大杉漣)と美琳(りょう)の関係、
葛井(古田新太)と君枝(秋本奈緒美)の関係も
きちんと描かれて、
無駄のない作りだったと思う。あとは前から悠子がナレーションで言っていた
“夫にも警察にも隠している秘密”が何かだな。
それが最終回での大きなポイントになりそうだ。それにしても
お母さんに言われた通り
ずっとワゴンの端を握ってる
大平奈津美が可愛い過ぎる!(笑)採点 7.5(10点満点平均6)
『眠れぬ夜を抱いて』 最終回:夫婦、旅の果てに…演出:西谷弘
脚本:野沢尚結局、男の身勝手な「理想の妻」「理想の家族」像を
とことん描いただけような気もするけど、
物語としては上質なまとめ方だった。一番印象的だったのは葛井(古田新太)。
欧太(仲村トオル)への忠誠を守って
自ら牛島(中丸新将)を刺しながらも、
君枝(秋本奈緒美)との約束を守って拳銃を空砲にし、
山路(筧利夫)と進藤(田辺誠一)を救った展開は良かった。ただ、山路も実は類子(伊藤裕子)のことを愛していて、
“進藤に渡すくらいなら自分の手で殺したかった”
という供述には多少ムリがあったかも。これは野沢尚がよく使いたがる犯人心理だけど、
今回は無理矢理テーマに合わせている感じがして
さすがに違和感があった。あと、最後まで語られなかったのが悠子(財前直見)の過去。
これはかなり前から欧太を疑っていた
という意味だったのかもしれないし、
まったく別の何かかもしれない。もし別の何かだったら、
それはセリフの中にもあったように
欧太に見つけて欲しいということなのだろう。欧太にも家族が知らない過去があったように、
悠子にあっても不思議ではない。仮に思いも寄らない過去があったとしても、
それでも愛を貫けるかどうかが
この作品のテーマでもあったわけだから、
この部分に関しては語られないままでも不満はなかった。それから、登場人物たちが生きてきた時代を象徴するように
ホール&オーツの曲が時々かかっていたんだけど、
最後は「Wait for me」。ま、現実の世界では
12年前の女の影を引きずり続ける男を
ずっと待ってくれる女性は
なかなかいないと思いますが…(笑)単純なミステリーではない、
深みのある人間ドラマだった。採点 7.5(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★☆☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★★☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★☆☆☆平均採点 7.27(10点満点平均6)