タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『あなたの人生お運びします』 4/10〜
TBS系 木曜10時 ★★★☆☆昭和の大阪を舞台に
おしどり夫婦が引越業で成功をつかむ姿を描く。
アート引越センターの女性社長がモデル。コテコテになりそうで
そんなに楽しみじゃないけど、
スタッフは「ハンドク!!!」「First Love」の
植田Pと大石静コンビ。
そこに期待してみたい。主演は藤原紀香と山口智充。
小池栄子もNHKの朝ドラとダブルブッキングで出る。
出すぎだっつーの。
『あなたの人生お運びします』 第1話プロデュース:植田博樹
演出:生野慈朗
脚本:大石静
主題歌:「What's the answer?」Retro G-Style
タイトル画:新垣仁絵
製作:TBS、TBSエンターテイメント
出演:藤原紀香、山口智充、加賀まりこ、橋爪功、江波杏子、佐々木蔵之介、
宮本真希、小池栄子、田口浩正、椎名法子、小池徹平、二反田雅澄、
鈴木史朗(ナレーション)、他やっぱり大石静はうまいな。
必要最小限のエピソードを盛り込んで、
テンポ良く初回をまとめた。「ダイヤモンドガール」と比べると
脚本の差が明らかに分かって面白い。大石静は「ふたりっ子」や「オードリー」も書いているせいか
ちょっとNHKの朝ドラっぽい雰囲気があるんだけど、
プライムタイムのドラマとしてはかえって新鮮味がある。藤原紀香も大阪弁だとかなり自然だし、
加賀まりこ・江波杏子コンビを始めとする脇役も
適材適所でいいキャスティング。
この作品は当たりかもしれない。主役夫婦の名字が「寺田」ではなく「上原」だったので
アート引越センターの名前は出てこないんだろうけど、
「0123」というアート引越センターの電話番号は、
この引越事業を始めた時から続いているものらしい。
(実際は運送業の設立が68年で引越事業は77年から)将来の発展を期待して
寺田千代乃(実際のアート社長)が選んだんだって。あと、アートという社名も、
電話帳のトップに名前が来るように
引越事業を始めた時につけたんだとか。まさにリアリティーのあるサクセスストーリーだ。
採点 7.0(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第2話演出:生野慈朗
脚本:大石静ちょっと中盤はドタバタ過ぎたかな。
ただ、ストーリーそのものに説得力があるので
全体としてはやっぱり楽しめる。ところで、視聴者の年齢層によって
このドラマの印象はずいぶん違うんだろうな。個人的には世相を反映したBGMに
グッと来ちゃったりしてるけどね。採点 6.5(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第3話演出:松原浩
脚本:大石静引越業界創世記の苦労話と
なぜ段ボールが白くなったのか、という話。ちょっとコテコテ過ぎたような描き方だったけど、
後半はかなりグッとくる展開だった。日本の青春時代を描きたいというコンセプトは
十分に達成できているような気がする。採点 6.5(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第4話演出:森一弘
脚本:大石静今回も人生を運ぶ、
というテーマに沿ったいい話だった。
なにげにフランス料理店のシェフの演技が
全体を締めてたような気がする。このドラマは70年代の流行も合間に織り込んでいるけど、
今回の「かもめのジョナサン」ネタはシブイ選択だったなあ。
もう忘れてたよ、そんなこと流行ったの(笑)次回はいよいよ社名変更か。
採点 6.5(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第5話演出:生野慈朗
脚本:大石静社名変更(ドラマ上はアートではなくアーム)と
電話番号が0123になった話。そうか、当時は電電公社だったから
サービスとして番号を選ぶことはできなかったのか。
まさにパイオニアだな。で、ドラマとしては
ゲストのりょうの和服姿が予想以上に良かった。
葛山信吾も贅沢な使い方だったし。あと、やっぱり生野慈朗が演出した回の方が
コメディーとしての質が高くなる。
リズムがいいというか、間がいいというか。笑いも取れる役者は揃っているので、
ちゃんと演出すればこれくらいはできるんだよな。
なるべくたくさん生野慈朗に撮ってもらいたい。採点 6.5(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第6話演出:生野慈朗
脚本:大石静オーソドックスではあるけど
ハートフルなドラマ性という意味では
今までで一番だった。最後に子供部屋の扉をぶち破る
ケンちゃん(山口智充)が格好良かったな。時代的な背景としてセリフに登場したアイテムは、
100円ライター、ほっかほか弁当、
ロッキード事件、ウーマンリブ、
木綿のハンカチーフ、時代、などなど。“そのうちカメラも使い捨てになるんやないか”
“そのうち「ダディ」ってタイトルの本が流行ったりしてな”
という今だから笑えるセリフもあった。ドラマ的には愛子(小池栄子)がそろそろ動き出しそうだ。
採点 7.0(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第7話演出:松原浩
脚本:大石静やっぱりうまいなあ。
今回なんか、
かなりオーソドックスなストーリーなのに、
ちゃんと見ごたえのあるドラマに仕上げている。
大石静の基礎力の高さを感じるな。引越業の話としては、
変わったモノ(今回はヘビ)の搬送と、
名古屋の嫁入りに関するエピソード。メインとなったマッキー(藤原紀香)と
ケンちゃん(山口智充)の子作りの話とも絡んでいて
見やすかった。徐々に愛子(小池栄子)が
自分の意見を言いだしているのも見逃せない。採点 7.0(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第8話演出:森一弘
脚本:大石静一転してかなりフィクション性の高い展開。
あや姉(江波杏子)が突然帰ってきて
いきなりヤクザの親分を動かすってのは出来すぎだなあ。
まあ、ドラマ本来の作り方ではあるんだけどね。それにしても前回に引き続き、
山口智充は予想以上の熱演。普段はラブラブなだけなのに
ビシッとキメる所はキメてくれると、
夫婦の絆があってこそ
あそこまで会社を大きくできたことがよく分かる。最後にケンちゃん(山口智充)が
坂田(保坂尚輝)に殴りかかろうとしたシーンがあったから
今回はこれで良しとしよう。採点 6.5(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第9話演出:生野慈朗
脚本:大石静前半は殺虫サービスなどの発案から
ラジオ出演とつながり、
一気に仕事が増えて会社が大きくなるという展開。そして後半はついに愛子(小池栄子)が造反し、
勇介(佐々木蔵之介)と優秀な人材を連れて独立してしまう。愛子の理論も正しいだけに、
安い敵役になっていない所がいい。これでドラマとしても引き込まれる要素が多くなった。
採点 7.0(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 第10話
演出:森一弘
脚本:大石静今までのゲスト、
つまりアームが引越を担当した家族なども登場して、
アームが人生を運んできたことが
ストーリー上でも示される。ビジネス重視のアーイとの対比とも取れるけど、
最も芯となる設定をきちんと押さえていて
ブレのない描き方だった。それにしてもこのドラマの小池栄子はいいなあ。
とくに序盤からの流れで見ていくと
すごくいい役作りをしてると思う。芸達者の佐々木蔵之介と絡んでも
違和感なく見ていられるしな。
一皮むけたか?最終回前の笑えて泣ける、いい回だった。
採点 7.0(10点満点平均6)
『あなたの人生お運びします』 最終話演出:生野慈郎
脚本:大石静展開としては予定調和なんだけど、
見事な大団円だったと思う。とくにマッキー(藤原紀香)とケンちゃん(山口智充)が
勇介(佐々木蔵之介)と愛子(小池栄子)を迎えに来た時、
勇介が愛子に怒鳴ったシーンは盛り上がったな。この作品はあくまでもフィクションのドラマだったわけだけど、
アート引越センターの成功は誰もが知っているので、
エピソードに説得力があった。ドキュメンタリーではないのに
そんな雰囲気も味わえる、
ある意味、新しいタイプの作品だったと思う。キャスティングもほぼ無駄が無くて、
主役の藤原紀香や山口智充だけでなく、
脇役も見事にハマっていた。最高級の作品ではなかったかもしれないけど、
ドラマ史的には見ておくべき作品だったと思う。採点 7.5(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★☆☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★☆☆
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★★★☆
話題性 ★★☆☆☆平均採点 6.82(10点満点平均6)
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