タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『オレンジデイズ』 4/11〜
TBS系 日曜9時 期待度 ★★★★☆就職活動中の大学生と、
かつてはバイオリニストとしての将来を嘱望され
今は聴覚を失った女子学生のラブストーリー。
脚本は北川悦吏子。個人的に北川悦吏子が書くセリフには
ここ数年、寒気が止まらないけど、
「愛していると言ってくれ」から9年、
携帯メールがある時代に手話を恋愛物語でどう使うのか、
非常に興味がある。美しい顔、美しい指で
下品な手話を平然と使う女子大生に(←この設定がすでに寒いんだが)
柴咲コウ。年上の彼女(小西真奈美)がいるものの、
柴咲と出会うことで毎日に変化が訪れる大学生に
妻夫木聡。今期のビッグタイトルであることは間違いないので
素直な気持ちで見てみよう。
『オレンジデイズ』 第1話プロデュース:植田博樹
演出:生野慈朗
脚本:北川悦吏子
音楽プロデュース:志田博英
音楽:佐藤直紀
主題歌:「sign」Mr.Children
制作:TBS、TBSエンタテイメント
出演:妻夫木聡、柴咲コウ、成宮寛貴、瑛太、小西真奈美、小日向文世、
風吹ジュン、山田優、上野樹里、岡あゆみ、佐藤江梨子、他オープニングカットは
「愛していると言ってくれ」を意識した
オレンジをもぎるシーンから。
(「愛してる〜」は渋谷のキャットストリートで
リンゴをもぎるシーンからだった)櫂(妻夫木聡)の友人、
翔平(成宮寛貴)と啓太(瑛太)のキャラも自然で、
全体的には予想よりもずっと良かった。少し気になったのは、
柴咲コウの表情も含めた沙絵のキャラクターと
沙絵が手話を使った時の字幕の文体が
あまり合っていなかったこと。まあ、この初回では
なぜ沙絵が相手も分からない遊園地デートを
簡単に受け入れたかが描かれなかったので、
どちらに問題があるのかは分からないけど…。
沙絵のキャラクターに関しては
もう少し様子を見た方がいいかもしれない。登場人物は少ないわりに、
翔平の妹に上野樹里(「てるてる家族」の秋子)、
櫂の妹に岡まゆみ(「金八5」のちはる)と、
脇はかなり豪華。心配はやっぱり白石美帆だな。
この初回も出番が少ないのに不安はあった。
ヘンに足を引っ張らなければいいんだけど。ハッキリ言って今のところ
作品としての新鮮味はない。
ただ、その経験値から
北川悦吏子の構成のうまさは感じた。
演出も丁寧だった。本当にラブストーリーの王道を歩むなら
今後も徹底的に完成度を上げていくしかないだろう。採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第2話
演出:生野慈朗
脚本:北川悦吏子
翔平(成宮寛貴)と啓太(瑛太)が
沙絵(柴咲コウ)のバイオリン探しを手伝うのはいいけど、
櫂(妻夫木聡)が2人に頼むシーンも欲しかったな。
編集でカットされた可能性は高いけど…。まだ2話目なので
翔平と啓太のキャラを掘り下げるためにも、
3人の関係性を示すためにも何とか入れて欲しかった。そのかわり、バイオリンが見つかった時の沙絵のリアクション、
バーでケンカを始めた櫂の行動などから、
主人公2人のキャラはかなり明確になってきた。まだ恋だとは思っていない櫂と、
すでに櫂に好意を抱いている沙絵、
そして2人に嫉妬しはじめた真帆(小西真奈美)。啓太は茜(白石美帆)に惚れるんだけど、
結局、茜は翔平に惹かれていくというお約束も見えつつ…。
まさにラブストーリーの王道だ。ありふれてはいるけど精度は高いと言っていい。
北川悦吏子の狙い通りにドラマは進んでいると思う。採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第3話演出:土井裕泰
脚本:北川悦吏子櫂(妻夫木聡)と真帆(小西真奈美)が
やがて別れるのは明らかなので、
真帆の同級生・佐野(柏原崇)が早くも登場。もちろん、真帆と佐野があっさりつき合うようになる、
なんてことはないと思うけど、
こういう人物を出しておけば
真帆が可哀想、という印象は薄められる。ストーリーは本当にびっくりするくらい意外性がないな。
でもそれだけに北川悦吏子の基礎テクニックは認めざるを得ない。妻夫木聡の自然な演技も当然、貢献度は高いんだけど、
内容よりもツボを押さえた作り方のほうに感心させられる、
ある意味、サンプル的な作品だ。最終回近くになって沙絵(柴咲コウ)が、
神様のメッセージはあったわ、
私をあなたに会わせるためよ、とか言いそうでコワイ(笑)採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第4話演出:土井裕泰
脚本:北川悦吏子沙絵(柴咲コウ)のキャラクターが
やけにさわやかになったなあ。
もちろん、櫂(妻夫木聡)と出会って変わった、
という部分もあるんだろうけど、
下品な手話も平気で使うなどの性格的な部分も
まったく表に出なくなったのはちょっと残念。あと、放送前、
植田Pは“今の感覚”を大事にしたい、
みたいなことを言ってたけど、
そのあたりはどうなんだろう。何となく30代以上のノスタルジックな感情に
訴えかける部分が多いような気もしてきた。
まあ、実際問題、今のドラマは
F2層にも支持される内容じゃないと
営業的に厳しいのは確かだろうけど。沙絵が母親(風吹ジュン)に謝るシーン、
翔平(成宮寛貴)と茜(白石美帆)が
ホテルのロビーで話すシーンは悪くなかった。だからこそ今回は白石美帆の表情の単調さが
ひときわ目立ってしまっていたとも言える。採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第5話演出:今井夏木
脚本:北川悦吏子櫂(妻夫木聡)が泣いている所へ
沙絵(柴咲コウ)が来るシーンなんか、
やっぱりうまいよな、北川悦吏子は。
もちろん、手話(字幕)ナシだったら
かなり寒いセリフの応酬ではあるんだけど。キャンプを“いかにも青春みたいなやつ”と沙絵に言わせたり、
啓太(瑛太)に“いい人で終わっちゃう”と自分を分析させたり、
確信犯的に王道を突き進んでいることを
エクスキューズした描き方は悪くなかった。
こういう客観性はさすがに今の時代、入れた方がいい。ストーリー的には沙絵のセリフの中にあった
“私、恋はしないしね、もう”が次のフラグか。
もう、ってことは前があったわけだし。そうなったらやっぱり王道だなあ。
採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第6話演出:生野慈朗
脚本:北川悦吏子そして永井大が登場。
うまく溶け込めるかな、この雰囲気に…。一方、啓太(瑛太)は見事に玉砕し、
誰もが分かっているように
茜(白石美帆)の気持ちは翔平(成宮寛貴)へ。啓太にも救いの道を残しておくのがセオリーだけど、
素直に考えれば櫂(妻夫木聡)の妹か。
わざわざ岡まゆみをキャスティングしてるわけだし、
モテないけどいい人は、
たいてい主人公の妹が好きになってくれる。3箇所ぐらい雑なセリフはあったけど、
今回もきちんと青春ドラマはしていた。採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第7話演出:生野慈朗
脚本:北川悦吏子ここまで柿崎(永井大)を
櫂(妻夫木聡)と沙絵(柴咲コウ)の踏み台として描くと
かえって気持ちいいよな。そういう意味では永井大くらいが
丁度いいキャスティングだったかも。
とてもバイオリンの名手だったとは思えなかったけど…。まあ、本人も放送が終わったら
速攻でそよ子(山田優)と
モナコグランプリのレポートしてたしね(笑)それはいいとして、
「愛していると言ってくれ」の頃には無かった
携帯メールでの北川節が今回の見どころか。バッテリーが切れた展開はさすがにやれやれだったけど
ラストはそれなりにカタルシスがあった。個人的に好きだったのは
沙絵が初めて柿崎とデートへ行く前のシーン。
沙絵が櫂に靴を投げたりしたところね。
ああいうトーンのシーンが一番うまいと思う、北川悦吏子は。今回でとりあえず2人の気持ちが確かめ合えたので、
次回はラストへ向けてもう一度2人の関係を沈めるという感じかな。それにしても、
あゆみ(上野樹里)はパッタリ出て来ないな。
翔平(成宮寛貴)、茜(白石美帆)、そよ子のパーツに
絡めてくるはずだけど、
さすがに放ったらかし過ぎないか?メインの櫂と沙絵のパーツが良くても、
他があまりにも雑だと全体的な印象は悪くなるので
サブストーリーもしっかり描いて欲しい。採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第8話演出:土井裕泰
脚本:北川悦吏子沙絵(柴咲コウ)が櫂(妻夫木聡)とつき合う自信がないのは
耳が聞こえないからでなく、
恋をして普通の女の子になってしまったから、
という切り口は良かった。もちろん、そのことにまったくこだわりがないわけじゃないので、
海辺のデートで櫂が言った
“しゃべれないお前もカッコ悪いかもしれないけど、
こんな大声でしゃべりまくるオレもカッコ悪いぞ!”
は効果的だった。今回はこの主人公2人と
翔平(成宮寛貴)・茜(白石美帆)の対比が面白かった。櫂も沙絵とつき合うのは覚悟がいるけど、
翔平は翔平で茜とつき合うのは覚悟がいる。
櫂と沙絵が特別なカップルではないことを示すような見せ方で
好感が持てた。今回の白石美帆は悪くなかったな。
“なんなら泊まってく?”
という言い方はとくに良かった。そしてラストでは沙絵の体調に変化が…。
おかしな展開にならないといいんだけど。どうせなら沙絵の耳が聞こえるようになる、
ピアニストとして成功する、
今度は櫂が劣等感を抱くようになる、
という展開の方が面白いんだけどな。まあ、次回を待とう。
採点 7.0(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第9話演出:今井夏木
脚本:北川悦吏子結局、沙絵(柴咲コウ)の聴覚は
さらに悪くなりつつあるものの、
手術という選択肢もある、という展開。
予想以上にフツーだった。それはいいんだけど、
今回はもう少し医学的な説明が欲しかった。
それがテーマでないのは分かるけど、
さすがにこういうストーリーの場合はね。
説得力を持たせるためにも必要だった。基本的に今回のエピソードは
ラスト2回に向けてのフリがほとんどだったので、
ここまでの8話に比べると盛り上がりには欠けた。こういう回をうまく作るのは難しいと思うけど、
個人的にハルキ(沢村一樹)の登場はマイナスだったと思う。もちろん、ラスト2回で重要な役割が与えられているのかもしれない。
でも、少なくとも今回に限って言えば、
あまりにも唐突な登場で
これまでの雰囲気を崩すだけだった。それにしても
櫂(妻夫木聡)の妹(岡まゆみ)の存在は完全無視だな。
撮影が始まってから企画変更があったのかも。だとしても、メインの5人と
それ以外の人物の描き方に差があり過ぎだ。
北川悦吏子らしいと言えばらしいけどね。採点 6.5(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 第10話演出:今井夏木
脚本:北川悦吏子「愛していると言ってくれ」と同じようなラストになりそう。
あの時は晃次(豊川悦司)に比べて
紘子(常盤貴子)があまりにも子供だったので
時間を経過させた意味はあったんだけど…。沙絵(柴咲コウ)がドイツへ行くことに決めた理由は納得できた。
真帆(小西真奈美)の再登場も
櫂(妻夫木聡)と真帆の関係だけを見れば
意味はあったと思う。でも全体的なストーリーとしては
作為的になりすぎた感もあるな。櫂と沙絵が別れ話をするシーンは良かった。
“そんな泣けること言うのは反則だよ”
というセリフさえなければ…。あれで一気に冷めた。
たぶん北川悦吏子自身が
もうこの世界に浸ってるんだろうな。
登場人物の言葉というより、
横にいる北川悦吏子の言葉のようだった。
まあ、今に始まったことじゃないけど。主演が妻夫木聡と柴咲コウで本当に良かった。
2人に助けられている部分は相当にあると思う。採点 6.5(10点満点平均6)
『オレンジデイズ』 最終話演出:生野慈朗
脚本:北川悦吏子ラストカットは良かった。
銀座で櫂(妻夫木聡)に再会した時、
沙絵(柴咲コウ)が思わず叫んだシーンに
インパクトがあったので、
あのまま声を出さなくてもかまわなかったと思う。それだけにラストでもう一度沙絵が
“いってらっしゃい”と言って、
櫂の本当に嬉しそうな顔で終わったのは効果的だった。ていうか、
オレンジを取ったシーンで終わらなくてよかったな。
あそこで終わってたら妻夫木聡が形無しだった。
豊川悦司は手を伸ばして取ってあげたわけだし…。この最終回、ストーリー的には結局どうってことなかったけど、
シーンとしては翔平(成宮寛貴)と茜(白石美帆)が
ラウンジで再会した場面が意外に良かった。
最後の方は白石美帆もかなり頑張ったんじゃないだろうか。櫂の妹(岡まゆみ)、そよ子(山田優)らに関しては、
当然のごとく一切フォロー無し。
今思えばあゆみ(上野樹里)だって必要なかったキャラだけど。作品全体については、
いくらラブストーリーの王道とはいえ、
ここまで新しさを拒否して
セオリー通りの焼き直しに徹したのは、
ある意味、すごかったと思う。じゃあ誰にでも作れたのかと言うと
もちろんそんなことはない。
考えるのと、作品を完成させるのでは、
まったく別の作業だからだ。これだけのクオリティーに仕上げたスタッフの
経験値の高さは認めるべきだと思う。テレビ局が同じような作品をまた作ること自体は別にかまわない。
年数が経てば新しい視聴者は増えているわけだし、
過去の作品をみんなが見直すわけでもないから。ただ、北川悦吏子はどうなんだ、という問題は残る。
若い脚本家が書くならともかく、
北川悦吏子じゃあまりにも後ろ向きだしね。不得意なサスペンスを書いて叩かれたりしたほうが
脚本家としては確かに前向き。
でも過去にそんなことがあったら
その反動で次は思いっきり後ろ向きなるかも。
…とか言って、勝手に弁護しておこうか(笑)この作品で懐かしさを感じた人は多いかもしれないけど、
一番ノスタルジーを感じていたのは北川悦吏子だったと思うよ。
いろんな意味で。最後に、主演の妻夫木聡と柴咲コウは本当に立派だった。
彼ら無くしてこの作品はあり得なかったと思う。
きちんと妻夫木聡・柴咲コウ版
「愛していると言ってくれ」になっていたしね。間違えた。
「いってらっしゃいと言ってくれ」だった。採点 6.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★☆☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★★☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ☆☆☆☆☆
話題性 ★★★☆☆平均採点 6.82(10点満点平均6)