タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『プライド』 1/12〜
フジ系 月曜9時  期待度 ★★★★★

アイスホッケーにすべてを捧げる青年を主人公にした
青春エンターテイメント。

大多亮、現場復帰後初の月9で、
脚本は野島伸司、主演は木村拓哉。

野島伸司が連ドラデビューをした作品
「君が嘘をついた」をプロデュースしたのが大多亮だった。

その後、このコンビは
「愛しあってるかい!」「すてきな片想い」
「101回目のプロポーズ」「愛という名のもとに」
「ひとつ屋根の下」などのヒット作を生み出していく。

今回、大多亮が月9のテコ入れに編成から呼び戻され、
その最初の作品に野島伸司を起用したのは興味深い。
おそらく、エンターテイメントに徹して
素直に数字を取りに行くと思う。

これは月9のテコ入れというより、
テレビドラマのテコ入れと言ってもいいからだ。

木村拓哉は以前、
「リップスティック」で出演が決まっていたが、
直前の企画変更に伴って役を降りたため、
今回が初の野島作品。

これに「101回目のプロポーズ」
「愛という名のもとに」の頃から演出補として参加し、
「この世の果て」「リップスティック」なども撮った
中江功がメイン演出に座る。

大多亮、野島伸司、木村拓哉、中江功。
どこまで多くの人を惹きつけ、
どこまで作品のクオリティーを上げるか、
これはこの4人の“プライド”をかけた作品と言ってもいいだろう。

たぶん直球で来る。
それで打たれたら終わり。
いずれにしても楽しみだ。




『プライド』  period 1

企画・プロデュース:大多亮
プロデュース:杉尾敦弘、牧野正
協力プロデュース:東海林秀文
演出:中江功
脚本:野島伸司
音楽:吉俣良
主題歌:「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」クイーン
制作:フジテレビ
出演:木村拓哉、竹内結子、坂口憲二、市川染五郎、佐藤浩市、
   石田ゆり子、時任三郎、中越典子、佐藤隆太、MEGUMI、
   滝沢沙織、鈴木一平、クロード岡本、他

注目の視聴率は28%(関東)。
普通なら十分に高い数字だけど、
木村拓哉主演ドラマの流れからすると…。

仕方ないよなあ。
木村拓哉ファン以外には相当寒いシーンが多かったし。

ストーリーとしては前振りとなるエピソードが
いくつか撒かれてはあった。
でも現段階ではそれも想像される範囲で
ワクワクするような吸引力がなかったと思う。

“古き良き時代の〜”というフレーズを
直接言ってしまうあたりが個人的には一番引いた。

それを言わずに亜樹(竹内結子)が
他の女性とは違うことを表現して、
一見チャラチャラしてるハル(木村拓哉)が
そこに惹かれるというのなら許せるけど…。

ていうか、根本的に野島伸司と木村拓哉の相性は最悪かも。
いや、キザな男にキザなセリフを言わせる危険性は
十分に想像できたけど、
そこに何か新しい可能性はあったと思うんだけどな。

中江功の演出も疑問点が多かった。
亜樹、百合(中越典子)、知佳(MEGUMI)が
ファーストフード店で話すシーンは明らかにやり過ぎだったし。

橋の上のシーンのMEGUMIが予想外に自然だったのは収穫。
佐藤隆太と共に今後もうまくバランスを取って欲しい。

それにしても一般的なドラマとしては前途多難だな。

             採点  5.0(10点満点平均6)




『プライド』  period 2

演出:中江功
脚本:野島伸司

関東の視聴率は約3%ダウン。
でもあの初回からすれば頑張って堪えた方だと思う。

で、その第2話の内容は、
まだまだ寒いシーンは多いものの
だいぶ野島伸司らしくなってきた。

中江功の演出も今回は良かったと思う。
ラストはかなりテンポがあったし。

ただ、古き良き時代”は今回の使い方でかなりカバーできたけど、
“メイビー”はまだ取って付けたようでキツイなあ。

シーンによって出来に極端な差が出た回だった。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『プライド』  period 3

演出:澤田鎌作
脚本:野島伸司

恋愛部分のテーマに関しては
「世紀末の詩」や「ゴールデンボウル」でも
似たような描き方をしていたので新しさは感じないけど、
野島伸司らしさは出ていた。

演出も澤田鎌作の方がテンポが出たし、
エンターテイメント部分も全体的に盛り上げることができた。
このあたりが今回の月9の最低ラインと言えるだろうな。
(最低でもこのクオリティーは維持しないとツライ)

お願いだから“メイビー”だけは何とかして欲しい。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『プライド』  period 4

演出:平井秀樹
脚本:野島伸司

ハル(木村拓哉)が憧れる蓉子(石田ゆり子)は、
愛する男の帰りを待てなかった女だった、
というのが今回のトピック。
これは今後のカギになりそうだ。

ハルと亜樹(竹内結子)が毎回のエピソードで
少しずつお互いの本質を理解していく部分は
それなりに描けていると思う。

前回の真琴(佐藤隆太)に続き、
今回は友則(市川染五郎)のキャラも分かりやすく描けていた。

ただ、やっぱり木村拓哉が絡むセリフ回し(とくに前半)は
依然としてキッツイなあ。
今回なんか北川悦吏子を彷彿とさせる寒さだったもんな。

ヘタをすると視聴者も寒くてアイスマンになってしまうという
複雑な二重構造なのかも(笑)

ラストでハルが亜樹を振り返るカットなど
カッコイイ映像はあるんだけどね。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『プライド』  period 5

演出:澤田鎌作
脚本:野島伸司

大和(坂口憲二)が昔、
事故で人を死なせたことがある、
というエピソードはいくらなんでも唐突すぎ。

ただ、一話完結の話と考えれば
野島伸司らしいエピソードだった。
完成度はかなり低かったけど。

いいセリフもいくつかあるのに
その10倍くらい寒いセリフがあるので
全体的には今回も見ていて
居たたまれない気持ちの方が強かった。

まあ、加害者ではあるけど、
どう償えばいいのか分からない、というネタは、
例のキムタク事件と引っかけてるんだな、
と歪んだ見方をするとそれはそれで面白かった(笑)

             採点  5.5(10点満点平均6)




『プライド』  period 6

演出:中江功
脚本:野島伸司

賛否両論だとは思うけど、
今回は見どころがあった。

亜樹(竹内結子)が
“女でいることが怖くなった”と話し始めた内容は
ものすごく野島伸司らしい女性観が出ている部分。

そこに至るまでの母親(松坂慶子)のエピソードも
効果的に構成されていて、
野島伸司が好きな人は「キター!」って感じだったと思う。

最後のキスシーンを気持ち悪いと感じた人も多いだろうけど、
あれはある意味、母親とのキスだからね。
嫌悪感を抱く人がいても不思議ではないし、
それは描き方として成功しているとも言える。

とにかく好き嫌いは別にして興味深い回だった。

「乱歩R」」では黒蜥蜴を演じた松坂慶子は
まさに二十面相的な多面性のある母親を演じていた。
これも作品としては効果的だった。
松坂慶子が“メイビー”って言ったらどうしようかと思ったけど…。

中江功の演出も緩急があって良かった。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『プライド』  period 7

演出:平井秀樹
脚本:野島伸司

亜樹(竹内結子)の昔の恋人・夏川(谷原章介)が戻って来て、
ハル(木村拓哉)、亜樹の内面的な葛藤が始まるという展開に。

物質的な要求が強い百合(中越典子)と
精神的な要求が強い(?)亜樹との対比も含め、
大きな流れは間違ってないと思う。

亜樹にも何だかのトラウマはありそうなので、
そのあたりのエピソードが
夏川との絡みで出てくると面白いんだけど…。

ただ今回も前半の15分はとくにキツかった。
終盤の竹内結子の演技は素晴らしかったと思うので、
彼女にあまり寒いシチュエーションを演じさせるのは
可哀想な気がする。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『プライド』  period 8

演出:澤田鎌作
脚本:野島伸司

“プライドを捨てられるのもプライド”は
そのまま「彼女が死んじゃった。」でも使っていたので、
大事なセリフでかぶってしまった格好。

いずれにしても、亜樹(竹内結子)との関係を
“過ちは無かった。真実で結ばれた”と
夏川(谷原章介)に告げたハル(木村拓哉)と、
“つまらない女と嫌われる前でよかった”と言う亜樹が
今後、どうなるのか。

次回、なぜ亜紀が夏川を2年間も待っていたのか、
待たなければいけなかったのが語られる、と思う。

大和(坂口憲二)と百合(中越典子)の関係、
そこに絡む山本(山下徹大)の存在は問題ないけど、
兵頭(佐藤浩市)の言う“氷の女神”を
このストーリーにどうムリなく組み込んでいくのか。
そこに注目したい。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『プライド』  period 9

演出:中江功
脚本:野島伸司

夏川(谷原章介)の人物描写は
思ったほど深くなかったなあ、少なくとも今回は。
ちょっとガッカリ。

序盤からハル(木村拓哉)が
亜樹(竹内結子)の目にキスしていた描写に意味があって、
食事をしながらハルが亜樹の瞼のキズを見つめるシーンは良かった。

しかし、四季の歌によると、
「秋を愛する人は心深き人」のはずなんだけど…。

             採点  6.0(10点満点平均6)




『プライド』  period 10

演出:澤田鎌作
脚本:野島伸司

亜樹(竹内結子)との結婚を条件に
夏川(谷原章介)が告訴を取り下げるという
おそろしくありふれた展開に。

まあ、ここはホッケーに対する想いと亜樹への気持ちを
ハル(木村拓哉)がどう消化していくかという問題があるので
最終回まで様子を見てみるか。

それより今回、
亜樹が夏川に突き飛ばされたことに関して
“違う一面を見た”とか言ってたぞ。
なんだよ。DV系の男じゃなかったのかよ。
ホントにガッカリな展開だな。

百合(中越典子)の心境の変化も
山本(山下徹大)の感情の処理の仕方も
みんなあっさりとした描き方のまま。
どうしたんだろう、野島伸司は。

物語の終盤、やっと野島伸司らしく盛り上がりそうだったのに
結局、大したことないまま終わりそうな予感。
ま、とりあえずどんな最終回にするのか興味はあるけどね。

             採点  5.0(10点満点平均6)





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