タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『彼女が死んじゃった。』 1/17〜
日本テレビ系 土曜9時  期待度 ★★★★☆

映画「私をスキーに連れてって」「病院へ行こう」
「僕らはみんな生きている」などの一色伸幸が
17年ぶりに連ドラを手掛ける。

ひょんなことから一夜を共にした彼女(木村佳乃)が、
翌日、謎の自殺。
自堕落な生活を送っていた主人公(長瀬智也)は、
彼女の妹(深田恭子)と彼女の婚約者を名乗る男(香川照之)と一緒に
その死の理由を探る旅に出る。

シリアスとコメディーが絶妙のバランスで描かれるはず。
メイン演出は「すいか」の佐藤東弥。
一色伸幸を引っ張り出したことからしても、
「すいか」と同じ主旨で企画された作品のような気がする。

これはとりあえずチェックしておくべき。




『彼女が死んじゃった。』  第1話

チーフプロデュース:梅原幹
プロデュース:田中芳樹
演出:佐藤東弥
脚本:一色伸幸
原作:一色伸幸、おかざき真里
音楽:CHORO CLUB feat.Senoo(SMJI)
主題歌:「トランジスタGガール」TOKIO
制作協力:5年D組、太田雅晴
制作:日本テレビ
出演:長瀬智也、木村佳乃、深田恭子、香川照之、西村雅彦、
   いしのようこ、赤坂七恵、他

原作はコミックだったんだね。
2巻までしか出てないみたいだけど…。

当然の事ながらテレビなのでハードなSEXシーンはナシ。
それはまあしょうがないとして、
ゆかり(木村佳乃)とハジメ(長瀬智也)の短くも濃密な時間は
もっと丁寧に描くべきだったんじゃないかなあ。
今後に響かなければいいけど。

笑いを取れるポイントで積極的に笑わせてない点も
今後にどう響くか。

映像はそれなりに美しく撮れていると思うので、
テレビならではの良さが出ることを期待したい。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  第2話

演出:佐藤東弥
脚本:一色伸幸

原作の自分探し的な部分は出てきたと思うけど、
ドラマとしてのトーンが整理されてない感じ。
スタッフによって狙い所にズレがあるとか?

高岡早紀は色っぽかった。

             採点  6.5(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  第3話

演出:吉野洋
脚本:一色伸幸

原作では妹とソープランド嬢の
レズシーンがあるエピソード。
テレビ的にうまくアレンジできていたと思う。

お酒の力を借りてだけど
玲子(深田恭子)が思いをぶちまけたシーンは
それなりに伝わるものがあったし。

でも今回は香川照之に尽きる。
マメ知識さんの苦悩とゆかり(木村佳乃)に対する想いを
わずかなカットでうまく演じていたと思う。

2人目の演出家で少しトーンが安定してきたか?

             採点  7.0(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  第4話

演出:猪股隆一
脚本:一色伸幸

問題は多々あるけど、
描きたいことは徐々に描けてきた感じ。

でも、蒲田(西村雅彦)と桜(いしのようこ)は
今のままならいらないよなあ。

なんで蒲田の船を舞台にしたんだろう。
ちゃんとハジメ(長瀬智也)の家を設定して
そこに八千代(赤坂七恵)がずっといた方が面白かったのに。

まあ、細かいことは気にせず
テーマだけを追って見るみるか。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  第5話

演出:佐藤東弥
脚本:一色伸幸

渡部(岡田浩暉)の歌は効いた。
こういう感動のさせ方はコミックにはできないもんな。

あの「555」の詩そのものが
優れた詩だとは思わないけど、
登場人物たち、とくにハジメ(長瀬智也)が
自分の生き方を考えるキッカケとしては
最高のシチュエーションになった。

問題は、ゆかり(木村佳乃)が
ハジメのことを自分自身のようだと思った理由と要素を
あの初回で視聴者に共感させられるのか。
今後の見どころはそこだと思う。

             採点  7.5(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  第6話

演出:南雲聖一
脚本:一色伸幸

分かりやすい描き方ではあったけど、
今回もテーマがハッキリしていて悪くなかった。

ただ、前半のももえ(陣内孝則)の部分に関しては、
もう少し丁寧に描いてもよかった感じ。

“プライドを捨てられるのもプライド”
というセリフが後半にかかってくるのはいいんだけど、
ももえが“先を越されたな”と言ったあと、
夜空を見上げながら“また飲もうね”とつぶやくシーンは
もっとグッと来てもいいはずだった。

陣内孝則の役作りのせいか、
ももえの生き方の哀しさは受け取れなかった。
そこが残念だった。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  第7話

演出:猪股隆一
脚本:一色伸幸

携帯巡りで出会う人々が語る各エピソード自体は
ひとつの断片に過ぎないんだけど、
そこから引き起こされる、ハジメ(長瀬智也)、
玲子(深田恭子)、良夫(香川照之)の心の動きは
非常に繊細に描かれてきた。

だからこそ最後に登場した
ゆかり(木村佳乃)のホロコムには
インパクトがあった。

“この私は永遠です”
その言葉を3人がそれぞれの想いで聞いたと思う。
これまでの描き方はここに説得力を持たせるものだった。

ラスト2話。
どんな締め方をするんだろうか?

             採点  7.5(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  第8話

演出:佐藤東弥
脚本:一色伸幸

やっとハジメ(長瀬智也)が携帯にメモリーされた
ゆかり(木村佳乃)の連絡先に気がついた。

ゆかりの実像に少しずつ近づいて
ようやく魂の叫びが耳に届いたハジメ。
でもやっぱりそれは“遅刻”だった。

多くの人を楽しませ、勇気づけたゆかり。
多くの人の心に生き続けるゆかり。
叶わぬ夢を追い続けたゆかり。
混乱し、落ちていったゆかり。

はたして本当にゆかりは
夢を追うことから逃げ、
生きることからも逃げたのか?

そしてゆかりの死を
3人はそれぞれどうやって受け止めていくのか?

泣きそうだな、最終回。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『彼女が死んじゃった。』  最終話

演出:猪股隆一
脚本:一色伸幸

ゆかり(木村佳乃)の自殺の理由を196人に聞けば、
196通りの理由がある。
そしてそれはすべて本当。
この結論を消化不良に感じた人もいたかもしれないけど、
個人的には非常に納得のいく締め方だった。

ハジメ(長瀬智也)、玲子(深田恭子)、良夫(香川照之)、
3人の心の動きを見ているだけでも、
人はそれぞれの人生を生きている、
という部分がきちんと描けていた。
これは立派だったと思う。

蒲田(西村雅彦)と桜(いしのようこ)の2人も、
最後に蒲田がハジメに言った
“お前には明日がある。俺には愛と金しかない”
というセリフでその存在意味を示した。

もちろん、八千代(赤坂七恵)の存在も、
ハジメが自分の生き方を見つめ直す上で重要な存在だったし。

前にも書いたように、
たった一夜でゆかりがハジメを
自分と同じだと感じたエピソードにはもの足りなさを感じた。

ドラマの前半で長瀬智也が作っていた
軽い雰囲気のハジメのキャラクターは工夫がなくて、
これにも不満はあった。

この最終回に関して言えば、
イメージ的なものだったとしても、
花火の打ち上げは強引だったと思う。

ただ、作品全体のテーマ、トーン、そしてその作法に、
見どころは多かった。
何とも言えないせつなさを表現できていた。
その意味ではやはり「すいか」に近い作品だったと思う。

死んでしまったゆかりの物語ではなく、
実にリアリティーのある、
生きている者たちの物語だった。

             採点  8.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★★
                  新鮮さ ★★★★☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  7.11(10点満点平均6)





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