タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『しあわせのシッポ』
4/11〜
TBS系 木曜10時 期待度 ★★★☆☆2年前に母を亡くし、
それ以来ひとり暮らしを続けてきた
美桜(水野美紀)と
20年前に離婚した美桜の父親、
八郎(長塚京三)の関係を描く
親子の物語。“お父さんは、娘に恋する天才です。
娘は、それを知らない天才です。”
というキャッチコピーがすべてを表している。坂口憲二、小泉孝太郎、原沙知絵、
佐野史郎、宮崎あおい、新山千春など
共演者も充実。これも見落としてはいけない
秀作になる予感がする。
『しあわせのシッポ』 第1話
プロデュース:矢口久雄、丹羽多聞アンドリウ、安倍純子
演出:佐々木章光
脚本:水橋文美江
音楽:服部隆之
主題歌:「キヲク」Every Little Thing
制作:TBS、テレパック
出演:水野美紀、長塚京三、坂口憲二、原沙知絵、佐野史郎、新山千春、
小泉孝太郎、国分佐智子、宮崎あおい、あめくみちこ、鈴木葉月、
山田優、栗田梨子、神保悟志、宮内乙、松川尚留輝、他2年半ぶりに復活したTBSの木曜劇場。
カネボウの1社提供になってるよ!途中のCMに登場したタレントは
松雪泰子、飯島直子、フェイレイ、米倉涼子、
水野真紀、原田美枝子、稲森いずみ、織田裕二、
そして持田香織。今回はさっそく持田香織(Every Little Thing)が
主題歌を担当したわけだけど、
今後もこういうスポンサーがらみの
キャスティングがありそうだなあ。
(今回主演の水野美紀はクリアホワイトのCMを担当してた)ていうか、資生堂と契約してる女優とかは出られないしね。
1社提供はかなり影響力あると思うし。
(原沙知絵は以前、資生堂のCMに出てたけど
2000年10月で契約は終了している模様)で、肝心の中身なんだけど、
「太陽は沈まない」と同様の
水橋文美江脚本によるセリフの間が多い作品。最近はテンポの速いドラマが多いから
こういう作品ってむしろ新鮮味を感じるな。ただ、水野美紀によるナレーションは少し多すぎた。
とくにタイトルテロップが出るまでの序盤が
やたら長く感じてしまったし。
まあ、このあたりは2回目以降に解消されると思うけど。映像は全体的に美しくて、
演出としても美桜(水野美紀)と八郎(長塚京三)が
20年ぶりに会ったマンションでのシーンはかなり良かった。水野美紀は前クールの「初体験」に続く連投だけど、
ちゃんと役作りができてる。立派だ。美桜と八郎の父娘関係はもちろん、
幼なじみの美桜と陸(坂口憲二)の関係も今後どう描くか。
個人的には宮崎あおいがどう絡んでくるかも楽しみだ。これはビデオにでも撮って
時間のある時にゆったりと見るといいかも。採点 6.5(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第2話演出:佐々木章光
脚本:水橋文美江雰囲気のあるドラマなんだけど
今ひとつスムーズに転がってない感じ。20年間、離れていた父親。
本当は想いを寄せている幼なじみ。
家族のようで家族ではない、
微妙な人間関係を描いているので
スパッとした切り口を見つけにくいのが
原因なのかもしれない。よそよそしい父娘の会話や、
ちぐはぐな美桜(水野美紀)と
西寺(小泉孝太郎)の会話などは楽しめる。ただ、作品としての大きな流れが
この2話までに明確になってないところが
かなりのネックだろうな。あと、原沙知絵ね。
普段から手話を使っているようには見えない。
妹の新山千春との会話をもっと増やして
姉妹ではスムーズな手話をしないと
画面をぎこちなくするだけだ。
これは早急に何とかして欲しい。父親の八朗(長塚京三)は
おそらく病気か何かで
最後の数ヶ月を娘と過ごしたいと
思ったんだろうな。この父娘関係をもっと太く描いて
早く作品としての芯を構築して欲しい。採点 6.0(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第3話演出:藤尾隆
脚本:水橋文美江まず今回は、笙子(原沙知絵)と雛子(新山千春)の
手話での会話がさっそくあった。
やっぱりまだぎこちないけど、
クチげんかのシーンにしたところは良かった。
これからも時々こういうシーンは挟んで欲しい。全体のペースは相変わらずまったりとしているけど
今回、初めて美桜(水野美紀)が
八朗(長塚京三)を拒否したり、
ケンカをするシーンもあった。普通、20年も経って父親が急に現れたら
娘が怒ったりしても当然。
それをここまで時間をかけたところに
このドラマの面白さがある。なぜ美桜は父親を恨まなかったのか、
なぜ戸惑いながらも一緒に暮らすことを決めたのか、
そのあたりを密かに思いを寄せる
陸(坂口憲二)と絡めて描いていたところは良かった。そして、娘に拒否されても、
それでも20年間の溝を埋めようとする父親。やっぱり残された時間はわずかということか。
“あの子の20年間を教えてください”と、
陸に頭を下げる八朗の姿はせつなかった。あとは宮崎あおいをどう絡ませて来るかだなあ。
普通以上の家庭に育った、という説明があったけど
複雑なんだろうな、きっと。少なくとも父娘関係に焦点が合ってきたので
次回からかなり見やすくなるような気がする。採点 6.5(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第4話
演出:藤尾隆
脚本:水橋文美江今回はバランスが良かった。
これくらい美桜(水野美紀)と八朗(長塚京三)の
関係にウエイトをおけば、
美桜と陸(坂口憲二)、笙子(原沙知絵)のシーンも
かえって活きてくる。ただ、こうなると宮崎あおいを
ムリに絡ませる必要もないんじゃないか、
という気もしてくるけど…。まあ、まだ序盤だしな。
それにこのドラマは、今期の他の作品とは
まったく違う大きなうねりで攻めてくる。長期戦の覚悟で見た方がいい。
採点 7.0(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第5話演出:佐々木章光
脚本:水橋文美江萌(宮崎あおい)に関しては
どう絡めていくのがまだ分からないけど、
それ以外の部分はやっとまとまってきた感じ。八朗(長塚京三)の、
自分が生きているうちに早く美桜(水野美紀)に
結婚して欲しいという気持ちと、
美桜が本当に好きな陸(坂口憲二)との関係を
応援する気持ちが入り乱れているところが微笑ましい。こうなってくると、
美桜と八朗との関係、
美桜と陸との関係がリンクしてくるので
見ている方も分かりやすい。終わってみると
結構、心に残るドラマになりそうな気がする。あ、でも原沙知絵と新山千春の手話は依然としてダメ。
採点 7.0(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第6話
演出:藤尾隆
脚本:水橋文美江ついに八朗(長塚京三)が倒れてしまった。
その前の美桜(水野美紀)と八朗の雰囲気が良かっただけに、
見ている側もかなりショックだ。ただ、依然として萌(宮崎あおい)や
陸(坂口憲二)と笙子(原沙知絵)の関係が、
うまく本筋に絡んでこないところが残念。
それぞれの描写がおざなりというわけじゃないんだけどね。美桜と八朗の描き方はじわーっとした良い感じなので
このドラマ好きなんだけど、
自信持ってオススメできないところがツライ。採点 7.0(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第7話演出:佐々木章光
脚本:水橋文美江林田(田中実)が美桜(水野美紀)に
“もっとずるくていいのに”
と言ったシーンは良かった。ただ、それに美桜は甘えてしまうのか…。
そして陸(坂口憲二)は笙子(原沙知絵)に
一緒に暮らそうと言ってしまうのか…。いや、美桜と陸が必ずしも
うまくいく必要はないんだけどね。うーん、どこが悪いんだろう。
この手のドラマは
最後まで見ないときちんと評価できないな。採点 6.5(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第8話演出:藤尾隆
脚本:水橋文美江
脚本協力:旺季志ずかやっと話が進展した、と思ったら、
かなり急激な進み方だった。まず、喜好(佐野史郎)が圭吾(田中実)に頼んで
八朗(長塚京三)の病気を調べたことにより、
八朗に残された時間が少ないことを知ってしまう。そして、圭吾が口を滑らせたことで
美桜(水野美紀)が陸(坂口憲二)に想いを寄せていることを
雛子(新山千春)が知ってしまう。八朗の病気の件はまだ喜好にしか知られてないけど、
美桜の気持ちは雛子だけでなく、
陸にも、そしておそらく笙子(原沙知絵)にも
知られてしまった。今後は陸がどう出るかだ。
まあ、ドラマとして美桜とくっつく方が自然なんだろうけど、
個人的には笙子に向かっていって欲しいね(笑)それにしても、
今回のようなキャラを演じてる時の
新山千春は実に自然にいい。
「アナザヘブン」とか「リミット」とか
ちょっとキレた演技をする時もいいし…。
意外と貴重な女優になったよなあ。あと今回は、
萌(宮崎あおい)が美桜の家に来て
タマネギをむくシーンが良かった。
たぶん、今後の美桜と八朗の関係を見て
自分の生き方とかを考えるんだろうな。
ま、それくらいでもいいか、
ここまできたら彼女の役割は。今後はドラマ全体としても
かなり見やすくなるはず。
…う〜ん、それでいいのかどうかは分からないけど。採点 6.5(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第9話演出:佐々木章光
脚本:水橋文美江ついに“お父さん”と呼んだか
“お父さん、手術して”と。
八朗(長塚京三)の気持ちを思うと、
複雑だなあ。それと、今回、
笙子(原沙知絵)を聾唖者という設定にしたのには
理由があったことが明らかになった。
聾唖者は“言葉を見て、感じて”しまう。
だから美桜(水野美紀)が陸(坂口憲二)のことを
好きでないと言っても、
笙子には美桜の本当の気持ちが分かってしまう
という展開だった。陸は美桜の気持ちは関係なく、
自分は笙子が好きだと言ったけど、
八朗の病気のことを知った時、
どういう変化があるか。
今後はそこに注目だ。それにしても圭吾(田中実)は
おしゃべりだなあ(笑)
まあ、こういうキャラクターがいないと
話が進まないからいいんだけど。陸が美桜を選ぶ必要はない。
でも美桜は圭吾と結婚して欲しくない。
…と、勝手な視聴者は希望する(笑)採点 6.5(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第10話演出:大久保智己
脚本:水橋文美江美桜(水野美紀)の花嫁姿を
見るのが夢だった八朗(長塚京三)に
ウソの結婚話を進めてまで
手術を決意させようとする美桜。でも八朗は、
美桜の花嫁姿を見たいんじゃなくて
美桜が幸せになるのを見届けたいんだよなあ。結局、家を出ていく八朗。
そしてまた“しあわせのシッポ”を
つかみ損ねてしまう美桜。今回は陸(坂口憲二)や笙子(原沙知絵)の
心の動きも多少混ぜながら、
八朗と美桜のすれ違いを描いた
かなり重要な回だった。ただ、成功する確率が低い手術を
受けるか、受けないかという考え方の違いは
本当の親子かどうかは関係ないような気がする。だから美桜が言った
“どうして分かり合えないのかな、私たち。
やっぱり本当の親子にはなれないのかな”
という肝心なセリフに説得力がなかった。盛り上がっているシーンだっただけに
ちょっと残念だったかな。あと、この一連のやり取りの中に出てきた
八朗が美桜をたたくシーンは、
明らかにNGだと思う。真横からのアングルだったので、
長塚京三の手が水野美紀の顔にも届いてないのが
まる分かりだった。惜しいなあ、細かい部分がいろいろと。
採点 6.5(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 第11話演出:藤尾隆
脚本:水橋文美江、旺季志ずか手術を受ける覚悟をして
ひとりで病院に入院していた八朗(長塚京三)。
初めてその病院に美桜(水野美紀)が来た時の
2人の会話はかなり良かった。まさにこのドラマのトーンを
そのまま表したような感じで。でも、それだけと言えばそれだけなんだよなあ。
美桜のナレーションから
八朗が死んでしまうのは確実だし。あとは美桜と陸(坂口憲二)との将来が
うまくテーマと重なるかどうか。静かに始まって静かに終わっていく
そんな作品を最後まで見届けてみよう。採点 6.5(10点満点平均6)
『しあわせのシッポ』 最終話演出:佐々木章光
脚本:水橋文美江
脚本協力:旺季志ずかうーん、微妙だな。
父と娘の関係を
ここまでじっくり描いたのは立派だと思う。とくにラストで自分の気持ちを
生徒たちに素直な言葉で伝え、
川沿いの道をひとり歩いていく
美桜(水野美紀)の姿は美しかった。ただ、陸(坂口憲二)が美桜にプロポーズするまでを
ハッキリ描かなくてもよかったような気がする。
結果的に陸が美桜を選んでもかまわないけど、
あの描き方は唐突すぎた。でもまあ、全体的に印象深い作品ではあったな。
今期のドラマはバラエティーに富んでいたけど、
この作品があるとないとでは
ずいぶん印象が違ったと思う。こういうアプローチの作品は
1クールにひとつぐらいあってもいい。ストーリーや細かいセリフがどうのこうのではなくて、
感覚として訴えてくるものがある、
なかなかの佳作だった。採点 7.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★☆☆
演出 ★★★☆☆
配役 ★★★☆☆
主題歌 ★★☆☆☆
音楽 ★★☆☆☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★☆☆☆平均採点 6.63(10点満点平均6)