タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『かるたクイーン』 第一週 しづごころなく花の散るらむ
制作統括:若泉久朗
演出:榎戸崇泰
脚本:小松江里子
音楽:加羽沢美濃
主題歌:「微笑みのひと」今井美樹
制作:NHK大阪
出演:石田ひかり、野際陽子、山口達也、九十九一、紅萬子、神山繁、
陣内智則、錦戸亮、真瀬樹里、タイヘイ夢路、楠年明、植野葉子、
塩崎沙織、泉祐介、木村舞香、村上かず、他競技かるたを題材にした物語。
最近では「First Love」でも
百人一首を小道具に使ってたけど、
昔の和歌って本当にいいな。
日本人に生まれてよかったとさえ思う(笑)ドラマとしては
かるたクイーン・春香(石田ひかり)の
挫折と再起を軸に
様々な愛を描いていく感じ。この第一週では春香が
職場の同僚に妬まれてケガをするシーンが
古くさすぎてイヤだったけど、
全体的には面白くなる要素はありそうだ。ただ、また野際陽子と真瀬樹里がセットなのが
やれやれという感じ。
ここまで親子で出まくるのは
真瀬樹里のためにならないと思うぞ。採点 6.0(10点満点平均6)
『かるたクイーン』 第ニ週 われても末に逢むとぞ思ふ演出:榎戸崇泰
脚本:小松江里子ドラマとしては
あまり深みが出てこない感じ。百人一首を題材にしてるわりには
みんな庶民的なリアクションなんだもん。東京の銀行マンという設定の山口達也の顔が
異常に黒いのが気になる。
DASH村の稲刈りの後に撮影したのかな(笑)採点 5.5(10点満点平均6)
『かるたクイーン』 第三週 行方もしらぬ恋の道かな演出:篠原圭
脚本:小松江里子亮平(山口達也)の描き方が浅すぎる。
最後に春香(石田ひかり)が
それでも私は亮平が好き、とか言っても、
そうなの?って感じ。たぶん最後まで見たら
単発2時間向きの内容だった、
ってことになると思う。採点 5.5(10点満点平均6)
『かるたクイーン』 最終週 花ぞ昔の香ににほひける演出:榎戸崇泰
脚本:小松江里子まあ、最後は無難にまとめた感じ。
“歌が聞こえた”っていうのは
ちょっと寒かったけど。全体的には春香(石田ひかり)の母、
美沙子(紅萬子)の自然な母親ぶりが良かった。
でも、その日常的な雰囲気と
競技かるたという特殊な世界が
うまく融合していたとは言い難かったんだよな。やっぱりこの作品は、
2時間ぐらいの単発でやるか、
逆に1クールでじっくり描くか、
どちらかの方がよかったような気がする。競技かるたという設定が面白かっただけに
ちょっともったいなかった。採点 6.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★☆☆
演出 ★★☆☆☆
配役 ★★★☆☆
主題歌 ★★☆☆☆
音楽 ★★☆☆☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★☆☆☆☆平均採点 5.75(10点満点平均6)
『緋色の記憶 〜美しき愛の秘密〜』 全5回
制作統括:内藤槇介、家喜正男
プロデュース:池端俊二
演出:渡邊孝好
脚本:野沢尚
原作:トマス・H・クック「緋色の記憶」
翻訳:鴻巣友季子
音楽:岩代太郎
制作:NHK、NHKエンタープライズ21、ケイファクトリー
出演:鈴木京香、室井滋、國村隼、市原隼人、岸部一徳、倍賞美津子、
夏八木勲、銀粉蝶、秋定里穂、中原知南、嶋田久作、他「喪服のランデヴー」に続き、
海外の名作ミステリーを野沢尚が脚色したドラマ。
スタッフも同じなのでかなり期待して見た。第1回「追憶」、第4回「凶行」、
第5回「原罪」は良かった。昭和38年の日本の
片田舎を舞台にした映像は美しかったし、
主人公の目を通して描かれた
自由、愛、罪、そして償いは、
後半、見事にまとめられていたと思う。ただ、残念だったのは、
美しい女教師・薫(鈴木京香)が愛してしまう
妻子のある同僚教師・藤枝が國村隼だったこと。最初はてっきり過去に何かあった間柄かと思うくらい、
突然、2人は恋に落ちてしまった。
一目惚れならムリがあるだろう…、國村隼は。ここに感情移入できなくて
第2回「密会」、第3回「疑心」がダレてしまった。薫が藤枝に惹かれていく過程が
もっと繊細に描かれていれば、
後半の藤枝の苦悩も、
薫の覚悟と失意も、
ぐっと栄えただろうに。美しく影のある女教師を演じた鈴木京香、
最近、出まくっている「リリィ・シュシュ」の市原隼人、
「喪服の〜」でも好演していた岸部一徳など、
他の出演陣は良かっただけに、
その点だけが残念だった。採点 7.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★☆☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★☆☆
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★☆☆☆
話題性 ★★☆☆☆
『センセイの鞄』
演出:久世光彦
脚本:筒井ともみ
原作:川上弘美「センセイの鞄」(平凡社)
音楽:都倉俊一
制作:WOWOW、KANOX
出演:小泉今日子、柄本明、モト冬樹、豊原功補、竹中直人、木内みどり、
樹木希林、加藤治子、他WOWOWのオリジナル・ドラマ第1弾。
谷崎潤一郎賞を受賞した川上弘美の原作を映像化したもの。久世光彦のコミカルな演出も味つけにしつつ、
40歳を目前に控えた女性と30歳も年の離れたセンセイとの恋愛を
シンプルに温かく描いた作品だった。こうなると映画とTVドラマの境目は無いに等しいけど、
映像作品としては素晴らしく上質だったと言える。とくにラストカットはかなり訴えるものがあって、
さすが久世光彦という感じだった。今後、WOWOWは
月1本のペースでオリジナルドラマを制作するようで、
第2弾の監督は堤幸彦。スポーツ放送はすでに有料チャンネルが主流になっているけど、
ドラマの未来も最終的にはここへ行き着くような気がする。採点 8.5(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★★
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★☆☆☆
『つばさ』企画:中野聖、長澤雅彦
エクゼクティブ・プロデュース:鈴木紀夫
プロデュース:田島真一郎、大原博美
監督:長澤雅彦
脚本:三澤慶子
音楽:REMEDIOS
テーマ曲:「ふたりの季節〜North Point〜」Kids Alive
制作:北海道文化放送
出演:前田亜希、草村礼子、萩尾みどり、河原さぶ、小市慢太郎、大森南朋、他1月末に放送された
北海道文化放送30周年の記念ドラマ。
ビデオがどこかにいってずっと見逃していた。結論から言うと非常にいいドラマだった。
いや、ドラマっていうか映画だな。
監督は「13階段」の長澤雅彦。内容は、主人公の娘(前田亜希)、
母(萩尾みどり)、祖母(草村礼子)、
親子三代それぞれの生き方を通して
お互いが理解し合っていく姿を描いたもの。とくに大きな事件が起きるわけではなく、
ごく普通の日常の中で物語が進む展開が良かった。前田亜希は今いちばんいい時期かもしれない。
「刑事イチロー」なんかに出てないで
こういう上質の作品にもっとたくさん出るべきだ。ただ、ラストのキメのセリフのところで
おでこのニキビが目立ったのは残念。
マフラーで顔が隠れすぎていた気もするし…。
そこだけ気になった。採点 8.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★★★
配役 ★★★★☆
主題歌 ☆☆☆☆☆
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★☆☆☆
話題性 ★★☆☆☆
『赤ちゃんをさがせ』 第一週 お母さんをさがせ制作統括:吉川幸司
演出:田中賢二
脚本:宮村優子
原作:青井夏海「赤ちゃんとさがせ」
音楽:榊原大
主題歌「微笑のひと」今井美樹
制作:NHK
出演:高野志穂、麻生祐未、岸田今日子、石橋蓮司、杉本彩、黒谷友香、
松本まりか、葛山信吾、深沢邦之、山崎トオル、斎藤羅慈、福井裕子、他もともとはミステリー小説なので
ストーリーの設定はちょっと唐突な印象だったけど、
コメディー色豊かに味つけされた全体の雰囲気と、
助産婦の仕事を通して描かれる
生命の誕生に関わるメッセージのバランスが良くて
予想以上に面白かった。ただ、少女コミック的な省略されたセリフが
設定の分かりにくさを助長させている感じ。アレンジの仕方は悪くないので
時間的な制約もあるだろうけど
もう少しセリフを丁寧に作って欲しい。「さくら」以来となる高野志穂だけでなく、
他のキャスティングもバラエティーでいい。採点 6.5(10点満点平均6)
『赤ちゃんをさがせ』 第二週 お父さんをさがせ演出:中村高志
脚本:宮村優子二週目に入って設定に違和感がなくなってきたら
抜群に面白くなった。
ていうか、すごく質が高い。ほんのちょっとミステリーの部分も残しつつ、
コメディーとシリアス、そしてファンタジーも織り交ぜて
きちんとひとつの作品にしている。立派だ。深沢邦之は今までもドラマに度々出てるけど
もっと出てもいいのになあ。
すごく自然でいいぞ。来週がもう最終週か。
続編を作っていいな、この作品なら。採点 7.5(10点満点平均6)
『赤ちゃんをさがせ』 最終週 赤ちゃんからコンニチワ演出:中村高志
脚本:宮村優子生命の誕生に関するエピソードはやっぱり感動的で、
これにファンタジックなシーンを入れつつ
コメディタッチに仕上げたこの作品のセンスは上質だった。役者もみんなハマっていて、
とくに麻生祐未のコメディはやっぱり面白かった。ラストは多少、尻切れトンボな感じがしたけど、
これは制作者側も続編を考えているということなのかな。次作品から主題歌も変わって新たなシリーズがスタート。
酒井法子主演「女将になります」、
松本明子主演「女神の恋」、
稲森いずみ主演「ブルーもしくはブルー」、
がすでに発表されている。秋頃からでもいいから続編をやって欲しい。
採点 7.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★☆☆☆
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★☆☆☆☆平均採点 7.00(10点満点平均6)
『池袋ウエストゲートパーク』 SOUPの回
プロデュース:磯山晶
演出:堤幸彦
脚本:宮藤官九郎
原作:石田衣良「池袋ウエストゲートパークIII・骨音」
主題歌:「忘却の空」Sads
音楽:羽毛田丈史、FOE、KREVA
制作:TBS、TBSエンターテイメント
制作協力:オフィスクレッシェンド出演:長瀬智也、佐藤隆太、森下愛子、阿部サダヲ、きたろう、岡本健一、
クレイジーケンバンド(横山剣、廣石恵一、小野瀬雅生、洞口信也、
中西圭一、新宮虎児)、RIZE(Jesse、金子統昭、中尾宣弘、U-ZO)、
石橋蓮司、加藤あい、窪塚洋介、妻夫木聡、坂口憲二、矢沢心、
西島千博、須藤公一、池津祥子、峯村リエ、森本ゆうこ、川崎麻世、
ユセフ・ロットフィー、浅利陽介、東海孝之介、岡田准一、櫻井翔、
岡田義徳、塚本高史、他さすがに長瀬智也、窪塚洋介、妻夫木聡、
坂口憲二、加藤あい、佐藤隆太らが、
同じくらいの分量で出ることはなかったけど、
クレイジーケンバンド、RIZE、
そして木更津キャッツアイまでゲストに来て、
もの足りなさは感じなかった。まあ、この作品は連ドラ時代から
キャストだけで引っ張っていたドラマではないので
当然といえば当然だけど。その後の「池袋」の雰囲気を
きちんと描いていたのは評価できる点だった。3年も経てば
マコト(長瀬智也)の顔を分からない若者も出てくるし、
キング(窪塚洋介)もカリスマではなくなる。
そういう意味ではみんなが連んでいないのも
リアルだったかもしれない。逆にそういった味わいは
連ドラをリアルタイムで見ていた人間にしか感じられないわけで
単発ドラマとしてみると
初心者にはキャストの使い方が雑だったり
内容的にやや不親切だったりする部分もあったかな。でも、ホームレス襲撃事件を「池袋」的な方法で解決していくという
本来のストーリーは描けていたと思うし、
何より水増ししたような2時間ではなく、
きっちりと作られた“続編”になっていたのは立派だった。やっぱりブクロ最高!
採点 8.5(10点満点平均6)
脚本 ★★★★★
演出 ★★★★★
配役 ★★★★★
主題歌 ★★★☆☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★★★☆
『まんてん』
チーフプロデューサー:小見山佳典
チーフディレクター:笠浦友愛
作:マキノノゾミ
音楽:川崎真弘
主題歌:「この街」元ちとせ
宇宙監修:毛利衛
制作:NHK
出演:宮地真緒、藤井隆、宮本信子、生瀬勝久、三橋達也、浅野温子、小日向文世、
大杉漣、鈴木紗理奈、赤井英和、氷川きよし、照英、角田信朗、山田花子、
キムラ緑子、笑福亭松之助、永井流奈、ゴルゴ松本、広岡由里子、谷村美月、
温水洋一、チューヤン、安藤亮司、小市慢太郎、木下政治、末成由美、他ヒロインが宇宙を目指す内容で、
しかも実際に宇宙へ行った所まで描いたというのは
NHKの朝ドラにしてはかなり斬新だったかもしれない。それでも、別に物珍しさだけを狙ったわけではなく、
内容も突き抜けていた点が好印象だった。満天(宮地真緒)の父親、源吉(赤井英和)が
生きているのではないか、
というのは最初から想像できる描き方だったわけだけど、
そのエピソードをこの作品のテーマに
どう消化していくのかが一番の注目点だった。これが単に夢を追うという意味だけでなく、
満天もきっと帰還できるに違いないという
確信の象徴になっている点が良かった。コロンビア号の事故は、
第24週(最終週の1週前)の収録時に起きたようで、
この週のナレーションで事故のことが触れられた。
(お悔やみのテロップは事故直後の放送時に出た)ただ、チャレンジャー号の事故のこともあり、
このドラマではそれ以前から宇宙へ行くことを
ファンタジックな部分だけでなく、
死を覚悟する旅立ちでもあることとして描いていた。
そこに全体的な深さが出ていたと思う。ヒロイン・宮地真緒の演技は
最後まで向上したとは言い難いけど、
あの明るさは朝ドラのヒロインらしくて良かった。ディティールに関しては確かに雑な部分も多かった。
それでも朝ドラの幅を広げるような今回の企画は
十分に評価していいと思う。採点 7.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★☆☆
配役 ★★★☆☆
主題歌 ★★★★★
音楽 ★★★☆☆
新鮮さ ★★★★☆
話題性 ★★☆☆☆
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