タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『それは、突然、嵐のように…』 1/14〜
TBS系 水曜10時  期待度 ★★☆☆☆

「Shall we ダンス?」の主人公を女性にしてドラマ化し、
江角マキコ、山下智久が共演するというニュースが流れたのが11月の中旬。
「妻が恋しちゃだめですか」という仮タイトルまで発表されていたけど、
結局、この作品から「Shall we ダンス?」の文字は一切消えた。

設定を極端に変えるなら許可の必要はないが
そのかわり「Shall we ダンス?」の文字は一切出すな、と言われたのかも。

そりゃそうだよな、
話題作りのためだけに使われたんじゃたまんないし。
とにかく「Shall we ダンス?」とは似て非なる作品になる模様。

TBSはずっと間際まで放送枠が決まらなかったんだけど、
本来ならこっちが金10向きだと思う。

「東京ラブストーリー」世代の女性に贈るラブストーリー。
主題歌は小田和正。




『それは、突然、嵐のように…』  第1回

企画:植田博樹、渡部宗一
プロデュース:矢口久雄
演出:佐々木章光
脚本:金子ありさ
音楽:長谷部徹
主題歌:「まっ白」小田和正
制作:テレパック、TBS
出演:江角マキコ、山下智久、柳葉敏郎、白川由美、竜雷太、井上順、
   宮地真緒、木村多江、小橋賢児、加藤貴子、勝地涼、山田優、
   綾瀬はるか、濱田マリ、鷲尾真知子、村杉蝉之介、遠藤由美、他

予想とはずいぶん違う雰囲気。
冒頭はかなりコメディー色の強い描き方だった。
その結果この初回は、
焦点が合ってない、という印象になってしまった。

こずえ(江角マキコ)と拓馬(山下智久)が出会って
最初にダンス教室で話すシーンは面白かった。
主婦のこずえが実社会とのズレに悩む姿もとりあえず描けていた。
拓馬がダンスステップの話をして、
初めてこずえと踊るシーンも絵になっていた。

でもそれがひとつの作品としてまとめられているとは
どうしても思えなかったんだよなあ。

主婦と高校生が恋をする話なので
あまりドロドロしないようにコメディー色を加えたのは分かる。
でもその質とバランスはこうじゃないだろう。

年上の女性と恋に落ちる役は
ジャニーズの旬のタレントが代々やって来たけど、
山下智久はヘンな癖が無くていい。
脇役もかなり豪華なキャストが揃っている。

次回以降、初回の違和感が解消されるかどうかがカギかな。

             採点  5.5(10点満点平均6)




『それは、突然、嵐のように…』  第2回

演出:藤尾隆
脚本:金子ありさ
脚本協力:関えり香

判断の難しいドラマだな。
ラスト10分は良かったと思う。
というか、こういう雰囲気を
このドラマに求めている人は多いと思う。

でもやっぱり前半部分とその雰囲気が
どうしても一致しないんだよな。

30代の主婦が山下智久のような高校生と恋に落ちる、
という設定にはどうしてもファンタジックな要素が入る。
そこで視聴者に感情移入させるため、
こずえ(江角マキコ)の家族の話や職場でのエピソードを入れて
現実感を出している。

ということなのかもしれないけど、
このドラマの視聴者が求めてるのは
バリバリのファンタジーじゃないのかな?

私も山下クンと恋に落ちたーい!
と思いたいんじゃないの?
わずらわしい現実とか忘れたいんじゃないの?

なのにやたら現実感のある話も同時に見せられると、
かえってシラけると思うんだけど…。

どうなんだろう、実際のところ。

             採点  5.5(10点満点平均6)




『それは、突然、嵐のように…』  第3回

演出:佐々木章光
脚本:金子ありさ
脚本協力:卯月みふる

ますますどこを焦点にしたいのか分からなくなった。
ただ、とりあえずこずえ(江角マキコ)と拓馬(山下智久)が
どこに惹かれ合ったのかは示された。

携帯電話を使ったそのシーン自体は悪くなかったと思うけど、
全体のトーンに統一性がないので見にくいことには変わりない。
困ったな。

いや、ダンナさん(柳葉敏郎)はちゃんと絡んできてると思うけどね。
“いい夫は、いい男じゃない”というのは言い得て妙だし。

でも、そのダンナも由梨子と密かにメールしてたりするんだよな。
しかも拓馬の病気ネタまで加わっちゃったし。

ベクトルが違う要素がごちゃ混ぜじゃんか。

             採点  5.0(10点満点平均6)




『それは、突然、嵐のように…』  第4回

演出:藤尾隆
脚本:いすみ吉紘、金子ありさ

この期に及んで脚本にいずみ吉紘が参加。
やっぱり内部も相当混乱してそうだ。

で、内容的には拓馬(山下智久)の病気が
かなりストーリーに食い込むことが判明した。
結果的に何でもアリの昼ドラのような展開に。
それならそれでいっか(笑)

こずえ(江角マキコ)がダンスを習おうと決めた
最後のシーンは悪くなかった。

             採点  5.0(10点満点平均6)




『それは、突然、嵐のように…』  第5回

演出:日名子雅彦
脚本:金子ありさ

もうアイテムとしてのダンスはどうでもいい感じ。
ただ、そのあたりも含めた先入観を一切排除すると、
今回は良いシーンもいくつかあった。

日出男(柳葉敏郎)がリストラの仕事をしなければいけないと
こずえ(江角マキコ)に打ち明けたシーンの後、
拓馬(山下智久)がこずえに電話で
“(こずえが好きな人は)いい男?
 大事にしてる?”
と聞いた流れは良かった。

あと、最後に拓馬がこずえの家まで来てしまった時の、
“迷惑だよね、ゴメンね、突然…
 伝票、調べて来ちゃった。
 つーか、ヤバイよね、ちょっと家まで”
というセリフも良かった。

もう会えないのかもしれないと思って
思わず来てしまったとしても、
マジメに“好き”と言いに来たとしても、
家にまで来るのはヤバイ、と感じる男の子であることを、
きちんとセリフにして表現した点が良かった。

ただ、花束に添えてあったこずえのメッセージ自体は良くなかったけどね。
あそこはリアリティーより、
脚本的にもっと感動的な言葉にするべきだった。

ドラマ全体としてのバラバラ感も相変わらずで、
現時点では佐保(綾瀬はるか)の存在が
どうにもこうにも浮いてる感じ。

仮に当初の企画のキャラがそのまま残っちゃって
処理に困ってしまったとしても、
分からないようにうまく動かして欲しい。

             採点  5.5(10点満点平均6)




『それは、突然、嵐のように…』  第6回

演出:佐々木章光
脚本:金子ありさ

最後のラブシーンは
感動するところなんだろうけど、
拓馬が不良にからまれて
2千円札だけ死守するという展開が
あまりにもコテコテで盛り上がらなかった。

あと、こずえ(江角マキコ)と拓馬(山下智久)の間に
若い女が入ってくるのはかまわないけど、
やっぱり香織(宮地真緒)か佐保(綾瀬はるか)、
どっちかにして欲しい。
キャラかぶってるよ。

もうこうなったら早く由梨子に登場してもらって
メチャクチャにかき回してもらいたい。
入り乱れてもらいたい。

そうすれば予告を見るたびに感じる一昔前の昼ドラテイストに
完全に移行できると思うんだけど。

             採点  5.5(10点満点平均6)




『それは、突然、嵐のように…』  第7回

演出:藤尾隆
脚本:金子ありさ

今まで「こち池」の英子さん状態だった由梨子が
ついに日出男(柳葉敏郎)に直接的な行動を起こしてきた。

どうやら由梨子は渡辺典子のよう。
ちょっと予想してたイメージとは違うけど、
ドラマをかき回すなら逆に最適な配役か。

拓馬(山下智久)、香織(宮地真緒)、
そして佐保(綾瀬はるか)の関係は相変わらずグダグダ。

もう由梨子に賭けよう。

             採点  5.5(10点満点平均6)





『それは、突然、嵐のように…』  第8回

演出:日名子雅彦
脚本:金子ありさ

拓馬(山下智久)について書かれた
こずえ(江角マキコ)のメールを、
由梨子(渡辺典子)が日出男(柳葉敏郎)に
転送するという展開に。

その行動自体はコテコテなのに、
由梨子がその行動を起こした動機は
意外に細かく描かれた。

とくに由梨子とこずえのラウンジでの会話で、
正しい人間が発する不快なオーラが
こずえから出ていたシーンが良かった。

最終的には日出男の“花屋を継ごうと思ってる”という言葉で
引き金が引かれたわけだけど、
このこずえとの絡みが丁寧だったので説得力があった。

ただ、こういう部分がヘンに細かいので
全体的には余計にどこを焦点にしているのか分からない状態。

綾瀬はるかが本当に不憫に思えてきた。

             採点  5.5(10点満点平均6)




『それは、突然、嵐のように…』  第9回

演出:藤尾隆
脚本:金子ありさ

どこへ行くんだろう。
…このドラマは(笑)

公園の2人を見てキレる日出男(柳葉敏郎)には
ちょっとムリがあったんじゃないかなあ。
あそこでああいうキレ方をするような人物に
ここまで描いて来なかったような気がするけど。

でもまあ、下世話な面白さは出てきた。
こうなったらとことん行ってしまえ。
行って「まっ白」になってしまえ。

杉浦(小橋賢児)のエピソードは意外に良かった。

             採点  5.5(10点満点平均6)





『それは、突然、嵐のように…』  最終回

演出:佐々木章光
脚本:金子ありさ

こずえ(江角マキコ)と拓馬(山下智久)の関係は
とりあえずそれなりに描けていたと思う。
でもそれに付随するものは、
結局、ハチャメチャのままだった。

当初の企画で進めることができずに、
急遽オリジナルのストーリーにした混乱は想像できる。
でも、もう少し何とかして欲しかったな。

“一歩一歩ステップを踏めばやがてそれがダンスになる”なら、
いろいろな人に囲まれてすでに自分のダンスを踊っていたのは
むしろこずえだったんじゃないかな。

だったらこずえの方をダンスの先生にして、
一直線に向かってくる拓馬に対して心を動かされながらも
最後にダンスをモチーフに一緒に踊れないことを告げた方が
きれいに収まったような気もするけど…。

まあ、どうでもいいか。

キャストは豪華だっただけに
もったいない作品だった。

             採点  4.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  5.25(10点満点平均6)





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