タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『太陽の季節』
7/7〜 TBS系 日曜9時 期待度 ★★★★☆石原慎太郎の芥川賞受賞作を
日曜劇場でドラマ化。
主演は滝沢秀明と池脇千鶴。1956年に石原裕次郎、長門裕之、南田洋子で映画化された時は
過激な性描写で一大センセーションを巻き起こした。
今回の担当プロデューサーも
「日曜劇場ギリギリのセクシーな滝沢をみせる」と言っている。果たしてどう現代版にアレンジしてくるのか。
かなり楽しみだ。出演は他に、
岡田義徳、松本莉緒、松坂慶子など。
『太陽の季節』 第1回プロデュース:鈴木早苗、梶原紀尚
演出:土井裕泰
脚本:渡邊睦月
原作:「太陽の季節」石原慎太郎
音楽:長谷部徹
主題歌:「キ・セ・キ」滝沢秀明
制作:TBS、TBSエンターテイメント
出演:滝沢秀明、池脇千鶴、岡田義徳、松本莉緒、松坂慶子、高橋ひとみ、
宮崎美子、遠藤憲一、高岡蒼佑、忍成修吾、新井浩文、大倉孝二、
石橋けい、松本まりか、深江卓次、石田理恵、松本亮治、平田竜也、
小野健太郎、柳英里紗、浜田晃、乃木涼介、他現代にアレンジしているとはいえ
さすがにブルジョア層への嫉妬、復讐という構図は
感情移入しにくいものがある。ただ、全体の雰囲気は悪くなかった。
TBSらしい作品という感じ。
キャストもかなりハマってる方じゃないだろうか。中でも遠藤憲一がいい。
(小宮山不動産の事業部長役の人)
この人だけがすぐに
竜哉(滝沢秀明)の本性を見抜いてしまったけど
物語の中でも重要な位置を占めると思うので
今後も期待したい。個人的には松本まりかに注目かな。
ミニストップのCMに出てる子。
ファイナルファンタジーXでリュックの声をやった子。
ただの由紀(松本莉緒)の同級生役じゃもったいないので
何とか絡んできて欲しい。もちろん注目は、若者のあふれ出すエネルギーを
どこまでTVで描いてくれるかということなんだけど、
初回はとりあえず状況説明と
竜哉と英子(池脇千鶴)の出会いまでということで。次回以降に期待だ。
採点 7.0(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第2回演出:吉田健
脚本:渡邊睦月おいおい、またアパートの管理人が大島蓉子だよ。
独占だな、この役は(笑)オレが初めて大島蓉子を認識したのは
11年前の「ふぞろいの林檎たち」パート3だった。
石原真理子(現在は石原真理絵)が
金持ち(柄本明)と結婚していて、
その家のボディーガードのような役だった。確かテロップには“屈強の女”とか書いてあったんだよな。
一緒にボディーガードしていたのはキラーカーンで
とにかくデカイというイメージだった。それが今はアパートの管理人か…。
時代の流れを感じるな。そんなことはどうでもいいんだけど、
この第2回、相変わらず全体の雰囲気は悪くなかった。
ただ、依然、状況説明が終わらないので
なかなか物語に引き込まれる感じがしない。たださえ感情移入がしにくい設定なので
人間関係の裏側はもったいぶらず
早めに説明した方がいいかもしれない。個人的にはブルジョワグループの会話に
もう少しスムーズさが欲しいところ。
キャラとして吉彦(新井浩文)と笙子(石橋けい)に
頑張ってもらいたい。あとはセリフかな。
今回、ラストで竜哉(滝沢秀明)が
英子(池脇千鶴)を迎えに来た時、
英子の最初のセリフが
“ごめんなさい”だったのは良かった。
英子の人間性がよく現れている。こういうセリフが多くなれば、
もっと物語に引き込まれていくような気がする。採点 7.0(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第3回演出:吉田健
脚本:渡邊睦月パスタを作ってる間にヤル、
ていう展開はどうなんだろう…。
いいのか、若いんだし(笑)今回、やっと耕平(岡田義徳)の口から
復讐という言葉が出た。
竜哉(滝沢秀明)の背景については
それ以上の説明がなかったけど、
耕平がみんなの前で
竜哉とは幼なじみではないとウソをついたり、
慎二(高倉蒼佑)の純真無垢さが描写されたりと、
竜哉の複雑な状況は垣間見られた。そしてラストは
英子(池脇千鶴)と由紀(松本莉緒)の遭遇。
この2人の対比を際立たせるためにも
今後、由紀にはもっと牝になって欲しい。松本莉緒は「ゴールデンボウル」の晶のような役より
本来はお嬢様系の方が似合うと思うけど、
この役はかなり難しい。
体型として池脇千鶴との対比は問題ないけど、
松本莉緒も声は大人っぽいとは言えない。
今後は松本莉緒の頑張りがひとつのポイントか。あと、全体的に気になったのは
過剰な演出はあまりしない方がいいかも、
ってことだな。竜哉が由紀をソファーに押し倒した時、
わざわざ後ろを向いてシャツを脱ぐカットは
ちょっと不自然だった。まあ、タッキーの上半身裸カットは
このドラマの売りでもあるわけだけど(笑)、
効果的に魅せるためにも
使い方には気をつけて欲しい。採点 7.0(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第4回演出:土井裕泰
脚本:渡邊睦月竜哉(滝沢秀明)と由紀(松本莉緒)の関係や
竜哉が住んでいるアパートの件は
意外に早く慎二(高岡蒼佑)にバレちゃったな。このテンポの良さはいいんだけど、
それ以外の展開や描写はありきたり過ぎてもの足りなかった。とくに竜哉と由紀のラブシーンは
あの程度だと今までのドラマと何も変わらない。この部分で大胆に踏み込めないなら
今回の映画のシーンのように
ハラハラできる場面をもっと引っ張れば良かったのに…。
でもこの展開だとそれもムリみたいだな。今後は竜哉と慎二の新たな関係、
響子(松坂慶子)の思惑、
折原(遠藤憲一)の今後あたりに注目してみるか。ちなみに今回は映画「ピンポン」とのタイアップがあった。
タイアップていうか、プロデューサーがかぶってるからなんだけど。
どうせならただ“面白かった”だけじゃなくて
もっと気の利いたこと言わせればよかったのにな。全体的にセリフにはもう少しエッジを効かせて欲しい。
採点 7.0(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第5回演出:土井裕泰
脚本:渡邊睦月登場人物の背景はだいぶ分かってきたんだけど、
思ったよりも浅いなあ。とくに今回は由紀(松本莉緒)の登場回数が少なかったので、
ものすごく淡泊な印象を受けた。
ひとことで言えばよくある話っていうか…。期待していた折原(遠藤憲一)も
それほど深くは入り込んでこないし。まあ、見どころとしては
タッキーの裸にバリエーションをつけて
濡れた白いシャツにした、ってことなんだろうな。いいのか、そんなんで。
採点 6.5(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第6回演出:梶原紀尚
脚本:渡邊睦月竜哉(滝沢秀明)がすべてを打ち明けたことで
後半はまったく別の話になりそう。
このドラマの最終的な出来は
そこをうまく繋げることができるかどうかに
かかっている感じだ。予想とはずいぶん違う展開になってきたけど、
次回で全体像がやっとつかめるのかもしれないな。しかしこうなると、
由紀(松本莉緒)の心情が一番興味深くなった。やっぱり松本莉緒がキーパーソンか。
採点 6.5(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第7回演出:吉田健
脚本:岡本貴也池脇千鶴と松本莉緒のキスシーンなんて
これまた豪華だな。
でも、ある意味、象徴的かも。このドラマは最初から
原作とまったく違う設定で始まってるけど、
どうやら原作上の英子を
池脇千鶴と松本莉緒の2人に分けて描いてる感じ。
つまり2人で「英子」なわけだ。大きなストーリーは原作とは別物だし、
このドラマにおいても前半と後半は
ガラッとその方向が変わったけど、
やっぱり竜哉と「英子」の物語であることには違いない。池脇千鶴+松本莉緒=「英子」
という図式を頭に入れておけば、
原作を知っている人も楽しめるはずだ。そして次回はついに、あの衝撃のシーンか…!?
採点 7.0(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第8回演出:加藤新
脚本:渡邊睦月ついにやりました。
文学史的にもかなり有名な
勃起した陰茎で障子を突き破るシーン。当初、竜哉(滝沢秀明)の部屋に障子がなかったので、
ガラスを突き破る気か!?
などとムチャなことを想像してたんだけど、
結局、ホテル(高級旅館?)のような場所でだった。まあ、あの年齢の2人が和風の部屋というのは
ちょっと唐突だったけど、
花火、浴衣、というシチュエーションで
そんなにムリはなかったと思う。最後に障子に空いた穴まで描写したのは
TVではかなり頑張った方じゃないかな。ただ、このドラマは
原作を大きく変えたストーリーになっているので、
あのシーンが絶対に必要だったかというと甚だ疑問。「太陽の季節」をドラマ化する以上、
挑戦して欲しい気持ちはあったけど、
このストーリーの中では
ムリにやらなくてもよかったような気もする。いずれにしても
すでに竜哉のナレーションで明言してるように、
「英子」の悲しい結末に向けて
このドラマは突き進んでいる。採点 7.0(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第9回
演出:土井裕泰
脚本:岡本貴也マクロな視点では興味をひく部分もあるけど、
ディティールに新鮮さがないのが
この作品の最大の欠点だろうか。ビジュアルで楽しめる人は
そんなに気にならないのかもしれないけど。遠藤憲一が本格的に絡んできたので
せめてそこで盛り上げて欲しい。採点 6.5(10点満点平均6)
『太陽の季節』 第10回演出:吉田健
脚本:渡邊睦月竜哉(滝沢秀明)が響子(松坂慶子)に
強引にキスをし、胸までまさぐった。
ムチャするなあ。まあ、竜哉が若さ故の愚かな行為を繰り返すのはかまわない。
その行動のネックに父親の死を介在させたのも
現代にアレンジする上で必要だったのかもしれない。ただ、響子が英子(池脇千鶴)の曲を
自分の作品のように作り続けていたり、
そのことを知ったと思われる英子が
何の嫌悪感も抱かなかったりする描写は、
作品全体の中でどうにも浮いている気がする。折原(遠藤憲一)は結局、
小宮山不動産の社長を陥れるために
竜哉を利用しただけだった。これで竜哉が打ちのめされた事実は
作品のテーマの中でさほど違和感を感じないけど、
折原の行動そのものはどうなんだろうか…。このあたりは最終回を見て、
全体を振り返ってからだな。採点 6.5(10点満点平均6)
『太陽の季節』 最終回演出:土井裕泰
脚本:渡邊睦月、岡本貴也46年前に始まった東芝日曜劇場の最後の作品。
当初はなぜ今さら「太陽の季節」を?
と思ったけど、
東芝撤退のニュースが流れて、
それでわざわざ46年前の芥川賞作品を選んだことが判明した。そこまでこだわって選んだ作品なら
きっと最後は納得させてくれるだろうと思ってたのに…結論から言うと
これはやっぱりダメだったと思う。英子(池脇千鶴)の死が、
ありふれたドラマのワンシーンにしか見えなかったのが
個人的にはいちばん辛かった。
どうせならまだ
由紀(松本莉緒)に刺させた方がよかったかもしれない。ていうか、
ムリに原作をアレンジする必要もなかったのでは?
という気が今はしている。もともと原作も大人や社会に対する反抗というより
自分たちの価値観で
好き勝手に生きていく若者の姿を描いていたんだから
その部分を現代にもってくることは可能だったと思う。その上で原作のような英子の死というラストを描いていたら
かなり若者の共感は得られたような気がするんだけど。密かに期待していた分、
非常に残念なまとめ方だった。採点 5.5(10点満点平均6)
脚本 ★★☆☆☆
演出 ★★★☆☆
配役 ★★★☆☆
主題歌 ★★★☆☆
音楽 ★☆☆☆☆
新鮮さ ★★☆☆☆
話題性 ★★★☆☆平均採点 6.68(10点満点平均6)