タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
>>バックナンバー >>ドラマ別レビュー
『天国への階段』
4/8〜
日テレ系 月曜10時 期待度 ★☆☆☆☆白川道、ベストラー小説のドラマ化。
メイン演出は「永遠の仔」の鶴橋康夫。父を自殺に追い込まれ、
恋人も奪われた資産家に復讐をする柏木(佐藤浩市)。
資産家で代議士でもある江成(風間杜夫)。
柏木の元恋人で今は資産家の妻(古手川裕子)。
2人の娘で柏木にひかれていく未央(本上まなみ)。
などが中心人物。重厚な作品になりそう、ではあるけど、
1〜3月期に惨敗したスマスマの裏ということで
最初から40〜50代向けの作りかも。出演は他に
加藤雅也、中村俊介、大塚寧々、津川雅彦、森本レオなど。
『天国への階段』 第一話
企画:近藤晋
チーフプロデュース:今村紀彦
プロデュース:堀口良則、代情昭彦(東北新社クリエイツ)
原作:白川道「天国の階段」(幻冬舎刊)
演出:鶴橋康夫
脚本:池端俊策
音楽:丸谷晴彦
エンディングテーマ:「Eternal Place」hiro
制作:よみうりテレビ、東北新社クリエイツ
出演:佐藤浩市、古手川裕子、風間杜夫、本上まなみ、津川雅彦、
中村俊介、大塚寧々、加藤雅也、森本レオ、古尾谷雅人、
黒谷友香、橋龍吾、宮本真希、本宮泰風、益岡徹、六平直征、他トレンド好きな若い世代を完全に置き去りにした
思いっきり暗くて重い話だけど、
原作がしっかりしてるのでかなり見応えがあった。
ただ、この初回の90分は長かったかも。
もっとスリムにできたな、たぶん。そうは言っても鶴橋演出はさすがにエッジが効いていた。
冒頭の線路脇倉庫での殺人シーンや、
若き日の達也(本宮泰風)が亜木子(宮本真希)を
値踏みするシーンなどは見事だった。中心人物の3人、圭一、亜木子、達也を演じる
佐藤浩市、古手川裕子、風間杜夫の若い頃の映像に
橋龍吾(橋幸夫の息子)、
宮本真希(元宝塚、「ラブ&ファイト」のヒロインだった人)、
本宮泰風(松本明子の旦那)という
顔が売れてる役者を使ったことに最初は違和感があったけど、
最後の方には慣れてきた。まあ、この若い頃のエピソードは重要なので、
どうでもいい役者を使うわけにはいかないしね。
慣れたからにはこれからも登場して欲しい。あと、やっぱりレッド・ツェッペリンの
「天国への階段」が2度BGMとして登場。
今聴いても奇跡の名曲だなあ。
これを主題歌にしてもよかったのに。ドラマ的にはこの第一話を見逃した人が、
この後ついていけるのかどうかが心配だ。
それくらい重要、かつ、
導入として十分魅力的な初回だった。採点 7.0(10点満点平均6)
『天国への階段』 第二話演出:鶴橋康夫
脚本:池端俊策初回、そして『空から降る一億の星』に
頭の10分を喰われたこの第2回と
いずれも視聴率はひと桁。いくらフジ系の視聴者層との棲み分けを計っても
やっぱり営業的にはキツイということか。ただ、内容への“のめり込み度”は
このドラマが一番高いかもしれない。
そしてクオリティーもおそらくこれが一番高い。
初回から見ていない人はかなり悔しがっていいかもね。今回はオープニングから
ツェッペリンの「天国への階段」が流れた。
スタッフ側もほとんどテーマ曲と考えている様子。
これは正解だ。
とくに牧場の映像とのマッチングは最高。全体的に安心して見ていられる内容だけど、
今回はとくに未央(本上まなみ)の個展で
圭一(佐藤浩市)と亜木子(古手川祐子)が
会うシーンの緊迫感が最高だった。
やっぱりうまいなあ、鶴橋演出。あと、鶴橋康夫が演出すると、
18歳の頃の亜木子を演じる
宮本真希がエロい、エロい(笑)
完全に大人のドラマになってます。ベテランの役者があまりにも渋い演技をするので
本上まなみや中村俊介が
多少、弱く見えてしまうのが難点といえば難点。
それでもかなり頑張ってるけどね。圭一が26年前にも殺人を犯していたこと、
圭一と亜木子には肉体関係があったこと、
などが今回、判明した事実。
やたら先が見たくなる作品だ。原作をまだ読んでなくて
かえって良かったかも。採点 7.0(10点満点平均6)
『天国への階段』 第三話演出:鶴橋康夫
脚本:池端俊策展開が早いのでグイグイ引き込まれる感じ。
ただ、宮本真希のエロいシーンがないと
何かもの足りないなあ(笑)まあ、そのかわり今回は児玉(加藤雅也)の
白いブリーフ姿で女性視聴者にアピールと。
…アピールになってないよ!(笑)競走馬のように
ただ復讐を目指して生きている圭一(佐藤浩市)。
でも、競走馬が遠くは見えているのに
近くは見えていないように、
いつしか自分が復讐の対象となってしまう。このあたりの組み立て方がうまい、と思う反面、
もう少し圭一が江成(風間杜夫)を追いつめる
展開を堪能したかったという気もする。まあ、今回の平間からのアプローチは
圭一と児玉との関係を描く要素のひとつでも
あるんだろうな。
それにしても児玉はカッコいい。
ブリーフ姿以外は(しつこい・笑)あと、新山千春が過去の映像の中に登場した。
いったいどう絡んでくるのか。
一馬(中村俊介)からの復讐には
この新山千春も関係してくるんだろうな。中村俊介と本上まなみの演技に不安を抱えながらも
ストーリーは依然として面白い。採点 7.0(10点満点平均6)
『天国への階段』 第四話
演出:鶴橋康夫
脚本:池端俊策今回は本上まなみが
いつもよりちょっとだけ良かった。
ちょっとだけどね。ここから先は本上まなみの役が重要なので
右肩上がりでいいから頑張って欲しい。それにしても演出が秀逸だな。
牧場の場面は本当に美しい。
かなり前から撮影に入っていたので、
冬と春(夏)の映像のコラージュも見事に決まってる。圭一(佐藤浩市)の江成(風間杜夫)に対する
復讐劇でありながら、
圭一と亜木子(古手川祐子)、
圭一と未央(本上まなみ)、
圭一と児玉(加藤雅也)、
圭一と一馬(中村俊介)など、
様々な人間関係を深く描いているところがすばらしいんだな。このドラマの視聴率がずっとひと桁だなんて、
本当にもったいない。採点 7.5(10点満点平均6)
『天国への階段』 第五話演出:岡本浩一
脚本:加藤正人ここまで怒濤の展開だっただけに、
ちょっとひと休みという感じ。
メイン演出の鶴橋康夫と
脚本の池端俊策もひと休み。演出家が代わったせいかどうか分からないけど
今回は大塚寧々がエロかったな(笑)
あと、津川雅彦が恐かった。まあ、主役クラスは問題ないんだけど、
やっぱり本上まなみかなあ。圭一(佐藤浩市)が、
亜木子(古手川祐子)の娘であり
絵笛の写真を撮った未央(本上まなみ)に
ひかれていくのは分かるけど、
未央が圭一にひかれていく描写が少し弱い感じ。だから本上まなみだけの責任とも言えないけど
ここが弱いと今後は少し心配な気がする採点 7.0(10点満点平均6)
『天国への階段』 第六話演出:岡本浩一
脚本:加藤正人とうとう柏木(佐藤浩市)が
江成(風間杜夫)に正体を明かしたか。
ちょっと早い気がして残念だけど、
このドラマは各登場人物の心理描写、
その変化が何より面白いから、まいっか。で、やっぱり未央(本上まなみ)は
柏木の子供らしい。
これでやっと古手川・亜希子も本格的に参戦だ。児玉(加藤雅也)は相変わらず格好いい。
そして木馬に乗る津川雅彦はどうしようもなく恐い(笑)採点 7.0(10点満点平均6)
『天国への階段』 第七話演出:岡本浩一
脚本:加藤正人どんどん進路をふさがれていく圭一(佐藤浩市)。
復讐のために切り捨てたいと思っているものが
圭一にとって捨ててはいけないものに
なっているところが面白い。江成(風間杜夫)の亜希子(古手川祐子)に対する思いとか、
奈緒子(大塚寧々)の圭一に対する思いとかも、。
複雑な人間関係を描いてて面白いんだよなあ。今回は、古手川・亜希子が、
圭一のことを圭ちゃんって呼ぶところがグッときた。
宮本・亜希子の髪型で現れたところも。来週は亜希子を挟む、圭一と江成の対決、
圭一を挟む、亜希子と未央(本上まなみ)の対決か。佳境には入っていくな。
採点 7.0(10点満点平均6)
『天国への階段』 第八話演出:白川士
脚本:加藤正人まず、冒頭の亜希子(古手川祐子)を挟む
圭一(佐藤浩市)と江成(風間杜夫)の対決は
かなり見応えがあった。5話以降、細かいセリフに関しては
やっぱり池端俊作がいいな、と思ってたんだけど、
このシーンのセリフは実に良かった。原作を読んでないので
もしかしたらここは
原作通りのセリフなのかもしれないけどね。そして、過去の映像に度々登場していた新山千春は、
案の定、一馬(中村俊介)の母親だった。
つまり一馬はこの英子(新山千春)と圭一の子。最初は過去に追いかけられ過ぎ(笑)、と思ったけど、
ラストの手紙を読みながら圭一が号泣するシーンまで見ると
やっぱりよく練られてるな、という印象に変わった。佐藤浩市だけでなく、
このシーンは中村俊介も良かったしね。今回、未央(本上まなみ)は圭一に
“私だけを見て”と、かなりな告白をしたけど、
未央、圭一、亜希子の関係はどうなるのか。
ますます目が離せない。採点 7.5(10点満点平均6)
『天国への階段』 第九話演出:白川士
脚本:加藤正人今期の連ドラの中で最高の脇役、
児玉(加藤雅也)が死んだ。最後に圭一(佐藤浩市)からタバコを一本貰って
うまそうに吸うシーン、泣けたなあ。児玉も嬉しかっただろうね、
圭一が追いかけてきてくれて。
最高だったよ、この2人の関係は。それから圭一と、
亜希子(古手川祐子)、未央(本上まなみ)の関係。
未央の立場が奈緒子(大塚寧々)とダブってくるわけね。うーん、深いなあ。
再放送されたらこのドラマ絶対見てね。
ていうか、再放送の方が視聴率、良さそう。採点 7.5(10点満点平均6)
『天国への階段』 第十話演出:岡本浩一
脚本:加藤正人児玉(加藤雅也)を失った圭一(佐藤浩市)が
すごく脆く見えた。だからなおさら、
テキパキ仕事をしている姿がもの悲しく見えたりして。あと今回は、
圭一と奈緒子(大塚寧々)のシーンが良かったな。
離婚届を書く圭一の気持ちも理解できたし、
初めて心を通い合わせる2人はせつなかった。そしてついに、
未央(本上まなみ)が圭一の娘であることを
手紙にしたためた亜希子(古手川祐子)。
彼女もまた、天国への階段を登ってしまうのか。採点 7.5(10点満点平均6)
『天国への階段』 第十一話演出:白川士
脚本:加藤正人自殺しようとしていた亜希子(古手川祐子)を
圭一(佐藤浩市)が止めた。
“死んだら自分が楽になるだけなんだよ。
昔、絵笛からいなくなった時と変わらないじゃないか。
昔の君と何にも変わってないじゃないか”
と言って。
ここにやたら説得力を感じたな。そしてもうひとつ、
圭一の子供・未央(本上まなみ)について
“どうしても圭ちゃんの子供が欲しかったの”
と言った亜希子の言葉にも。こういう文字だけだと何でもないセリフなのに
ものすごく説得力を持たすだけの描写を
このドラマは最初にしてるんだよな。
丁寧に作ってあるところがこういうところでも分かる。あと、刑事の桑田(森本レオ)が
圭一に罪を認めるように説得するシーンも良かった。でも、圭一はすでに覚悟を決めている感じ。
生命保険の受取人も
奈緒子(大塚寧々)のままにしようとしてるし…。圭一は代議士になるつもりもない。
江成(風間杜夫)を路頭に迷わすつもりもない。
そして亜希子と一緒になる気すらない。
圭一がただひとつ、江成に出した条件は、
亜希子を自由にすること。…泣けるぜ。泣けるぜ、圭ちゃん(T_T)
採点 7.5(10点満点平均6)
『天国への階段』 最終話演出:鶴橋康夫
脚本:加藤正人30分の延長は「空から降る一億の星」ではなく
こちらに用意するべきだった。
それでも鶴橋演出はスゴイなあ、やっぱり。圭一(佐藤浩市)の幻想と現実が入り交じった
一馬(中村俊介)の結婚式シーンから、
南の島でのラストカットまでの流れは、
難解ではあるけどかなり良かった。圭一が最後まで警察に口を割らず、
ひとりで死を選んだ展開はベスト。
それを、最後の最後に一瞬画面を暗転させ、
海に“天国の階段”がかかるという
わずか5秒のカットで表現したところはスゴかった。最終回が近づくにつれ、
中村俊介はどんどん良くなったけど、
ビルの屋上で圭一と一馬が話すシーンで頂点に達した感じ。このドラマはどの出演者も良かったけど、
中村俊介はとくにターニングポイントとなる
作品になったんじゃないだろうか。あと、車の中での
圭一と亜希子(古手川祐子)の最後の会話も良かった。
古手川祐子は比較的見せ場の少ないポジションだったけど、
この最後の慟哭は本当に若い頃の亜希子のようだったし、
人生の不条理を切実に感じさせるシーンだった。“決着はついたが充足感はない。
亜希子を買い戻しただけだ。
そのために俺は…”
と振り返る圭一。ほんの些細な行き違いが
人生を大きく変えてしまった悲劇。それを情感たっぷりに
美しい映像で描いた秀作だった。採点 7.5(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★☆☆☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★☆☆☆平均採点 7.25(10点満点平均6)
[ロビー田中の自己紹介]
[トップへ]