タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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『ツーハンマン』 

7/5〜
 テレ朝系 金曜11時15分  期待度 ★☆☆☆☆

大手通販会社の苦情処理係に勤める地味な男が、
ひょんなことから謎の覆面男、
ツーハンマンに変身して、
人気者になってしまう…、
というオフィスラブコメディー。

出演は
中村俊介、川原亜矢子、草刈正雄、
小橋健児、真矢みき、ベッキー、他

川原亜矢子が出るコメディーだから
要するにそういうことだと思うけど(笑)、
実はスタッフは悪くない。

とりあえず見てみる価値はありそう。



『ツーハンマン』 第1回

チーフプロデュース:黒田徹也
プロデュース:杉山登、船津浩一、鈴木伸太郎
演出:土方政人
脚本:鈴木聡
音楽:本多俊之
主題歌:「Sweet」ブロッサム
制作:テレビ朝日、共同テレビ
出演:中村俊介、川原亜矢子、草刈正雄、真矢みき、小橋健児、ベッキー、
   田口浩正、鈴木砂羽、玉木浩、橋本さとし、菊池均也、牛尾田恭代、
   草村礼子、二瓶鮫一、他

チーフプロデューサーの黒田徹也は
「君の手がささやいている」だけでなく、
「おそるべしっっ!!!音無可憐さん」や
「可愛いだけじゃダメかしら?」などの
センスのいいコメディーも作ってきた人だけど、
これに共同テレビのスタッフが加わって、
実に均整の取れた作品に仕上がっている。

最初から切っていた人も多いだろうけど、
気軽に見られて、笑えて、ちょっとせつなくて、
おそらく誰が見ても損はしないドラマだと思う。

簡単に説明すると、
大手通販会社パラダイスコーポレーションが舞台。
毎週金曜日の夜にテレビで通販ショーを行い、
この不況下でも売り上げを延ばしている。

この会社の名物社長で
ショーのオープニングにも毎回登場するのが寺岡(草刈正雄)。
トッププレゼンターがユカリン立木(川原亜矢子)。
そしてこの会社の苦情処理課に勤める地味な社員が
ジミーとあだ名される山田誠(中村俊介)だ。

ジミーはユカリンに対して密かに憧れを抱いているけど、
ユカリンと社長の寺岡は愛人関係。
そのことをジミーだけが知ってしまう。

ある日、社長夫人(真矢みき)が留守の時に
寺岡宅へ泊まったユカリンは、
突然帰ってきた夫人に足止めをくらって
生放送のショーに出られなくなる。

苦労して開発した商品を
紹介できなくなってしまったユカリンのことを想い、
ジミーは覆面をし、ツーハンマンとなって
その商品をプレゼンする。

ユカリンのことを想いながら話したセールストークが
女性たちの心をつかんで商品は大ヒット。
ところがユカリンはトッププレゼンターの座を奪われると思い、
ツーハンマンをライバル視してしまう。

真実を言い出せなくなってしまったジミー。
そして、ユカリンと愛人関係にあることを口止めするために
ジミーに渡したイタリア製の万年筆がキッカケで
ジミーがツーハンマンであることを見破ってしまう寺岡。

ユカリンに憧れながら
ツーハンマンとしてショーにも出なくてはいけなくなったジミーの
せつない恋心と、派手な通販の世界がコミカルに描かれていく…。
みたいな話だ。

今回の川原亜矢子はそんなに役を大袈裟に作ってないので見やすい。
共演の中村俊介も草刈正雄もタッパがあるので並んでも見栄えがいい。

今クールの大穴はこのドラマだった。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 第2回

演出:土方政人
脚本:鈴木聡

やっぱりすごく面白いんですけど、コレ(笑)

ちょっと心配していた宝塚出身の真矢みきも
作品全体の雰囲気に溶け込んでいて違和感なし。

初回はジミー(中村俊介)の
ユカリン(川原亜矢子)に対する想いが
プレゼンテーションに活かされていたわけだけど、
今回は一緒に働いている苦情処理課の課長、
相沢(二瓶鮫一)の娘の結婚問題と絡めた
プレゼンテーションだった。

このパターンだったら何度やっても
いいプレゼンテーションシーンが描けそう。

このツーハンマンの活躍を軸にして
寺岡(草刈正雄)とユカリン、
そして寺岡の妻(真矢みき)との関係が
コミカルに描かれ、
ジミーのせつない恋心も描かれていく。

今のところほとんどムダがない。
絶対、見た方がいいと思うよ。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 第3回

演出:松田秀知
脚本:鈴木聡

今回はプレゼンターのひとり・桑原(田口浩正)と、
彼の母親との関係を軸に描いたストーリーだった。

今までに比べると
笑いを取りにきたシーンは少なかったけど、
息子が出演しているTVを見る
母親役・正司照枝の表情が愛に満ちていて、
不覚にも泣いてしまった(笑)

「ぼくが地球を救う」では、
主人公の友作(内村光良)を
歴史に名を刻んだヒーローという設定で
その活躍を紹介しているんだけど、
ツーハンマンの方がはるかに後世に名を残しそうだな。

頑張れ! ツーハンマン!
負けるな! ツーハンマン!

…あ、
このドラマは戦隊モノとかではないので、念のため(笑)

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 第4回

演出:松田秀知
脚本:鈴木聡

おもろいなあ。
さわやかだな。
いや、ホッとするな。

ていうか、ベッキー太ってるな(笑)

ユカリン(川原亜矢子)が
ツーハンマン(中村俊介)に恋したことで、
話はさらに面白くなった。

もう金曜日がメチャクチャ楽しみだ。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 第5回

演出:杉山登
脚本:鈴木聡

今までスポットが当たってきた
アリー(ベッキー)やツボマン(田口浩正)の
キャラが立ってきてさらに面白くなった。

今回はバツイチで子持ちのグラディス(鈴木砂羽)がメイン。
若いAD・平林(玉木宏)との恋のエピソードが
ツーハンマン(中村俊介)のプレゼンにも絡められた。

平林がただ指輪を買うために
友達にお金を借りに行っていたという展開は
あまり面白くなかったけど、
グラディスがすぐに結婚を承諾しなかった流れは良かった。

そしてグラディスの息子・大輔(太田光輝)に
無言で手を振るツーハンマン。
カッコイイ!(笑)

このドラマを見終わった時が一番幸せな気分になるな。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 第6回

演出:土方政人
脚本:鈴木聡

マッチョ(菊池均也)の回は
他に比べて弱くなりそうな気がしたけど、
社長(草刈正雄)が出張するためMCを誰にするか、
というエピソードを入れながらうまくまとめた。

まあ結局、麗子(真矢みき)がやったわけだけど、
真矢みきもすでにノリノリなので違和感なく見られた。

ユカリン(川原亜矢子)が徐々に
ツーハンマン(中村俊介)に近づいていく展開もいい。

ラストはユカリンがジミー(中村俊介)に
“あなたもしかして、ツーハンマン…”
と聞いたシーンで終わったけど、
おそらく“…誰だか知ってるの?”
みたいにつながるんだろうな。
全部分かってしまうのはまだ早すぎるし。

これでプレゼンテーター全員にスポットが当たったので、
次回からまた別の切り口を期待したい。

             採点  7.0(10点満点平均6)





『ツーハンマン』 第7回

演出:松田秀知
脚本:鈴木聡

まだプロデューサーの
原田(橋本さとし)が残っていたか。

というわけで今回は
原田と娘のアユミ(大谷みつほ)の関係に
スポットを当てた話。

ま、正直言って原田の娘に対するリアクションは
類型的、かつ古典的でつまらなかったんだけど、
大谷みつほの自然な演技と
ツーハンマン(中村俊介)のプレゼンは良かった。

そして前回の最後で
ユカリン(川原亜矢子)がジミー(中村俊介)に問い詰めた言葉は、
やっぱり“あなたツーハンマンの連絡係ね”。

このあたりはコメディーに徹していて、
全体のバランスを考えても悪くなかった。

今回のラストはひょんなことから
ツーハンマンとユカリンがキスをしてしまい、
それを社長(草刈正雄)が目撃するという展開だったけど、
これで麗子(真矢みき)も含めた四角関係、
いや、ジミーも入れた複雑な五角関係に拍車が掛かりそう。

とりあえず、次回、
社長がどういう行動に出るのか、楽しみだ。

             採点  7.0(10点満点平均6)




『ツーハンマン』 第8回

演出:松田秀知
脚本:鈴木聡

うーん、今回は金子(小橋健児)がメインか。
別にいいんだけど、さすがにしつこくなってきたな。

「ゴールデンボウル」で野島伸司は、
ランニングギャグを多用しながら
徐々に形を崩して飽きさせない作りにしていた。

一定のパターンを守るのは見やすいんだけど、
形にこだわりすぎるのはよくない。

今回当たりから出演者の誰かにスポットを当てるのは
やめてもよかったんだけどなあ。

せっかくグラディス(鈴木砂羽)や
マッチョ(菊池均也)のキャラを描いたのに、
今回のようなつまらないリアクションのために
使うのはもったいない。

草刈正雄と真矢みきのコメディーセンスは最高だし、
ユカリン(川原亜矢子)とツーハンマン(中村俊介)の関係も
わくわくする展開になってきた。

もうこの4人に的を絞った方がいい。

             採点  6.5(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 第9回

演出:杉山登
脚本:鈴木聡

そうそう、
こういう感じの作りにして欲しかった。

売る商品と伝えたい内容があまりリンクしなくて、
ツーハンマン(中村俊介)のプレゼンテーション自体の
切れ味はあまり上がってないんだけど、
全体的な内容がよければそれなりに感動できる。

ユカリン(川原亜矢子)の微妙な心理に関しては
ここ数回、すごく丁寧に描いているし。

今回はついにツーハンマンではなく、
ジミー(中村俊介)にも惹かれていることが
コミカルにではあるけど描かれた。

ツーハンマンの、
いや、ジミーのせつない恋は
果たして成就するのか?

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 第10回

演出:土方政人
脚本:鈴木聡

丁寧な脚本だなあ。
やっぱりツーハンマン(中村俊介)の
プレゼンテーションは
つながりが苦しいんだけど、
それ以外の部分は上質のラブストーリーだった。

真矢みきの演技がシリアスなシーンになると
多少、大袈裟になるのは相変わらず。
それでもかなり泣けた。

とにかくセリフが丁寧だった。
感動した(笑)

最後はついにユカリン(川原亜矢子)が、
ツーハンマンの正体を知ってしまう展開に。

せっかくユカリンとつき合うことができたのに、
可愛そうなジミー。

…ま、絶対ハッピーエンドなのは分かってるんだけど、
最終回もすごく楽しみだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『ツーハンマン』 最終回

演出:土方政人
脚本:鈴木聡

最後まで丁寧な脚本だった。
最終回のストーリーは意外性がないし、
TVの生放送中に愛の告白をするというのも
ムチャクチャな展開なんだけど、
それをすべて丁寧な脚本でフォローしていた。

生放送中の告白というシーンに関して言えば、
その後の社長の番組進行をきちんと描いて
視聴者から苦情が来てることも示していたし、
普通ならおざなりになってしまう
中途半端になった商品の紹介もちゃんとやっていた。

これをやるとやらないでは大違い。
あそこまでフォローしてくれれば
ありえない公共の電波を使った告白も許せる。

ジミー(中村俊介)のお母さん(草村礼子)が
たとえ覆面をしていても自分の息子だと最初から分かっていた、
というワンカットも粋で良かったし。

それにしてもこのドラマ、
中村俊介のキャラクターも良かったけど、
何と言っても草刈正雄だろうな、MVPは。

社長の役が草刈正雄じゃなかったら
このドラマの雰囲気は作れなかったと思う。
もう見事としか言いようがない。

若干、中だるみがあったのも事実だけど、
同じ金曜日に「いらなつ」という硬質のラブストーリーと
「ツーハンマン」という質の高いラブコメディーが見られたのは
本当に幸せだった。

もし再放送があったら
絶対に見て欲しい一作だ。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  7.14(10点満点平均6)




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