タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『ホーム&アウェイ』 10/7〜
フジ系 月曜9時 期待度 ★★★★☆中山美穂が1年半ぶりの連ドラ出演。
今、中山美穂を出せばそりゃ話題にもなるだろう、
という穿った見方もできるけど、
結婚間近の女性が様々なトラブルに巻き込まれて
家になかなか帰れないというロードムービーで、
内容がかなり面白そう。脚本は「踊る大捜査線」「ラブコンプレックス」
「TEAM」などの君塚良一。
『ホーム&アウェイ』 第1話プロデュース:高井一郎
演出:澤田鎌作
脚本:君塚良一
音楽:武部聡志
主題歌:「My faith」「Hello,everybody!」 day after tomorrow
制作:フジテレビ
出演:中山美穂、西田尚美、酒井若菜、小泉孝太郎、他かえで(中山美穂)の自宅、つまりホームには、
町子(西田尚美)、りる(酒井若菜)、
そして弟の学(小泉孝太郎)だけが集まって
かえでのキャラクター説明などのフォローにまわり、
主人公のかえでは帰りたくても帰れないという
アウェイの状態が続く。
この2極構成はかなり面白い。基本的には一話完結の雰囲気で
東京に帰れないかえでが
様々な場所で様々な人に出会う
という形で話が進む様子。今回は最終的に北海道まで飛ばされる話だった。
しかも「天国への階段」でも舞台になった絵笛。
とりあえず東京との対比から
雄大な自然がある場所へかえでを飛ばしたのは
いい選択だったと思う。とにかく全体的に
コメディとシリアスのバランスは非常にいいので
かなり期待できるかもしれない。問題は今後、かえでが帰れない状況に
どう説得力を持たすかだろうな。12回もこれをやれば、
本気で帰ろうと思えば帰れるじゃん、
と見てる側は思ってしまう。そこをどうコメディーの範囲で納得させるか、
ここが最大の難関だと思う。西田、酒井、小泉のシーンが
予想以上にアクセントになっているので
ここも手を抜かずに丁寧に作って欲しい。採点 7.5(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第2話演出:澤田鎌作
脚本:君塚良一初回はドラマの設定を印象づけるためにも
上海、仙台、東京、北海道とかなり移動したけど、
今回は無人島から青森に移動しただけだった。おそらく今後は1話でひとつの街になると思うので
飛ばされることに関する違和感は
最小限に抑えられると思う。今回は子供との交流がメインだったけど、
かえで(中山美穂)の父親とのエピソードも
何気なくセリフに絡ませてるところが良かった。最後に正太(片岡涼)がバスを追いかけて来るシーンも
コテコテなのに泣けたし。
「おねえちゃ〜ん」じゃなくて
「かえで〜」だからまた泣けるんだよな。そしてやっぱりホームの
西田、酒井、小泉のシーンが良かった。
小泉孝太郎はうまくなった。
このまま3人のバランスを保ったまま
作品のアクセントにしていって欲しい。採点 7.5(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第3話演出:羽住英一郎
脚本:君塚良一ウルルンみたいになってきたな。
ウルルンと言えば再会スペシャル。
ということは最終回の結婚式に
各地で出会った人がみんな来るとか?
…まあ、いいか。そんなことはどっちでも。かえで(中山美穂)が訪れた先から
いちいちいろんなものが届くのが面白いな。
ホーム側とのつながりも
これをネタに膨らんでくるし。そして今回も
かえでの親子問題をきちんと絡めていた。
このエピソードが芯になっているから
一話完結の話がバラバラにならない。
丁寧な作りだ。次回は東京か。
早くもロケに行く時間がなくなってきたのか?採点 7.5(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第4話演出:羽住英一郎
脚本:君塚良一今回はかえで(中山美穂)が
望まずに続けてきた旅に関して、
一度、整理して考えるような話。それを、第1話で中途半端な状態だった
夜逃げ家族のエピソードと絡めてうまく描いていた。ホームの3人は相変わらずいい。
今回なんかはとくに、
この3人の会話でかえでが帰って来ない不自然さを
きちんとコメディーにしているんだよな。だからアウェイのかえで側は
少しクサイくらいのハートウォーミング系にしても
作品全体としてはバランスが取れる。
うまい作りだ。カット割りも映像もきれいだし、
脚本では、毎回振り返る旅の様子を
英会話教室でやるところなどは
いいアイディアだった。このクオリティーで最後までいけたら
相当いい作品になりそうだな。採点 7.5(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第5話演出:澤田鎌作
脚本:君塚良一冒頭のコンテナの置き場所は
いくら何でも不自然だろ。
ていうか、あんなところに置くのは
ドラマの予算的にも大変だろ。…とは思うんだけど、
天女に間違われるくらいのストーリーだと、
そんなことも許せてしまう。
フィクションのドラマとしては
これでいいんだと思う。ただ今回は、
妊娠したという明子(山本未来)が
平気でビールを飲んでいた演出が疑問。確かに最初に明子が
かえで(中山美穂)の部屋に来た時は
“飲まない?”というシチュエーションが自然だけど、
妊娠のエピソードを作るなら
ここは他の演出にするべきだろう。そこがちょっと残念だった。
採点 7.0(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第6話演出:羽住英一郎
脚本:君塚良一なぜ警察に駆け込まないのか、
という素朴な疑問に応えるように、
今回は冒頭でかえで(中山美穂)が警察に事情を話した。…信じたよ、あの警察官!
捜索願を確認する前に!その後はまたしても
そんなバカな、という展開を見せつつ、
きちんと親子関係というテーマを守った
ストーリーになっていた。ホーム側の3人のボケ具合も
ますますエスカレートして、
アウェイとのメリハリを強調していた。今回の難点は、
やっぱり肝心の旅芸人かな。旅芸人の芝居には定型があるので
それはそれでいいんだけど、
もうちょっとうまくやって欲しかったなあ。かえでが舞台でヘンにうまくやらず
ずっとキョトンとした表情をしていたので、
よけいに旅芸人役には玄人っぽい芝居をして欲しかった。あと、伊藤歩が彼氏と旅立とうとしている時に
「蒼茫」がかからなくてちょっと残念(笑)採点 7.0(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第7話演出:澤田鎌作
脚本:君塚良一ちょっと作りすぎかな。
帰りたくても帰れないこと自体が
大きなフィクションなので、
ひとつの話の中で凝りすぎると
物語の中に入りにくくなる。冬(藤村志保)が病気で発作を起こしたのに
七見(山本圭)と冬が途中下車しない理由も説得力に欠けたし、
あの話だけで乗客が突然一致団結して
結婚式を催すのもかなりムリがあった。ただ、かえで(中山美穂)のこの旅は
女性が結婚に至るまでの悩みや不安を
象徴するようなものになっているし、
かえで自身にとっても父親との確執を解く
意味のあるものになっているので、
ひとつのエピソードとしてはアリだったかもしれない。最後、かえでに
“こんなの絶対、認めなーい”
と叫ばせてるあたり、
最作者側も分かって作っているわけだしね。ホームとアウェイが
少しずつリンクし始めているので
そのあたりが今後の見どころだ。採点 7.0(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第8話演出:羽住英一郎
脚本:君塚良一惜しい!
最後のかえでの樹は、
本当は本物でやりたかったんじゃないかなあ。
でもいい色に染まってなくて、
しょうがないからスタジオに作っちゃおう!
…みたいな。お金を下ろしたい。
自分が勤めていた銀行へ行く。
銀行の立てこもり事件に巻き込まれる。
働いていたので緊急対応マニュアルを知っている。
犯人は父親に会ったことがある。
説得しているうちに身の上話になる。
心が通じ合う。
父親の手がかりも詳しく聞ける。この流れが自然で美術館までたどり着いたので
ラストカットは非常に残念だった。でも内容的には最終回へ近づいていることを予感させる
意味のある回だったと思う。それにしてもキャロット銀行の制服、
100m先から見てもキャロット銀行の制服だな(笑)採点 7.5(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第9話演出:澤田鎌作
脚本:君塚良一うまい。
ホーム側とアウェイ側を徐々に近づかせて、
今回はついに一緒に旅をさせた。そこにきちんと理由をつけるために
行き先は町子(西田尚美)の実家。ところがそこは侠客の一家だった、
というバカバカしさで笑いを取りながら、
町子の昔の恋のエピソードをメインに
人と人が出会い、別れることを
ドラマのテーマに沿って
実に見やすく仕上げていた。もちろん、
何で長距離バスのドライブイン休憩で
偶然4人が出会えるのか、とか、
あんな理由で警察がパトカーを飛ばしてくれるか、とか、
ムチャクチャな展開は多い。でもこのドラマは
かえで(中山美穂)の結婚までの決意、
父親探しと和解という芯がしっかりしているので
少しぐらいハメを外しても
ドラマ全体が空中分解しない。きついスケジュールでうまく作ってるなあ。
採点 7.5(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 第10話演出:羽住英一郎
脚本:君塚良一父親役が誰なのか注目だったけど
串田和美かあ。
いいキャスティングだなあ。最初に父親が旅館の部屋に入って来た時、
正直言って人違いなどの展開があるのでは、
という雰囲気だった。でも、それは本当の父親で
実に静かな対面から
言葉をほとんど交わさない(交わせない)
シーンが続く。これは非常にリアリティーがあって
いい演出だった。そしてずっと娘の目を見られなかった父が、
翌日海岸でやっとそれぞれの気持ちを伝え合えた時、
初めて“よく来てくれたね、かえで”
と言って娘の顔を見る。
このシーンが最高だった。さらにかえで(中山美穂)が
父に結婚の報告をするシーンに続くわけだけど、
ここもかえでの気持ちがこもった言葉で綴られていて、
かえでの父に対する思いの変化は
ここまでの毎回の流れで少しずつ描いてあったので
視聴者にも感情移入しやすいものだった。ただ、ただ、
海に降る雪のエピソードそのものは良かったのに、
その映像がまたしょぼいものになってしまった。
これはさすがにCG処理するしかないシーンだけど
ちょっと冷めたなあ。
第8話の楓の木と同様、残念だった。でも全体的には
丁寧な演出、心のこもった脚本で、
上質の回だったと思う。採点 8.0(10点満点平均6)
『ホーム&アウェイ』 最終話演出:澤田鎌作
脚本:君塚良一まず、父親(串田和美)と出会えた後も
実はいろんなトラブルに巻き込まれていて、
ドラマで描かれていたのはその一部
というアイディアがバカバカしくて面白かった。とはいっても、ほんの30秒の映像に
時間とお金をかけていて、
最後まで丁寧に作っている印象は強かった。そして最終回で巻き込まれたトラブル。
この事件自体は過去のエピソードに比べると
正直言って弱かったけど、
かえで(中山美穂)自身が
幸せは自分の手でつかむものだと決意する描写としては
すごく良かったと思う。りる(酒井若菜)は今回もお笑い担当。
案の定、学(小泉孝太郎)はりるに惚れたけど、
安易にふたりがくっつかなかった展開は良かった。ホームにいた3人が、
“ワインを100本飲んだだけ、
でもそれでいいんだと思う”
と言ったシーンは印象的だった。帰れる所がある、
待っていてくれる人がいる、
それだけで旅は旅として成り立つと思うし。最後にかえでが自分の家のソファーで
うたたねをする姿。
あんなに気持ちのよさそうな寝姿を見たことがない。
視聴者にそう思わせる力がこのドラマにはあった。
これはシンプルで非常に良いラストシーンだった。いや、本当のラストはコメディーらしいオチだった。
あのスーツケースを持っている人間が
実は目的地にたどり着けないという…。コメディーとしての体裁を守ってこのオチをつけたのは
最後までうまくドラマを引き締めたと思う。3ヶ月でこれだけのロードムービーを撮り、
なおかつ芯の通ったドラマに作り上げたスタッフに
心から敬意を表したい。採点 7.5(10点満点平均6)
脚本 ★★★★★
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★★☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★☆☆☆平均採点 7.41(10点満点平均6)
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