タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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『天才柳沢教授の生活』 10/16〜
フジ系 水曜9時 期待度 ★★★★☆週刊モーニングでロングラン連載されている
同名コミックのドラマ化。原作とのギャップはどうしてもあるだろうけど、
生真面目な柳沢教授を
松本幸四郎がやるのはかなり興味深い。共演は松原智恵子、戸田奈津子、川原亜矢子、国仲涼子など。
『天才柳沢教授の生活』 第1話プロデュース:和田行、中島久美子
演出:鈴木雅之
脚本:土田英生
原作:山下和美(講談社刊)
音楽:服部隆之
主題歌:「星屑の街」ゴスペラ-ズ
制作:フジテレビ制作センター
出演:松本幸四郎、松原智恵子、戸田恵子、川原亜矢子、国仲涼子、
小日向文世、三浦透子、山口智充、佐藤隆太、金田明夫、加賀美早紀、
酒井敏也、宮田早苗、半海一晃、卜字たかお、金替康博、他キャスティングが最高。
松本幸四郎、松原智恵子、3人の娘はもちろん、
小日向文世、佐藤隆太が初回からいい味を出していて、
さらに“プラトニック・セックス”加賀美早紀、
“なっちゃん”三浦透子まで起用する豪華さだ。三浦透子はまさに“なっちゃん”を彷彿とさせる役だけど、
淡々としていて存在感すら漂わせていた。加賀美早紀も相変わらず光っていて、
最後に商店街で「おはよう!」と言ったシーンは
ちょっと泣けたな。全体的には鈴木雅之の演出と
服部隆之の音楽ということで、
「王様のレストラン」「こんな私に誰がした」
「総理と呼ばないで」「世界で一番パパが好き」
「HERO」「スタアの恋」の雰囲気。そういう意味での新鮮さはないけど、
話そのものが面白いので
最後まで楽しめそうだ。強いて心配な点を挙げれば
メイン脚本の土田英生(劇団MONOの代表)が
連ドラはほとんど初めてということもあって、
この初回はややテンポが悪かったこと。セリフそのものは悪くないので
はやくリズムに乗って欲しい。いずれにしてもこれは当たりだ。
採点 7.5(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 第2話演出:鈴木雅之
脚本:藤本有紀出だしは少しかったるい展開。
でも今回は脚本が藤本有紀に変わって、
最後はグッと締めた感じだ。奈津子(戸田恵子)と幸弘(小日向文世)の仲直り、
華子(三浦透子)の気持ちを察した七つの子の解釈、
そして最後の世津子(国仲涼子)のガーガー。作品としての定型を守った上で
ドラマチックに盛り上げた作りはうまかった。もちろん、今回のような童謡のネタなどは古いし、
毎回、出勤シーンから始めていては
出だしでテンションが下がるのは確か。
もう少し全体的な構成を見直して欲しい。それにしても佐藤隆太がいいな。
後ろで「カキーン!」ていう
野球のバッティングのSEが入っていたのは
「木更津〜」狙いなのかどうか分からないけど、
彼がいいからこそ「ガーガー」も活きたんだしな。山口智充が乗り遅れてることがちょっと心配だ。
採点 7.5(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 第3話演出:西浦正記
脚本:土田英生泣いてしまった(笑)
幸せな家族って、
それだけで泣きたくなるな、なぜか。今回はデパートでの教授父娘とともに
幸弘(小日向文世)と華子(三浦綾子)の
父娘関係も描いていたところが心憎かった。ちょっと変わった父親で
大人になって初めて一緒にデパートへ行った父娘も、
小さい時から探偵ごっこをする父娘も、
どちらも幸せには違いない。3分だけ夜更かしをした柳沢教授(松本幸四郎)、
少し興奮して眠れなかった柳沢教授、
静かだけどいい描写だった。なっちゃんの“だっさー!”も最高だった。
採点 8.0(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 第4話演出:西浦正記
脚本:藤本有紀“くず”の新曲キャンペーンか(笑)
途中、ちょっと凝り過ぎかな、
という感じもしたけど、
シチュエーション・コメディの
王道ともいえる作りだった。ちなみに、正子(松原智恵子)の桔梗の話が
あるとないとでは大違い。
最後はきちんと桔梗で締めたので、
途中のやや遊びすぎのシーンも
すべて許せてしまった。それにしても
佐藤隆太は最高だな。
もう今期の助演男優賞、間違いなし。採点 7.5(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 第5話演出:鈴木雅之
脚本:土田英生前回と同様、珍客(?)が柳沢家を訪れるという
シチュエーションの上で繰り広げられる話。
でも前回以上に笑えて泣けた。世津子(国仲涼子)と奈津子(戸田恵子)が
普通にみよ子さん、ひなさんと呼ぶあたりから、
幸弘(小日向文世)のゴシップマン、
柳沢教授(松本幸四郎)が帰ってきて
まったく状況が理解できない!と
嘆いたりするシーンは最高に面白かった。前回と大きく違ったのは、
要(ジュディ・オング)の言動がせつなくて、
コミカルなシーンに笑いながらも
ジワーっと来てしまったこと。しかも、トメに任命されてしまった
正子(松原智恵子)の心情も複雑で、
ささやかに嫉妬している様子がまた良かった。今回、脇役の活躍があまりなかったぶん、
ゲストのジュディ・オングと宇梶剛士の
貢献度が大きかったわけだけど、
欲を言えばもっとレギュラー陣を
メインにした話をいっぱいやって欲しい。それだけのキャラはすでに出来上がっている。
採点 8.0(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 第6話演出:西浦正記
脚本:藤本有紀要潤が磯野貴理子に惚れる。
そこが一番“明らかな嘘”ではないのか!
…というツッコミは置いといて、
今回もジワっと泣ける話だった。男爵(要潤)の“愛すべき嘘”
そのものも良かったけど、
横で華子(三浦透子)が
目を輝かせていたりするとね。
そのシチュエーションだけで泣けてしまう。柳沢家の家族が
大きな鯉のぼりを用意しているのもまた
“愛すべき嘘”だと思うし。あと、正直村と嘘つき村の話は有名だけど、
脚本の丁寧さとしては
途中でその話が雑誌にも紹介されている
というシーンをきちんと入れてあること。だから最後にサラリーマンが
教授(松本幸四郎)をモデルに答え合わせをしても
何の不思議もない。実はこういうところで手を抜く脚本はたくさんある。
このドラマが質の高さを維持しているのは
そういう丁寧さにもあるんだよな。採点 7.5(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 第7話演出:成田岳
脚本:土田英生教授(松本幸四郎)が
“私も頑張っているのです。
戦っているのです”
と言ったシーンは泣けたなあ。これに今回は
2人の姉の描き方も丁寧だった。
とくに奈津子(戸田恵子)の
教授と世津子(国仲涼子)に対する話し方が良かったな。やっぱりゲストがいなくても
まだまだ十分に深い話はできる。パンクフォークシンガー
恩田ヒロミツ・ディスコグラフィー
「やめてよ朝から」
「愛の巣」
「新妻気分」
「愛のノートブック」…どうしても「やめてよ朝から」が聴きたい(笑)
採点 7.5(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 第8話演出:西浦正記
脚本:藤本有紀朝の45分間に凝縮された
せつなくて暖かい話。吉田助教授(金田明夫)の迷いと、
カメ、家族写真、チーズ、祭り…、
すべてがロジカルに組合わさっていて
完成度の高い作品だった。正直に言うと、個人的には
もうヒロミツ(佐藤隆太)の虜なので、
彼の出番が少ないと寂しい気がする。でもドラマ全体としてはいい回だった。
採点 7.5(10点満点平均6)
『天才柳沢教授の生活』 最終話演出:鈴木雅之
脚本:土田英生、藤本有紀明らかに時間が足りなかった感じ。
やっぱり全10話の予定で
プロットを書いてたんじゃないだろうか。柳沢教授(松本幸四郎)が語る
傘のエピソードあたりは良かったけどね。あと、
家族のつながりをきちんと描いていたことや
最後のカットでも
牧師(DonDokoDonの平畠!)が
向上心を持って勉強していたシーンなんか
このドラマらしくて良かった。ただ、やっぱり最終回はちょっと残念だった。
もっとたっぷり時間を取って作らせてあげたかったな。全体的なことを言えば、
コミック原作の宿命として
原作が好きだった人にとっては
不満も多い内容だったかもしれない。姉妹の数も違うし
お母さん(松原智恵子)のキャラもだいぶ違うし。でもこの作品はドラマとして
しっかりとしたコンセプトに乗っ取って
アレンジされていたと思う。世津子(国仲涼子)とヒロミツ(佐藤隆太)のカップルも
原作と違うと言えば大きく違うけど、
最初から明確なイメージを持って
キャラクター設定をしていた。そしてそれは
まっさらな気持ちで見れば
すばらしいカップルの姿だった。主演の松本幸四郎はもちろん、
すべての役者がドラマの中の登場人物として
“柳沢教授の生活”に生きていたと思う。いいドラマだった。
採点 7.0(10点満点平均6)
脚本 ★★★★☆
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★★
主題歌 ★★★★☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★☆☆☆平均採点 7.56(10点満点平均6)
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