タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)


第1話「ドラマネタだけに初回は拡大版(笑)」

というわけで、始まりました。
TVドラマに関するコラムです。

10〜12月期の総評から入るという
タイミングがいいんだか悪いんだか
分からない始まり方ですが、
興味があったらお読みください。

ちなみにこのコラム、
日本からTVドラマが無くならない限り
ネタが尽きることはありません。

ある意味、他の執筆者からうらやましがられる状況。
それはそれで大変なんですよ>みなさん
なんつって。

では、最初はこんな感じ。


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『本家のヨメ』 最終回

プロデューサー:藤井裕也(読売テレビ)、諏訪道彦(読売テレビ)
        国本雅広、次屋尚
主題歌:「MARRY ME?」lil'viv(ビビアン・スー)
原作:岡田理知(創美社刊オフィスユー連載「本家のヨメ」)
監督:藤井裕也、国本雅広、岡本浩一
脚本:中谷まゆみ
出演:岩下志麻、ビビアン・スー、中村俊介、岸部一徳、田中好子、
   高岡早紀、中尾ミエ、鷲尾真知子、根岸季衣、
   ジュディ・オング、田中 健、他


結論から言ってしまうと、
非常にいい作品だった。

日テレ系の月曜10時枠。
最初から期待せずに見ていなかった人も多いんだろうな。
もったいない、もったいない。

古いしきたりを重んじるキン(岩下志麻)と
現代的なハーフの新妻のぞみ(ビビアン・スー)の嫁姑バトル、
みたいな触れ込みだったけど、
実際はもっと内容のある作品だった。
(正確に言うと、岩下志麻は大姑)

家族という枠組みに限らず、
いろんな人が集まる共同体において、
意見の違い、価値観の違いはあって当然。

その時に、いかに相手の考え方を理解しようと努力できるか、
相手の立場を尊重できるか、
そして、自分の意見もきちんと相手に伝えられるか…

そのあたりまで描いていたから
ただの醜い嫁姑モノにならなかった。

さすがは昼帯ドラマの傑作「ぽっかぽか」を書いた中谷まゆみ。
コミック原作とはいえ、きちんとまとめていた。

ちなみに、原作はまだ読んでないんだけど、
原作でもキンはのぞみが持ち込んだ電化製品を使ったんだろうか?

TVドラマ的にはそこが興味深かったな。
いくらカマドでご飯を炊くキン、という設定であっても、
岩下志麻が電化製品を否定するわけにはいかない。
もうこれは絶対に、象印的に。

画面でも象印の電子ジャーが大アップ。
カマドで炊くのと変わらないじゃない、
みたいなことをのたまう岩下志麻。
さすが象印夫人だ(笑)。

キャスティングでは、岩下志麻はもちろんのこと
ビビアン・スーの成功が大きかった。

最初は日本の旧家が守ろうとしている価値観とのギャップを
際立たせるための配役だったんだろうけど、
あのコケティッシュな雰囲気はそれ以上の効果があった。

慎二(中村俊介)とのラブラブな様子は
普通の日本人では出せなかったと思うしね。

ベッドで抱きつくところなんか、
妙にエッチだったなあ。
…まあ、ドラマの中身とは関係ないけど。

三婆(中尾ミエ、鷲尾真知子、根岸季衣)は
思ったほど重要なポジションじゃなかったけど、
最終回のダンスシーンはさすが舞台で鍛えたベテランの味だった。
…まあ、これもドラマの中身とは関係ないか。

思想の違い、価値観の違いを
平和的に話し合えない今の世の中だからこそ
意味のある作品でした。

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

          全体的な採点  7.0(10点満点平均6)


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『レッツ・ゴー!永田町』 最終回

企画:佐藤敦
チーフプロデューサー:増田一穂
プロデューサー:水田伸生、荻野哲弘、小池唯一(泉放送制作)
主題歌:「All My Love To You」DA PUMP
演出:岩本仁志、長沼誠
脚本:伴一彦
出演:石橋貴明、西村雅彦、辺土名一茶(ISSA)、柴咲コウ、吉田日出子、佐藤B作、
   桜井幸子、鈴木杏樹、菊川怜、江守徹、塩見三省、岩城滉一、室井滋、
   近藤芳正、吹越満、内藤剛志、益岡徹、他

石橋貴明が苦手な人は世の中にかなり多い。
役者としては過去にも、
「みなさんのおかげです」を中断させてまで出演した
倉本聰の「火の用心」や、
三谷幸喜の「今夜、宇宙の片隅で」などに出てるけど、
本人も認めている通り、演技はヘタだ。

だから見る気がしない、
どうせ見てもつまらない、
この時期の政治ドラマなんて話題性を狙っただけ…、
などが思ったより視聴率を稼げなかった理由だろうか。

ただ、このドラマが志の高い作品だったことは
ここできちんと言っておきたい。

代議士の秘書の活躍をメインにしたドラマだったので
確かに石橋貴明が主役だったのかもしれないが、
作品としては稲山一郎(西村雅彦)事務所の全員が主役だったと言っていい。

吉田日出子、佐藤B作は安心して見ていられたし、
柴咲コウ、一茶も予想以上に頑張った。
もちろん、稲山事務所以外のキャラもよく練られていた。
だからこのドラマは見るべき作品だったし、
現にすごく面白かったのだ。

個人的にはとくに桜井幸子のキャラがお気に入りだったな。
『高校教師』の繭以来のハマリ役、と言ったら言い過ぎだろうか。
それくらい彼女の個性を引き出したキャラだったのだ。

内容的にも、政治にまつわる裏話をコミカルに盛り込みつつ、
代議士と秘書、代議士同士、そして秘書同士の人間関係を
よく描いていたと思う。

最後は“理想”に走りすぎた、
という意見もあるかもしれない。
でも、政治で“理想”を語らなくなったら
もう終わりって気もするしね。

気に入ったドラマに関してすぐに「続編を…」と
期待する風潮は好きじゃないけど、
こういうタイプのドラマこそ続編を作ってもいいと思う。

でも難しいかな。
キャストの豪華さを考えると、
平均視聴率が10%を切ってしまったという事実は…。

ちなみに、今期の連ドラが始まる前、
某雑誌で新作ドラマの特集記事を作ったんだけど、
この『レッツ・ゴー!永田町』の広報担当者だけ
情報掲載の許可を出さなかった。
テレビ雑誌じゃなかったかららしいんだけど…

もし続編を作れるなら、
とりあえず広報担当者を変えた方がいいな(笑)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★☆☆☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

          全体的な採点  7.0(10点満点平均6)


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『ハンドク!!!』 最終回

プロデューサー上等!!!:植田博樹
主題歌上等!!!:「DR」TOKIO
演出上等!!!:堤幸彦、金子文紀
脚本上等!!!:大石静
出演上等!!!:長瀬智也、内山理名、沢村一樹、佐々木蔵之介、真中瞳、
       二宮和也、野際陽子、岡本麗、堀つかさ、
       半海一晃、矢島健一、佐藤二朗、今江冬子、他

…しつこいね。「!」もいっぱい付くと(笑)

ちなみに、当初のタイトルは「ハンドク!!」。
姓名判断してもらったら画数が2画足りなかったので
初回放送直前に「ハンドク!!!」と、「!」を3つにしていた。

その甲斐あって(?)、視聴率が10%を切ることはなかったけど、
植田&堤は公約を破って坊主に…。
大人が真剣に遊ぶのっておもろいな、端で見ていても。

このドラマ、最初は「ケイゾク」「ブラックジャック」と続いてきた
植田・堤ラインの延長だと思っていた。
だから、脚本の大石静はどうなんだろう、と
ついうっかり考えてしまっていたのだ。

ところが、2話、3話と、
一子(沢村一樹)のキャラが明確になるにつれて、
やっと思い出した。

植田博樹P、大石静脚本といえば
『私の運命』ではないか。

1994年10月から95年3月まで、
2クールに渡って放送された作品。
メインプロデューサーは貴島誠一郎で、
非認可の抗ガン剤の名前は
貴島誠一郎からもじった「キジマリン」だったっけ。

“大学病院の使命はトライアルにある”
と言い切っていた医師・片桐を演じていたのは佐野史郎。
今回の一子は、この片桐の再来だったのだ。
片桐も患者(東幹久)の母親(野際陽子)に刺されているけど、
一子もやっぱりノブ(二宮和也)に刺されている。

臓器移植の問題も含め、
そう思うと植田・大石のメッセージは強く出ていたな。
堤幸彦は、このメッセージの中で
登場人物を生き生きと動かしていただけなのかもしれない。

ただ、作品全体として、
何となくゴツゴツした感じはゆがめなかった。
堤幸彦が演出した回と、
金子文紀が演出した回のトーンも微妙に違っていたし…。

でもまあ、これもトライアルだな(笑)

キャストでは、
大石静が脚本を書いた『オードリー』で幹幸太郎を演じていた
佐々木蔵之介が一番安心して見ていられた。
内山理名は最後の方になってやっとキャラをつかんだ感じ。
真中瞳は…、
相変わらず上手くはないけど、
今まで出たドラマの中では一番良かった。

四天王(半海一晃、矢島健一、佐藤二朗、今江冬子)のキャラは秀逸。
こういう脇役で楽しめるのは堤作品の醍醐味だ。

あと、最終回になって実は保積ぺぺの妻だったと明かされた
み、み、み、美幸ちゃん(堀つかさ)。
彼女も最後の方になっていい味を出してきたけど、
その「妻」という設定は土壇場で変えたんじゃないだろうか。

9月末に発売されたテレビ雑誌のプロフィールには、
「新聞販売店を営む下宿屋の娘。
 女子大生で女子アナの内定を取っている」
と書かれているし。

これはきっと堤監督か植田Pか大石静かは分からないけど、
ノブに感情移入しちゃったんだよ。
「生きていたら美幸と付き合えたのに」よりも
「生きていても美幸とは付き合えないけどね(笑)」
の方がきっとノブもラクだろうから。
…堤かなあ。こういうセンチメンタリズム。

まあ、全体的には十分楽しめる作品だった。
バカイチ(長瀬智也)が生きているかどうかという問題は
個人的にまったく興味がない。
最後にあの下宿屋の映像を入れたということが
制作者側のメッセージだからだ。

ちなみに、あの映像をビデオでチェックすると
・バカイチのタバコが置いてある
・仏壇には母親の位牌しかない
・新聞の見出しから10ヶ月後のシーンである
・最後にチラッと写った人影はトランクスを履いている
みたいなことが分かるけどね。

チェックしてんじゃん>オレ (笑)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

          全体的な採点  7.0(10点満点平均6)

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『最後の家族』 最終回

企画:見城徹(幻冬舎)、黒田徹也
プロデューサー:高橋浩太郎、照喜名隆(ザ・ワークス)、布施等(ザ・ワークス)
主題歌:「IN MY LIFE」古内東子
エンディング:「I say good-bye」中川晃教
監督:小田切正明
原作:村上龍「最後の家族」(幻冬舎刊)
脚本:村上龍
出演:樋口可南子、赤井英和、吉沢悠、松浦亜弥、岡田浩暉、
   井上晴美、尾美としのり、照英、梶原善、
   大島さと子、古尾谷雅人、石橋蓮司、他

村上龍の初TVドラマ脚本
ということで注目していた作品。
連ドラとしての毎回の盛り上がりには欠けていたけど、
それなりに見応えはあった。

欲をいえば、
DV(ドメスティックバイオレンス)と
家族の自立との関係を、
もう少し分かりやすく描いてもらいたかった感じ。

たぶん、映像作品としての構成に多少難があったんだろうな。
秀樹(吉沢悠)の視点を通して、
・隣家の主婦(井上晴美)のDVを目撃する。
・彼女を助けることに失敗する。
・ひとりで生きていくことをイメージできない人の存在を
 自分の場合とも照らし合わせて考える。
・自らの自立も真剣に考える。
という流れ自体は間違っていなかったのに、
他の家族の自立を描く分量とのバランスがほぼ等しかったために、
DVとの関係性が分かりにくくなってしまった、
みたいな。

ただ、ひとつのパターンとしては
十分に肯定できる範囲だった。
もし仮に秀樹に関わるエピソードを多く描いた場合、
他の家族の自立が
ご都合主義的に描かれる可能性もあったわけだし…。

あと、個人の自立を描いた作品は今までにもあったけど、
夫婦の別居もアリ、
まで堂々と示したのは新鮮だった。
まあ、それが本当にアリなのかどうかは別にして。

ところで、
近藤(岡田浩暉)の髪型はやっぱりおかしかったんじゃない?
みたいなツッコミは置いといて(笑)
キャスティングでは松浦亜弥の存在が大きかった。

まわりのことは興味ないみたいな顔をしつつ
実はいろんなことを考えている、
という表情がよく出ていた。
別の作品でもまた見てみたいな。

樋口可南子はさすがベテランという感じ。
この人、あんまり代表作っていうものがないかもしれないけど、
いい女優さんだ。

照英はどっからみても大工。
尾美としのりは本当に家で奥さん殴ってそう。
…あ、これ褒め言葉ね。
ちゃんとそういう風に見えたという(笑)

要するに赤井英和の標準語だけだったんだよな。
この作品のネックは。
でもまあ、最後は見てる方も慣れてきたから
よしとするか。

この作品で描かれた内山家が
あくまでも“最後の家庭”であって、
本当の意味で“最後の家族”にならなかったことは
救われた気がした。

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

          全体的な採点  6.5(10点満点平均6)

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『歓迎!ダンジキ御一行様』 最終回

監修:寺田敏雄
企画担当:佐藤敦
チーフプロデューサー:増田一穂
プロデューサー:西憲彦、北島和久、大塚泰之
主題歌:「Buzzstyle」矢井田瞳
演出:猪股隆一、大谷太郎、片岡K、若松央樹
脚本:大良美波子、他
出演:中村雅俊、泉谷しげる、小川直也、遠藤章造(ココリコ)、中村俊太、
   丹波哲郎、西田ひかる、渡辺満里奈、榎本加奈子、酒井彩名、他

全体的に行き当たりばったりの感じは拭えなかった。
実際、そうだった可能性は高いけど…。

致命的だったのは、
制作者側も役者陣も、
コメディセンスに著しく欠けていた点。
もちろん、遠藤章造はお笑いが専門だけど
演技に夢中で自然な笑いは取れなかった。

榎本加奈子だけだな。
こういうチープなコメディの意味が分かっていたのは。

ただ、全然ダメだったかというとそうでもなくて、
意外(?)とありがたい仏教の教えを盛り込んでいた点、
各回の締めはそれなりに納得ができた点、
微妙なポジションの昔のアイドルを第2期生で揃えた点(笑)
などは評価できた。

まあ、ひとことで言えば日テレらしい作品だったということで…。

あ、中村雅俊の実の息子・中村俊太は、
とりあえずダメそうって感じ。
華がないからね。
しょうがないよ。ある意味、二世の宿命だから。

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★☆☆☆☆
                  配役  ★☆☆☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

          全体的な採点  4.5(10点満点平均6)






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