タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第5話「ハッピー? クリスマス」

今日(25日)がクリスマスなんだよね。
なんかイブが終わると、もうお正月って感じ。
日本人だなあ、オレも。

  今宵はクリスマス
  弱い人たち 強い人たち
  金持ちの人たち 貧しい人たち
  世界がこれでいいとは思わないけど
  ともかくハッピー・クリスマス
  肌の黒い人たち 白い人たち
  黄色い人たち 赤い人たち
  さあ このへんで争いはやめようよ

        ジョン・レノン「ハッピー・クリスマス」

じゃあ、今回は
当然のようにクリスマスシーンで
ラストを迎えたこの2作品。

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『恋を何年休んでますか』 最終回

プロデューサー:八木康夫
主題歌:「remain〜心の鍵」小柳ゆき
演出:清弘誠、片山修
脚本:吉田紀子
出演:小泉今日子、黒木瞳、飯島直子、仲村トオル、宮沢和史、山口祐一郎、
   伊藤英明、矢田亜希子、森尾由美、井澤健、君嶋ゆかり、高田敏江、
   前田昌明、大平奈津美、池田仁、清水紘治、他

序盤から中盤にかけては実に丁寧な作りで
さすが金曜ドラマという出来だったのに…

最終回は明らかに時間が足りなかったって感じだよね。
ムリヤリ編集して時間内に納めたという印象。
もし、脚本通りなら、
そこまでの構成にムリがあったということか。
とにかく残念な最終回だった。

結末として有子(小泉今日子)が家庭に戻る
というのは想像通りの展開だった。
島クン(宮沢和史)に走ってしまっては
保守的な奥様たちが許さない。
ドラマだからそんな思い切ったことができるのよ!
と反感を買うだけだ。

ここは子供が成人している
咲子(黒木瞳)ひとりだけに大胆な行動を取らせて
あとの2人は夫と仲直り。
この終わらせ方は、
ドラマとしては最もベターな選択だったと思う。

問題は、
なぜ有子が夫婦という形態を維持しようと決めたのか、
その動機、決意、覚悟だ。

唯一、そこに言及したのは
最後に有子が礼子(森尾由美)に宛てたメールの中の
“幸せって、たぶん夫婦が一生をかけて
 ふたりで築いていくものだから”
という部分だけ。

この言葉自体はおそらくひとつの真実だと思う。
ただ、有子がそう決意するまでの流れが不十分だったため
作品全体がやたら軽いものになってしまったのだ。

このドラマは、
最初からF2層(35〜49歳の女性)を
意識して作られた作品だったと思う。

最もドラマを見る
と言われているF1層(20〜34歳の女性)も
いつまでもそこに立ち止まっているわけじゃない。
25歳で『東京ラブストーリー』を見た女性はもうF2層だ。
結婚している人も多いだろう。

その人たちに
恋を何年休んでますか?
という問いかけでよかったのか。

その恋のシチュエーションだけではなく、
家庭を捨ててまでも恋に走る覚悟、
一生をかけて夫婦の愛を築く意味を
もっと分かりやすく、具体的に
(かつ使い古された言葉などは使わずに)
視聴者に提示するべきではなかったのだろうか。

まあ、そんなこんなで、
途中までの印象と最後まで見たあとの印象が
がらりと変わった作品だった。

キャスティング的には文句なし。
小泉、飯島、黒木の3人は
キャラクターの差別化も分かりやすくて良かったし、
男性陣もみんなそれなりに魅力的だった。

作品としては宮沢和史を起用できたことが大成功。
派手ではないけど、有子の昔の彼という存在を
うまく表現していたと思う。

もったいなかったのは
子役に大平奈津美を起用しておきながら
ほとんどスポットが当たらなかったことぐらい。

主婦が恋をするという時点で
子供の存在はかなり大きな要素を占めるのだから、
彼女にスポット当てるエピソードは
もっとあってよかったと思う。

かつての『金妻』とも比較されたこの作品。
同じ枠の放送でテーマも似ているのだからそれはしょうがない。

第3シリーズまで作られた『金曜日の妻たちへ』は
1作目が多摩ニュータウン、
2作目が中央林間、
3作目がつくし野が舞台だった。

そしてこの作品は用賀が舞台。
洗練されてオシャレになった分、
中身もアッサリとしてしまった。
やたらホームパーティーをするところは
変わってなかったけどね(笑)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

          全体的な採点  6.5(10点満点平均6)

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『嫉妬の香り』 最終回

企画:辻仁成、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)
チーフプロデューサー:梅沢道彦
プロデューサー:横地郁英、遠田孝一(MMJ)
主題歌:「SLOW」ECHOES OF YOUTH
監督:佐藤嗣麻子、塚本連平
原作:辻仁成「嫉妬の香り」(小学館刊)
脚本:吉田玲子、後藤法子
出演:本上まなみ、川原亜矢子、堺雅人、寺脇康文、オダギリジョー、原沙知絵
   池田真紀、みれいゆ、桑野信義、浜丘麻矢、村上幸平、伊藤英明、他

今期の連ドラの中で最も笑えた作品。
シリアスな内容なのに
バカバカしく大袈裟に作られた、
いわゆる大映ドラマ的な笑いを得られる
超B級のドラマだった。

ストーリー展開やセリフはもちろん、
役者の演技も学芸会並みのトーン。
中にはマジメにやっても演技力は変わらないのでは…
という役者もいたりして(笑)
その中途半端さもまた笑えた。

強烈だったのは効果音の使い方。
誰かの香りがするたびにピロピロピロ〜ン。
誠(オダギリジョー)の体からはピヨピヨピヨ。
…とにかく笑いどころは満載だった。

確か辻仁成が
『愛をください』で自爆したあとに
テレビはテレビの専門家に作ってもらう
というようなことを言っていたっけ。

どちらにしても
あとから原作を読みたいと思えないところが
悲しいだろうな、本人としては。

まあ、ジャンルとしてこういうパターンもアリだと思う。
実際、このドラマが今期一番面白かったという人もいるだろう。
ただ、決して志が高いドラマとは言えないからね。
そのあたりは客観的に判断したいと思う。

                  脚本  ★☆☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★☆☆☆
                  主題歌 ★★☆☆☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

          全体的な採点  4.0(10点満点平均6)






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