タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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第8話「年末年始の過ごし方」
他の執筆者も年末年始の様子を
それとなく書いたりしてるのでオレも。今年もドラマを見ました。
以上。
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『温かなお皿』
原作:江國香織 脚本:カリュアード 演出:源孝志
出演:今井美樹、水野美紀、坂口憲二、三浦友和、末永遙、鈴木砂羽、
安居剣一郎、田口浩正、藤村俊二、他こういうのをオシャレなドラマっていうのだろうか。
とりあえずスマートにまとまっていた作品だったと思う。ただ、どうしても
机の上だけで作られた物語、
という感じがしてならなかった。原作もしくは脚本に
決定的に何かが欠けていたような気がする。
役者たちはみんな良かったけどね。それにしても末永遙は
急に大人っぽくなったな。
三浦友和とは「氷点2001」に続いて父娘関係だったけど
あんなに表情が違うと三浦友和もビビったに違いない。あと、ストーリーと関係ないところで
引っかかったのは水野美紀の足首。
…太かった、ものすごく。
足首フェチの気持ちが初めて分かった。いや、それでも
水野美紀は好きだけど。採点 6.5(10点満点平均6)
『君の手がささやいている・最終章』
原作:軽部潤子 脚本:岡田惠和 演出:新城毅彦
出演:菅野美穂、武田真治、谷口舞、木内みどり、加賀まりこ、高樹沙耶、
中村麻美、斉藤陽一郎、本田博太郎、石田太郎、他
「愛していると言ってくれ」などと並んで
若い人にも手話を身近なものに感じさせてきた作品。
そういう点においては
十分にその使命を果たして最終章を迎えたと思う。ただやっぱり
健常者が気づかない聾唖者の苦労や
まだまだ勉強不足な世間の目みたいなものに
スポットを当てようとすると、
どうしてもネタ切れというか、
同じことの繰り返しになってしまう。このあたりがこのタイプの作品の最大の弱点であり
かえって批判を受ける対象となるのかもしれない。たとえば実際はもっと日常的に
FAXや携帯メールを有効に使ったり
小さいホワイトボードを常に持参して
もっとスムーズに話したりしていても、
エピソードを分かりやすくするために
わざと不都合が起きるようなことを
大袈裟に表現してしまったりして…。でもまあ、こういう作品は
まだ日本の社会には必要なんだろうな。このシリーズで一番印象に残ってるのは
やっぱり第一章で2人の結婚に
博文(武田真治)の母・正江(加賀まりこ)が反対するところ。美栄子(菅野美穂)の両親(木内みどり・本田博太郎)も同席する中、
自分の息子には何かを背負ったような生き方をしてほしくない
と言ったシーンは強烈だった。お互いがお互いの気持ちを分かって上で
涙を流しながら話す加賀まりこと
それを手話通訳する木内みどり。
この2人の母親のカットは
ちょっとドラマ史に残るシーンだった。ま、本当は「男女7人夏物語」や
「愛という名のもとに」みたいな作品で
メンバーの中にたまたま聾唖の人がいたり
車椅子を使う人がいたりするドラマが見たいけどね。そんな作品を見ても
なんでわざわざそういう人を出す必要があるんだ、
みたいな意見が出ない世の中がいい。たとえば仲良くなったグループの中に
失恋ばっかりしてる人、
父親にコンプレックスを持ってる人、
夢に破れて落ち込んでいる人、
手話や筆談で話す人、
車椅子で街へ出る人…、
そんな個性を持った人がいる。本当はそれだけでいいと思うんだけどね。
採点 7.0(10点満点平均6)
『ナンバーワン』
脚本:金子ありさ 演出:中島悟
出演:窪塚洋介、ユースケ・サンタマリア、岡本綾、坂口憲二、西村雅彦、
モト冬樹、河村隆一、江角マキコ、反町隆史、陣内孝則、平田満、他豪華な出演者のわりにはありきたりだった。
ナンバーワンではなくオンリーワンになりたい、
というテーマもかなり聞き飽きてるし…
窪塚洋介も坊主だったせいか
ホストには見えなかった。でも岡本綾は魅力的だったな。
やっと「オードリー」の呪縛から解けた感じ。
今後はもっといろんな役をやって欲しい。採点 5.5(10点満点平均6)
『忠臣蔵 1/47』
脚本:井上由美子 演出:河毛俊作
出演:木村拓哉、佐藤浩市、津川雅彦、杉浦直樹、深津絵里、堤真一、
松たか子、松雪泰子、小林聡美、他想像していたより良かった。
98年、キムタクが主演した
「織田信長」も井上由美子脚本だったけど、
「きらきらひかる」や「タブロイド」と同じ
河毛俊作と組んだこの作品の方が
質が高かったような気がする。ただ、やっぱり時代劇を見るたびに思うのは、
どこまで時代考証に正確さを求めればいいのかということ。今回の作品についていえば
どう考えてもキムタクのセリフはヘンだもんね。
大石内蔵助にもタメグチだし。じゃあ、他の時代劇はみんな正しいのかというと
そんなに綺麗なお化粧はしてなかっただろう、とか、
夜はもっと暗かったんじゃないの?とか
ツッコミどころはいろいろある。結局、どこまで許せるかは
各個人のこだわりに寄るところが大きいんだろうな。
この作品もそこで許容範囲を超えてしまった人には
ただ腹の立つだけの作品だったかもしれない。個人的には、まあこれはこれでいいんじゃない、という感じ。
いろんな時代劇があっていいと思うしね。全体の構成に関しては
堀部安兵衛にスポットを当てたんだからあれでいいと思う。
忠臣蔵としてはもっと描いて欲しいエピソードが
たくさんあったけど…。要するに、忠臣蔵って
どう料理しても面白いんだよ、たぶん。採点 6.5(10点満点平均6)
『夫婦漫才』
脚本・監督:豊川悦司
出演:中山美穂、甲本雅裕、他豊川悦司が演出をしたドラマは
これまでも何本か見たことがあるけど
長編はこれが初めて。やっぱり映像にかなりこだわっていて
前半のモノクロ映像なんかはかなり雰囲気があった。ただ、年老いた夫婦漫才師が
子供時代から自分たちの半生を振り返る
というスタイルで進むので
ストーリーはかなり駆け足に。
もう少しじっくり見せる部分も作って欲しかったな。中山美穂の老後役を
中山美保(吉本新喜劇)がやるという
コテコテのオチはよかった。採点 6.0(10点満点平均6)
『救命病棟24時』
脚本:福田靖 演出:田島大輔
出演:江口洋介、松雪泰子、伊藤英明、須藤理彩、田畑智子、小日向文世、
宮迫博之、谷原章介、木村多江、唐木恵子、ともさかりえ、押尾学、
田山涼成、高橋ひとみ、神木隆之介、他最初、豪華クルーズ船で人質監禁事件が発生、
特殊部隊が強行突入…というあたりは引いた。
スペシャルっていうといつもこうかよ!
って感じで。しかし、そこは前回の連ドラ版で
完全に立ち直っていた救命病棟。
その後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)に関する
エピソードにつなげるためのものだった。それならいくらお金かけてもいいや
と思い直して最後まで見られた。ともさか・田山親子の話も
ストーリー上、重要ではあったけど
最後の看護婦になるというのは余計だったな。
他は相変わらずいいバランスだったと思う。強いて言えばスペシャルにありがちな
きれにまとめるという印象がかなりあったのが残念。
小百合(高橋ひとみ)の出産とか
城島・山城(谷原章介・木村多江)の結婚とかね。それでも十分合格点のスペシャルだったと思う。
採点 7.0(10点満点平均6)
『モーニング娘。新春!LOVEストーリーズ』
(伊豆の踊子)
原作:川端康成 脚本:寺田敏雄 演出:星田良子
出演:後藤真希、小橋賢児、保田圭、辻希美、石黒賢、片平なぎさ、他
(はいからさんが通る)
原作:大和和紀 脚本:寺田敏雄 演出:星田良子
出演:石川梨華、沢村一樹、吉澤ひとみ、矢口真里、
高橋愛、紺野あさ美、小川麻琴、新垣里沙、他
(時をかける少女)
原作:筒井康隆 脚本:遠藤彩見 演出:小野原和宏
出演:安倍なつみ、内田朝陽、永山毅、飯田圭織、萩原聖人、戸田麻衣子、
加護亜依、余貴美子、大和田獏、市毛良枝、伊藤四朗、他まあ、ストーリーは
どれも有名な話だからいいとして、
問題はモー娘。飛ぶ鳥を落とす勢いの(?)
吉澤はダメだったな。
彼女はやっぱりバラエティー向き。石川は思ったほどひどくなかったけど
それでも女優としてやっていけるほどじゃなかった。安部はそれなりに画面に収まるんだけど
たぶんいろんな役ができるタイプじゃない。
声、というか発声に問題があるんだな、きっと。矢口と新人4人はコントと一緒。
辻は当然のように食べてばかり(笑)
飯田と加護は目立つ役でもなかった。で、後藤だ。
「マリア」でその才能の片鱗は見せていたんだけど
やっぱり表情の作り方や感情の出し方には非凡なものがある。動作が子供っぽいのは深田恭子にも共通することで
これは仕方がないのかもしれない。でも、山口百恵が伊豆の踊子をやった時は
15歳だったんだよな。
いかに山口百恵が大人だったかということか。今回は「マリア」と同じ
星田良子の演出だったけど
他の演出家にどう対応できるか、
後藤はもう少し長い目で見てみたいと思う。そして今回の発見は保田だ。
ワンシーンだけなのに
保田はかなりの存在感を発揮した。後藤につられたのか、
あるいは星田良子が厳しく演技指導したのか…。
もし彼女の中から自然と出たものだったら
将来は女優としてやっていけるかもしれない。とにかく
保田と後藤のあの別れのシーンを見られただけで
このドラマは価値アリでしょう。採点 6.0(10点満点平均6)
『愛と青春の宝塚〜恋よりも命よりも〜』
脚本:大石静 演出:藤田明二
出演:藤原紀香、木村佳乃、米倉涼子、中谷美紀、春花、
椎名桔平、中村トオル、ユースケ・サンタマリア、他前編・後編、合わせて5時間の大作。
実は全然期待してなくて
ビデオに撮るのもやめようかな、
なんて思ってたくらいなんだけど、
びっくりするくらい面白かった。主演の藤原紀香は
「スタアの恋」に引き続きスター役。
同じスターでも、
これは宝塚の男役トップということで
かなり難しかったと思う。本来の大阪弁が活かせた、
コメディー部分も多かった、
という追い風があったにしても
その気合いの入り方はかなりすごかった。たぶん「スタアの恋」よりも
この作品の方が前に収録されたんだよね。
今思うと、これを経験していたから
「スタアの恋」の成功があったのかもしれない。この作品には宝塚のスタッフ・キャストも
全面的に協力していたので
劇中劇の迫力が本物だったことも質を高めた要因。米倉涼子はバレエ経験者なので
もともと踊れるにしても
主要人物5人(藤原・木村・中谷・米倉・春花)には
宝塚卒業生がマンツーマンで指導にあたっただけあって
見栄えの良さはかなりのものだった。あとすごかったのは
結果的に病気で死ぬことになる
中谷美紀の激やせぶり。後編に入って、
いよいよ病気が重くなってきたという時の
死相にも見えるカットは必見の価値ありだ。本当に撮影中減量したようで、
制作発表の席で脚本家の大石静も
「メリル・ストリープのような激烈な減量だった」
と驚いていたらしい。あえて不満を挙げるとすれば、
米倉涼子とユースケ・サンタマリアの
エピソードが良すぎて
他の恋の話が希薄になってしまった点。とくに木村佳乃が中村トオルを
好きになる過程は曖昧すぎた。
まあそのぶん、
この2人の別れの場面は秀逸だったけどね。演出上、少しドラマティックに
盛り上げすぎた箇所があるものの
実際に宝塚の影響を受けた
手塚治虫を登場させつつ
コメディー色を強めて楽しませた前編、
愛と死を中心に描いた後編と、
実に見応えのある作品だった。ていうか、
オレ、本物の宝塚を見たくなっちゃったんだよね。
それくらい丁寧に作られたドラマでした。採点 8.0(10点満点平均6)
『神戸発、尾道まで』
原作:森下尊久 脚本:井沢満 演出:佐藤健光
出演:生瀬勝久、南果歩、松井英樹、藤本海咲、植木等、山田昌、他6日(日曜日)の昼間、
テレビ朝日で放送された新春スペシャルドラマ。
神戸から尾道へ転勤になった
橋の建設に携わるサラリーマンを通して
家族の結びつきを描いた秀作だった。山田太一が書きそうな
個人的にはかなり好きなタイプのドラマ。ストーリーとしては
それほどドラマティックな展開が
あるわけではないけど、
やたら染み込む感じの作品だった。バックに流れる
サイモン&ガーファンクルの曲も
雰囲気に合っていて
何かジーンとしてしまったし…たぶん再放送はない作品だと思う。
もちろんビデオ化もないだろうな。お正月の終わりに
こういう静かなドラマを見られて
今年もおだやかに過ごせるかも。
なんて思ったりしてね。採点 7.0(10点満点平均6)
[ロビー田中の自己紹介]
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