タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第100話「視聴率なんていらねえよ、夏」

100話だって、100話。
永遠にネタが途切れないのも
嬉しいんだか悲しいんだか。


『愛なんていらねえよ、夏』 THE LAST1

演出:堤幸彦
脚本:龍居由佳里

悲しい結末も可能ではあった。
でも、「いら夏」のスタッフは
ハッピーエンドを選択した。
これは正解だったと思う。

目が見えるようになった亜子(広末涼子)が
空港までレイジ(渡部篤郎)を探しに行ったシーン。
ここで広末涼子はこのドラマで初めて
渡部篤郎の目を見て演技をした。

この劇的な変化はすごかった。
もちろん、メイクや衣装の力もあったけど、
このシーンからエンディングまでの広末涼子は
やはり美しかった。

この変化を見せるためだけでも
ハッピーエンドは正解だったと思う。

そしてこのドラマを支えた脇役のひとり、
奈留を演じた藤原竜也は立派だった。

彼が結局、レイジを刺す役回りになったわけだけど、
レイジへの信頼を無くしていく過程、
そして、あれほどクールだったレイジが、
血まみれになっても亜子との約束を守ろうとする姿を見て、
最終的にまたレイジを信頼するようになる表情。
最後まで見事に演じきったと思う。

一番の驚きは季理子を演じた西山繭子だろう。
植田Pは、もしムリだったら
途中で季理子の役を無くすことも考えていたらしい。
でも西山繭子も藤原竜也に負けないくらい頑張った。
最後まで季理子がレイジを刺す役回りになってもおかしくなかった。
新人ではないけど、このクールの新人賞をあげたい。

それからタクローを演じた森本レオ。
この人がいたことで
このドラマはずいぶん締まったと思う。

最後はレイジが初めて言った、
本当の意味での“愛してる”という言葉を一億で買った。
いちばん愛を信じていたからこそ
偽物の愛は許さなかったタクローを渋く演じたと思う。

この最終回、細かいことを言えば、
くさいセリフも3つくらいはあった(笑)
でも、それ以外はほぼ完璧だったのではないだろうか。
ひとつひとつのシーンが研ぎ澄まされていて、
堤幸彦、入魂のカットという感じがした。

エンディングで
レイジの顔が初めて鮮明に写るカットまで、
高いクオリティーを維持したと思う。

最後までレイジと亜子が
男と女の関係には見えなかったけど、
むしろそのことが
深いラブストーリーの完成度を高めたと思う。

             採点  9.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★★
                  演出  ★★★★★
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★★★
                  音楽  ★★★★★
                  新鮮さ ★★★★☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  8.15(10点満点平均6)


『ツーハンマン』 第10回

演出:土方政人
脚本:鈴木聡

丁寧な脚本だなあ。
やっぱりツーハンマン(中村俊介)の
プレゼンテーションは
つながりが苦しいんだけど、
それ以外の部分は上質のラブストーリーだった。

真矢みきの演技がシリアスなシーンになると
多少、大袈裟になるのは相変わらず。
それでもかなり泣けた。

とにかくセリフが丁寧だった。
感動した(笑)

最後はついにユカリン(川原亜矢子)が、
ツーハンマンの正体を知ってしまう展開に。

せっかくユカリンとつき合うことができたのに、
可愛そうなジミー。

…ま、絶対ハッピーエンドなのは分かってるんだけど、
最終回もすごく楽しみだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)


『ロッカーのハナコさん』 第3週 北浦華子 意地になる!(第9〜12回)

演出:渡邊良雄
脚本:戸田山雅司

平山綾や国分佐智子も出るのは
最初から発表されてたことだけど、
そういう使い方だったのか。

要するに華子さん(ともさかりえ)が見えるのは
吹石一恵だけじゃない。
つまり吹石一恵だけが準主役というわけじゃない。
それはよかった。

…と言っていいよね?(笑)

鳥羽潤のキャラも面白くなってきたし、
コメディーという部分では
だいぶ期待が持てるようになってきた。

ただ、やっぱり華子さんは
新人に仕事をしっかり教えないとなあ。

仕事から離れすぎるとつまらなくなりそう。

             採点  6.5(10点満点平均6)


『探偵家族』 最終話

演出:長沼誠
脚本:石原武龍、福田裕子

なんじゃこりゃ(笑)

いや、そういう作品を
作ってるのは分かってるけどさ。
見てて恥ずかしい。
こっちが赤面する。

視聴者を恥ずかしがらせてどうする!

ま、とりあえず役者陣には
仕事を選べ!とだけ言っておこう。

でも、山下真司はハマリ役。
そこがいちばん悲しい(笑)

             採点  4.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★☆☆☆☆
                  演出  ★☆☆☆☆
                  配役  ★★☆☆☆
                  主題歌 ★★☆☆☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  4.83(10点満点平均6)


『太陽の季節』 最終回

演出:土井裕泰
脚本:渡邊睦月、岡本貴也

46年前に始まった東芝日曜劇場の最後の作品。
当初はなぜ今さら「太陽の季節」を?
と思ったけど、
東芝撤退のニュースが流れて、
それでわざわざ46年前の芥川賞作品を選んだことが判明した。

そこまでこだわって選んだ作品なら
きっと最後は納得させてくれるだろうと思ってたのに…

結論から言うと
これはやっぱりダメだったと思う。

英子(池脇千鶴)の死が、
ありふれたドラマのワンシーンにしか見えなかったのが
個人的にはいちばん辛かった。
どうせならまだ
由紀(松本莉緒)に刺させた方がよかったかもしれない。

ていうか、
ムリに原作をアレンジする必要もなかったのでは?
という気が今はしている。

もともと原作も大人や社会に対する反抗というより
自分たちの価値観で
好き勝手に生きていく若者の姿を描いていたんだから
その部分を現代にもってくることは可能だったと思う。

その上で原作のような英子の死というラストを描いていたら
かなり若者の共感は得られたような気がするんだけど。

密かに期待していた分、
非常に残念なまとめ方だった。

             採点  5.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★☆☆☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.68(10点満点平均6)


『ランチの女王』 最終話

演出:水田成英
脚本:大森美香

なつみ(竹内結子)がハッキリと相手を選ばないまま
キッチンマカロニで“ランチの女王”になったのは
いいハッピーエンドだったと思う。

ただ、90分はやっぱり長いな。
今までテンポが良かったら
通常の60分でスッキリまとめて欲しかった。

このドラマ、
序盤は脚本家の問題で混乱したけど、
大森美香になってからの安定感はさすがだった。

主要キャストのキャラクターも立っていて
誰が欠けても成立しなかったような気がする。

もちろん最大の功労者は主役の竹内結子。
当初、一番不安だった竹内結子が
最終的には一番魅力を発揮した格好だ。

最終回でまた出てきた大杉蓮。
そして最後の客は「カバチタレ」でも
露出狂のちょい役で出てきた中丸新将。
このあたりでは相変わらず山口Pが遊んでいた。

最初から大森美香が書いていれば…、
という残念な気持ちもあるけど、
全体的には心地いい雰囲気のドラマだった。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.29(10点満点平均6)


『私立探偵、濱マイク』  最終話 BITTERS END

監督:利重剛
脚本:利重剛、萩生田宏治
ゲスト:SION、濱田マリ、塩見三省、尾藤イサオ、川越美和、桐谷健太、
    清田正浩、矢作公一、鶴山欣也、宇和川士朗、他

映画的なテイストと
TVドラマとしての大衆性、
そして「濱マイク」という設定を
一番バランス良く使えた最終回だったと思う。

ゲストのSIONはもちろん、
中島美嘉も良かったし。

結局、業界内でも注目されていた
この贅沢な作りのドラマは、
初回は13.5%だった視聴率も、
後半は4〜5%に低迷した。

ひとことで言ってしまえば、
前半を担当した監督陣が
TVドラマというカテゴリーを
有効に使えなかったことが原因だと思う。

芸術的な作品を普段作っている人が
大衆的な作品を作ろうとする時、
一般的にはレベルを下げるという
認識があるかもしれないけど、
このドラマを見て改めて感じたのは、
大衆的なものは
芸術作品の上にも下にもあるということだ。

このドラマに参加した監督陣が
意識的に自分の領域を踏み出さなかったのなら
別にかまわないけど、
視聴者にここまで上がってこい、
という気持ちがあったとしたら
それは監督自身の怠慢に他ならない。

もっと自分からTVドラマの可能性を探れば
質を落とさずに大衆が支持する作品も作れたのに。

とりあえず、
企画としての「濱マイク」には
拍手を送りたいと思う。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★★★
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.29(10点満点平均6)







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