タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第149話「“高校教師”と“僕の生きる道”」


いよいよ今期のドラマも徐々に最終回を迎えつつある。
そんな中、「高校教師」と
「僕の生きる道」の見比べが俄然面白くなってきた。

両方とも自ら余命を知った主人公の
残りの人生を描いた話。

テーマも、アプローチの仕方も、
ドラマ全体の雰囲気もまったく違う2作品だけど、
どちらも確固たるポリシーのもとに作られている。

これ、ホントに両方見てるとドラマの面白さが分かるんだけど、
両方を楽しめる人って少ないんだろうなあ。

もったいない。


『高校教師』  VOL.9 壊れかけた先生

演出:今井夏木
脚本:野島伸司

やっぱり野島伸司はうまいな。
雛(上戸彩)が湖賀(藤木直人)を軽蔑し、
すべてを忘れようと努力し、
迷いの中で自分が湖賀の孤独を癒そうと思い直し、
結局はそばにいることさえできないと湖賀に告げる展開は、
一見、単純なようでいて
セリフで紡ぎ出していく行為は難しい。

一度は自分の死期を知って
恋人と別れたこともある湖賀の狼狽ぶりが
雛に対する特別な感情も際立たせていて、
プロットの緻密さを証明している。

もちろんこれは、藤村(京本政樹)が
手島(眞鍋かをり)との結婚を考えることにも
対応しているわけだけど。

今回はやっぱり、悠次(成宮寛貴)が藤村に
紅子(ソニン)のビデオも持っていると告げた時、
藤村が大笑いするシーンが印象的だった。

何も経験がない愚かな子供と
依存と愛について悩む若者の対比も面白い。

             採点  7.5(10点満点平均6)



『よい子の味方 〜新米保育士物語〜』  8

演出:長沼誠
脚本:梅田みか

大野智は「クレームの嵐」ネタか。

今回もストーリーはオーソドックス。
でもこのドラマらしくマジメに作ってあった。
松下由樹はきちんと自分と役割を果たしてるな。

それにしても
松下由樹も中学生の母親役をやるようになったか。
時が経つのは早い。

             採点  6.5(10点満点平均6)



『GOOD LUCK!!』  第8話

演出:土井裕泰
脚本:井上由美子

ラストの新海(木村拓哉)の事故シーンは
ちょっとムリがあったかな。
ドラマとしての盛り上げも考慮しての展開なんだろうけど
流れとしてはかなり不自然だぅた。

ただ、今まで徐々に明かされていた
香田(堤真一)と歩実(柴咲コウ)の過去を描きながら、
新海の実家のシーンを入れつつ
新海と歩実の関係とも絡めていたストーリーは上質だった。

香田が何人の遺族にお金を送っていたのかは
明かされないままになりそうだけど、
まあ、それはいっか。

最後まで全体のバランスは崩さないで描いて欲しい。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『いつもふたりで』  10

演出:小林和宏
脚本:相沢友子

4月からレギュラー番組として復活する
「はねるのトびら」の番宣を月9でやったよ(笑)
よほどここのスタッフは好きなんだなあ。

で、今回の内容。
央子(長谷川京子)の迷いからハチ(坂口憲二)の迷いへ
無難にシフトチェンジしたと思う。
その中で、瑞穂(松たか子)とハチの心理に関しては
いいスペースに潜り込んだんじゃないかな。

もともとストーリーに斬新さは出ない内容なので、
この微妙な心理をどううまく表現できるかどうかがこのドラマの生命線。

そういう意味で今回は
最終回を前にうまく助走できたと思う。

             採点  7.0(10点満点平均6)



『メッセージ 〜言葉が、裏切っていく〜』  最終話

監督:岡本浩一
脚本:森下直

これ、当初は2話に分けて描く
最終エピソードだったんじゃないだろうか。

内容は良かったのに、
前半はバタバタとシーンをつないだだけの展開になって
かなりもったいなかった。

このドラマは今さら言うまでもなく、
営業的には完全に失敗だった作品。

8話中、最終回を含め3話も3%台の視聴率を出しては
2話短縮もやむを得なかっただろう。

ただ、映画「誘拐」で日本アカデミー賞脚本賞を取り、
最近は「13階段」の脚本も担当した森下直の仕事は
さすがに目を惹くものがあった。
これを活かせなかったのは残念だった。

もちろん最大の失敗はキャスティングだけど、
演出にも問題はあったと思う。
たとえ映画や舞台のように時間が取れなくても、
もう少し若い役者にダメ出しをして最善を尽くすべきだった。

ま、キャストが違っていたとしても
この手のテーマはあんまり視聴率が取れないんだけどね。

志の高さは認めてあげたい作品だった。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★☆☆☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  6.50(10点満点平均6)



『お義母さんといっしょ』  最終話

演出:高丸雅隆
脚本:金子ありさ

結局、テーマを消化しきれないまま終わった感じ。
最終的に夫が死んでも義母と一緒に暮らす、
というストーリー自体は別にかまわない。
ただ、そこまでに要したエピソードに一貫性がなかった。

加奈子(さとう珠緒)の存在などはその典型で、
最後は辻褄を合わせるために出ていったような印象。

脇役の使い方も意味がないものが多くて
結局、俊介(海東健)にくっついていた直樹(小池徹平)は
何のために存在していたのかよく分からなかった。

高橋ひとみ、宮本真希という豪華な脇役にしても
もっと効果的に絡ませることは可能だったはずなのに
たま代(水野美紀)の相談相手としても
ドラマ全体の笑いを取る役目としても機能してなかった。

それから脚本。
感動的なシーンを描くシチュエーションはいくらでもあったのに
良かったのは全部で3シーンくらい。
セリフで引っ張ることもできてなかった。

もちろん、脚本だけの責任じゃなくて、
このドラマの失敗はスタッフ全体の問題。

もっとテーマを練って、
より効果的にそれを伝える方法をじっくり考えるべきだった。

普通の嫁姑問題じゃなくて
血のつながらない世代の違う2人の女性の友情を描こう。
あ、それでいきましょう。
…で会議を終わらせたんじゃないの?

出だしで期待が膨らむ雰囲気があっただけに、
非常に不満いっぱいの出来だった。

             採点  5.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★☆☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  5.50(10点満点平均6)



『僕の生きる道』  第十話

演出:佐藤祐市
脚本:橋部敦子

佐藤祐市演出の回らしく、
前半の叙情的なシーンはすばらしかった。

ただ、あっさりと生徒全員が模擬試験でA判定を取ったり、
最後のひとりとなった生徒(内博貴)も素直に合唱を始めたり、
普通に合唱コンクールの予選を通過したりという流れには
やや物足りなさを感じた。

もちろんこれは、
ラストで秀雄(草なぎ剛)が
死にたくないと号泣するシーンへの布石になっているわけだけど、
もう少し捻りがあってもよかったんじゃないかな。

さて、いよいよ次回が最終回。
15分拡大が決まっている。

もうこのドラマは内容的にコケることは考えられないので、
間延びしたような演出だけは避けて欲しい。
希望はそれだけだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)






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