タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第151話「“GOOD LUCK!!”でトリビアの泉」


たとえどんなに無謀な発想でも、
今、アメリカが戦争すると決めたら
日本の総理大臣はそれを支持する。

当然だ。他に選択肢などない。
そういう国に、
日本は戦後50数年かけてしてきたんだから。

そんな日本で先週も予定通りドラマは放送されていた。
…あ、「スカイハイ」だけ30分遅れたんだっけ。

今のうち逃さず見ておこうっと。



『いつもふたりで』  最終回

演出:中江功
脚本:相沢友子

「美女か野獣」の出演者も
テレビ局のシーンに出てたね。
あれくらい控えめな映り方のほうが
番組のコラボレーションとしては面白い。

まあ、最終回にやらなくてもいいとは思うけど…。

で、本題。
諦めずに頑張れば願いは叶う、
という大きなテーマに関しては、
一貫して描けていたと思う。

ただそれを紡ぐエピソードに
オリジナリティが少なすぎて、
結局は平凡な作品になってしまった。

最大のミスは何度も言っているけど、
不破(西村雅彦)、央子(長谷川京子)という
脇のキャストの描き方。
この2人が生きてドラマに絡んでいたら
もっと違う印象になっていたと思う。

この最終回も、
前半のハチ(坂口憲二)と央子の絡みなどは
やっぱり感情移入できなかったしな。

それでも、ハチが瑞穂(松たか子)を
パーティーから連れ出して告白するあたりから
ラストにかけての描き方は良かった。

嬉しいのにピンと来ない瑞穂の表情。
精一杯の告白をしてるのに
格好良くはキマらないハチのキャラクター。
そして幼なじみらしいキス。
ラブストーリーの結末としては上質のシーンだった。

本人不在のまま
瑞穂の編集者としての成功を祝している
村越(黒沢年雄)のスピーチも良かったし。

終わりよければすべて良し、ってとこか。

結局、この作品は、
松たか子のドラマだったような気がする。
それくらい松たか子の繊細な表情だけが印象に残った。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  6.82(10点満点平均6)



『僕の生きる道』  最終話

演出:星護
脚本:橋部敦子

最後までこのドラマのテイストを崩さず、
見事に描き切った作品だった。

ストーリーそのものは小細工無しのストレートなものだったし、
演出も星護を認識できる人なら新しさは感じなかったはずだ。

それでもこれだけ圧倒的な重厚感が出た理由は、
そのテーマの重さよりも、
このドラマが細部まで丁寧に作られていたからだと思う。

目新しいドラマを作ろうとする必要はない。
普遍的なテーマでも丁寧に作れば十分に視聴者は惹きつけられる。
それを証明した作品だった。

ダイエットして臨んだという草なぎ剛の演技も圧巻だったけど、
個人的には相手役に矢田亜希子を選んだことが
この作品をほぼパーフェクトにした大きな原因だと思う。

日常的なシーンをファンタジックに包んだ演出がメインだったとはいえ、
愛する人の死を静かに受け入れる者の気持ちを
見事に演じていたと思う。

「木更津キャッツアイ」とはまったく別のアプローチで
限られた命を精一杯生きる姿を描いた秀作だった。

             採点  8.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★★
                  演出  ★★★★★
                  配役  ★★★★★
                  主題歌 ★★★★★
                  音楽  ★★★★★
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.64(10点満点平均6)



『最後の弁護人』  最終話

演出:岩本仁志
脚本:秦建日子

前回の未成年の事件は結局そのまま。
ただ、このドラマのメインテーマとも言える
弁護士の仕事についてはかなり深く描いていたと思う。

“法律のテクニックを駆使して
 犯罪者の刑を少しでも軽くしようと努力する。
 それが世の中にとっていいこととは思えない”

という疑問に対して、
有働(阿部寛)の妻のかつての言葉、

“あなたが人を裁いてはいけない。
 あなたが神様になろうとしてはいけない。
 人を裁くことが許されるもの、それは事実。
 美しくても、あるいは醜くても、
 実際に行われた事実、ただそれだけだ”

を有働が心に留めているという展開で描いていた。

このドラマ全体として、
やっぱり事件のトリックそのものや
警察の捜査、検察の追求などに関してはムリがあったと思う。

それでも、主役となる弁護士の苦悩と正義を描きつつ、
そこにまつわる人間ドラマまで描いた点は
十分に評価できる作品だったと思う。
この最終回も有働と死んだ妻の愛の物語になっていたし。

これはスペシャルを作りそうなドラマだな。
でもこれなら見たいと思う。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  6.90(10点満点平均6)



『HR』  第22話「恋の季節」

脚本・総合演出:三谷幸喜
映像演出:河野圭太

“幸運の蹄鉄”が巡っていく流れが三谷幸喜らしく、
全体のテンポも良くて面白かった。

でも、昼間の学生(赤岡典明)の使い方はもったいなかったな。
この学生をオチに使えば
みんなが宇部さん(戸田恵子)に気を使う
ハートウォーミングな展開とのメリハリも効いて、
最後がもっと締まったかもしれないのに。

次回、最終回のゲストは伊藤四朗。
そして三谷幸喜が来て全員トークをやるらしい。

             採点  6.5(10点満点平均6)



『美女か野獣』  LAST STORY

演出:西谷弘
脚本:吉田智子

インタビューで父親(竜雷太)と対峙するシーン、
永瀬(福山雅治)との最後のキスシーンあたりは、
さすがに松嶋菜々子の面目躍如という感じだった。

ストーリーそのものも
この最終回に関してはさすがに見どころが多かったと思う。

でも、トータルにみれば脚本はやっぱりしょっぱかったなあ。
とにかく完成品のイメージの次元が最初から低すぎた。
そして豪華な出演者がもったいなかった。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★☆☆☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★☆☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  5.77(10点満点平均6)



『年下の男』  最終回

演出:佐々木章光
脚本:内舘牧子

内館牧子らしい結末だったと思う。
まあ、最近の内舘ドラマを見ていれば
あらゆる登場人物に対して
自立を求める展開になることは分かってたんだけど。

中でも千華子(稲森いずみ)自身に
“年下と恋愛したり結婚したりできるほど
 大人の女じゃなかった”
と言わせたのは象徴的だった。

年上の女と年下の男の恋愛を軸にしつつ、
家族まで描いた点が個人的には好みだった。
卓(山崎裕太)は後半、少し消えてしまったけど、
父親(平田満)に存在感があったし。

とはいってもラストの演出、
母親(風吹ジュン)が歩き出す先は
暗かった道に光が当たっていって、
その先には伊崎(高橋克典)がいたり、
子供たち(稲森いずみ、山崎裕太)が歩き出す道は
ずっと明るく照らされていたりするのに、
父親が歩き出す先はどんどん明かりが消えていくんだよなあ。

そのへんで演出家は年輩の男の哀しみを表していたりして…。
なんか面白かった。

最後に梓(麻生祐未)が
妙に物わかりがよくなったのは残念だったけど、
トータルではエンターテイメント性もあって
うまく作られたドラマだったと思う。

稲森いずみはこういう雰囲気の作品ならまだまだ活きる。
彼女の次回作にも期待が持てるようになったのは大きかった。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  6.36(10点満点平均6)



『高校教師』  最終話 永遠の愛と死

演出:吉田健
脚本:野島伸司

10年前に「高校教師」を見た直後は、
作品として肯定はしていたものの
野島伸司自体を肯定していたわけではなかった。

「高校教師」はあくまでも純愛のひとつの形であって、
もし野島伸司がこれを最も純粋な愛と考えているなら
それは到底納得できなかったからだ。

ただ、その後に「この世の果て」を見て、
考えは変わった。

野島伸司はたったひとつの純粋な愛を描こうとしているわけではなく、
様々な形の愛を提示できる作家であることが分かったからだ。
それはその後の作品を見ても確認することができた。

ただし、そこで描かれる愛は常にハードルが高く、
時には無様に、時には血を流さなければ得ることはできない。
言い換えれば、この世に簡単に手に入る愛など無い、
と言っているようでもあった。

本当は愛を信じていないのに
いちばん愛されたいと願っているのが野島伸司である、
というのが個人的な野島伸司に対する印象であり、
だからこそ彼はこれからも愛の物語を書くべきだと思っている。

……前置きが長くなってしまった。
つまり、野島伸司の純愛に関する表現は、
少なくとも「高校教師」と「この世の果て」を
セットで見るべきだと思っているので、
今回の「高校教師」もラストの落としどころは納得ができた。

“I Love You”に留まっていた前作の「高校教師」に
「この世の果て」的な“I Need You”も加味していたから。

したがって最後にかなり強引な形でヘリコプターが出てきた時も
さほど違和感はなかった。
むしろ必要なアイテムだったとさえ思う。

ただ、果たして今回の湖賀(藤木直人)と雛(上戸彩)の物語に
「高校教師」というプラットホームを使うべきだったかどうかは
いささか疑問が残る。

最終回、藤村(京本政樹)の物語と
湖賀・雛の物語はリンクした。
10年前の藤村のレイプ事件は
彼なりの実験だったということで…。

しかし、罪を認識し、報いを受け、
許されて死んでいった藤村の物語をここまで描くのなら
それだけで独立させるべきだったのではないだろうか。

もちろん、藤村=京本政樹主演で
今、「高校教師」をやるというのでは
企画が通らないのは分かっている。
それでもこの藤村の物語は
湖賀と雛の物語と一緒にするには強烈すぎた。
そこが一番残念だった。

では仮に、
主人公が高校教師と女子高生という設定がベストだとして、
舞台を日向女子高校にせず、
まったく別の「高校教師」にしたとしたらどうなっていたか。

たぶん成功していたと思う。
それくらい湖賀と雛の物語のプロットには見どころがあった。

2人に投影される橘(眞野あずさ)の哀しみにしても、
最終回で“自分が死んじゃうと思ってた時より恐い”と言った
雛の複雑な心情にしても。

個人的にはそういう「高校教師」を見たかった。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★★
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.14(10点満点平均6)



『スカイハイ』  最終死 フェイス(後編)

演出:北村龍平
脚本:田辺満

ドラマ全体のテーマも絡めた
ラストの15分はかなり良かった。

ただ、引きこもりが理由で
杏奈(山田麻衣子)が殺されたり、
首を切られたりする部分に関しては、
内容が浅すぎた。

こういう具体的なストーリーの浅さは
やっぱりこのドラマの一貫した弱点だったな。

原作をまだ読んでないので何とも言えないけど、
作品の設定が良かっただけに
ドラマのストーリーに面白みがなかったのは残念だった。

そしてこれも映画化。
「スカイハイ劇場版にお行きなさい」か。
2時間完結作品の方があってるかもな。

             採点  6.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★☆☆☆

           平均採点  5.80(10点満点平均6)



『GOOD LUCK!!』  最終話

演出:土井裕泰
脚本:井上由美子

“へぇ〜”
“1へぇかよ!”
は現場のアドリブなんだろうなあ。

ていうか、他局ネタをよくそのままオンエアしたな。
意味が分からなかった人は
フジテレビ系で7月から水曜9時に格上げされる
「トリビアの泉」をどうぞ。

で、注目の最終回。
最後までエンターテイメントに徹して
うまくまとめたと思う。

こんなに機内で騒ぎばかり起きる航空会社の飛行機なんか
乗りたくねえよ!というツッコミは当然ナシで(笑)、
歩実(柴咲コウ)もクルーのひとりであるという描写、
ドラマチックに歩実に雲の上の太陽を見せる効果、
乗客の安全を徹底的に考えるという基本姿勢、
すべてを内包した効果的なストーリーだったと思う。

とくに停電の理由が判明した後、
新海(木村拓哉)と歩実の会話による、

“コックピットへの影響は?”
“キャビンのシステムと飛行機をコントロールするシステムって
 別系統だから問題ない”
“それって整備士として言い切れる?
 いや、オマエを信じないわけじゃなくて、
 オマエを含めた300人の命がかかってるから”

というシーンが良かった。
その後、歩実が敬語で新海にもう一度説明する部分も含めて。

もちろん、停電の理由は最初から視聴者に想像できる範囲で、
そういう意味でのハラハラとした展開はなかった。
いや、このドラマに一貫してなかった。

つまり、とことん分かりやすい内容に徹していたわけで、
その点においてこの作品は軽かったと言わざるを得ないと思う。

ただ、スタッフはそういう作品を確信犯的に制作していたのは明らかで、
しかも、分かりやすさをカバーする要素として
木村拓哉という飛び道具を使うこと以外にも、
脚本、演出、あらゆる面で工夫を凝らしていた。

ここが「美女か野獣」との決定的な違いだった。
好き、嫌い、という次元ではなく、
明らかに「GOOD LUCK!!」は「美女か野獣」を上回っていた、
と断言していいと思う。
(ちなみに個人的には木村拓哉より松嶋菜々子の方が
 100倍好きです。当たり前か・笑)

ラブストーリーという面でも
新海・歩実のカップルだけでなく、
香田(堤真一)・富樫(黒木瞳)を描いたことで深みが出ていた。

ラストの新海と歩実のキスシーンにしても
2人の出会いの場面で印象的だった
“ヘタクソ!”というセリフを効果的に入れて、
艶のあるラブシーンに仕上げていたし。

本筋にはまったくリンクしなかったけど、
ユンソナの使い方にもセンスが感じられた。
これには好き嫌いがあると思うけど、
ドラマ全体を考えるといいアクセントになっていた。

というわけで、
連ドラ冬の時代にこのドラマが高視聴率をキープしたのは、
決して偶然ではなかった、
ということは確認しておきたい。

             採点  8.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★★★

           平均採点  7.10(10点満点平均6)







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