タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

>>バックナンバー >>ドラマ別レビュー


第153話「1〜3月期を振り返る」


始まる前はかなり心配していた1〜3月期も
終わってみれば非常に興味深いクールだった。

最近のドラマ低視聴率という現実を受けて、
制作者側がとりあえずリアクションを起こしていた感じ。

当然の成り行きとして分かりやすいものを、
というのが大きな流れだったわけだけど、
その中で成功した作品と失敗した作品が出た。
その違いが面白かった。

まずはビジネスとしての成功の基準となる
平均視聴率はこんな感じ。

  GOOD LUCK!!       30.41%
  美女か野獣        18.45%
  いつもふたりで      16.17%
  僕の生きる道       15.46%
  年下の男         12.75%
  最後の弁護人       11.60%
  高校教師         10.75%
  よい子の味方       10.41%
  お義母さんといっしょ    9.85%
  HR(10月〜3月)    9.41%
  スカイハイ         8.96%
  熱烈的中華飯店       8.86%
  恋は戦い!         6.70%
  刑事★イチロー       5.20%
  メッセージ         4.40%

「GOOD LUCK!!」はやはり別格だった。
上の数字は関東の平均だけど、
関西では一度も30%を切らずに平均31.9%を記録している。

最終回の視聴率は37.6%(関東)。
90年代以降の連ドラに限って言うと、
「ビューティフルライフ」「ひとつ屋根の下」に続き、
3位の成績だった。

「美女か野獣」も十分に検討したけど、
通常なら数字が上がる最終回の日(20日・木曜)にアメリカの空爆が始まり、
プライムタイムも視聴者はニュースにチャンネルを合わせる格好となってしまった。

「メッセージ」は記録的な惨敗。
第2話で4%台の視聴率を出し、
事実上の2話短縮でメッセージを伝える暇もなかった。

続いて個人的な評価点の平均はこんな感じ。

  僕の生きる道      7.64
  高校教師        7.14
  GOOD LUCK!!       7.10
  最後の弁護人      6.90
  いつもふたりで     6.82
  メッセージ       6.50
  HR          6.43
  年下の男        6.36
  よい子の味方      6.17
  スカイハイ       5.80
  美女か野獣       5.77
  お義母さんといっしょ  5.50
  熱烈的中華飯店     5.50
  恋は戦い!       4.90
  刑事★イチロー     4.67

「年下の男」は出だしの評価点が低くて
かなり低い位置になってしまったけど、
最終的な印象はもっと上。
あとはほぼ印象通りに並んだ。

「高校教師」に関しては異論も多いだろうな。
でもこれは見る視点が違っていたということでご了承願いたい。
野島伸司は基本的に後年評価される作家だと思っている。
TVドラマはそれじゃダメなんだけど(笑)


全体的に振り返ると、
「恋は戦い!」「刑事★イチロー」はとりあえず置いといて笑)、
「GOOD LUCK!!」「いつもふたりで」「よい子の味方」
「美女か野獣」「熱烈的中華飯店」あたりは、
制作者側が意識的に分かりやすさを狙って作った作品だと思う。

それぞれに数字が取れそうなキャストを用意して
何がやりたいかは伝わった。
それなのに結果として明らかな優劣がついた点が面白かった。

「よい子の味方」は、
表現は悪いが身の丈を知った作りで成功した例。
各回の前半部分はもっとセンスのいい笑いを取りにいくべきだったが、
後半の締め方は狙い通りに描けていたと思う。

「いつもふたりで」と「美女か野獣」は
各エピソードに脚本上の工夫が足りなかった。
「いつもふたりで」はまだラブストーリーということで
軽く見ることもできたけど、
「美女か野獣」は業界モノだっただけに、
浅い脚本が致命的になった。
数字は取れたのでキャストに感謝するべきだと思う。

「熱烈的中華飯店」は豪華なキャストを擁しても
箸にも棒にもかからなかった最悪の例。
企画が決まった段階で安心して、
その後の詰めを怠った感じだった。
プロデューサーの責任は重い気がする。

そんな中、キャストの話題性だけにあぐらをかかず、
脚本、演出、共に工夫を凝らしていたのが「GOOD LUCK!!」だった。
驚異的な視聴率を記録したのはもちろん木村拓哉による部分が大きいけど、
それだけの作品ではなかった。
穿った見方をせず、素直に評価していいと思う。

でも、1〜3月期の最優秀作品賞は「僕の生きる道」に贈りたい。
これも普遍的なテーマを直球ドまん中で描いていて、
分かりやすいと言えば分かりやすい作品だった。

それがここまでハイレベルな作品に仕上がったのは
とにかくワンシーンワンシーン丁寧に作っていたからだ。
メインの演出家・星護に明確な意図があって、
それを他のスタッフ、キャスト、全員がひとつの作品に仕上げていた。
見事だったと思う。

若い世代の視聴者の中には
一生、心に残る作品、と感じた人もいたんじゃないかな。
それくらい影響力もあるドラマだった。

というわけで、
最優秀主演男優賞は草なぎ剛、
最優秀助演女優賞は矢田亜希子という「僕生き」コンビで。
「GOOD LUCK!!」の柴咲コウにもあげたい気はする。
でも難易度としては矢田亜希子の役の方が難しかったと思うので
ここは矢田亜希子にしよう。

最優秀助演男優賞も「僕生き」の小日向文世だな。
後半は少し見せ場が少なかったけど、
「まんてん」の甚六先生との合わせ技で。
もう今や最高のバイプレイヤーになっている。

最優秀主演女優賞が難しいところだけど
「高校教師」の上戸彩にしたい。
プレッシャーの中、野島伸司のヒロイン像を
うまく演じていたと思う。
次点は「いつもふたりで」の松たか子。
「年下の男」の稲森いずみはカムバック賞ということで。

クール全体を比較しながら見ると
非常に面白い1〜3月期だった。







[ロビー田中の自己紹介]

[トップへ]