タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第221話「“北の国から”の秘密・時代・遺言が再放送」

「北の国から」のSPがゴールデンタイムに再放送される。
16日('95秘密)
17日('97時代・前編)
18日('97時代・後編)
19日(2002遺言・前編)
20日(2002遺言・後編)

16日は「俺たちの旅」スペシャルと、
17日は「共犯者」、
18日は「トリック」「エ・アロール」
「マンハッタンラブストーリー」の最終回と
見事にバッティングする。

フジもえげつないことするなあ。



『ビギナー』  第9話

演出:松山博昭
脚本:水橋文美江

検察実務修習のエピソード。
7・8話と裁判所の実務修習で
シビアな殺人事件を扱ったので、
今回はかなり笑えるシーンを盛り込んだ内容だった。

とくに2話以降から頻繁に使っている
登場人物の心の声が効果的。
楓(ミムラ)が「人」という字を手のひらに書いた後、
“飲み込むんだろうね。……胸に当ててるよ!”
という松永(奥菜恵)のひとりツッコミは最高だった。

あと、楓の素直なキャラクターを活かしたボケ。
8人による検証でいきなり楓が踊り出したシーンは
コテコテなのにやたら笑ってしまった。

楓が松永に自前のメモ帳を渡そうとするシーンも
最初はこのボケの一部なんだけど、
それが最後にはストーリーに食い込んでくるあたり、
水橋文美江のうまさを感じる。

構成としては、
5話とはまた違う2人の組み合わせで
実務修習に当たった設定がうまかった。

これでさらにお互いが相手を理解する、
という効果を生み出していたわけだけど、
メインとなったのはもちろん楓と松永のセット。

その中で事件の真実を暴いただけでなく、
恋愛の要素も軽く絡めて
松永が楓を認めるシーンはかなり感動的だった。

5話と同じように楓が担当した事件以外が
かなりあっさりと描かれてしまったり、
ジョン(葉山力樹)の取り調べで8人全員が勢揃いしたりと、
形良く収めてしまった傾向は確かにある。
でも何を優先して描くかという作品の方向性を考えれば
とくにマイナスとは言えないと思う。

ラストで羽佐間(オダギリジョー)が
楓を映画に誘わなかったのはもの足りなかった気もするするけど、
そこがこの司法修習を舞台にしたドラマらしくて良かったと思う。

             採点  8.0(10点満点平均6)



『ライオン先生』  第8話

監督:白川士
脚本:宮崎涼、小田切正明

使い古された言い回しだけを並べた
かなり寒い脚本。

今回も別にライオン先生(竹中直人)が
生徒たちの悩みを解決したわけじゃないしな。

生徒がみんなライオン先生の元へ
集まってくるエンディングの映像に
説得力がなくて困る。

岡本綾が急激にいい女になった、
というのがこのドラマの最大の見どころか。

             採点  4.5(10点満点平均6)



『あなたの隣に誰かいる』  第9回

演出:林徹
脚本:坂元裕二

なるほどね。
この段階で数馬(北村一輝)は蟲、
とセリフで断言してしまうということは、
それが真相ではない。

つまり結局は、
サスペンスっぽいホラーではなくて、
ホラーっぽいサスペンスだったってことだね。

今までもブルーの瞳の数馬と黒い瞳の数馬がいたけど、
今回は火傷を負ってない数馬も出てきた。
つまり数馬と思われている人間は2人いるということ。

でもこれで今までの展開をすべて納得させるのは
かなり強引な説明が必要なんじゃないかなあ。

まあ、お手並み拝見というところか。

それにしても
いかりや長介はちょっと痛々しいな。

             採点  5.5(10点満点平均6)



『ハコイリムスメ!』  第九話

演出:都築淳一
脚本:中園ミホ

典型的な最終回前の盛り上げ方。
キース(マーク・コンドン)が戻ってきたのは意外だったけど、
それもムリヤリ盛り上げるための展開みたいで
ちょっとやれやれだったな。

花(飯島直子)や灯(深田恭子)の心情に関しては、
吉太郎(地井武男)の病気や
徹郎(吉沢悠)が置かれている環境などで分からなくもない。
でも吉太郎に“お前が好きな人と一緒になれ”とハッキリ言わせるなら
その課程をもう少し丁寧に描くべきだった。

最終的に父親がそう思うのは不思議じゃないけど
ドラマの流れとしてね。

             採点  5.5(10点満点平均6)



『恋文』  第九話

演出:酒井聖博
脚本:岡田惠和

子供に先に言ったか。
“インチキじゃん”はいいセリフだったなあ。
今回、この優(泉澤祐希)の心情まで繊細に描いた部分が
やたら良かった。

計作(寺尾聰)とのシーンもね。
もうワケ分かんなかっただろうけど、
ちょっとだけ大人になったんだよね、優は。
ホントにいい男だよ、優も計作も。

で、前回の計作と美木子(いしだあゆみ)のエピソードを挟んで
江津子(和久井映見)に死を実感さえ、
そこから結婚式まで持っていった展開は見事だった。

“うそをホントにする”
“後悔しないように自分が納得する”方法を選択する。
この部分を実に説得力のある展開で描いたと思う。

郷子(水野美紀)と江津子の会話に関しては
“ここから先は友達として言うね”というセリフが効いていた。

感情移入できないという人も、もちろんいると思う。
でも人間の多面性を静かに描いた丁寧なシーンだった。

いよいよ最終回。
もうクオリティーが落ちる心配はない。
どんなラストシーンにするのか興味津々だ。

             採点  8.0(10点満点平均6)



『共犯者』  第8話

演出:大谷太郎
脚本:秦建日子

塔山紗江(中山忍)には昔、恋人がいた。
その人物はあの海で死んだということになっているけど、
遺体は見つかっていない。
これは警察が言っていることなのでおそらく本当だろう。

でも、そこから導き出される壮大な復習というストーリーは
やっぱりフェイクだろうな。

“僕の言ってる誤解はそういう意味じゃない。
 君は僕を殺せない”

新たに分かったことは、
15年前、冬川(浅野温子)と中尾(佐野史郎)が
横領のたぐいの金銭トラブルを起こしていること。

そして中尾と小林(吹越満)の間には
15年前から接点があったらしいこと。

塔山紗江殺害の真相は
この金銭トラブルに関係があると考えるのが妥当だろうな。
冬川からすべてが漏れることを恐れた中尾が
冬川を見張ろうとしても不思議ではないし。

“本当のこと、言った方がいいの?
 それとも何も知らずにいるのが
 美咲さんの幸せなの?”

この希(加賀美早紀)のセリフは泣けた。

…と、このドラマの構成に関する考えを
変える気持ちはない(笑)

             採点  7.5(10点満点平均6)



『流転の王妃・最後の皇弟』

制作統括:早河洋
チーフプロデュース:五十嵐文郎
プロデュース:中込卓也、飯塚正彦、森雅弘
監督:藤田明二(共同テレビ)
脚本:龍居由佳里
原作:『「流転の王妃」の昭和史』愛新覚羅浩
   『溥傑自伝』愛新覚羅溥傑
音楽:葉加瀬太郎
制作:テレビ朝日
出演:竹野内豊、常盤貴子、王伯昭、木村佳乃、段田安則、反町隆史、
   江角マキコ、竹中直人、野際陽子、北村総一郎、岩崎ひろみ、
   西島千博、伊東美咲、劉丹、椋木美羽、市川由衣、早瀬英里奈、
   浜田学、天海祐希、草笛光子、中丸新将、かとうかずこ、他

ラストエンペラー(溥儀)の弟・溥傑と、
その妻・嵯峨浩の半生を2夜連続で描いた大作。

人間ドラマとしてはかなり見ごたえのある作品だった。
竹野内豊も溥傑をうまく演じていたと思うし。

長い年月を数時間で描く場合、
ただエピソードの羅列に終始することも多いけど、
先日フジ系で放送された
「フジ子・ヘミングの奇跡」のような格好悪さはなかった。
ナレーションを付けたのは正解だったな。

甘粕正彦(竹中直人)や李香蘭(天海祐希)など、
ムリに登場させる必要なかったのでは?
と思える人がいたのは事実。

時代背景に実感を持たせる効果を狙ったものだろうけど、
かえって見どころを散漫にしてしまったかもしれない。

歴史の解釈は様々なので、
これがあの時代のすべてと受け取るのはもちろん危険。
でも、ドラマをキッカケとして
あの時代に興味を持つ若い人が増えれば
それだけでもこの作品の意義はあったと思う。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆






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