タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

>>バックナンバー >>ドラマ別レビュー


第227話「10〜12月期を振り返る」


思いのほか豊作だった10〜12月期。
まずは関東の平均視聴率から振り返ってみよう。

  ビギナー          15.79%
  トリック          15.62%
  末っ子長男姉三人      14.39%
  ヤンキー母校に帰る     12.83%
  あなたの隣に誰かいる    12.46%
  ハコイリムスメ!      11.60%
  あした天気になあれ。    11.38%
  エ・アロール         8.74%
  恋文〜私たちが愛した男〜   8.64%
  共犯者            7.49%
  マンハッタンラブストーリー  7.19%
  独身3!!           6.47%
  ライオン先生         4.74%

  白い巨塔(第1部)     21.05%

2クールで放送している「白い巨塔」はやはり強くて、
前半終了時点で21%超え。
ストーリー的にも後半はもっと延びるだろう。

その「白い巨塔」が裏番組として立ちはだかった
「マンハッタンラブストーリー」は7%台。
ただこれは視聴者を持って行かれたというより、
宮藤官九郎ドラマの特性だと思う。

磯山Pの首がつながっている間は
これからも視聴率を気にせず
面白いドラマを作り続けて欲しい。

通常の1クール作品の中で
「ビギナー」がトップを取ったのは立派だった。

初回は「末っ子長男姉三人」が18.6%でトップだったのに
その内容から6話では11%台まで下落。
15%台でスタートした「ビギナー」が
逆に6話では18.3%まで延ばし、トータルでは逆転した。

ヒロインを公募で選ぶという話題性だけでなく、
内容でその視聴者を増やしていったという証拠だろう。

そこで個人的な各作品の平均評価点はこんな感じ。

  ビギナー           7.68
  恋文〜私たちが愛した男〜   7.50
  共犯者            7.50
  マンハッタンラブストーリー  7.41
  ヤンキー母校に帰る      6.90
  エ・アロール         6.82
  トリック           6.65
  あした天気になあれ。     6.35
  末っ子長男姉三人       6.30
  ハコイリムスメ!       5.40
  あなたの隣に誰かいる     5.20
  独身3!!           5.00
  ライオン先生         4.45

まず、視聴率の最低作品と
個人的な評価点の最低作品が同じになったのは珍しかった。
やっとおいらも一般大衆の気持ちが分かるようになったのか?
いや、それくらい箸にも棒にもかからない作品だったってことだな(笑)

「恋文」「共犯者」「マンハッタンラブストーリー」は
好き嫌いがハッキリ分かれる作品だったけど、
どれもクオリティーは高かったと思う。

「ヤンキー母校に帰る」も真摯に作られた作品だった。
ただ、やっぱり各回にムラがあったのは事実で
平均するとこの位置に落ち着いてしまった。

「エ・アロール」も視聴者を限定する作品だったけど
丁寧に作られたドラマだった。
ここまでは見て損はなしの作品だったと言えるだろう。

ゴールデンタイムに移動して営業的な成功は収めた「トリック」は
もうここらでやめた方がいいのでは、というのが本音。
山田と上田、2人のキャラクターだけで引っ張るのはツラくなってきた。
ていうか、脚本の甘さや堤幸彦のオーバーワークなど
問題が多すぎるんだよな。
まだ続けるなら何らかのテコ入れは考えて欲しい。

「あした天気になあれ。」「末っ子長男姉三人」
「ハコイリムスメ!」あたりが今期もっとも大衆的だった作品。
このタイプの作品の質がもっと上がれば
テレビドラマ全体の印象も変わるんだろうけど…。


さて、そこで選びたい今期の最優秀主演男優賞は、
やっぱり「共犯者」の三上博史だろう。
難しい、それでもかなりやりがいのある役を
見事に演じていたと思う。

次点は「ヤンキー」の竹野内豊、
「エ・アロール」の豊川悦司あたりか。

最優秀助演男優賞は「マンハッタン」の尾美としのりかな。
ミッチーも塚本高史も松尾スズキもいい味を出したけど、
尾美としのりはすごい飛び道具だった。
次点は「エ・アロール」の緒形拳で。

最優秀主演女優賞は「恋文」の水野美紀と和久井映見にしよう。
水野美紀が郷子、和久井映見が江津子を演じたわけだけど、
入れ替えたパターンも見てみたいと思った。
それでもこの2人なら最初からそうであったように演じたと思う。

最優秀助演女優賞は同じく「恋文」のいしだあゆみ。
8話の死ぬシーンはもう圧巻だった。

奥菜恵も「ビギナー」と「共犯者」で
まったく別の役を演じて頑張っていたし、
最終的には主演のようだった
「マンハッタン」の小泉今日子も良かったし、
「ヤンキー」の加藤夏希も一生懸命だったけど、
あのいしだあゆみには遠く及ばなかった。

最優秀新人賞はもちろん「ビギナー」のミムラ。
相当なプレッシャーがあったことは想像できるけど、
あの清潔感、透明感は、彼女自身の人間性なんだと思う。
あとはまったく別の役が来た時にどこまで対応できるか。
しばらくは注目してみたい。

次点は「あした天気になあれ。」の森迫永依。
もう無条件で可愛かった。
泣く演技もうまかったし。

そして最優秀作品賞は…。
作品全体のクオリティーの高さは「恋文」が頭ひとつ抜けていた。
「共犯者」も演出、役者の演技の面からはトップクラスだった。
「マンハッタン」も宮藤官九郎らしいラブストーリーを
きちんと映像化していた。

でもひとつだけ選ぶとしたら「ビギナー」にしたいと思う。
ミムラは本当によく頑張った。
松雪泰子、堤真一らも十分に個性を発揮して、
見事な群像劇になっていたと思う。

原作のないオリジナル作品だったし、
営業面でも成功を収めた。
そして何より、毎回見終わったあと
すがすがしい気持ちにさせてくれた。

見ごたえ十分だった10〜12月期の最優秀作品は
「ビギナー」ということで。

この結論は妥当?(笑)





[ロビー田中の自己紹介]

[トップへ]