タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

>>バックナンバー


第35話「木更津は今日も元気に、朝だよ〜」


えーと、この下には「木更津〜」の
最終回に関するレビューも含まれます。
あらすじが推察される内容です。

もし、まだビデオを見ていないという方は
読まない方がいいと思います。

ていうか、先入観無しで見て欲しい最終回なので。
では、すでに見た方はどうぞ。


『婚外恋愛』 #10

演出:久野昌宏
脚本:浅野妙子

主人公はバリバリ仕事をしていて、
経済力もある女性。
結婚しても相手を縛りたくない、
ずっと友達のような夫婦でいたい、と思っている。

そんな彼女がある日、知り合いから
ウチの女房とお宅の旦那さんの交際を
認めて欲しいと言われる。

もちろん、身体の関係はナシ。
しかも相手の奥さんは
心に病を抱えているという。

自分と相手の奥さんとは面識がある。
まあいいか、たまに会うくらいなら、
と思って旦那にそれを勧める。

ところが、その奥さんと自分の旦那は
高校時代、同級生だった。
しかもその奥さんは一方的にではあるが、
自分の旦那に憧れていた。

そのことを知り、なおかつ
かつての同級生のつらい夫婦生活を聞いて、
旦那の方も彼女を放っておけなくなる。

だんだんと不安になる主人公。
今まで旦那が一緒にいてくれたのは、
自分を好きだったからなのか、
それとも結婚していたからなのか…。

…えーと、勝手に企画書を再現してみました(笑)
これ、普通にドラマにしたら
意外と面白くなりそうじゃない?

でも行き当たりばったりのシーンをつなげてしまうと
登場人物の性格、考え方がバラバラになって
作品のテーマも失われてしまう。

ひとことで言ってしまえば
そういう失敗作だった。

このところ永作博美は
いい作品に巡り会えていると思ったのに…。
密かに期待していただけに、残念な結果だった。

             採点  5.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★☆☆☆☆
                  演出  ★☆☆☆☆
                  配役  ★★☆☆☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★☆☆☆☆

           平均採点  5.85(10点満点平均6)


『恋ノチカラ』 第10話

演出:村上正典
脚本:相沢友子

ここまでバランス良く仕事と恋を描いてきたから、
貫井(堤真一)を完全に
好きになってしまった籐子(深津絵里)が
貫井企画を辞め、
春菜(矢田亜希子)との同居も解消する
という選択には説得力があった。

そして、その決断をした籐子が
真季(猫背椿)と2人で飲むシーンがまた良かった。
まあ、真季に説明っぽいセリフは言わせず
最後まで黙って飲む方がもっと良かったけどね。

あとはやっぱり深津絵里の演技力。
最後に貫井の椅子に座って
微笑みながら涙を流すシーンは圧巻だった。

内心、2人を応援したい気持ちでいっぱいの
壮吾(坂口憲二)と吉武(西村雅彦)。
今までいい子過ぎた春菜が
貫井だけは譲れないと宣言した気持ち。

状況としては最高の状態で
最終回を迎えられたのではないだろうか。

…ただ、
やっぱりあのエンピツは
大ヒットはしないよねえ?
それなりに可愛いかったけどさあ。

そのあたりには
最後まで目をつぶるしかないみたいだ。

             採点  7.5(10点満点平均6)


『木更津キャッアイ』 第9回

演出:金子文紀
脚本:宮藤官九郎

何かの間違いで死なない
という展開もアリだったけど、
前回のラストの遺影、
そして今回の冒頭の3回忌後のシーンで
必ず死ぬことを印象づけた描写はスゴかった。

しかも、前回、棚に隠してあった
公助(小日向文世)への伝言ノートにも
あんなエピソードがあったなんて…

とにかく、前回から今回にかけての構成は
見事としか言いようがない。

で、この最終回。
まず冒頭、ひとりで泣いてるぶっさん(岡田准一)が
モー子(酒井若菜)に
“泣いてんだよ!早く行けよ!バカ女!”
と、ひどい言葉を吐いた時、
モー子が怒らずに“…バイバイ”と
明るく言った時にいきなり泣けた。

その“バイバイ”という声のトーンに泣けた。
これはうまく説明できない。
でも結局、オレは「木更津〜」の笑いの中にある
こういうせつなさが好きだったんだと思う。

ぶっさんと美礼先生(薬師丸ひろ子)の
キャッチボールのシーンも同様。
思い出しただけでも涙でてくるよ。

その後、キャッツが木更津を飛び出しての活躍は
いつも通り、いや、いつも以上に楽しかった。
とくにお台場での
ぶっさんのハシャギっぷりは強烈だったなあ。

この一連のシーンがあったからこそ
“やっぱり木更津が一番いいなあ”と
砂浜に寝転がったシーンが活きてくる。

そしてぶっさんが病院に担ぎ込まれ、
看護婦が“ご家族の方からどうぞ”と言ってるのに
当然のように全員が病室へ入るところから
もう泣き笑いだった。

あの意識が朦朧としていく中で繰り広げられる
みんなの呼びかけと、それに対するぶっさんの心の声は
ある意味、ドラマ史に残る名シーンかもしれない。

で、何か仕掛けはあるはず、と思っていたら
やっぱりあった延長10回。

病院が霊安室にまで運んだのに
その日のうちに野球ができるまで回復するなんて
もちろんあり得ないと思う。

でも、メソメソした終わり方ではなく
最後まで「木更津〜」らしさを守った
いい締め括りだった。

“それからぶっさんは1年以上しぶとく
 生きのびて、22歳でこの世を去りました。”
という、うっちー(岡田義徳)のナレーションが
唯一、ぶっさんの死を明確に伝えたもの。

これを日本語で普通に入れるのが照れくさくて、
うっちーのオヤジがスパイだったなんていう
思いっきりバカバカしい設定にしたのかな、と思ったら、
クドカンが愛おしくなってしまった(笑)

空白の1年を作っておいて、
アンコールにも応える準備をしておくところもね(笑)
…やらない方がいいと思うけど。

“あそこで死んでりゃ伝説になれたのになあ”
というマスターの言葉も重かった。
そう、現実の死なんてそんなにカッコよくない。
でも、だからこのドラマはリアルだったのだ。

ドラマにはいろんなタイプがあるから
どれが一番なんて決められるものじゃないけど、
その時代の若者の感覚をリアルに切り取った
笑いあり涙ありの青春群像劇としては
10年に1度の傑作だったと思う。

あ、そうそう、
最終回のキャストロールだけアニ(塚本高史)の本名が
佐々木兆というフルネームで書いてあったの気づいた?

最後の最後まで粋なドラマだった。

             採点  9.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★★
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★★☆
                  新鮮さ ★★★★★
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  8.05(10点満点平均6)


『トリック2』 第10話(episode 5)

演出:堤幸彦
脚本:蒔田光治

いよいよ堤演出の最終エピソード。
やっぱり里見(野際陽子)が絡んでくると
それだけで面白い感じがする。

今回、小ネタというにはあまりにもあからさまな
村さ来、白木屋、庄屋、養老乃瀧、
つぼ八、魚民、笑兵衛、やる気茶屋といった
居酒屋シリーズ。
自分が知らない居酒屋の名前も出てきたのかも、
と思うとなんだか悔しい(笑)

あと、やっぱり毛が伸びる森というからには
最後は矢部(生瀬勝久)に何か変化が起きるんだろうか。

いずれにしても最終回のラストカット、
山田(仲間由紀恵)と上田(阿部寛)の雰囲気が
どんな風に変化してるのか、
いや、変化しなくてもいいんだけど、
お似合いのカップルさ加減が今から楽しみだ。

             採点  7.0(10点満点平均6)


『ナースマン』 no.9

演出:岩本仁志
脚本:寺田敏雄

イヤな展開(笑)
まあ、いっか。

今回に関して言えば
各役者に振るセリフのバランスが良くて
あまりダサい雰囲気はなかった。

前にも書いたけど、
山川恵里佳の自然な演技は本当にいい。
もっとドラマに出るべきだな。

このドラマで一番肝心な、
美和(安倍なつみ)に妹のことを詳しく説明した
裕次郎(松岡昌宏)のナースコールでの会話が
意外に良く出来ていたので助かった。

ここでしょーもない演技されたら
どうにもツラかったからな。

最終回、裕次郎の臓器を移植して美和が助かる
という展開だけは勘弁してくれ。

             採点  6.0(10点満点平均6)





[ロビー田中の自己紹介]

[トップへ]