タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第37話「森でうんこしてもみあげでふいた」

先週金曜日の「トリック2」最終回、
ラストシーンは日暮里の駅前だった。

その日の昼間、日暮里駅に行ったんだよなあ。
でも山田と上田はいなかった。

…なんて、子供みたいなことを言ってみたりして。


『ロング・ラブレター 〜漂流教室〜』 最終話

演出:水田成英
脚本:大森美香

予想とはかなり違う最終回だった。
大きく裏切られたとは思わないけど、
決してベストな選択でもなかった感じ。

ラストカットで校門の前の砂漠が
緑に変わるシーンはもちろんあるべき内容。
あれがないと希望も何もなくなってしまう。
問題はそこまでの方法だ。

未来からの“ロング・ラブレター”は、
そのままの形ではないにしても
過去の人々の心に何かのキッカケを与え、
(浅海がすぐに結花へ電話したように)
未来は救われた。

ただ、未来の結花(常盤貴子)を
死なせてしまうくらいなら、
やはり結花だけ過去に返すべきだったのではないか?

そのことで校門の前の砂漠が緑に変わっても、
それは結花から過去に残った浅海(窪塚洋介)への
“ロング・ラブレター”になったのではないか?

うーん、まあ、そんなに議論するほどの
ドラマでもないかな(笑)

「漂流教室」を、
常盤貴子と窪塚洋介を主役にしてドラマ化する。
設定を小学校ではなく、高校にして
そこに恋愛の要素も入れる。
これは悪い企画ではなかった。

ただ、ハッキリ言ってしまえば
結果として中の下ぐらいの作品に
留まってしまった感じ。

おそらく制作スタッフは、
過去と未来ではなく、
原作とドラマの狭間に
迷い込んでしまったんだろう。

いろいろなものが中途半端で
原作を消化しきれず、
ドラマとしてのオリジナリティーも
色濃く出せなかった。

でも、作品のメッセージを
分かりやすく、繰り返し流したのは
ある意味、良かったのかもしれない。
これでメッセージも伝わりにくい内容だったら
本当に目も当てられない状態だったから。

このドラマを見た人の何人かが、
真剣にこのままではダメだと思って
何か行動に移すことができたら、
それでこのドラマを作った意味はあると思うしね。

それにしても、
これだけ優秀なスタッフを揃えても
必ず成功するとは限らないんだなあ。
つくづくドラマ作りの難しさを感じた。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★☆☆☆
                  演出  ★★☆☆☆
                  配役  ★★★☆☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.23(10点満点平均6)


『続・平成夫婦茶碗』 最終話

演出:三枝孝臣
脚本:森下佳子

この回は時間の関係なのか
多少、編集がブツ切れでスマートさに欠けたし、
ひろみ(鈴木紗理奈)、玲子(鈴木杏樹)、
西土居(石塚英彦)の描き方もあっさりとしてたけど、
それでもいい最終回だった。

とにかくこの作品は
愛する家族を残して死んだ妻の迷いと
自分の子供たちが新しい母親を愛していく悲しみ。
後妻に入って新しい家族の一員になる新妻の葛藤。
そして、本当の母親を忘れてはいけないと思いながらも
新しい母親を愛していく子供たちの複雑な感情。

そのあたりを
オーソドックスな展開の中で
実に丁寧に描いた秀作だった。

もちろん、パート1とスペシャルで築いた
貧乏で子沢山の金本家というシチュエーションが
確立されていたから出来たことかもしれないけど。

それでも、ただのお涙頂戴ドラマではなく
ここまで奥の深い人間ドラマに作り上げたのは
見事と言うほかなかった。

「プリティーガール」を見て
ファンタジーを作れるTVスタッフが
出てきて欲しいと思ったけど、
節(浅野温子)の存在のさせ方は
まさにファンタジーだった。

このスタッフで「プリティーガール」を作ったら…
と考えると、かなり興味深い。

最後に恒例となった叶(朝田帆香)情報。
日増しに女優としての才能を開花させていく彼女は、
今回、一歩前に出るという演技を習得(笑)。

加えて、節とのお別れシーンでは
「おかあたん」というセリフをこなし、
抱きしめられながらも、
本当はあなたのこと見えてないのよ、
と言わんばかりのソッポを向いた
難しい演技までこなした(笑)

パート1では節約術の情報を盛り込み、
このパート2では
愛する家族を残して死んだ人間の悲しみと
新しい家族に溶け込む難しさまで描いたこの作品。

パート3を作ってもマンネリにならず
別の見どころを作ってくれそうな予感。
ぜひ続編を期待する。

             採点  7.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.18(10点満点平均6)


『恋ノチカラ』 最終話

演出:若松節朗
脚本:相沢友子

うーん、結果的に仕事も恋も
うまくいく展開は当然として、
もう少し別の描き方はなかったのかなあ。
悪くはないけど、すごくいいドラマを見た
という後味があまり残らない締め方だった。

たぶん、籐子(深津絵里)が
いろいろな会社の面接に落ちたり、
見合い相手にフラれたりする
前半の描き方がつまらなかったんだろうな。

30歳を過ぎて資格もないと就職するのは大変とか、
打算でお見合いをしようとしてもうまくいかないとか、
そんなことではなくて、
籐子が貫井(堤真一)を忘れようとしても
なかなか忘れられない苦しさや、
貫井企画のような場所で働きたいという気持ちを
もっとハッキリ描いて欲しかった。

貫井の方の気持ちの揺れは
かなり描かれていたので、
余計にそう思ってしまう。

貫井側に関して言えば、
春菜(矢田亜希子)との別れのシーンは良かった。
最後だけ本音を言ってしまった貫井と
そのことに激しく怒った春菜。
この2人の関係に終止符を打つには
説得力のあるシーンだったと思う。

マズかった点は、
エンピツネズミが売れる時の描写もそう。

小さな商店から火がつくのはいいとしても、
人を押しのけてまで買うようなものではない。
もっと貫井たちの広告効果を表すような描写を入れて
静かに描いてもよかったんじゃないだろうか。

深津絵里と堤真一の演技は最後まで良かっただけに
そのザツな締め括り方はちょっと残念だった。

…とはいっても、
作品全体としてはかなり上質の出来。
確かに役者の貢献度が高かったのは事実だけど、
3話以降は恋と仕事の描き方のバランスも良くて
かなり楽しめた。

女優・深津絵里の評価は
この作品でさらに上がったと思う。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★★☆
                  演出  ★★★★☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★☆☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  7.18(10点満点平均6)


『トリック2』 最終回(episode 5)

演出:堤幸彦
脚本:蒔田光治

封筒を開けますよ、と言っておきながら
結局、開けない奈緒子(仲間由紀恵)。
奈緒子の言葉を真に受けて
封筒を開けてしまう上田(阿部寛)。
でもそこには、自分で奈緒子を探しに行け、
と言わんばかりの里見(野際陽子)からのメッセージが…。

ちなみに
頭を坊主にしなさいと言われている人の職業は何?
というクイズの答えは「警官(毛いかん)」
…と、最後に映った映画宣伝ポスターの
横に書かれていた。

残念ながら鬼束ちひろは出て来なかったけど、
いい雰囲気のラストだった。

ストーリーのトリック自体は
いつものように大したことはない。
でも最終回は面白かった方かも。

小ネタはやっぱり石野真子か。
若い人はたぶん分からない
「失恋記念日」と「狼なんか恐くない」を
本人に歌わせていた。

もちろん、村長の八名信夫は
青汁の「まずーい」を連発。

“文字には不思議な力があります”
と言っておきながら、里見が
水筒を片手に「有毒ガス危険!」と紙に書いたり、
奈緒子が上田に
「森でうんこをしてもみあげでふいた」
と書いた紙を持たせてみんなを蹴散らしたり…

やっぱりこういう小ネタなんだな、
この「トリック」の魅力は。

でも、黒門島の謎は明らかにならないまま。
映画、もしくはパート3に期待しよう。

             採点  7.0(10点満点平均6)

                  脚本  ★★★☆☆
                  演出  ★★★☆☆
                  配役  ★★★★☆
                  主題歌 ★★★★☆
                  音楽  ★★★☆☆
                  新鮮さ ★★★☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.91(10点満点平均6)


『ナースマン』 最終回

演出:岩本仁志
脚本:寺田敏雄

先週、最後に盛り上げておいて
実は裕次郎(松岡昌宏)のケガもたいしたことなく、
美和(安倍なつみ)も病院に運ばれて危機を逃れるという、
最悪の展開だけは避けて始まった最終回。

結局、美和はストーリーの中心というわけでもなく
ずっと脇役のままの存在だった。
もちろん、最後に見せ場はあったわけだけど、
意識が回復してから裕次郎と話したあの場面は
長すぎて感動も薄かった。

このドラマは看護士の話だから、
主任(小林聡美)の元ダンナ(渡辺いっけい)が
以前、看護士をしていたという流れはもちろんアリだ。

ていうか、このエピソードは
もっと作品の前半にやった方がよかったんじゃないかな。
このドラマの最大の欠点は
看護士のドラマになっていなかったことなので、
もっと看護士ならでは苦労を
渡辺いっけいを使って表現しておくべきだったのだ。

それにしても渡辺いっけいってうまいなあ。
個室ですべてを告白しながら裕次郎に謝るシーンは
妙にリアルで伝わるものがあった。

でもまあ、作品全体としてはやっぱりB級だったね。
最後に里中(上原多香子)と浅野(小泉孝太郎)が
つきあい始めるなんて、
あまりにも取って付けた流れで失笑ものだったし。

小林聡美がうますぎて
他の役者が実力以上にしょぼく見えたのも事実。
その中で山川恵里佳がいい味を出していたことだけが
このドラマの発見だった。

             採点  6.5(10点満点平均6)

                  脚本  ★☆☆☆☆
                  演出  ★☆☆☆☆
                  配役  ★★☆☆☆
                  主題歌 ★★☆☆☆
                  音楽  ★☆☆☆☆
                  新鮮さ ★★☆☆☆
                  話題性 ★★★☆☆

           平均採点  6.00(10点満点平均6)





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