タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中

放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。

“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)

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第49話「コメディーの中に隠されたもの」

「ゴールデンボウル」の第2話で
またフロムエーが登場。
今度はT9号だった。

さすがにまだ序盤だけあって
かなり前に収録されたんだな。

では、長短入り乱れた、金土の3作品。


『夢のカリフォルニア』 3

演出:平野俊一
脚本:岡田惠和

琴美(柴咲コウ)が初めて訪れる
終(堂本剛)の家の暖かさ。
恵子(国仲涼子)自身の心の葛藤を
理解してくれた宗石(野村宏伸)の存在。
そして、偶然3人で働くことになった
海苔フェスティバルのイベント。

孝平(安居剣一郎)からの問いかけに
まだ答えを見つけられないながらも、
3人がほんの少しだけ
“世界は捨てたもんじゃない”と
思えるような内容だった。

大きなストーリー展開はなくても、
この手のドラマには重要な回という感じ。
結局のところ、
こういった小さなエピソードの積み重ねが
彼ら3人が出す答えのピースになっていくからだ。

ただ、そんな中でも
終の父親のリストラ(?)とも思える
描写が今後の3人をかなり苦しめるはず。
マジメに働いていても
それが報われる世の中でもない。

そして終の兄、始(宮藤官九郎)の存在も
作品の中ではかなり重要なポジションだ。
フリーター生活を送れればそれが本当に楽しいのか。
本当にラクなのか。

今期は本当にいろんなタイプのドラマがあって面白い。
昔からドラマを見ている人間にとっては
とくに新しいという感じはしないけど、
非常に良質なドラマだ。

ところで気になったことがひとつ。
最後のキャストテロップで
国仲涼子と柴咲コウは並びで表示されるんだけど、
初回は柴咲コウ・国仲涼子の順番、
2回目は国仲涼子・柴咲コウの順番、
そしてこの3回目はまた柴咲コウが最初になった。

まあ、確かに内容的にも
2回目は国仲涼子が中心の話、
3回目は柴咲コウが中心の話だったけど、
どうやらどちらかが2番手という
明確な決め方ができなかったらしい。
(いろいろなしがらみで・笑)

大変なんだよね、現実の芸能界も(笑)

             採点  7.5(10点満点平均6)


『九龍で会いましょう』 third love

演出:徳市敏之
脚本:野依美幸

ジャスミンの風水、まったく効き目なし!

             採点  4.5(10点満点平均6)


『ゴールデンボウル』 2frame

演出:猪股隆一
脚本:野島伸司

地上げ屋の入場テーマは毎回変わるのか。
前回は早口言葉だったけど、
今回は「一週間の歌」の替え歌だった。
ちなみにこんな感じ。

月曜日はパチンコやって
火曜日は競馬に行って
水曜日は競艇行って
木曜日は麻雀やって
金曜日は競輪行って
土曜日はプレステやって
日曜日はラスベガス
はい! チュラチュラチュラ〜

まあ、プレステあれば何でもできるからな(笑)

さて、今回も
“ブルーサンダー・エレクトリックパレード
 東京ディズニーランド”を操る芥川(金城武)と、
“ピンクパンサー2002・シュビドゥバー・パパイヤ”
を操る瞳(黒木瞳)が地上げ屋チームと対決。

当然、芥川・瞳チームが勝つわけだけど、
横並びのスプリット(メイキング・イン・フィット)、
バイバイ・スプリットに絡めながら
芥川の死んだ元恋人に関連した話が中心だった。

そして、試合中の2人の会話で
野島伸司らしい恋愛観が語られる。

ひとり寂しく死んでいった彼女を、
ずっと想い続け、新しい恋人を見つけようとしない芥川。
それに対し、瞳は
“寂しいのは本当に彼女の方?”と問いかける。

“寂しいのは残されたあなたのはず。
 想い出はだんだん薄くなっていく。
 想い出せるうちはまだいい。寂しくても、悲しくても。
 だけど、もはやあなたの寂しさは、
 彼女を失った寂しさじゃない。
 悲しさも次第に癒され、
 あなたはもう、その寂しさもなくなっている。
 残っているのはストイックな自分よがりの孤独”

ここで画面は、1本だけ残ってしまったピンに。
芥川はこのピンを倒すことができない。

“本当は彼女のことなど、もう愛してはいない。
 時間が経つとシャボンの泡のように消えるの。
 そういうものなの”

“違うね、オレは違う”と芥川。

“そこまで言うならなぜ?
 なぜあなたは彼女が亡くなった時に
 あとを追わなかったの?”
“そんなこと…”
“(彼女は)望まない?
 そんなこと、どうして勝手に言えるの?
 だったら彼女が、あなたにひとりでいて欲しいって
 望んでるかどうかも分からないじゃない”

このあと、ピンの倒れ方が
別れる恋人のようでイヤだ、と
(2本のピンが別々の方向に飛び散ってしまうから)
死んだ恋人が言っていたバイバイ・スプリットを
芥川が取って、2人は試合に勝利する。

試合後、芥川は
“ひょっとして彼女も新しい恋人を見つけて
幸せになって欲しいと思っているかも”
と考えを改めようとするが、
今度は逆に瞳が否定する。

“やっぱり私だったら
 あなたにずっとひとりでいて欲しいと思う。
 決して誰にも心を奪われずに”

旦那に浮気をされ、
ひとり寂しい思いをしているのは実は瞳。
“時間が経てば愛は消えてしまう。そういうもの”
と芥川に言い聞かせながらも、
ずっと自分だけを見て欲しいと願っているのは瞳自身なわけだ。

ボウリングのピンに人間模様を投影させながら
死んだ恋人を想い続ける芥川と
夫との冷めた関係に傷ついている瞳の心情を
実にロジカルに描いたストーリーだった。

もちろん、ドラマ全体としては
金城武のやや聞き取りにくいセリフを始め
すべてがスムーズに見られるわけではない。

ただ「君が嘘をついた」などの初期ラブコメディー路線。
「高校教師」「この世の果て」などの中期ストイック純愛路線。
これらを経てきた野島伸司だからこそ描ける世界観のような気もする。

一筋縄ではいかない野島伸司の新たなラブコメディー。
しばらくはじっくりと観察してみたい。

             採点  7.5(10点満点平均6)




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