タイトル■ドラマは何でも教えてくれる
書き手 ■ロビー田中
放映中のTVドラマを“ほぼすべて”見ている、
驚異のドラマ通による、ドラマに関するコラム。
「“TVドラマなんかくだらない”と言う人に、
あえて反論するつもりはありません。ただ、
“すべてのTVドラマがくだらないわけでは
ない”とだけ言っておきます。これからも僕は
TVドラマを見続けていくでしょう」(田中)
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第74話「一億の星はゴールデンボウルに降った」
土曜日には評判が良かった
チョナンカンのドラマの再放送も見られて
じつに充実した週末だった。いいドラマが見られると
それだけで幸せ。
生きてて良かった、とさえ思う。オレってヘンか?
『ツーハンマン』 第1回
チーフプロデュース:黒田徹也
プロデュース:杉山登、船津浩一、鈴木伸太郎
演出:土方政人
脚本:鈴木聡
音楽:本多俊之
主題歌:「Sweet」ブロッサム
制作:テレビ朝日、共同テレビ
出演:中村俊介、川原亜矢子、草刈正雄、真矢みき、小橋健児、ベッキー、
田口浩正、鈴木砂羽、玉木浩、橋本さとし、菊池均也、牛尾田恭代、
草村礼子、二瓶鮫一、他チーフプロデューサーの黒田徹也は
「君の手がささやいている」だけでなく、
「おそるべしっっ!!!音無可憐さん」や
「可愛いだけじゃダメかしら?」などの
センスのいいコメディーも作ってきた人だけど、
これに共同テレビのスタッフが加わって、
実に均整の取れた作品に仕上がっている。最初から切っていた人も多いだろうけど、
気軽に見られて、笑えて、ちょっとせつなくて、
おそらく誰が見ても損はしないドラマだと思う。簡単に説明すると、
大手通販会社パラダイスコーポレーションが舞台。
毎週金曜日の夜にテレビで通販ショーを行い、
この不況下でも売り上げを延ばしている。この会社の名物社長で
ショーのオープニングにも毎回登場するのが寺岡(草刈正雄)。
トッププレゼンターがユカリン立木(川原亜矢子)。
そしてこの会社の苦情処理課に勤める地味な社員が
ジミーとあだ名される山田誠(中村俊介)だ。ジミーはユカリンに対して密かに憧れを抱いているけど、
ユカリンと社長の寺岡は愛人関係。
そのことをジミーだけが知ってしまう。ある日、社長夫人(真矢みき)が留守の時に
寺岡宅へ泊まったユカリンは、
突然帰ってきた夫人に足止めをくらって
生放送のショーに出られなくなる。苦労して開発した商品を
紹介できなくなってしまったユカリンのことを想い、
ジミーは覆面をし、ツーハンマンとなって
その商品をプレゼンする。ユカリンのことを想いながら話したセールストークが
女性たちの心をつかんで商品は大ヒット。
ところがユカリンはトッププレゼンターの座を奪われると思い、
ツーハンマンをライバル視してしまう。真実を言い出せなくなってしまったジミー。
そして、ユカリンと愛人関係にあることを口止めするために
ジミーに渡したイタリア製の万年筆がキッカケで
ジミーがツーハンマンであることを見破ってしまう寺岡。ユカリンに憧れながら
ツーハンマンとしてショーにも出なくてはいけなくなったジミーの
せつない恋心と、派手な通販の世界がコミカルに描かれていく…。
みたいな話だ。今回の川原亜矢子はそんなに役を大袈裟に作ってないので見やすい。
共演の中村俊介も草刈正雄もタッパがあるので並んでも見栄えがいい。今クールの大穴はこのドラマだった。
採点 7.0(10点満点平均6)
『恋セヨ乙女』 第1週 それはラーメンで始まった(第1〜4回)
制作統括:菅康弘
演出:大友啓史
作:岡田惠和
音楽:おかもとだいすけ
主題歌「微笑みのひと」今井美樹
制作:NHK
出演:真中瞳、佐藤藍子、酒井若菜、小野武彦、山口あゆみ、塚本高史、
筧利夫、吉沢悠、寺島進、石塚英彦、与座嘉秋、斉藤こず恵、
平良とみ、瀬戸カトリーヌ、他「真夜中は別の顔」に続く
NHKの23時帯ドラマ。
脚本が岡田惠和になって
ぐっとまともになった。「ちゅらさん」のスタッフも多いので
キャストもちょい役の平良とみだけでなく、
佐藤藍子、山口あゆみが登場。佐藤藍子は「ちゅらさん」と同じく
看護婦で役名も奈々子だった。基本的には主人公・幸子(真中瞳)の
恋愛を描いていくわけだけど、
そこに食べ物が絡んでくる。第1週は味の好みが合う倉沢(筧利夫)が相手だった。
倉沢は仕事上のつき合いもあることだし、
これからも出てくるんだろうな。塚本高史も冒頭に出てきたくらいだから、
1週ごとに完全に相手が代わるという
スタイルじゃないかもしれない。とりあえず、
この枠もこれくらいのクオリティーで
ずっと続けてくれることを願う。採点 6.5(10点満点平均6)
『ゴールデンボウル』 11 final frame
演出:猪股隆一
脚本:野島伸司すごい。
野島伸司の才能を遺憾なく発揮した
圧巻の最終回だった。最後の対戦相手を
ぬいぐるみを着た日本チャンピオンにしたところが
まず見事だった。前回、芥川(金城武)と瞳(黒木瞳)は
世界チャンピオンも破ってしまったのだから
TV局が対戦相手を探すのに苦労する
という設定は至極当然。
番組を盛り上げるために
TV局は正体が分からない覆面ボウラーを仕立てることにする。ちなみにその日本チャンピオン役で登場したのは
緒沢凛(極楽とんぼ・加藤の奥さん)と小林一三。
「フードファイト」のアツアツお掃除カップルだった。
何という粋なキャスティング!もちろん、この2人がレーンに立つことはない。
直前に辺見(小木茂光)らの手によって
拉致されてしまうから。
ぬいぐるみに入るのは瞳と柴原(藤沢大悟)だ。瞳は離婚し、誰にも行き先を告げずに
ゴールデンボウルを去っていた。
瞳は最後に芥川に会いに来たというような状況で
ぬいぐるみの中に入ることになる。柴原が芥川と対戦する理由は
ここ数回できちんと描かれていた。
瞳の代わりに芥川のパートナーとなったのは晶(松本莉緒)。
この4人で最後のゲームが行われる。辺見が柴原を特訓する上で使っていた
「黒猫のタンゴ」は、
辺見の母親に対する郷愁を表していたわけだけど、
柴原が着るぬいぐるみも黒猫。
このあたりのアイテムの使い方は本当にうまい。柴原が途中で腕を骨折してしまう展開は
かなり劇画チックで「そんなバカな」という感じだったけど、
このドラマにおいてはそんな展開があっても
まったく冷めることがない。この柴原の途中退場で瞳もぬいぐるみを脱ぐことになり、
芥川と1対1の対決になる。ラブストーリーである以上、
芥川と瞳は何らかの決着をつけなくてはならなかった。
それがこの最後のゲームで語られることになるわけだ。ところでこの最終回の冒頭、
芥川と辺見の会話の中で
かつてボウリングは家族の象徴だった
という話が出てきた。父親が力強いボールを投げ、子供がその背中を真似る。
母親はやさしくガーターになる子供を見つめる。
でも、今はそんな時代じゃない。
ボウリングは“古き良き時代の化石みたいなゲームさ”
と辺見が言う。これに対して、
ボウリングには夢があると反論する芥川。力が強い者、お金があっていい道具を持っている者が
必ずいいスコアを出すわけじゃない。
時にはピン同士が助け合って、
偶然にストライクも出る。
不可能なスピリットが取れてしまう時もある。もともと宗教的な儀式だったボウリングは祈りにも似ている。
人生も悪くないと思わせてくれる、と。この祈りが
ラストゲームの最後の投球に表現される。芥川の10フレーム。
残ってしまったピンは7番・10番。
最も離れた2本のスプリットで
全世界で5年に1〜2回取れるか取れないかという
奇跡のスプリットだ。このスプリットは蛇の眼のように離れていることから
別名・スネークアイと呼ばれていて、
ここでも「瞳」と関連づけがある。
芥川はこの「蛇の瞳」を取ることで
瞳との関係に決着をつけようとするのだ。行き先も告げずに一度は芥川の前を去ろうとした瞳だが
瞳自身の気持ちも実は芥川と同じ。
離婚は芥川のせいではない、
というのはむしろ瞳の意地で、
芥川とずっと一緒にいたい気持ちは変わらないわけだ。そしてこの最後の投球の前に
瞳は奇跡であると同時に夢のスプリットでもあると言う。
“もしもあなたがこれを取れたら
自分にも素敵なことが起きるかもしれないと
みんな願掛けしてるかもしれない”と。ここで柴原は晶に対する想いを、
みどり(榎本加奈子)は黒田(竹脇無我)に対する想いを、
オーナー(大滝秀治)は息子・辺見に対する想いを祈る。もちろん芥川も
“もしも取れたらあなたはどこへも行かない。
ずっと僕のそばにいてくれる。
あなたは僕を好きになる”
と願いをかけて投球に入る。瞳の願いはもちろん、このスプリットを取って…。
ボールが10番ピンに向かって転がる間に
それぞれの祈りを捧げる人の表情、
TVの前で手を握る恋人たちの姿などが挿入される。
ここの演出は本当に圧巻だった。そしてボールに弾かれた10番ピンは
奇跡のキックバックをして7番ピンを倒す。
抱き合う芥川と瞳。ここで終わる手もあったんだけど、
野島伸司はもう少しだけエピローグをつけた。まず、オーナーの件。
じつは盲腸だったとみんなに言って
最後の試合を見に来ていたオーナーだけど、
もちろんあの大手術が盲腸であるわけもなく、
ボウリング場で息を引き取ってしまう。ボウリング場(みんなの人生)が
新しい時代を迎える象徴として
これは仕方なかった。で、最後は芥川の部屋の隣に引っ越してきた瞳。
すぐに一緒に暮らすわけじゃないところが
瞳の性格をきちんと表現していて微笑ましかった。緻密な構成と奥深いセリフで紡いだ
笑えて泣けるラブストーリー。
本当に見事だった。採点 9.5(10点満点平均6)
脚本 ★★★★★
演出 ★★★★☆
配役 ★★★★☆
主題歌 ★★★☆☆
音楽 ★★★★☆
新鮮さ ★★★☆☆
話題性 ★★★☆☆平均採点 7.64(10点満点平均6)
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