タイトル■童心カクテル
書き手 ■
中村孝太郎

現在放映中の特撮ヒーロー物やゲーム関係の話、
その他無駄話などを勝手気ままに書くコラム。
…になるはずだと思います。きっと、たぶん。


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8杯目■ 『ゲーム脳の恐怖』の恐怖



さて、何だかんだと2002年もあと少し、皆様は如何お過ごしでしょうか?
私はいわゆる、社会の低辺な馬鹿野郎として
全く無駄な一年を過ごしてしまいましたが、良識ある皆様は
決してそんな事はなかった事と思います。

しかし、楽しく鬱病になってるんじゃね〜の?ってな状態の私でも
無駄な考えに浸る事もあります。
キャラクターに合ってねぇよ!って意見もあるかとは思いますが
私も法律上では一応、人間の分類に入ってますのでOKとしましょう。

2002年のシメとなる原稿で、鬱な話題もするのもアレなのですが
これは何とか書いておきたいと思って、今回のお題をしましょう。

『ゲーム脳の恐怖』
これは、今年の夏頃に、天下のNHK出版から発売された本のタイトルです。
著者は日本大学文理学部で研究室を構える、某教授(あえて伏せます)。
専門は脳神経科学だそうです。

はっきり言って、ほとんど名前の知られていなかったであろう
某教授の初の著書『ゲーム脳の恐怖』が一部のマスコミ(一社)で
取り上げられた後に、TVのワイドショーなどがこれを報道したので
ご記憶の方もいらっしゃるでしょうね。

さて、本の内容を、思いっきりかいつまんで説明するとこうです。


「ゲームを長時間プレイしていると、その人間の脳波は痴呆の状態に
 酷似してくる。つまり、脳細胞を頻繁に使う事が極端に少なくなる。
 更にゲームを全くプレイない、又はたまにしかゲームを
 プレイしない人間は、『礼儀正しく、学業成績は普通より上位といった印象』で、
 一方のゲームを頻繁にプレイする人間は、『キレやすくなったりして、
 ボーッとすることが多くなり、集中力に欠ける。学業成績は普通以下の人間』が
 多い、との『印象を受けた』」


・・・・ま、大体はこんな感じですね。
本当は無駄に長い文章なのですが、コレだけ抜き出せば大筋OKですから。

・・・さて、皆様はどのような感想をお持ちになりましたか?


「ゲームばっかりプレイしている人間はバカになる」


・・・・こういう感想を持たれても不思議ではないですね。
当然の事ですが、全国の子供を持った親御様方からの反響もあったようですし、
某教授がどこかの学校で講演をしたら、親御様方に取り囲まれての
質問攻めにあったらしいですから。

さて、暇を見つけてはゲームをプレイしまくっている私なんかは、
当然『ゲーム脳』と言われても仕方がないのですが、
私自身、自分が「ダメ人間」なのを自覚していますから文句は受け付けません。
しかし、ダメ人間でも正論を語る自信はあるものですから、話を続けます。

『ゲーム脳の恐怖』は、実はしょっぱい偏見に満ち満ちた内容でした。
先程、説明した内容に「?」と感じた方もいらっしゃるでしょうが
すべての実験の結果から「推測」で結果を「仮定」しているのにも関わらず
某教授は本の中で、さも自信タップリに「断言」しているのです。
「推測」「仮定」の結果で「断言」してしまうのも
大した根性ですがそれ以上に偏見まみれなのは
「学業成績は普通より上か、下か」

某教授は学業成績がそんなに大事なのでしょうね?
でしたら某教授は、さぞかし学生時代は学業成績が優秀だったのでしょうね。

「ゲームを長時間プレイしていると
 その人間の脳波は痴呆の状態に酷似してくる」

・・・はて?痴呆の老人のリハビリにゲームをプレイさせる、という方法を
試みている所もあった筈なのですが、気のせいなのでしょうか?

大体、脳波のメカニズムの解析は世界的にも、まだまだ研究途中で
不明な部分も多い未知な分野なのですが・・・・

某教授が実験に使用した脳波測定器なる代物は、
某宗教団体のヘットギアより簡単な構造だった筈ですしねぇ・・・。
そんな物で脳波の神秘が解明出来たのであれば、
今年のノーベル賞でも貰っているでしょうけど・・・?

そもそも科学者足る者、研究結果を冷静かつ客観的に見つめる事が
最大の条件だと思いますので、某教授はこの時点で科学者失格ですね。

そもそも、「何事もやり過ぎはよろしくない」のです。
仕事も趣味も、加減を知らないで続けていると「バカ」になりますからね。
少しでも、考えのある人ならすぐに分かることだと思うのですが・・・


さて、某教授への悪口はこの辺までにして、もう少し深く考えてみましょう。
『ゲーム脳の恐怖』なんてしょっぱい本が、何で話題になったのか?

天下のNHK出版から発売されたので、ブランド的な信頼感も
あったとは思います。
しかし、内容もろくに理解しないで出版に持っていった担当は
無能以外の何者でもありません。

「ゲーム」と言う単語を使用されたために、親御様方が過敏に反応したのも
事実でしょうね。親御様方だけでなく、日々のネタに困っている
ワイドショーも、ここぞとばかりに飛びついたのですから。

とかく「ゲーム」は俗悪なモノである、とのレッテルが差し押さえ札並に
ペタペタ張られているのですから、攻撃するには持って来いですしね。

最近の北朝鮮への、異常な報道しかりなのですが
とかくマスコミは、こうと決めたら猪の突進の如くに叩くだけ叩きますし、
「子供への悪影響」なんて見出しが付いたモノなら、親御様方が
猫も杓子もそのとうり!!と、親の特権を子供に押し付ける訳ですね。

そりゃ、私だって子供の時からゲーム三昧な生活なんて反対ですけど
「○○で言っていたからゲームなんてやっちゃいけない」
なんて理由だけでは反対しません。
現在の生活環境が許す限りは、「他の遊びもしろ」と言いますね。


この原稿を書きながら、ふと過去の体験を思い出しました。
15年以上前でしたが、「宮崎 某」による連続幼女誘拐殺人事件です。

「宮崎 某」が逮捕され、家宅捜索された「宮崎 某」の自室が
テレビで放送されました。
部屋の中には、おびただしい数のビデオテープや、アニメのポスターや
雑誌などが映し出されました。

“「宮崎 某」はアニメやら漫画などの影響を受けて、この犯行に及んだ”
などと、マスコミは偏見に満ちた報道を飽きもせずに続けていました。
現在も殆ど変化はないのですが、私の部屋もいわば
「宮崎 某」の部屋に近い状態だったですし
今で言う「アニメ・特撮オタク」な趣味の持ち主だったのです。

当然、周囲の友人たちから「「宮崎 某」みたいな事件を起こすなよ?」と
冷やかしを受けました。
所詮は子供の冷やかしですから、からかい半分だったのですが
当時の私は、現在ほど図太い神経を持っていなかった為に
しこたま精神に、深い傷を負う事になりました。
中でも一番解せなかったのは、同じ様な趣味を持っている奴にまで
からかわれた事だったのですが・・・

「何で自分の事を棚に上げて、そんなこと言えるかな?」

私はずーっと疑問だったのですが、「奴」はそういう奴なんだから
言うだけ人生の無駄、と諦める事にしました。

(しかし、今になってみると「奴」の様な人間が、社会の殆どを
構成しているのでは?と痛感させられるのが、もの悲しい・・・・)

先の例だけでなく、何かの犯人が捕まって、その趣味がゲームとかアニメとか
いわゆる「俗悪」なレッテルを貼られたモノだったりすると
マスコミは、揚げ足を取った如き報道ラッシュをかまして
バカなコメンテイターは偉そうに能書きを垂れる、というのが
ワイドショーなどの「黄金パターン」ですから、お約束というコトで・・・。
(某少女監禁事件や、米国の銃乱射事件など・・・)

あ、銃乱射事件で思い出した・・・・
この事件では、敵を撃ち殺しまくるゲームで感化された少年の犯行、と
報道されましたが、この事件後に米国(だったかな?)で
ある実験が行われました。
ゲームをプレイする前と後での、脳波やアドレナリン等を測定して
ゲームによって攻撃的衝動が増加するか否か、というモノです。

結果は、確かにアドレナリン分泌は増加して、攻撃的衝動の増加は
認められるものの、それが犯罪に結びつくかの因果関係は不明である・・と。

そりゃそーですね、大概のゲームをやっていて、興奮しない方がおかしい
わけですから。
(つまらないゲームをやっていて我慢出来ないから、
 というのは似て非なる事・・・かな?)


話が脱線しまくったのでとりあえずオチとしての結論を。

其の一  他人の話を鵜呑みにしてはいけません。
其の二  見境なく偉そうな能書きを垂れると嫌われる。
其の三  何事も節度を持つ事、やり過ぎは健康を損ねます。

あ、最後に補足。


『ゲーム脳の恐怖』の某教授の発言は、だんだんと「俺的ドリーム」に
溺れていって、ゲームだけでは飽き足らなくなり、
何と「携帯電話(メール含む)」や「パソコン」、挙句の果てには
「将棋」でさえも頻繁に続けていると『ゲーム脳』と同じ様になると発言しています。

「携帯電話」は、マナーもヘッタクレもない利用者が多いので
同情する気にはなりませんが(私は電話嫌いなので持ってません)
「パソコン」や「将棋」まで持ち出してくるとは・・・・

どうやら某教授には、プログラマーの方々や、寝癖が素敵な棋士様を
含む将棋連盟の方々も「バカ」としか写っていない様ですね。

では、『ゲーム脳』を直すにはどうすれば?

すばり、「お手玉」だそうです。

「お手玉」を1日10分も続けていれば、『ゲーム脳』もたちまち直る、
との嬉しいお話です。

「日本お手玉愛好会」(実在します)の方々には大変、喜ばれそうですが
「日本の伝統」と「IT社会」に真っ向から喧嘩を売っている、某教授でした。

某教授が夜道で刺されない事を祈りつつも、この言葉で今回は終わり。


「確かにゲームとの関係は否定出来ないかも知れないけど、あくまで仮定。
 決め付けてかかっている某教授の方がゲーム脳じゃないんですか?」


では、また次回。







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