タイトル■処女的衝撃 〜初体験はドッキドキ。〜
書き手 ■杉浦ぱっとん

大人になって、たいがいのことは経験済みに
なったら、一番ドキドキするのは、新しい人、
新しい感性、新しいものの見方に出会うこと。
だからこそ、あんなことや、こんなこと…、
過去や現在の初体験について書いてみたい!
あなたの「初体験」も思い出してみて下さい。

>>これまでの処女的衝撃


第4回「はじめての“ひとり旅”その2 出発」

1月1日

元旦出発である。そして時差の関係もあり
ニューヨークに着くのも元日の夕刻となる。

旅の支度は直前にする主義である。
いや、主義というほどカッコイイものじゃないですね。
化粧品やら何やら、日々使う物は直前まで家でも使うわけで
パッケージの段取りとかが苦手なんで、
出発直前、身支度をばっちりすませてから始めるのだ。
当日着たい服も、そのときになんないとわかんないし。

元日にニューヨーク行きの飛行機に乗るということについて
正直「危ないかもな」とは思った。
でも人間、何をやってたって死ぬときは死ぬ。
実家でもち食ってのどにつまらせて死ぬ確率と
どっちが高いかって言ったら…
杉浦コンピュータは「もち」と回答を出した。

13時半には空港に着いていたいので
11時半に家を出る…
つもりがやっぱ12時になった。

空港は思ったより人が少なく
こりゃチェックインも荷物検査も出国もラクだろうと思ったら、
旅行会社の手違いで、ターミナルが違うことが発覚。
あわててバスで正しいターミナルに向かう。
幸先が悪い…
カウンターのおねえさんに少しあたってしまう。

預ける荷物はスミからスミまでチェックされた。
自分でも入っているとは思わなかったライターを発見され
「これはポケットに入れておいて」と言われた。
厳戒なチェックのわりには、入り口に立ってたお兄さんは寝てましたけど。
「すみません」と声をかけると
「はっ、あっ、す、すみません、寝てました、アハハ」
「タイヘンですねー」
「ええ、ちょっと。すみません」
空港で働くのもツライよなーと思った一瞬であった。

さて、ひとり旅!
「飛行機で隣り合わせる同じくひとり旅のステキなナイスガイとの出会い」
を期待しないわけがないじゃないですか。
独身杉浦としては。
それでなくても13時間あまり、
エコノミークラスのせまい座席で袖触れあう仲になるわけですから。
でもさ……

現実は甘くないね。
つーか、むしろ、そんな夢はありえんのだと確信したよ。

通路側、もしくは窓際でもよかったけど
最悪なことに3人がけのまん中が私の席。
両サイドはというと……

中年の中国人男性。
ルックス、5段階で言えば1〜2(ぱっとんリサーチ)。
両サイドとも、よ?
どっちかはいい男でもいいじゃん。

イ、イケてないかも、ひとり旅…。
しかも離陸して気付いたけど
左の男、キング・オブ・貧乏ゆすり〜。
睨むと一瞬やめるけど、またすぐ揺する。
イライラついでに右サイドの男、
寝るのはいいけど、こっちにもたれて来ないで〜。

航空会社の人に提案!
女のひとり旅には気をきかせて、いい男を隣に!
それだけでかなり評判よくなるよ〜。
まったく。

と、ストレスをためつつ、ようやくJFK空港に到着。
出発前までテンション高かったのに
疲れとストレスで、ちょっぴり
「もう帰りたいかも」「なんでひとりで来ちゃったんだろ」
なんて思いながらトボトボ歩く。

税関チェック。
「ひとりですか?」と聞く係員。
あ、もちろん英語ね。
そっか英語では「ALONE」って言うんだっけな。
普通に「ひとり」って意味なんだろうけど、
「ALONE」ってさみしく響くよな。
もちろん頭の中ではB'Zの稲葉が
「♪あろ〜お〜ん」って歌ってたさ。
好きでもないのによ!
んで、また荷物の中を全部チェックされました。
ま、しゃーないね。

ニューヨーク、気温2度。寒いっす。
疲れているし、よくわからんので
タクシーに乗って、ひとまずホテルに行くことにする。
イライラしてたのもあるけど
白タクの客引きのおっさんには
「NO!」ときつく言っちゃいました。
でもちょっとカッコイイわ、あたし、なんて思ったりして。

ホテルはセントラルパークのすぐ南、
ミッドタウンの高級っぽい?高級なんかな?
って感じのホテル。
途中タクシーの中から、有名な
「プラザホテル」が見えたときはちょい感動。
そして街の景色はやっぱカッコイイ!

ニューヨークのホテルの値段は総じて高め。
東京より高い。1泊2万円強だ。
だいたいがツインかダブルの部屋なのだが
2人で泊まっても値段はほぼ同じだそうだ。
2人なら、それほど高いわけじゃないんだね。

到着したホテルは、まあ、いいホテルなんだろうけど
サービスも調度品も、同じ値段のホテルだったら
圧倒的に東京に軍配が上がるって感じ。
まあ、ニューヨークのホテル事情はそんなもんって
聞いてたので、いいんだけど。

チェックインを済ませて部屋へ。
ようやくタバコが吸える〜と思ったら、
ベッドサイドには「no smoking room」の文字。
おいおい、「smoking room」で予約したじゃん!
ぐったり。
これをまた英語で説明すんの?
ほとほと疲れたよ、あたしゃ。
でも、タバコが吸えないホテルに1泊2万も払ってたまるか。

フロントでなんとか説明して
部屋を変えてもらったよ。
ようやく落ち着いて一服した。
今日1日を振り返る……

残念ながらニューヨークに来た〜という
高揚感を味わえていない。
なんだかなあ、という出来事ばかり。
口に出して「ムカツクよねえ」とか、
気分を共有できる相手がいないということも
ストレスにつながっているのかも。
短い滞在期間なのだからヘコんでるヒマはないのだけど
この日は無理をせず、明日からバリバリ行動することにして
とにかくホテルのバーでビールを2杯。

その足で近くのデリで夕飯を買い込む。
サラダバーと言われる、
とにかくいろんなおかずが用意されている中から
自分の好きな物を好きなだけ容器に取る。
レジで重さを計ってもらって重さに応じてお金を払うというシステム。
女の子の食べる量だったら800円くらいかな。
思ったよりおいしくて、これはちょっとハッピーだった。

それでも、私はまだひとり旅を楽しめないでいたのだった。

明日の朝から気分を変えよう!
明日は朝から美術館に行ってみよう!

自分に言い聞かせ、風呂に入って寝ることにした。
そこで歯ブラシがないことに気付く。
またヘコむ。指で磨く。まあいいや。

ニューヨーク1日目が終わった。

(つづく)

次回「ハロー・ニューヨーク〜本当の始まり〜」は
明日アップの予定です。





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