タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<101> 4月19日(金)

■■ データ山を登山中 ■■

いまやっている仕事のひとつが
UFC大会の全戦績表を作るというもの。


「UFC」とは、アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ
の略。アメリカで行われている、金網に囲まれた八角形のリングで行われる
“なんでもあり”の大会の略称。バーリ・トゥード・ブームの先駆け的存在。

グレイシー柔術も、マーク・コールマンやマーク・ケアー、
ドン・フライなど、PRIDEなどで活躍しているアマレス系の有名選手も
みーんなこの大会に出たことで注目されるようになりました。
日本の英雄・桜庭もこの大会で優勝したことが飛躍のキッカケでした。

UFC大会が始まったのは、1993年。
もうすでに約10年の歴史があり、
現在までに40回の大会が行われている。

その全大会の全対戦表や結果を
資料を見ながら、せっせと書き写すだけなんだけど、
これがなかなか地味で骨の折れる作業。

というのも、まず公式な資料がないようだし、
雑誌やネットで調べると、
戦績表自体は載っていたりするのだけど、
40大会すべてを網羅しているものは
ひとつも見当たらない。

資料自体も探さなくちゃいけないんだけど
ある資料では、1回から20回までしか載っていなかったり、
またある資料では、30回から40回までしか載ってない、
といった具合で、一括してまとまったものがないので
いくつか発見したものを紡ぎ合わせながら、やっている。
資料ごとに表記の仕方や情報の質も違うので
整合性も考えてつくらなくちゃいけない。

そういう意味じゃ
希少性のあるデータにはなるかも。

自分自身でも、部分的には知っていても
UFCの歴史全体像については
これまでボンヤリとしか知らなかったので、
UFCヒストリーの勉強みたいで面白い。

ただ、問題がひとつ。

参考資料に誤植が多すぎる!

たとえばトーナメント表が載っていて
「優勝 ホイス・グレイシー」って書いてあるんだけど、
よーく見ると
おいおい、ホイスなんて出場してないよっ!

とか
「ジェレミー・ホーン」という選手の名前が
「ジェレミー・ギブアップ・ホーン」になってたり。
“ギブアップ”なんてリングネームにするわけないでしょ!

単純なコピー・ペースト・ミスだと思うんだけど
笑ってしまう、すごい誤植(?)が
たっくさんあるんです。

でも、なんだか責める気はしないんだよなぁ。

どこかの誰かも自分と同じように
目をしばしばさせながら、こつこつと、
この資料を作っていたんだろうな〜と思えるから
むしろ「見知らぬその誰かさん、お疲れさま!」
という気持ちになる。

俺自身は、情報誌とかを読むのも大の苦手だし、
データみたいなものは、
読むのがめんどくさいので絶対に読みとばす。
正直言って、軽視さえしてた気がする。

でも、こうして自分でやってみると
それを作る大変さや、
面白さがわかってきた。
経験って大事だね。

データ作りとかって
注目されることのない地道な作業だけど
なくてはならない大切な仕事なんだなぁ。
今さらながら、改めてそう思います。

考えてみれば、そういう仕事が
世の中には無数にあるんだろうな〜
電話帳とか時刻表とかさ。

人知れずデータ山という
目立たぬ山を登りきった人達がいて
その記録が多くの人の役に立っている。
社会とはそういう山がいくつもあって
成立してるんだろうなぁ。

今、自分がやっているのは、
一部の人にしか役立たないものではあるけど、
好きなジャンルだし、
データという事実の羅列も、
じっくり見てると
そこから物語性が見えてくるのが面白い。
要約したものからは見えない、
意外なことがいろいろわかってくるんだよなぁ。

今では団体のエースになった選手も
最初は補欠として出場していたり、
日本では最初無名扱いされてて、
後になって有名になった選手も、
資料で見ると、ちゃんと最初から
その兆しは感じられたりする。

いちいち「なるほどね〜」とか
「こんな人いたなぁ、しみじみ」
とか思いながらやってしまうので、
作業効率は悪いんですけど。

そんなわけで
その締切りも迫っているので
UFCデータ山の登山に戻ります。

わっせわっせ、どばっどばっ。



(つづく)





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