タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<21> 1月13日(日)

■■ 光の雨/革命/青春 ■■

昼、バーゲン巡りのお供で
澁谷・原宿をぶらぶら。

夜、「光の雨」を見に行く。
邦画だし、どうせ空いてるだろう、と思っていたら
立ち見が出るほどの盛況っぷりに驚く。

上映1時間前に行ったのに、整理番号113番!
席を確保するにもやっとの状態。
「プロジェクトX」の影響?
それとも今、「連合赤軍」に
若者の関心が集まっているのか?

蛇足ながら「アメリ」の澁谷シネマライズ前も物凄い行列だったよ。
行きたい人は御注意を。

「光の雨」は、'72年の連合赤軍事件を描いた
立松和平の小説を映画化した作品、だそうだ。

「連合赤軍」が何であったのか?
「あさま山荘事件」はどうして起きたのか?
安保も、共産主義も、学生運動も
俺は正直よく知らない。

しかし「革命」を夢見て行動した若者達がいて、
それが時代の中でものすごいエネルギーを生み、
石を投げれば何かが変わる
と信じられていた時代に興味はあった。

当時、彼らが何を考えていたのか
知りたかった。

今では、「革命」なんて
リアリティがないし、
そこまで信じれる「理想」もない。
幻想だったのかも知れないけど、
そういうものが確かにあった時代が
なんだか羨ましかった。

この映画は、劇中劇という形で
連合赤軍をモチーフとした映画を撮っている
スタッフや出演者のメイキングフィルムのような
構成になっている。

連合赤軍に参加し、やがて集団リンチ殺人という形で
自滅していった若者たちの物語に、
それを演じながらも疑問や共感を感じていく
現代の若者達(役者)の視点、
またその映画のメイキングを撮っている
30代の監督が視点が加わっていて、
とてもわかりやすい。

複数の視点によって
あぶりだされていく「連合赤軍事件」。
結局それがなんであったのかに
明確な回答は示されないが、
非常によくできた、いい映画だった。

「面白い」という表現は適切じゃないかもしれないけど、
とても面白かった。考えさせられた。

彼らが夢見ていた「革命」「理想の社会」
とはなんだったのか?
結局、映画を見てもよくわからない。

けど、もしかすると
当時の彼らも、よくわからないまま、
そういう「運動」に参加していた
だけなのかもしれない。

理想主義が陥りがちな
救いようのない行動の顛末は、不毛そのものだ。
無間地獄だ。ナンセンスだ。

「自己批判せよ!」
「総括せよ!」
とか言って、仲間を次々と殺していくのは
バカげているとしか言いようがない。

方法論は間違いだらけだったと思う。
でも、どこか気持ちはわかるような気がした。

80年代、プロレスの世界において
「革命」を志した2つの運動体があった。

名前もそのものの「革命戦士」長州力による、
プロレス界の年功序列制度に噛みついた「維新軍」、
そして、プロレス自体の変革を目指した「UWF」。

僕は10代の頃、彼らの「革命」に熱狂し、
心の中でだけど、一緒に「体制」に石を投げ、熱く燃えた。

「連合赤軍」や学生運動をしていた人達の
「理想」や「革命」とは、スケールが違うんだろうけど、
「気分」としては、想像できる気がした。

何かを変えられるかもしれないと思える気分は、
たまらなくワクワクするものだからだ。

だけど、「維新軍」「UWF」
どちらの「革命」も
自滅(内ゲバ)という形で終焉を迎えた。
「連合赤軍」と同じである。

ただ、プロレスの世界では、「ガチンコによる完全実力主義」
という「理想」は、「UWF」では実現しなかったものの、
10年以上たった今、「PRIDE」という形で現実になった。
それによって、革命のリーダーであった
前田日明の「リングス」は消滅という
憂き目に会うのだから皮肉なもんだけど…

何かを変えたいという反体制の思想、いや気分?
それは、プロレスでもロックでも学生運動でも
同じなんだろう。
「青春」だ。

そう、「光の雨」は「青春映画」だった。
せつないし、悲しいし、不毛だけれど、
「青春」というものは、
そもそもそういうものかもしれない。

誰かといろいろ話したくなる映画だった。

(つづく)







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