タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎
「狼はガガーリン空港へ行く」を主宰している男
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。
>>これまでの記録
<23> 1月15日(火)
■■ 友達が会社を作った ■■
友達が会社を作った。
30すぎたあたりから
同世代の友達が続々と
会社を辞め始めた。
俺も辞めた。転職したり、独立したり
独立したけどまた会社に入ったり、
海外に新天地を求めたり、
まだ次を考えていたり…
その後は様々だけど
会社を作った友達は
今のとこ彼だけである。彼が作った会社は、
よくわからないが
デジタル・コンテンツの制作、
つまりホームページの作成やら
CD-ROMを作ったりとかって
仕事が中心らしい。そんなわけで
会社見学に行ってきた。澁谷と代官山の中間あたりの
立派なマンションの9階に
その事務所はあった。気になるお家賃は
17万円ということだった。
さすが澁谷。広めの1DKマンションを
事務所用にリフォームしたような
部屋には、代表である彼と
20代のスタッフが3人働いていた。全員が取締役ということだった。
「それってなんか得があるの?」
と聞いてみると、
彼はこんな風に言っていた。「雇う側と雇われる側に分けるのが
イヤなんだよね。みんなが経営者で
自分達で会社を作っていくという
風にしたいんだよ」なるほど…。
給料は二の次で、
やりたいことを実現するために
集まった人達だということだ。「ははは、宗教みたいなもんだよね」
彼はそう言っていた。仕事ももらえるということで
女性のスタッフも交えて、
打ち合わせする。なんというか、いい空気があった。
新しいことをやっていこう、
面白いことをやっていこう、
という、やる気フルな雰囲気があって、
気持ちよかった。その後、彼と二人で飲みに行った。
事務所での顔とは少し違う、
高校の同級生の顔に戻った。話を聞くと、
もちろんいろいろ大変なようだが
まずまず順調なようである。「会社作ってよかったことって何?」
と質問してみた。「給料は前の会社より下がったし、
仕事は何倍もやらなきゃいけないし
精神的にはきついし
…なにがよかったんだろう?」
彼はそう言って笑った。「充実感?」
「それだけかも」ちょっと羨ましかった。
同じような夢を持った者同士が、
ある程度の少人数で
ワイワイしながら仕事をする、
というのは、なんとなく
ベストな状態なんでは?
と思う。一人で仕事をしていると
気ままでいいいのだが、
●会話することが異常に少ない
●すぐに飲める人がいない
●滅多に都心に出ないこのへんが問題点だと感じる。
だから「俺もいずれは事務所を…」
とよく夢想する。妄想上のその事務所は
原宿の路地にあり、
バリ島をモチーフとした
オープンカフェ風である。
オシャレなインテリアも充実した、
ブルータス不動産で紹介されそうな、
そんな事務所…。
そこで若いスタッフたち(かわいい女の子含む)と
楽しげに働いている俺…。
(何の仕事かは不明)しかし、経営者となった彼の話を聞くと、
その妄想はシュルルルル…と
小さく萎んでいくのであった。現実離れもほどほどにしとけ!
…自分にツッコミを入れざるを得ない。そして、経営!
最大に向いてない仕事である。「やればできるもんだよ」
と彼は言うが、自分の請求書を書くのさえ、
満足にできない俺には考えられない。
何人ものスタッフを食わせていく、
という重圧も相当なもんだろう。俺にとって妄想レベルのことを
実現してしまった彼は
つくづく立派だ。感心する。いい顔、してたなぁ。
というわけで、
オーガガ新コンテンツとして、
近々、彼をインタビューしよう。会社を作ることにした動機、経緯、
具体的に何をしたのか?
実際やってみてどうか?身近な人間の冒険、
みたいな観点で話を聞けると、
面白い読み物になるはず。
なにより自分が興味ある。居酒屋を出ると、
彼はまた会社に戻っていった。
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