タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<51> 2月19日(火)

■■ 処女的衝撃!はじめての人間ドック ■■

 検便との格闘

人間ドックの朝、7時に起床。

こんなに早く起きるのは久しぶり。
寝たのは3時だか4時だから、眠い…。

腹がグルッと鳴っている。
減ったわけじゃない。
便意だ。
遂に来た!

昨日の朝、
ウサギのフン的な硬い奴を排出し、
検便棒につけ保存したのだけど、
もう一度、取らなきゃいけないのだ。

昨日は、朝一度検便した後に
急激に腹が下ってきて
何度も快調に排出できたのだけど、
朝取ったばかりだから、と思い、
検便作業は控えていた。

夜したのを検便用にすればいいさ。

…と油断していたら
夜にはまた便秘状態になり、
全然出なくなってしまったのだった。
ウーン。なんてうまくいかないんだ!

という経緯があったので
念願の便意だった。

次なる問題は、
排出体勢。

昨日の検便時には
通常ポジション、
つまり洋式トイレでドア向きに
座る体勢でしたのだけど、
水の中に便が落ちてしまい、
取るのにやたら苦労した。

検便説明書では
逆向きポジションを推奨していた。
つまりドアに背を向ける体勢。

しかし、これはやってみるとわかるけど
非常に難しい体勢。
ズボンを完全に脱いでしまえば
できるのだろうけど、
そうでないと股が完全に開脚できず
とっても痛い。

そんなわけで昨日も一度は
トライしたのだけど、
痛さに断念して通常ポジションに
戻した経緯があった。

しかし、昨日の検便作業の
苦労もあったし、
便入りの水をまさぐるのは
もうコリゴリだったので、
なんとか推奨ポジションにチャレンジ!

やはり難しかったけど、
なんとかうまくいった。
嬉しい!

これで用意するものは万全。
さて出発だ。

2 人間ドックはエロチック?

7時台の外は、寒いなぁ…!

といまさらながら再認識。
ブルブル震えながらバスを待ち、
市川市内の病院へ。

通勤通学時にバスに乗ったのは
生まれて初めてかもしれない。
老人と学生で超満員だった。

駅前の道は渋滞していて
バスはなかなか進まない。
8時半に間に合うか心配になる。

しかし、商店街を抜けたら
順調に走るようになり
時間通りに到着できた。

周囲に畑があるような
田舎じみた場所にその病院はあった。

前に、知り合いの女性に
「人間ドックはエロチックだよ」と
聞いたことがある。

なんでも薄い衣装をまとっただけの
半裸のような女性達が集団でいることが
そう感じられたという話だった。

今回、人間ドックに素直に参加しようと
思った理由に、その言葉の影響があった。

半裸女性が無数にひしめくパラダイス!

そんな妄想が、
俺に申し込み気分を促進
させたのだった。

が、その田舎じみた病院を見た瞬間、
この妄想はしゅるしゅると萎んでいった。

「お年寄りしかいないだろう…」
そう直感した。

銀座の病院とかにしとけば
OLだらけだったのかも…!

後悔したが
時すでに遅し。

病院に入ると、案の定、
お年寄りパラダイス(?)だった。

そうはいえ、なかなか大きな病院だったので
入ってみたものの、どこへ行けばいいかわからない。

受け付けで「あの〜」
と声をかけてみた。

すると受け付けの女性はなんだか怪訝な顔。

しかし、「人間ドックはどこで?」
と尋ねると、急に満面の笑みに変わり、
場所を教えてくれた。

その態度の急変っぷりに
とまどいを感じながら、
人間ドック会場に向った。

3 謎のVIP待遇

しかし病院というのは
まるで迷路のようで
なかなかたどり着けない。

カフカの「城」は
こんな迷宮を彷徨うような
話じゃなかったっけ?

とか思いながら
病室のあるカフカ的迷宮を
うろうろしていると
「谷田さんですか?」
と声をかけられた。

「は、はい」
看護婦さんだった。

「なぜ、俺を谷田だとわかるんだ!?」

またまた、とまどった。
しかも、またえらく笑顔である。

控え室に案内してもらった。
その部屋に入ってみて驚いた。

ホテルのスウィートルームのようなのだ!

…というのは、ちょっと大袈裟だけど、
応接セットに、テーブルセットに、
さらにまた別にソファ、ベッドがふたつある
やたらに立派で広い部屋。

ここを俺一人の控え室として使うの?
そして、実際そうだった。

今日人間ドックを受けるのは
どうやら俺一人のようだった。
だから、名前もわかったんだろう。

薄い衣装に着替え、
その上にガウンをはおる。

ガウンといえば、田村正和、
あるいは暖炉の前のロッキングチャアに座り
猫をなでながら
ブランデーグラスを揺らしている人、
をすぐに連想する。

つまり、ハイクラスのマンだ。

スウィートルームにガウン、
そして実に親切な応対
なんだかVIP待遇されてる気分になっていた。

しかし、この部屋、
ふだんは何に使われているのだろう?

応接室だとすると
ベッドがあるのは変。
しかもふたつも。

謎だ。

4 アナルと山本直樹

身体測定から始まり、血圧、
採血、目の検査、レントゲンなど
次々にメニューは進んでいった。

今日人間ドックを
受けているのは俺しかいないようなので
待ち時間もほとんどなく
とてもスムーズ。

しかも、若い看護婦さんが付き添って、
やさしく案内してくれる。

ほんとにVIPのような気分だ。

そして、最初のクライマックス。
胃の検査。悪名高きバリウムを飲んだ。

まずいにはまずいが
甘い味つけもされていて、それほどでもない。
ファステングジュースの方がまずかった。
だが、結構な量を一気飲みしなければ
ならないので、オエッとはなる。

そして前後に回転するベッド(?)
で、ぐるぐる回される。

逆さの状態で停止したりして
なんだかミッション・インポシビル気分。

面白いけどしんどい
その検査もなんとか終わり、
間に休憩なども挟みつつ、
いよいよ終盤へ。

腸だか尻だかの検査である。

これが一番、ツラかったー。

なにやらヌルヌルしたものを塗られ、
グイッ!
と尻の穴に指だか器具を突っ込まれる。

処女的衝撃!

気絶しそうな痛みだ!
正直、悶絶!

「イテッ!」と声をあげると
「力を抜いて、息を吐いて」
と言われる。

山本直樹のエロいマンガに
よく出てくるセリフと同じだ!
(女の子がお尻を責められるシーンで)

と変なところに感心。
たしかに力を抜き、息を吐くと
多少は痛みが和らいだ。

終わった後、看護婦さんに
「尻の検査、キツイっすね」と言うと
「受けない人、多いですよ(笑)」と。

そりゃそうだろう。
この検査は選択性だったので、
実に後悔。次回受ける時は断わろう。

5 もし俺が「ぶっさん」だったら?

さらにいくつか検査を終え、終了。

しばらくスウィートルームで待機。
日当たりはいいし、ソファもあるし、
テレビもあるし、煙草も吸えるし、
お茶もコーヒーもあるので、実に快適な空間。
この部屋なら一日いてもいいな。

テレビのフィギアスケートや
ブッシュの演説を横目で見ながら、
「現代思想 プロレス特集号」を読む。

のんびりくつろいでいると
看護婦さんが入ってきて
結果を説明してくれた。

特に問題はなかったらしい。
肝臓に血の固まりみたいなものが
あるのだけど、これも別に問題ないと。

ただ、
「大丈夫だと思いますが、
 念のため、専門家に検査してもらって
 改めて検査結果を送りますから」
と、何度も繰り返し言うので
逆に少々不安になってきた。

そして、お得意の妄想へ。

もしも、実はガンかなんかで
「木更津キャッツアイ」の、ぶっさんみたく
余命あと何ヶ月とか言われたら
俺はどうするだろう?

それでもたぶん普通に生活するんだろうな。

で、自分がもしそうなら
カミングアウトしてオーガガに連載しよう!
ちょっとは読む人も増えるかもしれないし。
その時は、できるだけ楽しく読めるものを
心がけよう。
でも、やっぱ引かれるかな?
黙って急に死ぬ方がいいのかもな。
しかし、俺が死んだら、オーガガはなくなるのかな?
引き継いでくれる人なんていないだろうし。
そうすると、書くことが楽しくなって
きた人達には申し訳ないな。
けど仕方ないよな。死んじゃうんだから。
まあ自分でホームページを作るなり
なんなりするでしょう…。

わずか、0.01秒の間に妄想はエスカレート。

しかし
つい何でもネタに結びつけて考えてしまうのは
一種の職業病かね。

妄想はしたものの、
実際には
何も異常はなさそうなので
とりあえず安心。

最後には食事も出てきた。

病院のメシはまずいと聞くけど、
ほかほかごはんに味噌汁
アコウダイにキンピラゴボウにサラダ、
キウイにオレンジ。
なかなかどうして、旅館の朝食並みだ。
おいしかった。
またまたVIP気分。

そうして
最後まで手厚く親切な
待遇を受けながら、
病院を後にした。

まだ昼前だった。

理由はわからないけどVIP待遇だったし
人間ドックはなかなか悪くない。

尻の穴の検査さえ、なければ。

(つづく)






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