タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<55> 2月24日(日)

■■ リアルな現実・ファンタジーの終焉 ■■

プロレス漬けの1日。

昼にちょこっと仕事した後は、
3時半から「プライド19」をPPV観戦。
夜10時からは全日武道館のPPV再放送観戦。
すべて見終わったのは、1時すぎ。

約1時間弱の休憩を挟んだものの、
約9時間ほど見ていたことになる。
興行が被るとシンドイ。

さすがに疲れた…

正直、前座の試合は
もっと減らしてほしい。
全6試合くらいが丁度いいよ。
興行時間、長過ぎ!

カード発表時には
あれほど燃えた田村vsシウバだったのに
大会が近づくにつれ
なぜかテンションダウン。

リングス解散の喪失感が
どうも心理的な影響を
与えていた様子。

それでもチケットを買いに
行ったものの7000円席はすべて売り切れ。
となると次は1万5000円になってしまう。
さすがにそれは高すぎる!

…ということで、テレビ観戦にした
今回の「プライド19」だった。

結局、田村はシウバに無惨なKO負け。

この日もシウバとノゲイラの
圧倒的な強さばかりが目につき、
もはや日本人がそこに割り込む可能性すら
感じられなくなってしまった。

勝てそうな日本人が
もう誰1人思い浮かばない。

「心技体」という言葉があるが
今のプライドは「心」だけでは
もはや勝てない。
そして「魅せられない」。
田村とエンセンの敗戦で
それは決定づけられた気がする。

この日、最も感動したのは
負けはしたものの
「折れない心」を最高の形で表現してくれた
ケン・シャムロックだったけど、
彼には「技」も「体」もあるから
それが可能だったのだ。

だが、こういう感動的な試合は稀であり、
今の「プライド」は、ほとんど「技」と「体」だけで
勝負が決まっていってしまう、
非常(非情?)にスポーツライクで
デジタルな世界。

となると「体」で劣る
日本人には、非常に厳しい。

良くも悪くも
「資本主義」の論理だけで
興行が組み立てられる「プライド」。
個人の意志が感じられないこの世界には、
「興行」自体に理念も思想も
メッセージも感じられない。

リアルな現実だけがそこにある。

個人の「心」が生み出す
ファンタジーを見たくて、
プロレスを見続けてきた自分としては、
出場する各々の選手の「心」だけが、
よりどころになるのだけど、
格闘技である以上、
それもある程度、結果が出せなければ
ファンタジーにはならない。

連戦連敗では
カタルシスは得られない。

プロレスのスポーツ化。
市民権の獲得。
真にフラットな世界。

UWF以来、求められ続けたきたものは
「プライド」によって実現されつつある。

「これがあなたの望んでいた世界そのものよ」

しかし、その望んでいたはずの世界は
自分が好きだった選手達が主役になれない
思い入れを持てないものだったとは、
なんという皮肉な結末。

そして「アンチ・プライド」的な
個人の理念や思想を軸にした
「心」の世界だった「リングス」は終焉。

総合格闘技の世界は
「プライド的価値観」によって
独占市場となった。

グローバルスタンダートの圧倒的な勝利。
個が生むファンタジー世界の敗北。

世界は好きになれない方向に進んでいる。

では、旧態然としたプロレスに
癒しを求めるか?

だが残念ながら、
今日の全日本プロレスを見ても、
滅びゆく寸前の「伝統芸能」にしか
見えなかった。

慣れ親しんだ懐古的な空間、
ではあるかもしれないが、
そこには時代を牽引する力はない。
とてもじゃないが癒されやしない。

昨年、11.3東京ドーム、プライド17。
「心」vs「技・体」の究極の対決、
「プロレス」vs「格闘技」の異種格闘技戦、
高田vsミルコを見終わった時
(加えて桜庭の敗北)に、
「最終回」という文字が頭に浮かんだ。

プロレスの?
総合格闘技の?
プライドの?

それはよくわからなかったけど、
とにかく自分にとっての
「プロレスというファンタジー」の最終回
だったように思えた。

そして、「エピローグ」としての
「リングス解散」。

超大河ドラマだった
俺にとっての「プロレスというファンタジー」は
もう完璧に終わってしまったのだろうか?

できれば「つづく」
であってほしい。

「つづき」を感じられるためにも、
今回はなんとしても田村に勝って欲しかった。
奇跡を見せてほしかった。
新しいファンタジーを始めてほしかった!

しかし、そうはならなかった。
リアルな現実だけが目の前にあった。

無惨に腫らした顔を
タオルで覆った田村の姿。

「プロレスというファンタジー」の
終焉をまた見た。
「終わり」の「終わり」?

今回の試合が終わった時に
頭に浮かんだ文字は
「失望」だった。

ヤバイ!

(つづく)





[トップへ]