タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<59> 2月28日(木)

■■ 地獄の黙示録と富野監督 ■■

少し時間ができたので
「地獄の黙示録・特別完全版」を
見に行った。

無料チケットを持っていたので
差し出すと
「そのチケットでは『地獄の黙示録』は
 ご覧になれないんですよォ」
と言われてしまう。
しかも他の映画より高い2000円。
なんで?

さらに全席座席指定の劇場で、
「見やすい後ろの席をお取りします」
と言われ、劇場内に入ると
最後列の右はじから三番目の席。

最後列だけが満員で
その前やその前、さらにその前は
中央以外ガラガラ。

受け付けの人にとっては
「最後列が一番見やすいお席」
ということらしい。

が、俺は最後列は
あんまり好きじゃない。

スクリーンおよび劇場全体を
俯瞰で眺めてしまって、
客観的な気持ちになってしまい
いまひとつ映画に
のめりこめなくなってしまうからだ。

予告編が始まり
不安は的中した。

しかもスクリーンが
目線より下になってしまうので
それにその下にある字幕が
非常に読みにくい。

視点を上下させなければ
うまく字幕が読めない。

そんなわけで始まる前から
わりかしブルー気味。

ま、せっかく来たんだし…
と気分を回復させ、
映画に集中しようと努める。

「地獄の黙示録」は
実を言うと今回初めて見る。
スゴイ映画だとは聞いていたが
なかなか見ようと思う機会がなかった。

で、映画が始まった瞬間に
「うっ!この映画は異様だぞ」
と気づいた。

異様映画独特の雰囲気が充満している。
「期待できる!」

…と思ったものの
俯瞰&目の上下運動のせいか
最初うまく入り込めず
次第にうとうと…。

ハッキリ意識を取り戻した頃、
派手な戦闘がおっぱじまっていた。

どう見てもCGじゃない映像による
ヘリコプターの大爆撃シーン!
爆音!爆炎!爆殺!

スゲエ!!
なんだこれ!

しかもその米軍の攻撃は
サーフィンしたいたがために
爆撃で波を起こすために
行われているらしい。

ワーグナーが鳴り響く中、
爆撃命令している上官は
ボンボン爆発している最中にいながら
ハダカになって「サーフボードもってこい!」
とかなんとか怒鳴っている。

狂ってる!

この状況で遊ぼうという発想、
いや遊ぶために大殺戮も平気でできる感性
…こんな連中と戦争して
日本人が勝てるわけないじゃないか!

つくづくアメリカが恐ろしくなった。

主人公達が
大密林の川を上流へと向うにつれ、
(リアル・ジャングルクルーズ!)
映画の狂気度は増し、
物語は哲学的・観念的になっていく。

アメリカ人も
脳天気なだけではないということ?

ヒクソン・グレイシー似のカーツ大佐や、
彼のいる島の異様ぶりも
かなりのレベル。

最初は寝てしまったものの
3時間半という長さはほとんど
感じることなく(寝たから…?)
途中からはグイグイ引き込まれた。

感想は一言では言えない。
ベトナム戦争についても勉強しなくちゃいかんだろうなぁ
とも思うのだけど、
映像的インパクト、音楽、音響効果、物語、そして哲学的テーマ…
実に「映画的」な興奮に満ちた
傑作なんじゃないだろうか?

しかし、パンフレットを読むと
今回印象的だったシーンのほとんどが
オリジナルには入ってなかったという。
どういう映画だったんだ?
見てみたくなった。

夜、「地獄の黙示録には負けてません!」
と豪語した「∀ガンダム」の富野監督が
NHK「トップランナー」に出演。

カクカクとロボットの動きをしながら登場して
いきなり、ア然。
不安な始まりだったが、
スタッフもどうやら富野作品をよく見ている人らしく
かなりきちんと作られた番組だった。

富野監督による「鉄腕アトム」は初めて見た貴重映像。

エンディングに「コスモスに君と」
を流すあたりも、よくわかってらっしゃる。

しかし、例によって「商売のために」
ガンダム続編を作らせた連中への批判が飛び出したときは
ヒヤヒヤしつつも、
「出ちまった、富野節!」とまだ笑っていられたのだけど、
「Zガンダム」を見せられて、
本当に辛そうな表情になった時は
こっちも泣きそうなほど切なくなった。
痛ましかった。

富野さんにとって一連のガンダムシリーズは
本当に地獄のような「黒歴史」だったんだな…
と改めて痛感した。

∀に込められた意味を
まだ俺はわかりきれてないと思った。
もう一度、「地球光」「月光蝶」を
見に行かなければ。

「地獄の黙示録に負けてない」
という言葉も意識しながら見てみよう。

(つづく)





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