タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<83> 3月31日(日)

■■ 「こだま」はいい! ■■

布団がなかったので、床でゴロ寝していたら
さすがに寒くて早起きしてしまった。

まだみんな寝てるので
(一緒に来た◯◯さんは始発で帰っていた)
もう少し寝ようと思ったが、
体がこわばってうまく眠れない。
まだ8時。

帰ろうかな、と思ったが、
どうしても味噌煮込みうどんが食べたいので
店があく時間まで待つことに。

雑誌を読んだり、テレビを見て
11時まで時間をつぶさせてもらう。

まだ誰も起きないし、起こすのも悪いので
おいとまし、一人で山本屋へ。

山本屋の味噌煮込みうどんは
これまで食べたものの中でも
間違いなく上位にランキングされる大好物。
手羽先もひつまぶしも美味いけど、
名古屋名物では味噌煮込みが一番好きだ。

食う。…やっぱり美味い!
この味をなんと形容したらよいんだろうか?
「やや苦味を含んだ濃厚な甘さ、
 涙が出そうな味わい深いコク、
 それでいてしつこくない!」
…うまい言葉が見つからない。
語彙不足でどうしても「美味しんぼ」
みたいになっちゃうなぁ。
まあいいいや。とにかく、美味いのだ。
ビバ!味噌煮込み

大満足し、名古屋駅に向う。

名古屋の街は美味そうな店が多い。
なかなかの都会にも関わらず人は少ない。
いい街だと思う。
暖かいし、歩いてるだけでも楽しい。

名古屋駅に到着。
昨日の反省から指定を取ろうと思うが、
なんと午後の新幹線はすべて満席だ。
あちゃー、まいったな。

とりあえず自由席に並ぼうと思い、
ホームに出ると「こだま」がやってきた。
自由席はガラガラだ。

よし、これに乗っちゃおう!
どうせ今日は予定もないんだ。
…と瞬時に判断し、飛び乗った。

「こだま」は時間があまりにもかかるので
いつも敬遠しているのだけど、
今日その認識を改めた。

「こだま」はいい!

これは青春の大発見だった。

「のぞみ」は論外だけど
「ひかり」も早すぎて、
意外と景色を楽しむことが難しい。
あくまでも移動手段という気がする。

だが「こだま」は
各駅停車だから旅情がある。
風景をゆっくり楽しむことができる。
距離を実感できる。

大きく青い空、
様々な街の桜、
山の緑
色とりどりの街、
綺麗ないくつかの屋根、
大きな川、
工場や公園、住宅地、
不思議なロゴの企業ビル
開放的な浜名湖…

次々と流れていく景色を
ボーと眺めているだけで
無性に楽しかった。

車窓の景色ほど
豊かな映像はないなと思った。
どんな映画もこれほどの情報量はない。

しかも、拘束された
ゆっくり流れる時間は
ものを考えるのに最適だった。

豊かな景色
豊かな時間は
発想力を生む。

ふだんは常にバタバタしていたり、
時間があっても貧乏根性で
ついつい何かしてしまうので
こんなにゆっくりボーッと
何かを考えたりすることは
なかなかできない。

しかし、旅の移動時間は
ほぼ強制的にのんびりできるのだ。
すいてるから、
静かな気持ちにもなれる。

ビールを飲みながら
景色をぼんやり見ていると
想像力が刺激され、
いろんな発想が浮かんでくる。

ここのところ
漠然とした悩みのようなものがいくつかあり
少々鬱気味だったりしたのだが、
それに対する糸口が次々と浮かんできた。
流れる景色とともに
自分の中がすっきりと晴れていく。

いろんな答を急いで出そうと
しすぎていたのかもしれないな、と思った。
「こだま」のようにゆっくり進むことで、
逆に見えてくるものが
いろいろあることに気づいた。
「ひかり」ではなく
「こだま」になろう!
これからは「こだま派宣言」だ!

…とか思いつき、不可解なほど、
なんだか気分が盛り上がってくる。
たぶん酒のせいだけじゃない。

約2時間ほどそんな風に
ボンヤリ考えごとをし、その後、
熱海あたりから景色に奥行きがなくなると
読書をした。それも楽しい、

「ひかり」だと
ついつい急いで
読書をしたりしてしまうが、
3時間乗っていられると
ゆとりがあっていい。
この1時間の差がこんなに
大きいとは思わなかった。

ビバ!こだま

それでも短い時間だったけれど、
過ごし方ひとつで
通常の何倍も濃厚にすごせるのだ。
もっと旅に出よう。
…そんな風に思った。

なるべくゆっくりした旅に。

(つづく)





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