タイトル■狼男の記録
書き手 ■谷田俊太郎

はガガーリン空港へ行く」を主宰している
の書いた制作記録でがんす。略して「狼男の記録」。
狼男といえば、「ウォーでがんすのオオカミ男♪」
でおなじみの「がんす」でがんす。でも面倒くさい
ので、本文では「がんす」は省略するでがんす。

>>これまでの記録


<94> 4月12日(金)

■■ トンネルを抜けると ■■

トンネルを抜けると…
川端康成先生は雪国にたどりつく。
俺も雪国にたどりつくけど、季節は春。

特急「あずさ」に乗って
信州に向うと
いくつものトンネルを抜ける。
そしてトンネルを抜けるごとに
風景が変わっていく。

段々畑が見える盆地
山と山の谷間にある小さな村、
線路に迫りくる山肌
視界はだんだん遮られるようになり、
やがて視界が開けると
砂糖菓子のような白いパウダーが
まぶされた山々が見える。

トンネルを抜けるごとに
天気も変わる。
ある場所では青空
ある場所では一面の灰色
時間が経過し、
それは夕日の橙色になり
やがて万年筆のような濃い青へと
変化していく。

俺の育った塩尻まで3時間少々。
大した時間ではないけれど、
いくつもトンネルを抜けることで
ずいぶん遠くの別世界に
来たような気持ちにさせてくれる。

それはトンネルによる
フェードイン効果のせいかもしれない。
フェードイン、フェードアウト、
フェードイン、フェードアウト…
暗転するごとに、舞台が変わり、
ワープして遠い宇宙へ来たような。

塩尻駅に降り立つと
まず胸いっぱいに空気を吸う。
やはりうまい。

慣れ親しんだせいかもしれないが
ひんやりとして澄んだ空気は
たしかな質量を感じる。
東京の空気を
スーパーの水っぽい豆腐とするなら
長野の空気は
豆腐屋さんの中身がみっちり詰まった豆腐。
…って、よくわかんないですよね。

塩尻駅には中村孝太郎くんが
迎えに来てくれている。
まずは車で酒屋とスーパーに向う。
今夜の酒宴の買い出しである。

酒や鍋の材料を大量に
買い込み、中村家へ。

しばらくすると
毎度おなじみの「からあげくん」を
手みやげに市川先生もやってくる。

中村家の台所で行われる新年会は
これまで毎年恒例の行事だった。
たいていは1月2日に集まり
朝までドンチャン騒ぎ。

しかし俺が結婚したことで、
それは難しくなってしまった。
長期休暇に帰省はするものの、
男だけの飲み会はしにくい。
そこで普通の週末を利用して
こうしてやってきたというわけ。

中村シェフによる
今夜のメニューはしゃぶしゃぶ風鍋。
彼の料理は相変わらずうまい。
異常な勢いでビールもすすむ。

11時すぎに仕事を終えた
ダークちゃんもやってくる。
これで一応メンバーは揃った。

本来はもう一人いるのだけど
仕事や結婚の都合で
なかなか5人揃う機会は少なくなってしまった。
さみしいけれど、こればかりは仕方ない。

中学の同級生で飲む気楽さは格別である。
どんなに立派な職業になつき
社会的に認められる人間になっていても
あるいはなっていなくても
そんなことは無関係に話ができるとこだ。
互いのしょーもない時代から
知っているのだから、カッコのつけようがない。

いくら今は立派な先生でも、
我々からすると、
いつもズボンからシャツがはみでてて、
給食をバカ食いしてた中学生のまま。
(引きあいに出して、すいませんね)

というわけで何の遠慮もなく
バカな話やらマジメな話やらして飲み明かし
朝4時頃にとりあえず解散。
続きはまた夜に。

市川くんは朝から
スポーツ少年団の指導があるので
家に帰宅。
やはり土曜日も仕事のある
ダークちゃんも帰宅。
俺はそのまま寝させてもらう。

それにしても
今日は途中で寝なくてよかった…
寝るとまた非難轟々だからなぁ。

(つづく)





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