タイトル■がんばれ!ピンク映画
書き手 ■カタリョウ・アユミ

これは、ピンク映画をとりまく人たちの
愛と青春の、そして貧乏の物語です。
でも書いているのは、フツーのOL(会社員?)。
彼女が垣間見たのは、一体どんな世界なのか?
なんだか興味シンシンなのです!


第1回 ピンク映画との出会い


いやいや、
創刊日に間に合わず、無念…。
大学入試に遅刻するわ、
初仕事に遅刻するわ、
遅刻人生、ここに極まれり。

というわけで
あわてて終業後の職場から送信。
ちょっと出遅れましたが、
よろしくです。

さて、今回は
フツウの大学生→フツウの会社員であるワタシが、
どんな風にしてピンク映画と出会ってしまったのか、
というお話です。

それは98年の春のことです。
当時、ワタシは
大学で建築を勉強している4年生。
将来を夢見て、就職活動に励んでいました。

が!
第一志望の某鉄道会社に
最終面接でまさかの不合格。
新日本プロレスについて語ってしまったのが
保守的な学生を好む社風にあわなかったのだろうか。

とにかく、はて、どうしたものか??
と途方にくれていた、
22歳の5月の末でした。

その日は、
わたしの心とは裏腹に、最高にいい天気。
今ではもう吸わなくなった煙草を吸いながら
多摩川の土手を
とぼとぼと散歩していました。

すると、土手の下から、
「すいませーん!」
と、男の人が声をかけてきました。

土手をあがってきたその人は
よれよれのTシャツ
破れた穴をパッチワーク(!)で縫ったジーンズ
クビに手ぬぐいを巻き、
ムギワラボウシをかぶっていて
便所サンダルをつっかけていました。

ん〜。
絵に描いたような貧乏スタイル。
そしてかなりアヤシイ。

多摩ッ子のワタシは
多摩川は変質者多発地帯なので
昼間だって油断は禁物!
と、子供の頃から言い聞かされているので
自然とココロのガードがあがります。

「今、自主映画を撮っているんですけど
 もし時間があったら、
 ちょっとエキストラやってもらえませんか」

「はぁ」

実は、ワタシ、
大学時代を通じて、
友人のそのまた友人などが集まって
映画を作っていた経験があります。
お金の都合上VTRですが。
当時は、就職活動中だったので、
活動からはちょっと遠ざかっていたけれど
映画は見るのも作るのも、大好きなのです!

自主制作映画に
スタッフとして関わっていたからには、
エキストラ探しの苦労は、よーっくわかる。
そして、
この上ないくらい、ヒマ。

ちょっと協力してあげようかしら。

この時点で、ココロのガードは
かなりゆるめ。だったと思います。

でも、遠くで撮影をしている人たちを見ると
ちょっと老けてないか?
自主制作って、オトナもするのかしらん。

ワタシ「自主映画、って、学生さんなんですか?」
アヤシイ人「いえいえ。
普段はみんな映像関係の仕事をしてまして。」
ワタシ「あ、そうなんですか。
じゃ、なんで自主制作してるんですか?」
アヤシイ人「まあ、これは趣味というか…。」
ワタシ「ふーん。普段のお仕事は
どういうことしてるんですか?」
アヤシイ人「えーっと…
(かなり長い間)
ピンク映画…とかですね。」
ワタシ「…(沈黙)
エッチなやつ、ですよね。」
アヤシイ人「そう…ですね…。」
 
んー。
エキストラとか言っちゃって、
川原の茂みに連れこまれて
裸になれ、とか言われたら
どうしよう…。

なんか、安請け合いしちゃったかしら、
と、軽く後悔しつつ、
でも、その日は本当にエキストラとして、
主役(と思われる)の女性の後ろで、
アヤシイ人とキャッチボールをする、
というシーンを撮りました。

帰り際、アヤシイ人に、
作品ができたらビデオを送るので
連絡先を教えてください、と
言われました。
ちょっと迷いつつも、
心の中に湧いてくる好奇心につられて
ついつい教えてしまいました。

ピンク映画について、
あまりに無知だったワタシに
アヤシイ人が言った一言が
ちょっと気になったからだと思います。

「『ピンク』と言ってもですね。
 ボクらはドラマを撮っているわけでして。
 裸もありますけど、
 そればっかりではないんですよ。」

ドラマ・・・!

一般映画に進出する足がかりとして、
仕方なく、仕事として撮ってるのかな、と
勝手に想像していたけれど、
それってちょっと誤解なのかも。

結局、
この自主制作の作品が完成することはなく。
なのにワタシは、
なぜだか、もっと
ピンク映画の世界を垣間見ることになり…。

今思うと、声をかけられたのは、
ただのナンパ?
という気がしなくもありません。
だってこの日から
1年半くらい経った後、
このアヤシイ人は
わたしのカレになるのですから。

いやー
人生ってほんっとに不思議ですねぇ。


つづく






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