タイトル■がんばれ!ピンク映画
書き手 ■カタリョウ・アユミ

これは、ピンク映画をとりまく人たちの
愛と青春の、そして貧乏の物語です。
でも書いているのは、フツーのOL(会社員?)。
彼女が垣間見たのは、一体どんな世界なのか?
なんだか興味シンシンなのです!

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第2回 ピンク映画の基礎知識

ピンク映画との接点ができた98年当時、
ワタシはピンク映画のことを
本当に、全く、何ひとつ、
知りませんでした。

どんなストーリーなのか。
そもそもストーリーなんてあるのか。
どんな監督、俳優がいるのか。
どこで見られるのか。

などなどの基本的な情報が欠落してたわけです。
「東京ウォーカー」はもちろん、
「ぴあ」にだって載ってないし。

ピンク映画について書くことになって
ま、関係者じゃないんだし、
そんなに詳しくなくてもいいよなー、
と、開き直ってはみたものの。

読んでいるみなさんが
当時のワタシの状況と同じだとすれば、
ピンク映画の世界のアウトラインくらいは
やっぱり、正しいことを書かないと
まずいかなー。

と思いなおして、
今回は、ピンク映画の基礎知識をお送りします。

なんていうと、
ちょっと大袈裟だなー。
ワタシが知っている程度のことなので
たいしたことないんです・・・。
いや、ホント。すいません。(先に謝っとこう)

● ピンク映画ってなんなのさ

ピンク映画は、
性的描写の多い成人向け映画。
映倫で成人指定を受ける映画です。

とはいえ、
裸と男女の絡みのシーンが
かなりの割合で含まれている他は
アクション、コメディー、SF、ホラー。
もちろん、ラブロマンスに家族愛。
およそ、世の中にある映画のジャンルの全てがある
といっても過言ではないでしょう。

その、裸があれば
(比較的)何を撮ってもOK、という、
商業映画らしからぬ自由な土壌こそが、
監督の作家性が発揮できる場であり、
若い監督がデビューするきっかけになりやすい、
と言われる所以です。多分。

エロつながりで
比較の対象になりやすいアダルトビデオですが、
ピンク映画との最大の違いは、
その『エロ』の部分にあります。

つまり、
ピンク映画ではいわゆる『本番』はありません。
男女の絡みのシーンも
100%芝居!なのです。
セックスシーンを「演じる」って、
結構、ホント、大変だと思うんですよ。
そんな現場レポートは、
改めて行いたいと思いますが。

また、ビデ倫と映倫の規程の違いから、
映画では、自然な流れの中であればヘアーOK!
(「!」とかいうものでもないけど)
基本的にモザイクいらずです。
でも、やっぱり映らないように撮るので
これもまた大変です。


●ピンク映画の供給システム

現在、ピンク映画の配給会社は
「新東宝映画」
「オーピー映画」(旧大蔵映画)
「エクセスフィルム」(新日本映像)
の3社が主軸です。
これに、「ENKプロモーション」(主にゲイポルノ)と
製作会社である「国映」が自社で配給するものなどをあわせて
毎年約100本のペースで、
新作が発表されています。

邦画全体が毎年何本くらい撮られているのか
映倫にでも聞いてみないとわからないけど、
まあ、結構な本数なんじゃないでしょうか。

これが「ぴあ」にも載ってないんだから
まるで、地下組織。
ですよねぇ。

で、
それぞれの配給会社や製作会社には、
やっぱり会社の色、作品の色、
というべき特徴があります。

フツウの映画でも、松竹と東映は違う、とか
ドラマも、TBSとフジは違う、とか
ありますよね?
まあ、そういうことです。

ちなみに、ピンク映画の祭典「P―1グランプリ」の
パンフレットによると、
それぞれの特徴はこんな感じです。

「アヴァンギャルドな作品群を筆頭に
 『痴漢電車』『団地妻』『兄嫁』シリーズなどのブランドを
 次々生み出し、娯楽のジャンルを広く開拓している新東宝映画」

「映画館好きの最も憩う場である老舗の風格、
 ベテラン監督の作品と共に、
 ニューウェーブと呼ばれる若手監督の意欲作で
 俄然注目を集めているオーピー映画」

「日活の系列会社であり、
 都会派のスマートな映像とAVにもっとも近接した
 エロティックな描写で魅せるエクセスフィルム」

なんか、
よくわかんないですね・・・。

ピンク映画を撮っている監督さんは
なんと60人以上いるそうです。
が、複数の配給会社の作品をてがける方は少数派です。
監督さんはほとんどの人がフリーなので、
理屈から言えばもちろん可能なのですが
さっき書いたような
製作・配給会社の「色」や、
プロデューサーさんとの個人的なつながりなどを考えると、
なかなか難しいのかもしれません。

ちなみにワタシのカレは新東宝の映画に
関わることが多いです。

ピンク映画は
全国のピンク映画専門の映画館で
 新旧とりまぜて3本立て
 2週間ごとに作品が変わっていく
というスタイルで上映されるのが主です。
ゲイポルノは、
ソレ専門の映画館でかかります。

ピンク映画専門の映画館は、
全盛期の1970年代には全国に600館位あったのが
今では150館に満たなくなるまで減っているそうです。
最近のシネコンなどの進出で、
国内全体のスクリーン数はかなり増えているはずなので
かなり厳しい状況と言えるのかもしれません。

とはいえ、
ピンク映画の映画館は、
かなりキケン(いろいろな意味で)な場所であることは
疑いようもないわけで。
まわりの関係者の方も、
女の子はやめといたほうがいい。
と言うので、ワタシも行ったことはありません。

●ピンク映画とメディア

ピンク映画は、
映画館に行ってしか、見ることができないものが
ほとんどです。
一般映画に比べて、
ビデオ化されたり、テレビ放映される数が
圧倒的に少ないからです。

それでも、最近は、CSやBSで
放送されるモノも増えています。
多チャンネル化は、ピンク映画にとっては
追い風のようです。

紙媒体では、
『ぴあ』の撤退により、
フツウの人がピンク映画の情報を得るメディアは
ほとんどありません。

そんな中で、
現在、ピンク映画愛好家たちの頼れる情報源(?)が
「P・G」というミニコミ誌です。
この「P・G」は林田さんという方が
やってらっしゃるんですけど、
ピンク映画界のアカデミー賞、
「ピンク映画大賞」を主宰したり、
執筆活動をされたり、
ピンク映画界を盛り上げるべく
活躍してらっしゃいます。

ここんちのHPは、
なにしろ公開情報、新作情報がとっても詳しいので、
「ピンク映画を見てみたい!」
という方は、是非どうぞ。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~p-g/menu.htm
写真(もちろんエッチなやつ)も豊富なので、
家族の前や会社で見る時は
背後に注意して下さいね。

長くなりましたが、おまけ。
今回参考にした資料を下に書きます。

っていうか、この資料たちは、
この原稿のために集めたわけではなく、
ワタシの純粋な好奇心によって
自然に集まっちゃってました。
やばいかなあ。ワタシって・・・。

<参考資料>
「ピンクヌーヴェルヴァーグ」(ワイズ出版)
「銀星倶楽部19 桃色映画天国」(ペヨトル工房)
「映画芸術 No.392 
  『J−pink ピンク新世代の監督たち』」
「P−1GRANDPRIX 2001」(パンフレット)


(つづく)





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