タイトル■がんばれ!ピンク映画
書き手 ■カタリョウ・アユミ
これは、ピンク映画をとりまく人たちの
愛と青春の、そして貧乏の物語です。
でも書いているのは、フツーのOL(会社員?)。
彼女が垣間見たのは、一体どんな世界なのか?
なんだか興味シンシンなのです!
>>バックナンバー
第6回 現場はこんな感じです
前回の予告(?)どおり
ひろしくんがついている現場に
エキストラ出演してきました。ピンク映画では、家族、友人、助監督さんなどなどの
身内出演がよくあります。
予算的に厳しいのでノーギャラになってしまうし、
めんどうなことを説明する必要がないから、
都合がいいのでしょう。わたしも例にもれず、
エキストラ出演は2度目です。はい。というわけで、今回は女池組・現場レポートです。
当日(2/11)13時頃、
自宅リビングでのんびりお昼ご飯を食べていると、
前のシーンが早く終わりそうなので
今すぐ家を出てほしい、との連絡がひろしくんから入る。
「えー?!15時集合じゃないの?」と文句を言うと、
「早く終わることだってあるよ!」とキレられる。
なんだかイライラしていそうだったので
とりあえず新宿へ猛ダッシュ。電話で場所を聞いて、代々木のとある事務所ビルへ。
今回は駅から歩ける距離なのでお迎えはない。
ロケバスにも乗れず。
ビルの入口でひろしくんと合流し、
衣裳を受けとって、即席控え室で着替える。OL役と聞いていたとおり、フツウの制服。
と思ったら、このスカート、すごく短くないですか??「AV用だからね、仕方ないよ」と、ひろし。
…。
ワタシは小型(150?)なので、
まあ、ふつうに見えるから、いいか。
ブラウスの袖が長いので、ガムテープでつまんで調整。
と、紺の制服に黒いタイツがなんだかヘン。
ひろしに相談すると、
「自分で買ってきて。自腹で。」と言われ、
ストッキングを買いにコンビニへ走る。そんなこんなで準備ができた頃、役者さんが到着。
って、控え室に入ってきたのは佐野和宏さんではないか!!佐野さんは、ピンク映画を代表するベテラン俳優さん。
80年代後半から90年代にかけて
ピンク映画のニューウェーブをつくった、
当時の気鋭若手監督「ピンク四天王」の一人でもある。
ケビン・コスナーかニール・ヤングか、って感じの
シブーいおじさまなのだ。
パックの牛乳をストローで飲んでる姿まで、シブい。誰もかまってくれなくてヒマなので、
携帯メールをしたり、子役の男の子(9歳)と談笑しながら
待つこと40分くらいで、出番がきた。
ちなみにこの日は撮影最終日なので、
ピリピリとした雰囲気+じっとりした疲労の気配で
現場の空気はかなり重い感じだ。
失敗は許されなさそう。緊張するなあ。さて。ピンクの撮影クルーは、ごくシンプルである。
監督・女池さん。
カメラマン+アシスタントさん。
照明さん。音声さん。スチルカメラマンさん。
助監督3名(ひろし含む)の、計9名くらい。
平均年齢は、30代後半くらい、か。衣裳さんや美術さんなどは、基本的にいない。
車の運転から衣裳、小道具、弁当の手配まで、
ピンク映画では、全部助監督の仕事なのだ。スタッフのほとんどが男性だけど、
最近は女性のカメラマンや助監督が増えているらしい。
今回の現場も、カメラのアシスタントは女性だった。
女性がいると、心なしか現場も和むし、
女優さんにとってもいいんじゃないかな。
でも、体力的にはかなりキツイだろう。
同じ女子としては、エールを送りたい。がんばれ!!エキストラには、わたし、ひろし、今岡監督。
今回の女池組には、今岡監督が手伝いに来てくれている。
常に人手不足のピンク映画の現場では、
こういうヒマな人、もとい、身内の手助けがとっても重要だ。
これは「応援」という名のピンク映画界の相互扶助システムで、
ちゃんとスタッフとしてクレジットされる。
まあ、助監督、若手監督の皆さんは、
仕事が次々と入って忙しい!という状況ではないので、
現場に来る方が気がまぎれるんだろう、きっと。現場では、
まず、監督とカメラマンが、
カット割とカメラ位置を決めてセッティングすると、
助監督が役者の位置、小道具の配置などを調整をする。
照明さんは、役者のまわりの明るさをはかり、
音声さんは、マイクの場所を決め、
と、非常にシステマチックに準備が進む。
みなさん寡黙で、ザ・職人、の世界だ。演出は、監督が命令したり指導する感じではなくて
佐野さんが「オレはこう動いた方がいいんじゃないか?」
なんていうと、女池監督が
「そうですね、それ、いただきます」
というように、スタッフと役者さんが話しあってつくる。
これは監督によっても違うんだろうけど、
多分、女池組はこんな雰囲気なんだろう。こうして、台本には書いていない細かい動きや芝居をつけて
演出が決まると、リハーサル。オフィスに尋ねてきた佐野さん。
カウンターの中で、受付嬢(←わたし)内線電話をかけている。
「はい。はい。わかりました。
(客の方を向いて)こちらへどうぞ。」
受付嬢、カウンターから出て先導する。
佐野さん、奥へ通される。という一連の動きを試す。
受付カウンターを出る時、扉が勢いよく閉まってしまい、
静かに閉めるよう注意された。
時間がないので即本番。これは、一発OK。ふぅ。次のカットは、同じシーンの切り返し。
カメラを逆方向に変えて、同じようにセッティング。
今度は、さっきやったシーンの少し前、ということで受付嬢、内線電話をかける。
「○○様がお見えになりました。」という動きと台詞を足してリハーサル。
どうってことないシーンなのに、本番1回目はNG。
それも、原因はわたし・・・。
押すフリだけでいい電話のボタンを押してしまい、
「この番号は現在使われておりません」という音が
マイクに入ってしまった。音声さん、渋い顔。
ひろしくんにも睨まれる。
挙句、「もうフィルムの残りが少ないから、
ムダには回せないんだからね!」とプレッシャーをかけられる。助監督さんに電話のフックをガムテープでとめてもらって
テイク2。今度はOK。ホッ。この後、職人集団は、すぐに次のシーンの場所へ移動。
撮影は淡々と続き、
深夜の予定が翌早朝まで延びたものの、
無事にクランクアップしたそうです。今回はおとなしいシーンでしたが、
以前は、絡み(濡れ場、ってやつですね)の現場にいあわせて
かなり独特な空気を体験したこともあります。
その話もまた、いつか。さて、現場に行っても台本を読ませてもらえず、
肝心のストーリーは依然として不明ですが、
作品のタイトルが判明しました。
その名も、『ぶ〜やん』。
ピンク映画につきものの、
過激で卑猥で長い公開タイトルは、
これとは別に会社が決めます。
こんな脱力した題名の映画に一体どんなタイトルがつくのか!?
楽しみです。
(つづく)
[カタリョウ・アユミの自己紹介]
[トップへ]