タイトル■がんばれ!ピンク映画
書き手 ■カタリョウ・アユミ

これは、ピンク映画をとりまく人たちの
愛と青春の、そして貧乏の物語です。
でも書いているのは、フツーのOL(会社員?)。
彼女が垣間見たのは、一体どんな世界なのか?
なんだか興味シンシンなのです!

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第12回 チャンピオンカーニバルを楽しもう!
    〜その4 世代闘争から派閥闘争へ〜


ピンク映画界の世代交代を目指して
若手監督の反乱に始まったP−1グランプリでしたが
結局、若手「七福神」による
ベテラン「四天王」越えは果たせず。

世代闘争の灯はこのまま消えてしまうのか??
と、誰もが諦めかけた2001年、夏。
新・実行委員長に就任した榎本監督から
「今年もやるよ」との声が!

しかも今回は、
ベテラン、若手入り乱れて、
世代闘争ならぬ派閥闘争に発展している、
とのこと。
なんじゃ、そりゃ〜。

P1って
ただの格闘技好きのお祭り?

というわけで、
「P−1グランプリ 2001」は
2001年10月19日〜26日、
もはやP−1の聖地となった
中野武蔵野ホールで行われました。

参加監督、上映作品のほか、
俳優・川瀬陽太さんによる試合レポートも充実!
のHPはこちら。
http://homepage2.nifty.com/rei1973/

今回は、対戦する2作品を見た観客が、
面白かった方に投票するシステムに加えて、
各監督の得票数が累積されて、
派閥間でも争われました。

そして、
“優勝監督及びその所属派閥の監督作品が
 中野武蔵野ホールで特集上映される”
というすばらしい副賞が!
これが、チャンピオンカーニバルです。
(やっと今につながった!)

今回は、
2000年の成功(?)に刺激されてか
参加監督も増え、
作品のバリエーションがぐっと広がったり。

前夜祭の司会には、
『あんにょんキムチ』の松江哲明監督を迎えたり。

21世紀のP−1は
世代や会社の枠を超えて、
“作り手と一緒に映画を楽しむ場”に成長したんだ!
と、わたしは勝手に理解してます。

折しも、9.11の直後。
平和に、楽しく、いきたいですよね。
望月六郎監督も
「CNNで戦争見るより、中野で映画を見ましょう!」
と言ってたし。

そんな2001年の目玉は、なんと言っても
ディフェンディングチャンピオン・サトウトシキ監督の
『団地妻 隣りのあえぎ』(新東宝/01)

これは、前年のP−1で決勝を戦った
新世代・今岡信治監督を脚本に迎え、
さらに、同じく新世代・田尻裕司監督を
準主役として迎えた作品!

そして、サトウ監督のこの作品は
なんと、田尻裕司監督の新作の
『姉妹OL 抱きしめたい』(新東宝/01)
と1回戦で激突!と、屈指の好カードとなりました。

その他にも、
アダルトビデオ界から殴り込みをかけてきた
長崎みなみ監督。
一般映画で話題作を続々発表!の
望月六郎監督。
などなど、大物監督の参戦も話題となりました。

今回、わたしは、
前夜祭のオールナイトを観戦→投票。
6時間弱で5本!見て、選べるのはたった1本。
朝5時まで、寝ずに映画を見つづけられるか。
前の晩の11時に見た映画を朝まで覚えていられるか。
という自分自身の疲労と記憶との戦いでもありました。

という心配をよそに、
意外にもどれも印象に残ったんですけどね。
とりわけこの2本をご紹介。
(ま、ひろしが助監督、ということです)

『デッドライン
 〜島唄よ、響け 男たちの魂に』
(ENK/99)
 監督:新里猛作
 出演:佐野和宏 富山敦史 宮城青葉
  殺し屋の博は、些細なミスで標的を仕留められず、
  彼は組織に追われ東京を後にした。
  沖縄にたどりついた博は、若い清光と知り合い、
  博はいつしか清光に恋愛感情を抱き始めるが…。

これは、わたしが人生で初めて見たゲイポルノ。
それも、ピンク映画では異例の、
“沖縄ロケ”を敢行した意欲(無謀?)作です。
ハードボイルドっぽくて、楽しめます。

撮影してたのが、
ちょうどひろしくんとつきあい始めた頃で、
沖縄ロケのお土産を
いろいろもらったことを思い出しました。
真っ黒に日焼けして帰ってきたひろしと、
「今度は一緒に沖縄に行こう!」
なんて盛り上がったっけ。
一体、いつになるんでしょー。

そして。
『18才 下着の中のうずき』(新東宝/01)
 監督:坂本礼
 出演:笹原りな 川瀬陽太 山崎 瞳 工藤あきら
  千尋の親友の京子が、ある日ビルから飛び降りた。
  彼女の「メル友」舞子もまた数日前に自殺していた。
  やがて、千尋は舞子の事件を探る男と出会う。
  恋人が自殺した過去を持つ彼と、孤独を共有する
  千尋。新世紀を告げるカウントダウンが近づく。

これは、
2000年のクリスマスから年末にかけての撮影。
わたしも会社が休みになっていたため、
何かと手伝わされた作品です。

衣裳合わせのための衣裳がつまった
大きなかばんを持って銀座の街を走ったり。
ロケができそうな“ビルの屋上”を探して
クリスマスイブの渋谷〜代官山を歩き回ったり。

ラブ・クリスマスを過ごしていた
大学の同級生に、ばったり出会ってしまって
無性に悲しかった。

さて。
今回、決勝を争ったのは
榎本敏郎 VS 瀬々敬久
またしても、新世代と旧世代の対決になりました。

結果は、瀬々敬久監督が、
前年の初戦敗退の無念を晴らしての優勝。
優勝作品となった
『トーキョー×エロティカ 痺れる快楽』(新東宝)
は、ピンク映画初(?)のデジタルビデオ撮影作品。
ピンク映画界のオールスター勢ぞろい、
ともいうべき豪華な俳優陣も話題の新作です。

ところで、今回のP−1にも
“トゥナイト2”が取材に来てくれました。

300本!を越すアダルトビデオを監督して財を築き、
自社ビル&マイ編集室所有の長崎みなみ監督。
まんが喫茶でアルバイトしながら
風呂なしアパートに助監督と同居する坂本礼監督。
なんだか悲しい対比のインタビュー。

テレビを見ながら、
「そんなに貧乏臭くないのにさっ。
 演出だよ、演出!やだね、テレビってー。」
と、家族に言い訳するわたし。

すると、自宅でインタビューを受ける坂本くんの横に
タオルケットにくるまって横たわる
蓑虫のような人影が。

「なんか死にそうだね。大丈夫?」
とインタビュアーに聞かれて、
「お金がないので、動かないようにしてます。」
と答える、死相漂うその人は…。

ひろし。

あぁ、となりで一緒にテレビを見ていた
ママの横顔が、険しい…。


(つづく)





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