タイトル■がんばれ!ピンク映画
書き手 ■カタリョウ・アユミ

これは、ピンク映画をとりまく人たちの
愛と青春の、そして貧乏の物語です。
でも書いているのは、フツーのOL(会社員?)。
彼女が垣間見たのは、一体どんな世界なのか?
なんだか興味シンシンなのです!

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第16回  上映会に行きました
      〜その2 「救われる瞬間」〜

4/18(木)、渋谷・アップリンクで行われた
ピンク映画の上映会レポート。
つづきです。

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2本目は 『イボイボ』(96/新東宝)
 監督:今岡信治  脚本:いまおかしんぢ、星川隆宣
 出演:水乃麻亜子、林由美香、川瀬陽太、岡田智宏

良夫が母親の葬式から帰ってくると、
同棲していたいち子が姿を消していた。
いち子を探して、夜の街を徘徊する良夫は、
謎の少女・孝子と出会う。

爆弾を手に入れた2人は、
タイマーをセットしてコインロッカーに入れ、
山手線を一周する危険なゲームをする。
死をリアルに感じる瞬間(=現実)を重ねているうちに、
いち子が死んでしまったことを思い出し、
その現実を受け入れていく良夫。
そして、最後に、良夫に訪れた現実は・・・。
というような話。


さて。
感想を書こうと思うのだけど、
「か、かけない・・・」状態なんです、さっきから。

良夫と一緒に、
妄想と現実の世界をさまよってたみたい。
さっきまで見てた夢を、
今、もう思い出せない。

ぐっ、とつかまれて、
ぐるぐるっとかき回されて、
さっ、といなくなってしまった。そんな感じ。

印象に残っているのは、
過去・妄想の世界(いち子)から、
なかなか現実の世界(孝子)に戻ってこない良夫に
「どこ見てる?わたしを見て」
と孝子がいうシーン。

「おまえは誰だ?」
と、妄想(いち子)と現実(孝子)の境目が
どんどん希薄になる良夫を
「あんたはあたしよ」
と言って、孝子が受け入れるところが、好きでした。

この脚本は、
今岡さんが助監督をしていた頃に、
しんどい毎日の、イライラをぶつけるようにして
書いていたんだそう。

急になにもかも嫌になって、
全部壊してしまいたくなったり、
全てのことから逃げたくなってしまうような
鬱な空気に、
睡眠薬、爆弾、血、死、赤い服・・・などの
暗いイメージのモチーフが重なって、
行き着くのは、決してハッピーではないラストシーン。

なのに、
終わってみると、
全然、絶望的じゃない。

だから、救われてる。
今岡さんは、
ピンク映画を見て救われた瞬間があったから、
ピンク映画の監督になろうと思った、と言っていた。

関係ないかもしれないけど、
これを書く前に、
「夢のカリフォルニア」を見た。
自殺した友人に投げかけられた疑問に
答えがみつけられなくて、
立ち止まってしまった、ドラマの主人公たちの姿を思い出した。

彼らにも、救われる瞬間があるといい。
そんなことを思った。

話はかわりますが、
この作品は中島みゆきの『鳥になって』が主題歌になっていて、
これがまたすごくいい。

 ♪眠り薬を下さい 私にも

  子供の国へ帰れるくらい

  私は早く ここを去りたい

  できるなら鳥になって・・・

でも、中島みゆきを使ったが故に
名作にも関わらずビデオ化されない、という
不幸な運命の作品なので
見たい方は、こういう上映会の機会を要チェックです!

トークショーは、ゲストのはずの川瀬さんが
なぜか司会役(?)となってスタート。
それぞれの作品を撮った時のエピソードや
ピンク映画監督になったいきさつを話してくれました。

“今の日本映画におけるピンク映画の位置づけを
 どのように考えているか”
という、会場からの質問に答えた田尻監督が、

「エロの部分を抜きにした評価をされることもあるけど、
 それは、なんだか悔しい」

と言っていたのが印象的でした。

“今岡監督が、ピンク映画で救われたと思ったのは
 どんな時か”

という質問に、今岡監督は

「好きな女性を待ち伏せて、キスを奪おうとしたら
 突き飛ばされてしまった。
 どうしようもなくて、泣いてしまった。
 その時に、
 『そういえば、こんなシーン、映画にあったのぉ』
 と思って救われました」

とのこと。
ん〜。そういうことなのか?

最後に、今後の活動についての抱負として、

田尻さん「海で、女の人をキレイに撮るような、
     人魚とかの映画がやりたい」

わたしの後ろに座っていた、プロデューサー・朝倉氏は
失笑してましたけれど、実現するといいですね。

今岡さん「週末から次の現場(ひろし助監督)に入るので
     ブッ壊れなくちゃなーと思います。ブッ壊れます!」

今、まさにその現場中。

ひろし、今岡さんは壊れてますか?

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と、いうわけで、
12時にほど近い時刻に終了。
シンデレラのように
渋谷駅へ走った、カタリョウでした。

(おしまい)





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